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(2) 大地の成り立ちと変化

 大地の成り立ちと変化についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 大地の成り立ちと変化を地表に見られる様々な事物・現象と関連付けながら,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。

イ 大地の成り立ちと変化について,問題を見いだし見通しをもって観察,実験などを行い,地層の重なり方や広がり方の規則性,地下のマグマの性質と火山の形との関係性などを見いだして表現すること。

 小学校では,第4学年で「雨水の行方と地面の様子」,第5学年で「流れる水の働きと土地の変化」,第6学年で「土地のつくりと変化」について学習している。

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 ここでは,理科の見方・考え方を働かせ,大地の成り立ちと変化についての観察,実験などを行い,地層や火山,地震について理解させるとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けさせ,思考力,判断力,表現力等を育成することが主なねらいである。

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 思考力,判断力,表現力等を育成するに当たっては,大地の成り立ちと変化について,問題を見いだし見通しをもって観察,実験などを行い,その結果を分析して解釈し,地層の重なり方や広がり方の規則性や,地下のマグマの性質と火山の形との関係性などを見いだして表現させることが大切である。

 その際,レポートの作成や発表を適宜行わせることも大切である。

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 また,大地の成り立ちと変化に関する学習を進める際には,身近な地域の実態に合わせて地形や地層,岩石などの観察の機会を設け,興味・関心を高めるようにする。

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 なお,地層及びその構成物,火山,地震等の現象が互いに関連していることを捉えさせ,大地の成り立ちと変化について,総合的に見ることができるようにすることが重要である。

 
 

(ア) 身近な地形や地層,岩石の観察

身近な地形や地層,岩石の観察

 身近な地形や地層,岩石などの観察を通して,土地の成り立ちや広がり,構成物などについて理解するとともに,観察器具の操作,記録の仕方などの技能を身に付けること。

(内容の取扱い)

ア アの(ア)のの「身近な地形や地層,岩石などの観察」については,学校内外の地形や地層,岩石などを観察する活動とすること。

 ここでは,小学校での既習事項を想起させて,地形や,その地形をつくる地層,岩石などを観察させることを通して問題を見いださせ,身近な土地の成り立ちや広がりを理解させるとともに,その構成物の種類,粒の大きさや形などを調べるための観察器具の操作や記録の仕方などの技能を身に付けさせることが主なねらいである。

 小学校では,第4学年で,水は高い場所から低い場所へと流れて集まること,第5学年で,水の働きによって侵食,運搬,堆積が起こること,第6学年で,土地は礫(れき),砂,泥,火山灰などからできていること,層をつくって広がっているものがあること,流れる水の働きでできた岩石として,礫(れき)岩,砂岩,泥岩を学習している。

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 ここでは,各学校の実態に応じて身近な地形や地層,岩石などを観察する。

 例えば,地域の地形や露頭の観察を行ったり,ボーリングコアや博物館の標本などを活用したりするなどして,地層の構成物の違いなどに気付かせ,地層の広がりなどについての問題を見いだし,学校内外の土地の成り立ちや広がり,構成物などについて理解させる。

 その際,地形や地層,岩石の観察器具の基本的な扱い方や観察方法と,観察記録の仕方を身に付けさせる。

 なお,ここでの観察記録は,「(イ)地層の重なりと過去の様子」や「(ウ)火山と地震」の学習で活用することが考えられる。

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 身近な地形や地層,岩石などの観察に当たっては,事前,事後の指導も含めて年間指導計画の中に位置付け,計画的に実施する。

 また,安全にも十分配慮し,自然環境の保全に寄与する態度を養うという観点から,岩石などの採取は必要最小限にするように指導する。

 
 

(イ) 地層の重なりと過去の様子

地層の重なりと過去の様子

 地層の様子やその構成物などから地層のでき方を考察し,重なり方や広がり方についての規則性を見いだして理解するとともに,地層とその中の化石を手掛かりとして過去の環境と地質年代を推定できることを理解すること。

(内容の取扱い)

イ アの(イ)のについては,地層を形成している代表的な堆積岩も取り上げること。

 「地層」については,断層,褶(しゅう)曲にも触れること。

 「化石」については,示相化石及び示準化石を取り上げること。

 「地質年代」の区分は,古生代,中生代,新生代を取り上げること。

 ここでは,野外の観察記録などを基に,地層のでき方を考察して,地層の重なり方や広がり方についての規則性を見いだして理解させたり,地層を構成する岩石や産出する化石などから,地層が堆積した環境と生成された年代を推定できることを理解させたりすることがねらいである。

