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 指導計画の作成に当たっては,第2章第4節理科「第1 目標」及び「第2 各分野の目標及び内容」に照らして,各分野の目標や内容のねらいが十分達成できるように次の事項に配慮する。

(1) 単元など内容や時間のまとまりを見通して,その中で育む資質・能力の育成に向けて,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。

 その際,理科の学習過程の特質を踏まえ,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどの科学的に探究する学習活動の充実を図ること。

 この事項は,理科の指導計画の作成に当たり,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現を目指した授業改善を進めることとし,理科の特質に応じて,効果的な学習が展開できるように配慮すべき内容を示したものである。

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 理科の指導に当たっては,(1)「知識及び技能」が習得されること,(2)「思考力,判断力,表現力等」を育成すること,(3)「学びに向かう力,人間性等」を涵(かん)養することが偏りなく実現されるよう,単元など内容や時間のまとまりを見通しながら,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を行うことが重要である。

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 生徒に理科の指導を通して「知識及び技能」や「思考力,判断力,表現力等」の育成を目指す授業改善を行うことはこれまでも多くの実践が重ねられてきている。

 そのような着実に取り組まれてきた実践を否定し,全く異なる指導方法を導入しなければならないと捉えるのではなく,生徒や学校の実態,指導の内容に応じ,「主体的な学び」,「対話的な学び」,「深い学び」の視点から授業改善を図ることが重要である。

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 主体的・対話的で深い学びは,
 必ずしも1単位時間の授業の中で
 全てが実現されるものではない。

 

 単元など
 内容や時間のまとまりの中で,
 例えば,

 主体的に学習に取り組めるよう
 学習の見通しを立てたり
 学習したことを振り返ったりして
 自身の学びや変容を自覚できる場面を
 どこに設定するか,

 対話によって
 自分の考えなどを
 広げたり深めたりする場面を
 どこに設定するか,

 学びの深まりをつくりだすために,
 生徒が考える場面と
 教師が教える場面を
 どのように組み立てるか,

 といった視点で
 授業改善を進めることが求められる。

 

 また,生徒や学校の実態に応じ,多様な学習活動を組み合わせて授業を組み立てていくことが重要であり,単元のまとまりを見通した学習を行うに当たり基礎となる知識及び技能の習得に課題が見られる場合には,それを身に付けるために,生徒の主体性を引き出すなどの工夫を重ね,確実な習得を図ることが必要である。

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 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を進めるに当たり,特に「深い学び」の視点に関して,各教科等の学びの深まりの鍵となるのが「見方・考え方」である。

 各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方である「見方・考え方」を,習得・活用・探究という学びの過程の中で働かせることを通じて,より質の高い深い学びにつなげることが重要である。

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 理科においては,「理科の見方・考え方」を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどの科学的に探究する学習活動を通して,「主体的・対話的で深い学び」の実現を図るようにすることが重要である。

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 「主体的な学び」については,
 例えば,

 自然の事物・現象から問題を見いだし,
 見通しをもって
 課題や仮説の設定をしたり,
 観察,実験の計画を立案したりする
 学習となっているか,

 観察,実験の結果を分析し解釈して
 仮説の妥当性を検討したり,
 全体を振り返って
 改善策を考えたりしているか,

 得られた知識及び技能を基に,
 次の課題を発見したり,
 新たな視点で
 自然の事物・現象を
 把握したりしているか

 などの視点から,
 授業改善を図ることが考えられる。

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 「対話的な学び」については,例えば,課題の設定や検証計画の立案,観察,実験の結果の処理,考察などの場面では,あらかじめ個人で考え,その後,意見交換したり,科学的な根拠に基づいて議論したりして,自分の考えをより妥当なものにする学習となっているかなどの視点から,授業改善を図ることが考えられる。

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 「深い学び」については,
 例えば,

 「理科の見方・考え方」を働かせながら
 探究の過程を通して学ぶことにより,
 理科で育成を目指す資質・能力を
 獲得するようになっているか,

 様々な知識がつながって,
 より科学的な概念を形成することに
 向かっているか,

 さらに,
 新たに獲得した資質・能力に基づいた
 「理科の見方・考え方」を,
 次の学習や
 日常生活などにおける
 課題の発見や解決の場面で
 働かせているか

 などの視点から,
 授業改善を図ることが考えられる。

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 以上のような授業改善の視点を踏まえ,理科で育成を目指す資質・能力及びその評価の観点との関係も十分に考慮し,指導計画等を作成することが必要である。

 
 

(2) 各学年においては,年間を通じて,各分野におよそ同程度の授業時数を配当すること。

 その際,各分野間及び各項目間の関連を十分考慮して,各分野の特徴的な見方・考え方を総合的に働かせ,自然の事物・現象を科学的に探究するために必要な資質・能力を養うことができるようにすること。

