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(4) 化学変化と原子・分子

 化学変化についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 化学変化を原子や分子のモデルと関連付けながら,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。

イ 化学変化について,見通しをもって解決する方法を立案して観察,実験などを行い,原子や分子と関連付けてその結果を分析して解釈し,化学変化における物質の変化やその量的な関係を見いだして表現すること。

 小学校では,第6学年で「燃焼の仕組み」について学習している。

 また,中学校では,第1学年で「(2)身の回りの物質」について学習している。

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 ここでは,理科の見方・考え方を働かせ,化学変化についての観察,実験などを行い,化学変化における物質の変化やその量的な関係について,原子や分子のモデルと関連付けて微視的に捉えさせて理解させるとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けさせ,思考力,判断力,表現力等を育成することが主なねらいである。

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 思考力,判断力,表現力等を育成するに当たっては,化学変化について見通しをもって課題を解決する方法を立案して観察,実験などを行い,原子や分子と関連付けてその結果を分析して解釈し,化学変化における物質の変化やその量的な関係を見いだして表現させるようにすることが大切である。

 その際,レポートの作成や発表を適宜行わせ,科学的な根拠に基づいて表現する力などを育成するとともに,化学変化が日常生活に役立っていることに気付かせることも大切である。

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 なお,化学変化の実験の基礎的な操作を習得させるとともに,観察,実験に当たっては,保護眼鏡の着用などによる安全性の確保及び試薬や廃棄物の適切な取扱いに十分留意する。

 
 

(ア) 物質の成り立ち

物質の分解

 物質を分解する実験を行い,分解して生成した物質は元の物質とは異なることを見いだして理解すること。

原子・分子

 物質は原子や分子からできていることを理解するとともに,物質を構成する原子の種類は記号で表されることを知ること。

(内容の取扱い)

ア アの(ア)のの「物質を構成する原子の種類」を元素ということにも触れること。

 また,「記号」については,元素記号で表されることにも触れ,基礎的なものを取り上げること。

 その際,周期表を用いて多くの種類が存在することにも触れること。

 ここでは,物質を分解する実験を行い,得られた結果を分析して解釈し,1種類の物質から2種類以上の元の物質とは異なる物質が生成することを見いださせ,物質は何からできているかについて考えさせるとともに,物質は原子や分子からできていることを理解させることが主なねらいである。

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 なお,「(2)身の回りの物質」で学習した物質の調べ方や物質の性質を活用できるようにすることが大切である。

「(2)身の回りの物質」では,物質を加熱したときの変化には固有の性質と共通の性質があることを学習している。

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 ここでは,熱を加えたり電流を流したりすることによって物質を分解する実験を行い,根拠を基に分析して解釈し,1種類の物質から2種類以上の元の物質とは異なる物質が生成することを見いだして理解させることがねらいである。

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 化合物を分解する実験を通して,分解する前の物質と分解によって生成した物質の性質を比較して,性質が違うことから異なる物質が生成したことを見いだして理解させる。

 例えば,熱によって物質を分解する実験では,変化の様子が明確なものとして酸化銀を扱うことなどが考えられる。

 また,日常生活との関連があるものとして,炭酸水素ナトリウムを扱うことなどが考えられる。

 電流を流すことによって物質を分解する実験では,水を扱うことなどが考えられる。

 「(2)身の回りの物質」では,水溶液や状態変化を粒子のモデルと関連付けて学習している。

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 ここでは,物質を構成している単位として原子や分子があることを理解させ,物質の種類の違いは原子の種類の違いとその組合せによること及び原子や分子は記号で表されることを理解させることがねらいである。

 なお,「原子の種類」は元素,「記号」は元素記号を示している。

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 例えば,原子の初歩的な概念を導入し,原子は質量をもった非常に小さな粒子として取り扱う。

