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 平成28年12月の中央教育審議会答申において,教育課程の改訂の基本的な考え方,今回の改訂で充実すべき重要事項等が示されるとともに,各教科等の主な改善事項が示された。

 中学校理科の改訂は,これらを踏まえて行ったものである。

 
 
 中央教育審議会答申では,主に,以下の@からBが示されている。

@ 平成20年改訂の学習指導要領の成果と課題

 PISA2015では,科学的リテラシーの平均得点は国際的に見ると高く,TIMSS2015では,1995年以降の調査において最も良好な結果になっているといった成果が見られる。

 また,TIMSS2015では,理科を学ぶことに対する関心・意欲や意義・有用性に対する認識について改善が見られる一方で,諸外国と比べると肯定的な回答の割合が低い状況にあることや,「観察・実験の結果などを整理・分析した上で,解釈・考察し,説明すること」などの資質・能力に課題が見られる。

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A 課題を踏まえた理科の目標の在り方

 課題に適切に対応できるよう,小学校,中学校,高等学校それぞれの学校段階において,理科の学習を通じて育成を目指す資質・能力の全体像を明確化するとともに,資質・能力を育むために必要な学びの過程についての考え方を示すこと等を通じて,理科教育の改善・充実を図っていくことが必要である。

 そのため,学校段階ごとの理科の教科目標については,育成を目指す資質・能力の「知識・技能」,「思考力・判断力・表現力等」,「学びに向かう力・人間性等」の三つの柱に沿った整理を踏まえて示すことが求められる。

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B 理科における「見方・考え方」

 今回の改訂では,資質・能力をより具体的なものとして示し,「見方・考え方」は資質・能力を育成する過程で働く,物事を捉える視点や考え方として全教科等を通して整理されたことを踏まえ,中学校の理科における「見方・考え方」を,「自然の事物・現象を,質的・量的な関係や時間的・空間的な関係などの科学的な視点で捉え,比較したり,関係付けたりするなどの科学的に探究する方法を用いて考えること」と示している。

 ここでは,平成20年改訂の学習指導要領の成果と課題を明らかにするとともに,課題に対応できるよう,小学校,中学校,高等学校それぞれの学校段階における理科で育成を目指す資質・能力の全体像と,理科の学習を通じて働かせる「理科の見方・考え方」が示されている。
 
 
 中央教育審議会答申では,主に,以下の@からBが示されている。

@ 教育課程の示し方の改善

@)資質・能力を育成する学びの過程についての考え方

 理科においては,課題の把握(発見),課題の探究(追究),課題の解決という探究の過程を通じた学習活動を行い,それぞれの過程において,資質・能力が育成されるよう指導の改善を図ることが必要である。

 そして,このような探究の過程全体を生徒が主体的に遂行できるようにすることを目指すとともに,生徒が常に知的好奇心を持って身の回りの自然の事物・現象に関わるようになることや,その中で得た気付きから疑問を形成し,課題として設定することができるようになることを重視すべきである。

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 その際,学習過程については,必ずしも一方向の流れではなく,必要に応じて戻ったり,繰り返したりする場合があること,授業においては全ての学習過程を実施するのではなく,その一部を取り扱う場合があること,意見交換や議論など対話的な学びを適宜取り入れていく際,あらかじめ自己の考えを形成した上で行うようにすることが求められる。

 なお,資質・能力を育成する学びの過程の例として,高等学校の例を,図1(9ページ)に示すが,中学校においても,基本的には高等学校の例と同様の流れで学習過程を捉えることが必要である。

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A)指導内容の示し方の改善

 各内容について,どのような学習過程において,どのような「見方・考え方」を働かせることにより,どのような「知識・技能」及び「思考力・判断力・表現力等」を身に付けることを目指すのかを示していくことが必要である。

 その上で,内容の系統性とともに,育成を目指す資質・能力のつながりを意識した構成,配列となるようにする必要がある。

 「学びに向かう力・人間性等」については,内容ごとに大きく異なるものではないことから,各学年や各分野の「目標」において整理されたものを,全ての内容において共通的に扱うこととするのが適当である。

A 教育内容の改善・充実

@)教育内容の見直し

 国際調査において,日本の生徒の,理科が「役に立つ」,「楽しい」との回答が国際平均より低く,理科の好きな子供が少ない状況を改善する必要がある。

 このため,生徒自身が観察,実験を中心とした探究の過程を通じて課題を解決したり,新たな課題を発見したりする経験を可能な限り増加させていくことが重要であり,このことが理科の面白さを感じたり,理科の有用性を認識したりすることにつながっていくと考えられる。

