cosnavi.jp
 平成20年の改訂にあたっては,いわゆる知識基盤社会化やグローバル化の進展が予想される21世紀においては,アイディアなど知識そのものや人材をめぐる国際競争が加速する一方で,異なる文化や文明との共存や国際協力の必要性が増大するため,確かな学力,豊かな人間性,健やかな体の調和を重視する「生きる力」の育成がますます重要となることなどを踏まえた検討が行われた。

 具体的には平成17年2月に文部科学大臣から,21世紀を生きる子供たちの教育の充実を図るため,教員の資質・能力の向上や教育条件の整備などと併せて,国の教育課程の基準全体の見直しについて検討するよう,中央教育審議会に対して要請があり,同年4月から審議が開始された。

 この間,教育基本法改正(平成18年12月),学校教育法改正(平成19年6月)が行われ,知・徳・体のバランス(教育基本法第2条第1号)とともに,基礎的・基本的な知識・技能,思考力・判断力・表現力等及び学習意欲を重視し(学校教育法第30条第2項),学校教育においてはこれらを調和的にはぐくむことが必要である旨が法律上規定された。

 
 

 中央教育審議会においては,このような教育の根本にさかのぼった法改正を踏まえた審議が行われ,平成20年1月に「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」答申を行った。この答申においては,

@ 改正教育基本法等を踏まえた学習指導要領改訂

A 「生きる力」という理念の共有

B 基礎的・基本的な知識・技能の習得

C 思考力・判断力・表現力等の育成

D 確かな学力を確立するために必要な授業時数の確保

E 学習意欲の向上や学習習慣の確立

F 豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実

を基本的な考え方として,各学校段階や各教科等にわたる学習指導要領の改善の方向性が示された。

 
 

 上記答申を受けて平成20年3月28日に学校教育法施行規則の一部を改正するとともに,小学校学習指導要領を全面的に改訂し,平成23年4月から実施した。

 学校教育法施行規則の主な改正点は,

第一に,外国語活動を通じて、児童が積極的にコミュニケーションを図る態度を育成し,言語・文化に関する理解を深めるために小学校第5・6学年に「外国語活動」を新設したこと,

第二に,各学年の授業時数について第1学年にあっては年間68単位時間,第2学年にあっては70単位時間,第3学年から第6学年にあっては年間35単位時間増加したこと,

第三に,構造改革特別区域研究開発学校設置事業(いわゆる「特区研発」)について,「構造改革特別区域基本方針」(平成18年4月)を踏まえ,同様の特例措置を内閣総理大臣が認定する手続きを経なくても文部科学大臣の指定により実施することを可能とした(いわゆる「教育課程特例校」)こと,

の3点である。

 学習指導要領については,次のような基本方針により改善を行った。

 
 

@ 教育基本法改正で明確となった教育の理念を踏まえ「生きる力」を育成すること。

 前述のように「生きる力」という理念は,知識基盤社会の時代において,ますます重要となっていることから,これを継承し,生きる力を支える確かな学力,豊かな心,健やかな体の調和のとれた育成を重視した。

 このため,総則の「教育課程編成の一般方針」として,引き続き「各学校において,児童に生きる力をはぐくむことを目指」すこととし,児童の発達の段階を考慮しつつ,知・徳・体の調和のとれた育成を重視することを示した。

 また,教育基本法改正により,教育の理念として,新たに,公共の精神を尊ぶこと,環境の保全に寄与すること,伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに,他国を尊重し,国際社会の平和と発展に寄与することが規定されたことなどを踏まえ,内容の充実を行った。

 
 

A 知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重視すること。

 確かな学力の育成に向けて,基礎的・基本的な知識・技能を確実に習得させること,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくむことの双方のバランスを重視した。

 このため,各教科において基礎的・基本的な知識・技能の習得を重視するとともに,観察・実験やレポートの作成,論述など知識・技能の活用を図る学習活動を充実すること,さらに総合的な学習の時間を中心として行われる,教科等の枠を超えた横断的・総合的な課題について各教科等で習得した知識・技能を相互に関連付けながら解決するといった探究活動の質的な充実を図ることなどにより思考力・判断力・表現力等を育成することとした。

 また,これらの学習を通じて,その基盤となるのは言語に関する能力であり,国語科のみならず,各教科等においてその育成を重視した。

 さらに,学習意欲を向上させ,主体的に学習に取り組む態度を養うとともに,家庭との連携を図りながら,学習習慣を確立することを重視した。

 以上のような観点から,国語,社会,算数及び理科の授業時数を増加するとともに,高学年に外国語活動を新設した。

 
 

B 道徳教育や体育などの充実により,豊かな心や健やかな体を育成すること。

 豊かな心や健やかな体の育成については,家庭や地域の実態(教育力の低下)を踏まえ,学校における道徳教育や体育などの充実を図った。

 具体的には,道徳教育については,道徳の時間を要(かなめ)として学校の教育活動全体を通じて行うものであることを明確化した上で,発達の段階に応じた指導内容の重点化や体験活動の推進,道徳教育推進教師(道徳教育の推進を主に担当する教師)を中心に全教師が協力して道徳教育を展開することの明確化,先人の伝記,自然,伝統と文化,スポーツなど児童が感動を覚える教材の開発と活用などにより充実することを示した。

 また,体育については,児童が自ら進んで運動に親しむ資質や能力を身に付け,心身を鍛えることができるようにすることが大切であることから,低・中学年において授業時数を増加し,生涯にわたって運動やスポーツを豊かに実践していくことと体力の向上に関する指導の充実を図るとともに,心身の健康の保持増進に関する指導に加え,学校における食育の推進や安全に関する指導を総則に新たに規定するなどの改善を行った。

 
 
→ 小学校学習指導要領等の改定の経過目次
→ 中学校学習指導要領等の改定の経過 目次
→ 小学校学習指導要領(2017)目次
→ 学習指導要領ナビ
トップページ