 ここでは,地形や地層,岩石などの観察などに基づいて地層の重なり方の規則性を扱い,地層のでき方を時間的な変化と関連付けて理解させるようにする。

 その際,野外の観察記録と地層が形成されるモデル実験の結果とを関連付けて考察させることも考えられる。

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 地層の広がり方の規則性については,例えば,離れた地点の幾つかの地層や剥離標本を比較したり,地域のボーリングコアなどを活用したりして問題を見いだし,火山灰層や砂層などを手掛かりに解決させる活動などが考えられる。

 その際,地層に見られる断層,褶(しゅう)曲について,大地の変動と関連付けて触れる。

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 地層を構成する堆積岩としては,小学校では礫(れき)岩,砂岩,泥岩を学習しているが,これらの岩石のほか,地域の実態に応じて,例えば,石灰岩,チャートなどを扱い,粒の大きさや構成物質の違いなどに気付かせる。

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 地層の堆積環境の推定には,地層の構成物やその粒の大きさ,形,及びそこに含まれる,サンゴ,シジミ,ブナなどの示相化石を用いる。

 その際,現在の堆積環境や生物の生態の観察が有効であることに気付かせる。

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 地層の生成年代としては,古生代,中生代,新生代の地質年代を扱う。

 また,地層の生成年代の推定には示準化石を用いる。

 示準化石の例として,古生代の三葉虫,フズリナ,中生代の恐竜,アンモナイト,新生代のビカリア,ナウマンゾウなど代表的なものを取り上げる。

 
 

(ウ) 火山と地震

火山活動と火成岩

 火山の形,活動の様子及びその噴出物を調べ,それらを地下のマグマの性質と関連付けて理解するとともに,火山岩と深成岩の観察を行い,それらの組織の違いを成因と関連付けて理解すること。

地震の伝わり方と地球内部の働き

 地震の体験や記録を基に,その揺れの大きさや伝わり方の規則性に気付くとともに,地震の原因を地球内部の働きと関連付けて理解し,地震に伴う土地の変化の様子を理解すること。

(内容の取扱い)

ウ アの(ウ)のの「火山」については,粘性と関係付けながら代表的な火山を扱うこと。

 「マグマの性質」については,粘性を扱うこと。

 「火山岩」及び「深成岩」については,代表的な岩石を扱うこと。

 また,代表的な造岩鉱物も扱うこと。

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エ アの(ウ)のについては,地震の現象面を中心に扱い,初期微動継続時間と震源までの距離との定性的な関係にも触れること。

 また,「地球内部の働き」については,日本付近のプレートの動きを中心に扱い,地球規模でのプレートの動きにも触れること。

 その際,津波発生の仕組みについても触れること。

 ここでは,地球内部の働きに起因する最も身近な事物・現象として火山及び地震を取り上げ,地下のマグマの性質と関連付けて火山活動を理解させるとともに,火成岩の組織の違いを成因と関連付けて理解させる。

 また,地震の原因を地球内部の働きと関連付けて理解させるとともに,地震に伴う土地の変化を理解させることが主なねらいである。

 小学校では,第6学年で,土地は火山の噴火によって変化することについて学習している。

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 ここでは,観察記録や資料を活用して,火山の形,活動の様子及びその噴出物を地下のマグマの性質と関連付けて理解させることがねらいである。

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 マグマの性質については,粘性を扱い,粘性の違いにより噴火の様子や火山噴出物の様子も異なることを理解させる。

 例えば,溶岩がドーム状に盛り上がっている火山と,広く平らに広がっている火山とを比較し,岩石や火山灰などの観察をもとに,火山の形の違いをマグマの性質と関連付けて,火山の形が異なる理由が粘性と関係があるという問題を見いださせる。

 その際,火山が形成されるモデル実験を行い,その結果と関連付けて考察させることが考えられる。

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 火山噴出物については,溶岩や軽石,火山灰などの色や形状を比較しながら観察させ,その結果をマグマの性質と関連付けて考察させる。