 また,分子については,幾つかの原子が結び付いて一つのまとまりになったものであることを扱う。

 なお,元素については,周期表を用いて金属や非金属など多くの種類が存在することに触れる。

 物質やその変化を記述したり理解したりするために,世界共通の元素記号を用いることが有効であることに気付かせる。

 元素記号としては,基礎的なものとして,H,He,C,N,O,S,Cl,Na,Mg,Al,Si,K,Ca,Fe,Cu,Zn,Ag,Ba,Au など,その後の学習でよく使用するものを取り上げる。

 
 

(イ) 化学変化

化学変化

 2種類の物質を反応させる実験を行い,反応前とは異なる物質が生成することを見いだして理解するとともに,化学変化は原子や分子のモデルで説明できること,化合物の組成は化学式で表されること及び化学変化は化学反応式で表されることを理解すること。

化学変化における酸化と還元

 酸化や還元の実験を行い,酸化や還元は酸素が関係する反応であることを見いだして理解すること。

化学変化と熱

 化学変化によって熱を取り出す実験を行い,化学変化には熱の出入りが伴うことを見いだして理解すること。

(内容の取扱い)

イ アの(イ)のの「化学式」及び「化学反応式」については,簡単なものを扱うこと。

ウ アの(イ)のの「酸化や還元」については,簡単なものを扱うこと。

 ここでは,物質同士が結び付く反応の実験及び酸化や還元の実験を行い,得られた結果を分析して解釈し,2種類以上の物質が結び付いて反応前とは異なる物質が生成する反応があることや,酸化や還元は酸素の関係する反応であること,化学変化では熱の出入りが伴うことを見いだして理解させるとともに,化学変化を原子や分子のモデルと関連付けて理解させることが主なねらいである。

 ここでは,2種類の物質同士が結び付く反応の実験を行い,反応前とは異なる物質が生成することを見いださせ,化学変化は原子や分子のモデルで説明できること及び化合物の組成は化学式で,化学変化は化学反応式で表されることを理解させることがねらいである。

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 例えば,金属が酸素や硫黄と結び付く反応のように,反応前後の物質の色や形状などの違いが明確なものを取り上げる。

 また,物質同士が結び付いて生成した物質の性質を調べる方法を考えさせる際には,「(2)身の回りの物質」で学習したことを活用させるようにする。

 なお,硫黄を用いた実験では有害な気体が発生することもあるので,適切な実験の方法や条件を確認するとともに,理科室内の換気に十分注意する。

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 次に,物質同士が結び付く反応と,「(ア)物質の成り立ち」で学習した分解における化学変化を,原子や分子のモデルを用いて考察させ,微視的に事物・現象を捉えさせるようにする。

 その際,模型を用いるなどして目に見えない原子や分子をイメージしやすいように工夫することが考えられる。

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 また,化合物の組成は化学式で,化学変化は化学反応式で表されること,化学変化の前後では原子の組合せが変わることを理解させる。

 その際,化学式や化学反応式は世界共通であることや,化学変化を化学反応式で表すことは化学変化に関係する原子や分子の種類や数を捉える上で有効であることにも気付かせることが考えられる。

 なお,化学式や化学反応式については,簡単なものとして,観察,実験などで実際に扱う物質や化学変化で構成する原子の数が少ないものを取り扱う。

 小学校では,第6学年で,植物体が燃えるときには,空気中の酸素が使われて二酸化炭素ができることを学習している。

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 ここでは,物質の酸化や還元の実験を行い,酸化や還元は酸素が関係する反応であることを見いだして理解させることがねらいである。

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 例えば,金属を酸化したり金属の酸化物を還元したりして生成する物質を調べる実験を行い,酸化と還元は酸素をやりとりする逆向きの反応であることに気付かせて理解させる。

 その際,酸化や還元の反応を原子や分子のモデルを用いて考察させ,反応の前後では原子の組合せが変わることに気付かせることが大切である。

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 また,日常生活や社会と関連した例として,酸化では金属がさびることなど,還元では鉄鉱石から鉄を取り出して利用していることなどを扱うことが考えられる。