 理科の学習指導が望ましい成果を上げて,理科の目標が滞りなく達成されるためには,学校や生徒の実態に即し教育的な考慮が行き届いた綿密な指導計画を作成することが必要である。

 そのためには,本解説第2章第1節「教科の目標」に照らしながら各分野の目標や内容を具体的に検討し,理科の見方・考え方を総合的に働かせ,自然の事物・現象を科学的に探究する活動を通して,育成を目指す資質・能力を育むことが大切である。

 また,その際,各分野間及び各項目間の関連を図るとともに,小学校や高等学校の学習指導要領との関連にも留意し,内容の理解や科学的な概念の形成及び自然の事物・現象を科学的に探究する力や態度が育成されるようにする。

 自然や生命に対する畏敬の念,自然環境の保全に寄与する態度についても各分野や各項目間の関連を十分考慮する必要がある。

 指導計画には,3年間を見通した計画,年間計画,大項目・中項目などの計画及び1単位時間の計画など様々なレベルのものが考えられるが,いずれの計画においても生徒の主体的な学習となるような配慮及び生徒の個人差に対応できるような配慮が重要である。

 授業時数については,学校教育法施行規則の別表第2(第73条)で定められており,第1学年で105,第2学年及び第3学年でそれぞれ140 が標準とされている。

 中学校理科は第1分野及び第2分野で構成され,各学年で学習する標準的な内容を示しており,年間を通じて各分野におよそ同程度の授業時数を配当するものとされている。

 また,実際の授業の1単位時間は各学校が適切に定めることができることや,学習活動の特質に応じ効果的な場合には授業を特定の期間に行うことが可能であることを考慮して,各学校の実態に応じて年間指導計画を立てる必要がある。

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 授業を実施する場合の指導内容及び留意事項については,第2章第4節理科「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」に述べられているが,内容が過度に高度で抽象的なものにならないよう留意する必要がある。

 また,指導計画の作成に当たっては各学年で扱う内容に関して十分な検討を行い,3年間を見通した綿密な指導計画を作成するようにすることが大切である。

 なお,第1分野(7)のア(イ)と第2分野(7)のア(イ)については,それまでの第1分野,第2分野の学習の成果を生かして総合的に扱うため,第1分野と第2分野を区別することなく一括して実施する。

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 以上のことを踏まえ,各学校の実態に応じて創意工夫を生かした効果的な指導計画の作成がなされることが必要である。

 
 

(3) 学校や生徒の実態に応じ,十分な観察や実験の時間,課題解決のために探究する時間などを設けるようにすること。

 その際,問題を見いだし観察,実験を計画する学習活動,観察,実験の結果を分析し解釈する学習活動,科学的な概念を使用して考えたり説明したりする学習活動などが充実するようにすること。

 理科の見方・考え方を働かせ,科学的に探究する学習活動を行い,目標となる資質・能力を育成するためには,年間の指導計画を見通して,観察,実験の時間,生徒自らが課題を解決するために探究する時間などを十分確保することが必要である。

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 観察,実験においては,その実施時期などを考慮したり,継続的に野外観察をしたり,十分な結果が得られなかった観察,実験をやり直したりすることも大切である。

 観察,実験の結果を整理したり,探究的に学習活動をしたりする時間などを充実させるには,2単位時間を連続して確保するなどの方法も考えられる。

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 課題を解決するために探究する学習活動には,問題を見いだし観察,実験を計画する学習活動,観察,実験の結果を分析し解釈する学習活動,科学的な概念を使用して考えたり説明したりする学習活動などが考えられる。

 その際,問題を見いだし観察,実験を計画する学習活動の充実を図ることは,生徒が自然の事物・現象に進んで関わるためにも大切である。

 そのためには,観察,実験を計画する場面で,考えを発表する機会を与えたり,検証方法を討論したりしながら考えを深め合うなどの学習活動が考えられる。

 また,観察,実験の結果を分析し解釈する学習活動の充実を図ることは,思考力,判断力,表現力等を育成するためにも重要である。

 そのためには,データを図,表,グラフなどの多様な形式で表したり,結果について考察したりする時間を十分に確保することが大切である。

 さらに,科学的な概念を使用して考えたり説明したりする学習活動の充実を図ることも,思考力,判断力,表現力等の育成を図る観点から大切である。

 そのためには,例えば,レポートの作成,発表,討論など知識及び技能を活用する学習活動を工夫し充実を図る必要がある。

 
 

(4) 日常生活や他教科等との関連を図ること。

 理科の内容の中には,日常生活や社会に密接な関わりをもっているものが多い。

 理科で学習する規則性や原理などが日常生活や社会で活用されていることにも触れ,私たちの生活において極めて重要な役割を果たしていることに気付かせるようにすることが大切である。

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 また,数学や保健体育,技術・家庭をはじめ他の教科の内容と関連するところがある。

 各教科と関連する内容や学習時期を把握し,教科等の「見方・考え方」や育成を目指す資質・能力などについて,教職員間で相互に連携しながら,学習の内容や系統性に留意し,学習活動を進めることが大切である。

