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 今の子供たちやこれから誕生する子供たちが,成人して社会で活躍する頃には,我が国は厳しい挑戦の時代を迎えていると予想される。

 生産年齢人口の減少,グローバル化の進展や絶え間ない技術革新等により,社会構造や雇用環境は大きく,また急速に変化しており,予測が困難な時代となっている。

 また,急激な少子高齢化が進む中で成熟社会を迎えた我が国にあっては,一人一人が持続可能な社会の担い手として,その多様性を原動力とし,質的な豊かさを伴った個人と社会の成長につながる新たな価値を生み出していくことが期待される。

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 こうした変化の一つとして,人工知能(AI)の飛躍的な進化を挙げることができる。

 人工知能が自ら知識を概念的に理解し,思考し始めているとも言われ,雇用の在り方や学校において獲得する知識の意味にも大きな変化をもたらすのではないかとの予測も示されている。

 このことは同時に,人工知能がどれだけ進化し思考できるようになったとしても,その思考の目的を与えたり,目的のよさ・正しさ・美しさを判断したりできるのは人間の最も大きな強みであるということの再認識につながっている。

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 このような時代にあって,学校教育には,子供たちが様々な変化に積極的に向き合い,他者と協働して課題を解決していくことや,様々な情報を見極め知識の概念的な理解を実現し情報を再構成するなどして新たな価値につなげていくこと,複雑な状況変化の中で目的を再構築することができるようにすることが求められている。

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 このことは,本来,我が国の学校教育が大切にしてきたことであるものの,教師の世代交代が進むと同時に,学校内における教師の世代間のバランスが変化し,教育に関わる様々な経験や知見をどのように継承していくかが課題となり,また,子供たちを取り巻く環境の変化により学校が抱える課題も複雑化・困難化する中で,これまでどおり学校の工夫だけにその実現を委ねることは困難になってきている。

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 こうした状況を踏まえ,平成26年11月には,文部科学大臣から新しい時代にふさわしい学習指導要領等の在り方について中央教育審議会に諮問を行った。

 中央教育審議会においては,2年1か月にわたる審議の末,平成28年12月21日に「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(以下「中央教育審議会答申」という。)を示した。

 中央教育審議会答申においては,
 “よりよい学校教育を通じて
  よりよい社会を創る”
 という目標を学校と社会が共有し,
 連携・協働しながら,

 新しい時代に求められる資質・能力を
 子供たちに育む
 「社会に開かれた教育課程」
 の実現を目指し,

 学習指導要領等が,
 学校,家庭,地域の関係者が
 幅広く共有し活用できる「学びの地図」
 としての役割を果たす
ことができるよう,

 次の6点にわたって
 その枠組みを改善するとともに,
 各学校において教育課程を軸に
 学校教育の改善・充実の好循環を
 生み出す
 「カリキュラム・マネジメント」
 の実現を目指すこと
 などが求められた。

@ 「何ができるようになるか」
  (育成を目指す資質・能力)

A 「何を学ぶか」
  (教科等を学ぶ意義と,
   教科等間・学校段階間のつながりを
   踏まえた教育課程の編成)

B 「どのように学ぶか」
  (各教科等の指導計画の作成と実施,
   学習・指導の改善・充実)

C 「子供一人一人の発達を
   どのように支援するか」
  (子供の発達を踏まえた指導)

D 「何が身に付いたか」
  (学習評価の充実)

E 「実施するために何が必要か」
  (学習指導要領等の理念を実現する
   ために必要な方策)

 これを踏まえ,平成29年3月31日に学校教育法施行規則を改正するとともに,幼稚園教育要領,小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領を公示した。

 小学校学習指導要領は,平成30年4月1日から第3学年及び第4学年において外国語活動を実施する等の円滑に移行するための措置(移行措置)を実施し,平成32年4月1日から全面実施することとしている。

 また,中学校学習指導要領は,平成30年4月1日から移行措置を実施し,平成33年4月1日から全面実施することとしている。

 
 

 今回の改訂は中央教育審議会答申を踏まえ,次の基本方針に基づき行った。

ア 教育基本法,学校教育法などを踏まえ,これまでの我が国の学校教育の実践や蓄積を生かし,子供たちが未来社会を切り拓(ひら)くための資質・能力を一層確実に育成することを目指す。

 その際,子供たちに求められる資質・能力とは何かを社会と共有し,連携する「社会に開かれた教育課程」を重視すること。

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イ 知識及び技能の習得と思考力,判断力,表現力等の育成のバランスを重視する平成20年改訂の学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で,知識の理解の質を更に高め,確かな学力を育成すること。

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ウ 先行する特別教科化など道徳教育の充実や体験活動の重視,体育・健康に関する指導の充実により,豊かな心や健やかな体を育成すること。

 
 

 中央教育審議会答申においては,

 予測困難な社会の変化に
 主体的に関わり,
 感性を豊かに働かせながら,
 どのような未来を創っていくのか,
 どのように社会や人生を
 よりよいものにしていくのか

 という目的を自ら考え,

 自らの可能性を発揮し,
 よりよい社会と幸福な人生の創り手
 となる力を
 身に付けられるようにすることが
 重要であること,

 こうした力は
 全く新しい力ということではなく
 学校教育が長年
 その育成を目指してきた
 「生きる力」であること

 を改めて捉え直し,

 学校教育がしっかりと
 その強みを発揮できるように
 していくことが必要とされた。

 

