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中学校 学習指導要領 【解説】 |
総則編 |
第1章 総説 |
3 道徳の特別の教科化に係る一部改正 |
(1) 一部改正の経緯 |
我が国の教育は,教育基本法第1条に示されているとおり「人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われ」るものである。
人格の完成及び国民の育成の基盤となるのが道徳性であり,その道徳性を養うことが道徳教育の使命である。 しかし,道徳教育を巡っては,歴史的経緯に影響され,いまだに道徳教育そのものを忌避しがちな風潮があること,他教科等に比べて軽んじられていること,読み物の登場人物の心情理解のみに偏った形式的な指導が行われる例があることなど,これまで多くの課題が指摘されてきた。 また,いじめの問題に起因して,子供の心身の発達に重大な支障が生じる事案や,尊い命が絶たれるといった痛ましい事案まで生じており,いじめを早い段階で発見し,その芽を摘み取り,全ての子供を救うことが喫緊の課題となっている。 このような現状の下,内閣に設置された教育再生実行会議は,平成25年2月の第一次提言において,いじめの問題等への対応をまとめた。 その中では,いじめの問題が深刻な状況にある今こそ,制度の改革だけでなく,本質的な問題解決に向かって歩み出すことが必要であり,心と体の調和の取れた人間の育成の観点から,道徳教育の重要性を改めて認識し,その抜本的な充実を図るとともに,新たな枠組みによって教科化することが提言された。 本提言等を踏まえ,文部科学省においては「道徳教育の充実に関する懇談会」を設置し,道徳教育の充実方策について専門的に検討を行った。 本懇談会では,道徳教育は,国や民族,時代を越えて,人が生きる上で必要なルールやマナー,社会規範などを身に付け,人としてよりよく生きることを根本で支えるとともに,国家・社会の安定的で持続可能な発展の基盤となるものであり,道徳教育の充実は,我が国の道徳教育の現状,家庭や社会の状況等を踏まえれば,いじめの問題の解決だけでなく,我が国の教育全体にとっての重要な課題であるとの認識の下,これまでの成果や課題を検証しつつ,道徳の特質を踏まえた新たな枠組みによる教科化の具体的な在り方などについて,幅広く検討を行い,平成25年12月「今後の道徳教育の改善・充実方策について(報告)?新しい時代を,人としてより良く生きる力を育てるために?」を取りまとめた。 また,平成26年2月,中央教育審議会に「道徳に係る教育課程の改善等について」が諮問され,道徳教育専門部会において道徳の時間の新たな枠組みによる教科化の在り方等について検討が行われた。 平成26年10月21日の答申では,道徳教育の要である道徳の時間については,「特別の教科 道徳(仮称)」として制度上位置付け,充実を図ること,また,道徳教育の抜本的な改善に向け,学習指導要領に定める道徳教育の目標,内容の明確化及び体系化を図ることや,指導方法の工夫,生徒の成長の様子を把握する評価の在り方,検定教科書の導入,教師の指導力向上方策,学校と家庭や地域との連携強化の在り方など道徳教育の改善・充実に向けて必要な事項が示された。 この答申を踏まえ,平成27年3月27日に学校教育法施行規則を改正するとともに,小学校学習指導要領,中学校学習指導要領及び特別支援学校小学部・中学部学習指導要領の一部改正の告示を公示した。 今回の改正は,いじめの問題への対応の充実や発達の段階をより一層踏まえた体系的なものとする観点からの内容の改善,問題解決的な学習を取り入れるなどの指導方法の工夫を図ることなどを示したものである。 このことにより, 「特定の価値観を押し付けたり,主体性をもたず言われるままに行動するよう指導したりすることは,道徳教育が目指す方向の対極にあるものと言わなければならない」, 「多様な価値観の,時に対立がある場合を含めて,誠実にそれらの価値に向き合い,道徳としての問題を考え続ける姿勢こそ道徳教育で養うべき基本的資質である」 との中央教育審議会の答申を踏まえ, 改正中学校学習指導要領は,平成27年4月1日から移行措置として,その一部又は全部を実施することが可能となっており,平成31年4月1日から全面実施することとしている。 |
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