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(7) 自然と人間

 自然環境を調べる観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 日常生活や社会と関連付けながら,次のことを理解するとともに,自然環境を調べる観察,実験などに関する技能を身に付けること。

イ 身近な自然環境や地域の自然災害などを調べる観察,実験などを行い,自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について,科学的に考察して判断すること。

 小学校では,第6学年で「生物と環境」,「土地のつくりと変化」について学習している。

 また,中学校第2分野では,第1学年で「(1)ア(イ)生物の体の共通点と相違点」と「(2)ア(ウ)火山と地震」,第2学年で「(3)生物の体のつくりと働き」と「(4)ア(ウ)日本の気象」について学習している。

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 ここでは,理科の見方・考え方を働かせ,自然環境を調べる観察,実験などを行い,自然界における生物相互の関係や自然界のつり合いについて理解させるとともに,自然と人間との関わり方について認識を深めさせ,思考力,判断力,表現力等を育成することが主なねらいである。

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 思考力,判断力,表現力等を育成するに当たっては,自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について,多面的,総合的に捉え,科学的に考察して判断させるようにすることが大切である。

 その際,話合いや,レポートの作成,発表を適宜行わせるようにする。

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 なお,「(イ)自然環境の保全と科学技術の利用」の学習は,第1分野の「(7)科学技術と人間」と関連付けて総合的に行い,自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考えさせ,持続可能な社会をつくっていくことが重要であることを認識させる。

 
 

(ア) 生物と環境

自然界のつり合い

 微生物の働きを調べ,植物,動物及び微生物を栄養の面から相互に関連付けて理解するとともに,自然界では,これらの生物がつり合いを保って生活していることを見いだして理解すること。

自然環境の調査と環境保全

 身近な自然環境について調べ,様々な要因が自然界のつり合いに影響していることを理解するとともに,自然環境を保全することの重要性を認識すること。

地域の自然災害

 地域の自然災害について,総合的に調べ,自然と人間との関わり方について認識すること。

(内容の取扱い)

ア アの(ア)のについては,生態系における生産者と消費者との関係を扱うこと。

 また,分解者の働きについても扱うこと。

 その際,土壌動物にも触れること。

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イ アの(ア)のについては,生物や大気,水などの自然環境を直接調べたり,記録や資料を基に調べたりするなどの活動を行うこと。

 また,気候変動や外来生物にも触れること。

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ウ アの(ア)のについては,地域の自然災害を調べたり,記録や資料を基に調べたりするなどの活動を行うこと。

 ここでは,生物が非生物的環境とともに自然界を構成しており,その中でつり合いが保たれていることと,人間の活動などが自然界のつり合いに影響を与えていることを理解させ,自然環境を保全することの重要性を認識させる。

 また,地域の自然災害を調べることで大地の変化の特徴を理解させ,自然を多面的,総合的に捉えさせる。

 その上で,自然と人間との関わり方について,科学的に考察して判断する能力や態度を身に付けさせることが主なねらいである。

 小学校では,第6学年で,生物は,水及び空気を通して周囲の環境と関わって生きていることと,生物の間には食う食われるという関係があることを学習している。

 また,「(3)生物の体のつくりと働き」で,光合成や呼吸などについて学習している。

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 ここでは,自然界では生態系の中で様々な生物が相互に関係しながら生活し,つり合いが保たれていることを見いださせることがねらいである。

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 ここまでの学習を踏まえ,植物や光合成をする水中の小さな生物は,生産者として無機物から有機物を合成するが,無機物から有機物を合成する能力のない生物は消費者として,他の生物や生物の遺体や排出物などの有機物を摂取することが必要であることや,食物網を理解させるとともに,自然界で生活している生物の間のつり合いが保たれていることに気付かせる。

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 また,生物の遺体や排出物中の有機物を摂取する生物は,生態系の中で,消費者であると同時に分解者としての役割も担っていることを理解させる。

 その際,菌類や細菌類などの微生物が有機物を最終的に分解して無機物にし,それを生産者が再び利用していることや,炭素が自然界を循環していることに気付かせる。

 菌類や細菌類などの微生物については,これまで学習していないことに留意して指導する。さらに,土壌動物についてもその存在と働きについて触れる。

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 食物網や自然界の炭素循環などの学習を通して,生物の間につり合いが保たれていることについて理解させるとともに,生態系は生物とそれをとりまく環境を一つのまとまりとして捉えたものであることを理解させる。

