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 以下に示す内容は,アとして知識及び技能,イとして思考力,判断力,表現力等を身に付けるよう指導することを示している。

 なお,学びに向かう力,人間性等は第2分野の目標の(3)を適用する。

(1) いろいろな生物とその共通点

 身近な生物についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア いろいろな生物の共通点と相違点に着目しながら,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。

イ 身近な生物についての観察,実験などを通して,いろいろな生物の共通点や相違点を見いだすとともに,生物を分類するための観点や基準を見いだして表現すること。

 小学校では,第3学年で「身の回りの生物」,第4学年で「人の体のつくりと運動」,「季節と生物」,第5学年で「植物の発芽,成長,結実」,第6学年で「人の体のつくりと働き」,「植物の養分と水の通り道」について学習している。

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 ここでは,理科の見方・考え方を働かせ,身近な生物についての観察,実験などを行い,いろいろな生物の特徴を見いだして生物の体の基本的なつくりを理解させるとともに,見いだした特徴に基づいて生物を分類するための技能を身に付けさせ,思考力,判断力,表現力等を育成することが主なねらいである。

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 思考力,判断力,表現力等を育成するに当たっては,いろいろな生物の共通点や相違点を見いだし,それを基にして分類するなどして,問題を見いだし見通しをもって整理する力を養うことが重要である。

 さらに,生物を分類するための観点や基準を見いだして表現させることが大切である。

 その際,話合いや,レポートの作成,発表を適宜行わせることも大切である。

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 また,生物の生活や特徴に関する観察の機会を意識的に設け,興味・関心を高めるようにする。

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 なお,ここでの分類は,主として観察などによって見いだすことができる体のつくりを基準にして行われることに留意する。

 また,体の働きに関する内容については「(3)生物の体のつくりと働き」において,進化に関する内容については「(5)生命の連続性」において扱われることに留意する。

 
 

(ア) 生物の観察と分類の仕方

生物の観察

 校庭や学校周辺の生物の観察を行い,いろいろな生物が様々な場所で生活していることを見いだして理解するとともに,観察器具の操作,観察記録の仕方などの技能を身に付けること。

生物の特徴と分類の仕方

 いろいろな生物を比較して見いだした共通点や相違点を基にして分類できることを理解するとともに,分類の仕方の基礎を身に付けること。

(内容の取扱い)

ア アの(ア)のについては,身近な生物の観察を扱うが,ルーペや双眼実体顕微鏡などを用いて,外見から観察できる体のつくりを中心に扱うこと。

 ここでは,様々な環境の中にそれぞれ特徴のある生物が生活していることを見いださせるとともに,適切な観察器具の扱い方や観察記録の取り方などを身に付けさせる。

 さらに,観察した生物などを比較して見いだした様々な共通点や相違点を基にして,生物が分類できることを理解させるとともに,分類の仕方の基礎的な技能を身に付けさせることが主なねらいである。

 なお,身近な生物を観察することにより,生物に対する興味・関心を高めるようにすることが大切である。

 小学校では,動物では昆虫,植物では種子植物について,また,動物の活動や植物の成長と季節の変化について学習している。

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 ここでは,個々の生物の体のつくりや生活を観察し,生物の特徴を見いだすための観察の方法の基礎を養うとともに,様々な環境の中でそれぞれ特徴のある生物が生活していることを見いだして理解させることがねらいである。

 例えば,大きさ,色,形,生活場所の環境などに注目させて生物の特徴を見いださせることなどが考えられる。

 観察する生物の対象として,食材として扱われている生物や水中の小さな生物などを用いることも考えられる。

 また,観察器具の使い方に加えて,スケッチの仕方や観察記録の取り方を身に付けさせる。

 ここで行った観察記録は「(イ)生物の体の共通点と相違点」の学習で活用することが考えられる。

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 ここでは,生物に関する学習の導入として,身近な生物の観察を行い,生物に対する興味・関心を高める。

 小学校では,生物は色,形,大きさなど,姿に違いがあること,昆虫の成虫の体は頭,胸及び腹からできていること,植物の体は根,茎及び葉からできていること,動物の誕生について学習している。