 なお,酸化や還元の反応については,簡単なものとして,構成する原子の数が少ないものを取り扱う。

 ここでは,化学変化によって熱を取り出す実験を行い,化学変化には熱の出入りが伴うことを見いだして理解させることがねらいである。

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 ここで行う実験としては,例えば,アルコールの燃焼やカイロなど,日常生活や社会で利用されているものを取り上げて学習に対する生徒の興味・関心を高め,科学を学ぶ有用性に気付くことのできるように配慮するとともに,鉄粉の酸化を利用したカイロを生徒につくらせるなど,ものづくりを通して化学変化による発熱についての理解を深めるようにすることが考えられる。

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 化学変化による発熱については,例えば,エタノールなどを燃焼させると発熱すること,都市ガスやプロパンガスなどの有機物を燃焼し発生させた熱は調理や暖房などに利用されていることを理解させる。

 また,塩化アンモニウムと水酸化バリウムの反応のように,化学変化により吸熱する場合があることにも触れる。

 
 

(ウ) 化学変化と物質の質量

化学変化と質量の保存

 化学変化の前後における物質の質量を測定する実験を行い,反応物の質量の総和と生成物の質量の総和が等しいことを見いだして理解すること。

質量変化の規則性

 化学変化に関係する物質の質量を測定する実験を行い,反応する物質の質量の間には一定の関係があることを見いだして理解すること。

 ここでは,化学変化の前後における物質の質量や化学変化に関係する物質の質量について,見通しをもって,解決方法を立案して実験を行い,得られた結果を分析して解釈し,化学変化の前後で物質の質量の総和が等しいこと及び反応する物質の質量の間には一定の関係があることの二つの規則性を見いだして理解させることが主なねらいである。

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 なお,量的な関係を見いだして理解させるため,測定値の誤差をできるだけ小さくするように注意深く実験することや,誤差を踏まえた上で実験結果を考察することなど,定量的な実験における方法を習得させるようにする。

 「(2)身の回りの物質」では,状態変化によって物質の質量は変化しないことを学習している。

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 ここでは,化学変化の前後における物質の質量を測定する実験を行い,反応の前と後で物質の質量の総和が等しいことを見いだして理解させることがねらいである。

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 取り上げる実験としては,反応が起きたことが捉えやすく質量を測定しやすいものがよい。

 例えば,沈殿を生じる反応や気体が発生する反応が考えられる。

 気体が発生する反応では,開いた系と閉じた系における物質の質量を測定し,これらの結果の違いから,生じた気体の質量も合わせて測定しないと質量の総和が等しくならないことに気付かせる。

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 なお,気体の発生する実験では,保護眼鏡の着用による安全性を確保するとともに,適切な実験器具と試薬の量によって事故防止に留意する。

 ここでは,化学変化に関係する物質の質量を測定する実験を行い,反応する物質の質量の間には,一定の関係があることを見いだして理解させることがねらいである。

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 ここで見いだして理解させる「一定の関係」とは,一定の質量の物質に反応する他方の物質の質量には限度があり,その限度の質量は一方の質量に比例することである。

 このことから,互いに反応する物質の質量の比が一定であるという量的な関係を見いださせる。

 例えば,一定の質量の銅やマグネシウムなどの金属に反応する酸素の質量には限度があることから,金属の質量と結び付く酸素の質量との関係を調べる実験について,見通しをもって解決する方法を立案して,実験を行い,得られた結果をグラフ化することを通して分析して解釈し規則性を見いだして,表現させるようにする。

 この際,金属の質量と反応する酸素の質量のグラフから金属と酸素が一定の割合で反応することを見いださせるとともに原子や分子のモデルと関連付けて微視的に事物・現象を捉えて表現させるようにする。

 
 
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