 その際,異なる火山の火山灰について,例えば,実体顕微鏡を用いてその中に含まれる火山ガラスや鉱物の色,形などを比較しながら調べさせる。

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 火成岩については,火山岩と深成岩があり,観察を通して共通点や相違点があること,それらがそれぞれの成因と深く関わっていることを理解させる。

 ここで取り上げる火成岩は,例えば,火山岩として安山岩や玄武岩など,深成岩として花こう岩や閃(せん)緑岩などが考えられる。

 その際,火山岩には斑状組織,深成岩には等粒状組織という共通点があることや,同じ組織であっても色の違いがあることなどに気付かせる。

 また,火成岩の組織については,結晶を生成させる実験を行うなどしてマグマの冷え方と関連付けて考察させる。

 さらに,造岩鉱物を取り上げ,火成岩の色の違いは,造岩鉱物の種類や含まれている割合の違いであることに気付かせる。

 小学校では,第6学年で,土地は地震によって変化することについて学習している。

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 ここでは,地震についての体験や地震計の記録,過去の地震の資料などを基に,その揺れの大きさや伝わり方の規則性に気付かせるとともに,地震の原因をプレートの動きと関連付けて理解させ,地震に伴う土地の変化の様子を理解させることがねらいである。

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 地震の揺れについては,はじめに小さな揺れがあり,続いて大きな揺れがあることに気付かせる。

 また,同一の地震について,震源から距離の異なる場所に置かれた地震計の記録を基に揺れの伝わる速さを推定させたり,地震の揺れがほぼ同心円状に伝わることを捉えさせたりする。

 一般に震度は,震源からの距離によって異なることなどの規則性に気付かせる。

 なお,このとき初期微動継続時間の長さが震源からの距離に関係していることにも触れる。

 その際,「緊急地震速報」との関連に触れることも考えられる。

 また,地震の規模(マグニチュード)と観測地点の地震の揺れの強さ(震度)について理解させる。

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 地震の原因については,日本列島付近の震源の分布などから,プレートの動きによって説明できることを理解させる。

 その際,地球規模のプレートの動きと地震の分布に触れる。

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 地震による土地の変化については,地震の記録や写真を基に,断層などの急激な土地の変化が生じることや海底の平坦面が隆起する現象を扱う。

 地震によっては,海底の地形に急激な変化が起こり,津波が生じることについて触れる。

 また,水を含んだ砂層では液状化現象が起こることについて触れることも考えられる。

 
 

(エ) 自然の恵みと火山災害・地震災害

自然の恵みと火山災害・地震災害

 自然がもたらす恵み及び火山災害と地震災害について調べ,これらを火山活動や地震発生の仕組みと関連付けて理解すること。

(内容の取扱い)

オ アの(エ)のの「火山災害と地震災害」については,記録や資料などを用いて調べること。

 ここでは,自然がもたらす様々な恵み及び火山災害と地震災害を調べさせ,それらを「(ウ)火山と地震」の学習を踏まえて理解させることがねらいである。

 小学校では,第6学年で,土地は火山の噴火や地震によって変化することについて学習している。

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 ここでは,自然は,美しい景観,住みよい環境などの恩恵をもたらしていることを調べさせ,自然が人々の豊かな生活に寄与していることに気付かせる。

 また,資料などを基に,火山活動や地震による災害について調べさせ,火山活動や地震発生の仕組みと関連付けて理解させる。

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 火山活動による恩恵については,地形や景観,温泉,地熱などに触れることが考えられる。

 火山災害を扱う際は,例えば,ハザードマップなどから,集落や田畑,森林などに予想される被害を読み取る学習が考えられる。

 また,噴火警戒レベルを取り上げ,火山活動の状況から,人命に危険を及ぼす火山現象などを理解させることが考えられる。

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 地震災害を扱う際は,資料を基に地震によって生じた現象と被害の特徴との関係を整理させることが考えられる。

 例えば,津波については,その発生の基になる地震の規模や,震源の位置,沿岸の地形の特徴と被害の関係を整理させることが考えられる。

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 自然の恵み及び火山災害と地震災害を調べる場合は,例えば,大学などの防災研究機関,気象庁や地方の気象台などから情報を入手することが考えられる。

 さらに,図書館,博物館,科学館,ジオパークなどを利用したり,空中写真や衛星画像,情報通信ネットワークを通して得られる多様な情報を活用したりすることが考えられる。

 
 
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