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 ここでは,いろいろな生物を比較して見いだした共通点や相違点を相互に関係付けて分類できることを理解させることがねらいである。

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 いろいろな生物を分類するためには,見いだした共通点や相違点などを基に,分類するための観点を選び,基準を設定することが必要であることを理解させる。

 また,この観点や基準を変えると,分類の結果が変わることがあることを見いださせ,幾つかの分類の結果を比較することを通して,生物の分類の仕方に関する基礎を身に付けさせる。

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 例えば,親しみのある20種類程度の生物を挙げさせて,これらの生物が生息している場所や,活動的な季節,色,形,大きさなどの姿,殖え方,栄養分のとり方などの特徴に基づいた観点で分類の基準を考えさせる。

 生息している場所を観点とした場合には,水中や陸上などを基準として設定することが考えられる。その後,別の生物を当てはめ,用いた観点や基準で分類できるかどうかを考えさせたり,他の観点や基準を検討させたりすることなどが考えられる。

 その際,分類の結果を分かりやすく表現させるようにする。

 これらの学習活動では,話合いや発表を適宜行わせることにより,思考力,判断力,表現力等を育成することが大切である。

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 なお,ここでの分類は,観察及び資料等から見いだした観点や基準を基にして行わせるものとし,目的に応じて多様な分類の仕方があり,分類することの意味に気付かせるような学習活動を設定することが重要であり,学問としての生物の系統分類を理解させることではないことに留意する。

 
 

(イ) 生物の体の共通点と相違点

植物の体の共通点と相違点

 身近な植物の外部形態の観察を行い,その観察記録などに基づいて,共通点や相違点があることを見いだして,植物の体の基本的なつくりを理解すること。

 また,その共通点や相違点に基づいて植物が分類できることを見いだして理解すること。

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動物の体の共通点と相違点

 身近な動物の外部形態の観察を行い,その観察記録などに基づいて,共通点や相違点があることを見いだして,動物の体の基本的なつくりを理解すること。

 また,その共通点や相違点に基づいて動物が分類できることを見いだして理解すること。

(内容の取扱い)

イ アの(イ)のについては,花のつくりを中心に扱い,種子植物が被子植物と裸子植物に分類できることを扱うこと。

 その際,胚(はい)珠が種子になることにも触れること。

 また,被子植物が単子葉類と双子葉類に分類できることについては,葉のつくりを中心に扱うこと。

 なお,種子をつくらない植物が胞子をつくることにも触れること。

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ウ アの(イ)のについては,脊椎動物と無脊椎動物の違いを中心に扱うこと。

 脊椎動物については,ヒトや魚を例に,体のつくりの共通点としての背骨の存在について扱うこと。

 また,体の表面の様子や呼吸の仕方などの特徴を基準として分類できることを扱うこと。

 無脊椎動物については,節足動物や軟体動物の観察を行い,それらの動物と脊椎動物の体のつくりの特徴を比較し,その共通点と相違点を扱うこと。

 ここでは,身近な植物と動物の外部形態の観察を行い,その観察記録などに基づいて,植物と動物にいろいろな共通点や相違点があることを見いださせ,それぞれの体の基本的なつくりを理解させること,及び共通点や相違点に基づいて植物と動物がそれぞれ分類できることを見いだして理解させることが主なねらいである。

 その際,身近な生物の観察記録に加え,図鑑や情報通信ネットワークを活用して調べさせることなどが考えられる。

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 また,これらの学習を通して,自然界には様々な生物が生存していることに気付かせるとともに,生命を尊重する態度を育てることが大切である。

 小学校では,第3学年で,植物の体は根,茎及び葉からできていること,第5学年で花にはおしべやめしべなどがあり,花粉がめしべの先に付くとめしべのもとが実になり,実の中に種子ができることを学習している。

 また,第6学年で植物の養分と水の通り道について学習している。

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 ここでは,幾つかの植物の外部形態の観察を行い,その観察記録などに基づいて,植物にいろいろな共通点や相違点があることを見いださせ,植物の体の基本的なつくりを理解させるとともに,その共通点や相違点に基づいて植物を分類できることを見いだして理解させることがねらいである。