 また,
 汎用的な能力の育成を重視する
 世界的な潮流
 を踏まえつつ,

 知識及び技能と
 思考力,判断力,表現力等を
 バランスよく育成してきた
 我が国の学校教育の
 蓄積を生かしていくこと
 が重要とされた。

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 このため
 「生きる力」をより具体化し,
 教育課程全体を通して育成を目指す
 資質・能力を,

ア 「何を理解しているか,
  何ができるか
  (生きて働く「知識・技能」
   の習得)」,

イ 「理解していること・できることを
   どう使うか
  (未知の状況にも対応できる
   「思考力・判断力・表現力等」
    の育成)」,

ウ 「どのように社会・世界と関わり,
   よりよい人生を送るか
  (学びを人生や社会に生かそうとする
   「学びに向かう力・人間性等」
    の涵(かん)養)」

 の三つの柱に整理するとともに,
 各教科等の目標や内容についても,
 この三つの柱に基づく再整理を図るよう
 提言がなされた。

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 今回の改訂では,知・徳・体にわたる「生きる力」を子供たちに育むために「何のために学ぶのか」という各教科等を学ぶ意義を共有しながら,授業の創意工夫や教科書等の教材の改善を引き出していくことができるようにするため,全ての教科等の目標及び内容を「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」の三つの柱で再整理した。

 
 

 子供たちが,学習内容を人生や社会の在り方と結び付けて深く理解し,これからの時代に求められる資質・能力を身に付け,生涯にわたって能動的に学び続けることができるようにするためには,これまでの学校教育の蓄積を生かし,学習の質を一層高める授業改善の取組を活性化していくことが必要であり,我が国の優れた教育実践に見られる普遍的な視点である「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善(アクティブ・ラーニングの視点に立った授業改善)を推進することが求められる。

 今回の改訂では「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を進める際の指導上の配慮事項を総則に記載するとともに,各教科等の「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」において,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通して,その中で育む資質・能力の育成に向けて,「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を進めることを示した。

 その際,以下の6点に留意して取り組むことが重要である。

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ア 児童生徒に求められる資質・能力を育成することを目指した授業改善の取組は,既に小・中学校を中心に多くの実践が積み重ねられており,特に義務教育段階はこれまで地道に取り組まれ蓄積されてきた実践を否定し,全く異なる指導方法を導入しなければならないと捉える必要はないこと。

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イ 授業の方法や技術の改善のみを意図するものではなく,児童生徒に目指す資質・能力を育むために「主体的な学び」,「対話的な学び」,「深い学び」の視点で,授業改善を進めるものであること。

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ウ 各教科等において通常行われている学習活動(言語活動,観察・実験,問題解決的な学習など)の質を向上させることを主眼とするものであること。

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エ 1回1回の授業で
 全ての学びが実現されるものではなく,

 単元や題材など
 内容や時間のまとまりの中で,
 学習を見通し振り返る場面を
 どこに設定するか,

 グループなどで対話する場面を
 どこに設定するか,

 児童生徒が考える場面と
 教師が教える場面を
 どのように組み立てるか

 を考え,
 実現を図っていくものであること。

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オ 深い学びの鍵として「見方・考え方」を働かせることが重要になること。

 各教科等の「見方・考え方」は,「どのような視点で物事を捉え,どのような考え方で思考していくのか」というその教科等ならではの物事を捉える視点や考え方である。

 各教科等を学ぶ本質的な意義の中核をなすものであり,教科等の学習と社会をつなぐものであることから,児童生徒が学習や人生において「見方・考え方」を自在に働かせることができるようにすることにこそ,教師の専門性が発揮されることが求められること。

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カ 基礎的・基本的な知識及び技能の習得に課題がある場合には,その確実な習得を図ることを重視すること。

 
 

 各学校においては,教科等の目標や内容を見通し,特に学習の基盤となる資質・能力(言語能力,情報活用能力(情報モラルを含む。以下同じ。),問題発見・解決能力等)や現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力の育成のためには,教科等横断的な学習を充実することや,「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通して行うことが求められる。

 これらの取組の実現のためには,学校全体として,児童生徒や学校,地域の実態を適切に把握し,教育内容や時間の配分,必要な人的・物的体制の確保,教育課程の実施状況に基づく改善などを通して,教育活動の質を向上させ,学習の効果の最大化を図るカリキュラム・マネジメントに努めることが求められる。

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 このため総則において,

「生徒や学校,地域の実態を
 適切に把握し,
 教育の目的や目標の実現に必要な
 教育の内容等を
 教科等横断的な視点で
 組み立てていくこと,

 教育課程の実施状況を評価して
 その改善を図っていくこと,

 教育課程の実施に必要な
 人的又は物的な体制を
 確保するとともに
 その改善を図っていくこと

 などを通して,
 教育課程に基づき
 組織的かつ計画的に
 各学校の教育活動の質の向上を
 図っていくこと
 (以下
  「カリキュラム・マネジメント」という。)
 に努める」こと

 について新たに示した。

 
 

 このほか,言語能力の確実な育成,理数教育の充実,伝統や文化に関する教育の充実,体験活動の充実,外国語教育の充実などについて総則や各教科等において,その特質に応じて内容やその取扱いの充実を図った。

 
 
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