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(2) 2の内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする。

ア 英語でのコミュニケーションを体験させる際は,児童の発達の段階を考慮した表現を用い,児童にとって身近なコミュニケーションの場面を設定すること。

 この配慮事項は,英語でのコミュニケーションを体験させる際には,児童の発達の段階を考慮して表現を選定するとともに,児童にとって身近なコミュニケーションの場面を設定し,児童が積極的にコミュニケーションを図ることができるように指導することの必要性を述べている。

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 英語に初めて触れる段階であることを踏まえると,外来語など児童が聞いたことのある表現や身近な内容を活用し,中学年の児童の発達の段階や興味・関心に合った身近なコミュニケーションの場面で,英語でのコミュニケーションを体験させることが大切である。

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 その際には,児童の発達の段階を考慮せず,過度に複雑なコミュニケーションを目指そうとするあまり,児童に対して過度の負担を強いることのないように配慮したい。

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 また,例えば,自分が気に入っている校内の場所を紹介する活動を取り扱った場合に,指導前に児童は校内のどのような場所を好んでいるのかを調べるなど,児童の主体的な自己表現を促すよう配慮する必要がある。

 
 

イ 文字については,児童の学習負担に配慮しつつ,音声によるコミュニケーションを補助するものとして取り扱うこと。

 この配慮事項は,外国語活動の指導においては,音声によるコミュニケーションを重視し,「聞くこと」,「話すこと[やり取り]」,「話すこと[発表]」を中心とする豊かなコミュニケーションを体験させることが大切であるということを示している。

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 音声面の指導については,様々な工夫をしながら聞くことの時間を確保し,日本語とは違った英語の音声やリズムなどに十分慣れさせるとともに,自分のことや身の回りの物について,実物を見せるなどしながら,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すなど,児童にとって過度の負担にならないように指導することが大切である。

 また,コミュニケーションを図ることの楽しさや大切さを知るためにも,単に繰り返し活動を行うのではなく,コミュニケーションの目的や場面,状況等を意識した活動を通して,児童に気付かせたり考えさせたりする必要がある。

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 文字の指導については,文字の名称の読み方が発音されるのを聞いて,活字体で書かれた大文字・小文字と結び付けるなどの活動を通して,児童が文字に対して興味・関心を高めるように,まず,身の回りに英語の文字がたくさんあることに気付かせたりするなど,楽しみながら文字に慣れ親しんでいくように,文字を扱うことが重要である。

 中学年の外国語活動では,文字の名称の読み方を扱い,文字に慣れ親しませ,高学年の外国語科における文字の指導と連携させるとともに,文字の名称レベルに指導を留めることに留意する必要がある。

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 ただし,中学年の外国語活動で活字体の大文字・小文字に出会い,文字を使ってコミュニケーションを図った経験が,高学年の外国語科における「読むこと」,「書くこと」に円滑につながるようにする必要がある。

 そのためには,児童が文字を題材にコミュニケーションを図る活動を通して,文字への興味・関心を高めることが大切である。

 例えば,カードの下にその単語の綴りを添えたり,既出の“How many 〜?”などの表現と結び付け,単語の文字数を尋ねたりする活動を設定するなどが考えられる。

 なお,その際,児童の発達の段階を踏まえると,英語の発音と綴りの法則を教え込むような指導は,児童に対して過度の負担を強いることになると考えられるため,不適切である。

 さらに,児童が文字を読んだり書いたりできない段階であることを踏まえ,英文だけを板書して指示するような,文字を使って行う指導とならないよう注意する必要がある。

 
 

ウ 言葉によらないコミュニケーションの手段もコミュニケーションを支えるものであることを踏まえ,ジェスチャーなどを取り上げ,その役割を理解させるようにすること。

 この配慮事項は,英語でのコミュニケーションを体験させる際に,音声によるコミュニケーションだけでなく,ジェスチャーや表情などを手掛かりとすることで,相手の意図をより正確に理解したり,ジェスチャーや表情などを加えて話したり,自分の思いをより正確に伝え合ったりすることができることなど,言葉によらないコミュニケ―ションの役割を理解するように指導することの必要性を述べている。

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 特に,英語に初めて触れる段階における指導においては,児童が自ら理解したり運用したりできる表現が限られているため,ジェスチャーなどを活用して表現させるなど,コミュニケーションを図る楽しさを体験させるようにする。

 例えば,気分を尋ねたり,答えたりする単元においては,fine,happy,sad などの感情や状態を表す語や表現を発話するだけでなく,表情やジェスチャーを付けたり,感情や状態を表すイラストや実物,写真などを見せたりして,自分の気持ちが相手に伝わるように工夫しながらコミュニケーションを図らせるように配慮する必要がある。

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 また,ジェスチャーには,同じ意味を表すものでも,その方法が地域によって違うものがあったり,逆に表情については,地域が違っていてもよく似た意味であったりするなど,ジェスチャーや表情を比較する中で,日本と外国との違いを知り,多様な考え方があることに気付かせるように配慮する必要がある。

 
 