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 被子植物の花(両性花)を幾つか観察させ,そのつくりの共通点と相違点を見いださせ,花の基本的なつくりについて理解させる。

 花のつくりについては,花の中心から,めしべ,おしべ,花弁,がく(がく片)の順に構成されていることを理解させる。

 また,めしべは柱頭,花柱,子房の3部分から成り立っていること,おしべにはやくがあることを理解させる。

 その際,胚(はい)珠が種子になることに触れる。なお,花粉の発芽や受精については「(5)生命の連続性」で扱う。

 さらに,葉脈の形状,芽生えの様子,根の様子に関する共通点や相違点から,被子植物が単子葉類と双子葉類に分類できることを理解させる。

 さらに,マツなどの裸子植物の花を観察させて被子植物と比較して相違点を見いださせ,種子植物が被子植物と裸子植物に分類できることを理解させる。

 種子をつくらない植物については胞子をつくることに触れる。

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 共通点や相違点に基づいて植物を分類できることを見いだして理解させる際には,例えば,同じ種類の植物であれば生育する場所などによって形や大きさに違いがあっても,花のつくりや葉脈の形状などに共通点があることに気付かせる。

 また,それらの共通点に基づいた分類表や検索表などを作らせ,その表を用いて,未知の植物がどの仲間に分類できるかを考えさせることなどが考えられる。

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 これらの学習を通して,植物に対する興味・関心を高め,植物を観察するときにどのような点に注目すればよいかを考える力を身に付けさせることが大切である。

 小学校では,第3学年で,昆虫の育ち方には一定の順序があること,また,成虫の体は頭,胸及び腹からできていること,第4学年で人の体には骨と筋肉があること,第6学年で人や他の動物について,体のつくりと呼吸,消化,排出及び循環の働きを学習している。

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 ここでは,動物の外部形態の観察を行い,その観察記録などに基づいて,動物にいろいろな共通点や相違点があることを見いださせ,動物の体の基本的なつくりを理解させるとともに,その共通点や相違点に基づいて分類できることを見いだして理解させることがねらいである。

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 様々な動物が,背骨の存在を基準とすると,脊椎動物と無脊椎動物に分類できることを理解させる。

 その際,例えば,魚の干物や煮干し,エビ,貝など入手しやすい食材などを用いて,背骨の有無について観察して比較させることが考えられる。

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 脊椎動物については,体の表面の様子,呼吸の仕方,生活場所,運動の器官,子の生まれ方などの特徴を分類の観点や基準とすると,五つの仲間(魚類,両生類,爬(は)虫類,鳥類,哺乳類)に分類できることを理解させる。

 さらに,哺乳類には肉食性のものや草食性のものなどがあり,体のつくりに相違点が見られることについて,骨格標本などを活用して気付かせることなども考えられる。

 その際,分類の観点や基準について,話合いや発表を適宜行わせることなどが考えられる。

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 無脊椎動物については,体のつくりの特徴に基づいて分類される幾つかの仲間が存在することを,節足動物,軟体動物を中心に理解させる。

 その際,昆虫,エビ,イカなどの外部形態について観察させたり,調べた資料を基に比較させたりすることが考えられる。

 節足動物については,昆虫類や甲殻類などを例に,体が外骨格で覆われていて,節のあるあしをもっているという共通点があることなどを理解させる。

 また,軟体動物については,貝やイカなどを例に,節足動物とは異なってあしには節がないことや,水中生活をしているものが多いことなどを理解させる。

 また,無脊椎動物には,他にもミミズ,ウニやヒトデなど,様々なものが存在することについても触れる。

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 共通点や相違点に基づいて動物を分類できることを見いだして理解させる際には,例えば,幾つかの共通点や相違点を基に分類表や検索表などを作らせ,その表を用いて,未知の動物がどの仲間に分類できるかを考えさせることなどが考えられる。

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 これらの学習を通して,動物に対する興味・関心を高め,動物を観察するときにどのような点に注目すればよいかを考える力を身に付けさせることが大切である。

 
 
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