B 学習・指導の改善充実や教育環境の充実等

@)「主体的・対話的で深い学び」の実現

 「主体的な学び」,「対話的な学び」,「深い学び」の三つの視点から学習過程を更に質的に改善していくことが必要である。

 なお,これら三つの視点はそれぞれが独立しているものではなく,相互に関連し合うものであることに留意が必要である。

 その際,自然の事物・現象について,「理科の見方・考え方」を働かせ,探究の過程を通して学ぶことにより,資質・能力を獲得するとともに,「見方・考え方」も豊かで確かなものとなると考えられる。

 さらに,次の学習や日常生活などにおける科学的に探究する場面において,獲得した資質・能力に支えられた「見方・考え方」を働かせることによって「深い学び」につながっていくものと考えられる。

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A)教材や教育環境の充実

 理科において育成を目指す資質・能力の実現を図り,生徒の興味・関心を高めていくためには,指導体制の強化や教員研修,実験器具等の整備の充実,ICT環境の整備などの条件整備が求められる。

 ここでは,資質・能力を育成する学びの過程についての考え方を明らかにして指導内容の示し方の改善を図るとともに,教育内容や学習・指導の改善や充実を図るための「主体的・対話的で深い学び」の実現や教育環境の充実などについて示されている。
 以上が,中央教育審議会答申に述べられている改善の方針の趣旨であり,学習指導要領の理科の目標,内容の決定に当たっては,これらの方針に基づき具体的な作業が進められた。
 
 

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*7 小学校及び中学校においても,基本的には高等学校の例と同様の流れで学習過程を捉えることが必要である。

【 】…… 学習過程例(探求の過程)*1
● …… 理科における資質・能力の例 *3
[ ]…… 対話的な学びの例*4

*1 探究の過程は,必ずしも一方向の流れではない。また,授業では,その過程の一部を扱ってもよい。

*3 全ての学習過程において,今までに身に付けた資質・能力(既習の知識及び技能など)を活用する力が求められる。

*4 意見交換や議論の際には,あらかじめ個人で考えることが重要である。
 また,他者とのかかわりの中で自分の考えをより妥当なものにする力が求められる。

【自然事象に対する気付き】

……[意見交換・議論]

● 主体的に自然事象(*6)と関わり,それらを科学的に探究しようとする態度(以後全ての過程に共通)

*6 自然事象には,日常生活に見られる事象も含まれる。

● 自然事象を観察し,必要な情報を抽出・整理する力

● 抽出・整理した情報について,それらの関係性(共通点や相違点など)や傾向を見いだす力

【課題の設定】

……[意見交換・議論]

● 見いだした関係性や傾向から,課題を設定する力

【仮説の設定】

……[意見交換・議論]

● 見通しを持ち,検証できる仮説を設定する力

★ 見通し*2
  (→【表現・伝達】への見通し)

*2 「見通し」と「振り返り」は,学習過程全体を通してのみならず,必要に応じて,それぞれの学習過程で行うことも重要である。

【検証計画の立案】

……[意見交換・議論]

● 仮説を確かめるための観察・実験の計画を立案する力

● 観察・実験の計画を評価・選択・決定する力

【観察・実験の実施】*5

……[調査]

● 観察・実験を実行する力

*5 単元内容や題材の関係で観察・実験が扱えない場合も,調査して論理的に検討を行うなど,探究の過程を経ることが重要である。

【結果の処理】

……[意見交換・議論]

● 観察・実験の結果を処理する力

【考察・推論】

……[意見交換・議論]

● 観察・実験の結果を分析・解釈する力

● 情報収集して仮説の妥当性を検討したり,考察したりする力

● 全体を振り返って推論したり,改善策を考えたりする力

● 新たな知識やモデル等を創造したり,次の課題を発見したりする力

● 事象や概念等に対する新たな知識を再構築したり,獲得したりする力

● 学んだことを次の課題や,日常生活や社会に活用しようとする態度

★ 振り返り*2
  (→【検証計画の立案】への振り返り)

*2 「見通し」と「振り返り」は,学習過程全体を通してのみならず,必要に応じて,それぞれの学習過程で行うことも重要である。

【表現・伝達】

……[研究発表・相互評価]

● 考察・推論したことや結論を発表したり,レポートにまとめたりする力

 
 
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