 このことにより,学習の定着を図り,内容の理解を深めることが大切である。

 
 

(5) 障害のある生徒などについては,学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的,組織的に行うこと。

 障害者の権利に関する条約に掲げられたインクルーシブ教育システムの構築を目指し,生徒の自立と社会参加を一層推進していくためには,通常の学級,通級による指導,特別支援学級,特別支援学校において,生徒の十分な学びを確保し,一人一人の生徒の障害の状態や発達の段階に応じた指導や支援を一層充実させていく必要がある。

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 通常の学級においても,
 発達障害を含む障害のある生徒が
 在籍している可能性があること
 を前提に,

 全ての教科等において,
 一人一人の教育的ニーズに応じた
 きめ細かな指導や支援ができるよう,
 障害種別の指導の工夫のみならず,

 各教科等の学びの過程において
 考えられる困難さ
 に対する
 指導の工夫の意図,手立てを
 明確にすることが重要である。

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 これを踏まえ,
 今回の改訂では,
 障害のある生徒などの指導
 に当たっては,

 個々の生徒によって,

 見えにくさ,
 聞こえにくさ,
 道具の操作の困難さ,
 移動上の制約,
 健康面や安全面での制約,
 発音のしにくさ,
 心理的な不安定,
 人間関係形成の困難さ,
 読み書きや計算等の困難さ,
 注意の集中を持続することが
 苦手であることなど,

 学習活動を行う場合に生じる困難さが
 異なることに
 留意し,

 個々の生徒の困難さに応じた
 指導内容や指導方法を
 工夫することを,
 各教科等において示している。

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 その際,理科の目標や内容の趣旨,学習活動のねらいを踏まえ,学習内容の変更や学習活動の代替を安易に行うことがないよう留意するとともに,生徒の学習負担や心理面にも配慮する必要がある。

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 例えば,理科における配慮として,次のようなものが考えられる。実験を行う活動において,実験の手順や方法を理解することが困難である場合は,見通しがもてるよう実験の操作手順を具体的に明示したり,扱いやすい実験器具を用いたりするなどの配慮をする。

 また,燃焼実験のように危険を伴う学習活動においては,教師が確実に様子を把握できる場所で活動させるなどの配慮をする。

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 なお,学校においては,こうした点を踏まえ,個別の指導計画を作成し,必要な配慮を記載し,他教科等の担任と共有したり,翌年度の担任等に引き継いだりすることが必要である。

 
 

(6) 第1章総則の第1の2の(2)に示す道徳教育の目標に基づき,道徳科などとの関連を考慮しながら,第3章特別の教科道徳の第2に示す内容について,理科の特質に応じて適切な指導をすること。

 理科の指導においては,その特質に応じて,道徳について適切に指導する必要があることを示すものである。

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 第1章総則第1の2(2)においては,「学校における道徳教育は,特別の教科である道徳(以下「道徳科」という。)を要として学校の教育活動全体を通じて行うものであり,道徳科はもとより,各教科,総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの特質に応じて,生徒の発達の段階を考慮して,適切な指導を行うこと」と規定されている。

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 理科における道徳教育の指導においては,学習活動や学習態度への配慮,教師の態度や行動による感化とともに,以下に示すような理科と道徳教育との関連を明確に意識しながら,適切な指導を行う必要がある。

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 理科においては,
 目標を

 「自然の事物・現象に関わり,
  理科の見方・考え方を働かせ,
  見通しをもって
  観察,実験を行うこと
  などを通して,

  自然の事物・現象を
  科学的に探究するために
  必要な資質・能力を
  次のとおり育成することを目指す。」

 としており,

 このうち,
 「学びに向かう力,人間性等」
 についての目標は
 「自然の事物・現象に進んで関わり,
  科学的に探究しようとする態度
  を養う。」
 と示している。

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 自然の事物・現象を調べる活動を通して,生物相互の関係や自然界のつり合いについて考えさせ,自然と人間との関わりを認識させることは,生命を尊重し,自然環境の保全に寄与する態度の育成につながるものである。

 また,見通しをもって観察,実験を行うことや,科学的に探究する力を育て,科学的に探究しようとする態度を養うことは,道徳的判断力や真理を大切にしようとする態度の育成にも資するものである。

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 次に,道徳教育の要としての特別の教科である道徳科の指導との関連を考慮する必要がある。

 理科で扱った内容や教材の中で適切なものを,道徳科に活用することが効果的な場合もある。

 また,道徳科で取り上げたことに関係のある内容や教材を理科で扱う場合には,道徳科における指導の成果を生かすように工夫することも考えられる。

 そのためにも,理科の年間指導計画の作成などに際して,道徳教育の全体計画との関連,指導の内容及び時期等に配慮し,両者が相互に効果を高め合うようにすることが大切である。

 
 
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