 ここでは,身近な自然環境を調べる活動を行い,その観察結果や資料を基に,人間の活動などの様々な要因が自然界のつり合いに影響を与えていることについて理解させ,自然環境を保全することの重要性を認識させることがねらいである。

 なお,ねらいを実現するために「(ア) 自然界のつり合い」についての学習を踏まえて行うことが重要である。

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 例えば,学校や地域,生徒の実態などに応じて,野生生物の生息状況,大気汚染,河川や湖沼の水質など,自然と人間との関わり方を考察しやすい自然環境の事例を取り上げることが考えられる。

 その際,土地の利用や開発,資源の利用,環境中への物質の放出といった人間の様々な活動が,自然環境を変化させたり,生物の生息数を変化させたりして,自然界のつり合いに影響を与えていることを見いださせるようにする。

 また,気候変動や外来生物についても触れる。

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 なお,調査は,野外での活動が望ましいが,時期や季節が限られる事例や,直接観察しにくい事例もある。

 そのため,年間指導計画の中に位置付けて,計画的に標本を集めたり写真を撮ったりするなど工夫をすることや,飛行機や人工衛星からのデータ,博物館の資料や標本などを活用することも考えられる。

 さらに,過去の記録から自然環境の時間的な変化を考察させたり,身近な自然環境を他の地域と比較して,より広い地域における自然環境について考察させたりすることも考えられる。

 「(2)大地の成り立ちと変化」で火山や地震,「(4)気象とその変化」で日本の気象について学習している。

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 ここでは,地域の自然災害を調べ,大地の変化の特徴を理解し,自然を多面的,総合的に捉え,自然と人間との関わり方について,科学的に考察して判断する能力や態度を身に付けさせることがねらいである。

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 例えば,活断層の存在,津波の痕跡や資料,火山灰の分布,洪水の痕跡などを基にして,生じた自然現象と被害との関係を認識させ,ハザードマップなどを基にその被害を最小限にくい止める方法を考察させるような学習が考えられる。

 その際,学習の成果を発表したり話し合ったりする機会を設けることも考えられる。

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 地域の自然災害を調べる際には,図書館,博物館,科学館,ジオパークなどを利用したり,空中写真や衛星画像,情報通信ネットワークを通して得られる多様な情報を活用したりして,時間的・空間的な見方から捉えさせ,自然災害と人間との関わり方についての認識を深めさせることが考えられる。

 
 

(イ) 自然環境の保全と科学技術の利用

自然環境の保全と科学技術の利用

 自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察することを通して,持続可能な社会をつくることが重要であることを認識すること。

(内容の取扱い)

エ アの(イ)のについては,これまでの第1分野と第2分野の学習を生かし,第1分野の内容の(7)のアの(イ)の及びイと関連付けて総合的に扱うこと。

 ここでは,第1分野と第2分野の学習を生かし,科学技術の発展と人間生活との関わり方,自然と人間の関わり方について多面的,総合的に捉えさせ,自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察させ,持続可能な社会をつくっていくことが重要であることを認識させることがねらいである。

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 このねらいを達成するため,中学校最後の学習として,第1分野(7)のア(イ)と併せて扱い,科学的な根拠に基づいて意思決定させる場面を設けることが大切である。

 内容の取扱いで,第1分野と第2分野の学習を生かし,第1分野(7)のア(イ)と関連付けて総合的に扱うこととしており,本解説第2章第2節[第1分野]2(7)のア(イ)に掲載している。(67ページ)

 
 

(内容の取扱い)

 内容の(1)から(7)までについては,それぞれのアに示す知識及び技能とイに示す思考力,判断力,表現力等とを相互に関連させながら,3年間を通じて科学的に探究するために必要な資質・能力の育成を目指すものとする。

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 内容の(1)から(7)までのうち,(1)及び(2)は第1学年,(3)及び(4)は第2学年,(5)から(7)までは第3学年で取り扱うものとする。

 それぞれの内容については,アに示す知識及び技能とイに示す思考力,判断力,表現力等とを相互に関連させながら,身に付けるよう指導することを示している。

 なお,学びに向かう力,人間性等は第2分野の目標の(3)に沿って育成するものとする。

 ここでは,3年間を通じて科学的に探究するために必要な資質・能力の育成を目指すことを示している。

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 また,学習の内容の順序に関する規定については,従前と同様,学年ごとに標準的な内容を示すこととした。

 これは,地域の特性などを生かした学習ができるようにするためであり,中学校理科の第1分野と第2分野の内容の系統性に配慮し学習の全体を見通して指導計画を作成し指導を行うことが重要である。

 
 
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