エ 身近で簡単な事柄について,友達に質問をしたり質問に答えたりする力を育成するため,ペア・ワーク,グループ・ワークなどの学習形態について適宜工夫すること。

 その際,相手とコミュニケーションを行うことに課題がある児童については,個々の児童の特性に応じて指導内容や指導方法を工夫すること。

 指導に当たり,言語活動を行う際は,単に繰り返し活動を行うのではなく,児童が言語活動の目的や,使用場面を意識して行うことができるよう,具体的な課題等を設定し,その目的を達成するために,必要な語句や文などを取捨選択して活用できるようにすることが必要である。

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 特に英語に初めて触れる段階である中学年においては,外国語を用いてコミュニケーションを図る楽しさを体験させることが大切である。

 そのためには,例えば自分の好きな物を友達と伝え合ったり,身の回りの物に関する簡単なクイズを出し合ったりするなど,やり取りを楽しむことができるような内容や活動を設定する必要がある。

 言語活動は相手意識と中身のある活動が基本であり,そのためには,ペア・ワークやグループ・ワークなどの学習形態を工夫し,児童が本当に伝えたい内容を話したり,友達の話す内容を聞いたりすることができる場面を設定することが大切である。

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 その際,相手とのコミュニケーションを行うことに課題がある児童については,その児童が日頃から関わることのできる児童をペアの相手やグループのメンバーに意図的に配置したり,教師やALT等とペアを組んだりするなど,個々の児童の特性に応じて指導方法を工夫する必要がある。

 
 

オ 児童が身に付けるべき資質・能力や児童の実態,教材の内容などに応じて,視聴覚教材やコンピュータ,情報通信ネットワーク,教育機器などを有効活用し,児童の興味・関心をより高め,指導の効率化や言語活動の更なる充実を図るようにすること。

 指導に当たり,児童の関心を高め,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善につながるよう,活動に応じたデジタル教材等の活用が考えられる。

 例えば,児童がコミュニケーションの目的や場面,状況等を意識した活動を行うことが重要であるが,その際,視聴覚教材などを用いて,実際にコミュニケーションが行われている様子を示すことは,活動を行う際の生きたモデルとなることに加え,コミュニケーションの働きも意識できるため,児童の興味・関心を高める上でも極めて有効である。

 また,音声中心である外国語活動において,ネイティブ・スピーカーや英語が堪能な人の協力が得にくい学校や地域もありうることや,ジェスチャーや表情などの非言語的視覚情報もコミュニケーションを図る際には大切な要素となってくることを踏まえると,CDやDVDなどの視聴覚教材の積極的な活用も有効である。

 その際,様々な機器や教材が手に入ることを考えると,それらを使う目的を明確にし,児童や学校及び地域の実態に応じたものを選択することが大切である。

 例えば,外国語の背景にある文化に対する理解を深めるためには,様々な国や地域の行事等を紹介した教材を活用することも考えられる。

 また,学校間で集合学習や交流学習を行う際には,情報通信ネットワークを用いることで,実際の学習はもとより,事前に打合せや顔合わせをしておくことも可能である。

 さらに,英語の文字に慣れ親しむ際にも,活字体で書かれた文字とその読み方を結び付ける活動を,教室用デジタル教材などを活用して行うことも考えられる。

 
 

カ 各単元や各時間の指導に当たっては,コミュニケーションを行う目的,場面,状況などを明確に設定し,言語活動を通して育成すべき資質・能力を明確に示すことにより,児童が学習の見通しを立てたり,振り返ったりすることができるようにすること。

 この配慮事項は,
 外国語教育における学習過程としては,

@児童が設定されたコミュニケーションの目的や場面,状況等を理解する,

A目的に応じて情報や意見などを発信するまでの方向性を決定し,コミュニケーションの見通しを立てる,

B目的達成のため,具体的なコミュニケーションを行う,

C言語面・内容面で自ら学習のまとめと振り返りを行う,

といった流れの中で,
学んだことの意味付けを行ったり,
既得の知識や経験と,
新たに得られた知識を
言語活動で活用したりすることで,
「思考力,判断力,表現力等」を
高めていくことが大切である
ことを示している。

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 例えば,身の回りの物に関するクイズを出し合う単元では,

 @として,単元の始めの時間に,教師やALT等による単元終末のコミュニケーション活動をデモンストレーションで提示することで,児童がそのやり取りの目的や場面,状況等を理解し,「自分たちもやってみたい」という意欲をもたせるようにする。

 次にAとして,クイズを出し合うために必要と思われる簡単な語句や基本的な表現を様々な活動を用いて学習し,尋ねたり答えたりすることができるように,細かな段階を踏んで習得していくようにする。

 Bについては,単元の終末の活動として,児童それぞれが,ペアやグループなどで,身の回りのものを当てるクイズを出し合う活動を行う。

 この時,児童一人一人がクイズにして当ててもらいたい身の回りの物を決定し,活動できるように配慮することで,相手意識と中身のある活動が実現し,児童がコミュニケーションを図ることを十分に楽しむことができる。

 Cについては,単元最後の自己評価による振り返りを行い,英語と日本語の言い方の相違点や類似点に気付いたり,友達とのやり取りを通して自分や友達のクイズの面白さや工夫などについて感じたりしたことを記録したり,発表し合ったりしていく。

 その過程において,自ら学習のまとめを行ったり,振り返りを行ったりすることで,身に付いた「思考力,判断力,表現力等」を次の学習へ生かすことができる。

 
 
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