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(3)学校における体育・健康に関する指導を,生徒の発達の段階を考慮して,学校の教育活動全体を通じて適切に行うことにより,健康で安全な生活と豊かなスポーツライフの実現を目指した教育の充実に努めること。

 特に,学校における食育の推進並びに体力の向上に関する指導,安全に関する指導及び心身の健康の保持増進に関する指導については,保健体育科,技術・家庭科及び特別活動の時間はもとより,各教科,道徳科及び総合的な学習の時間などにおいてもそれぞれの特質に応じて適切に行うよう努めること。

 また,それらの指導を通して,家庭や地域社会との連携を図りながら,日常生活において適切な体育・健康に関する活動の実践を促し,生涯を通じて健康・安全で活力ある生活を送るための基礎が培われるよう配慮すること。

 教育基本法第2条第1号は,教育の目的として「健やかな身体を養う」ことを規定しており,本項では,体育・健康に関する指導を,生徒の発達の段階を考慮して,学校の教育活動全体として取り組むことにより,健康で安全な生活と豊かなスポーツライフの実現を目指した教育の充実に努めることを示している。

 健やかな体の育成は,心身の調和的な発達の中で図られ,心身の健康と安全や,スポーツを通じた生涯にわたる幸福で豊かな生活の実現と密接に関わるものであることから,体育・健康に関する指導のねらいとして,心身ともに健康で安全な生活と豊かなスポーツライフの実現を一体的に示しているところである。

 これからの社会を生きる生徒に,健やかな心身の育成を図ることは極めて重要である。体力は,人間の活動の源であり,健康の維持のほか意欲や気力といった精神面の充実に大きく関わっており,「生きる力」を支える重要な要素である。

 生徒の心身の調和的発達を図るためには,運動を通して体力を養うとともに,食育の推進を通して望ましい食習慣を身に付けるなど,健康的な生活習慣を形成することが必要である。

 また,東日本大震災をはじめとする様々な自然災害の発生や,情報化等の進展に伴う生徒を取り巻く環境の変化などを踏まえ,生徒の安全・安心に対する懸念が広がっていることから,安全に関する指導の充実が必要である。

 さらに,生徒が心身の成長発達について正しく理解することが必要である。

 こうした現代的課題を踏まえ,体育・健康に関する指導は,健康・安全で活力ある生活を営むために必要な資質・能力を育て,心身の調和的な発達を図り,健康で安全な生活と豊かなスポーツライフの実現を目指すものである。

 こうした教育は,第1章総則第3の1に示すとおり,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通した,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を通して実現が図られるものであり,そうした学習の過程の在り方については,本解説第3章第3節において解説している。

 本項で示す体育に関する指導については,積極的に運動する生徒とそうでない生徒の二極化傾向が指摘されていることなどから,生涯にわたって運動やスポーツを豊かに実践していくとともに,現在及び将来の体力の向上を図る実践力の育成を目指し,生徒が自ら進んで運動に親しむ資質・能力を身に付け,心身を鍛えることができるようにすることが大切である。

 このため,教科としての保健体育科において,基礎的な身体能力の育成を図るとともに,運動会,遠足や集会などの特別活動や運動部活動などの教育課程外の学校教育活動などを相互に関連させながら,学校教育活動全体として効果的に取り組むことが求められている。

 健康に関する指導については,生徒が身近な生活における健康に関する知識を身に付けることや,必要な情報を自ら収集し,適切な意思決定や行動選択を行い,積極的に健康な生活を実践することのできる資質・能力を育成することが大切である。

 特に,学校における食育の推進においては,栄養摂取の偏りや朝食欠食といった食習慣の乱れ等に起因する肥満や生活習慣病,食物アレルギー等の健康課題が見られるほか,食品の安全性の確保等の食に関わる課題が顕在化している。

 こうした課題に適切に対応するため,生徒が食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身に付けることにより,生涯にわたって健やかな心身と豊かな人間性を育んでいくための基礎が培われるよう,栄養のバランスや規則正しい食生活,食品の安全性などの指導が一層重視されなければならない。

 また,これら心身の健康に関する内容に加えて,自然の恩恵・勤労などへの感謝や食文化などについても教科等の内容と関連させた指導を行うことが効果的である。

 食に関する指導に当たっては,保健体育科における望ましい生活習慣の育成や,技術・家庭科における食生活に関する指導,特別活動における給食の時間を中心とした指導などを相互に関連させながら,学校教育活動全体として効果的に取り組むことが重要であり,栄養教諭等の専門性を生かすなど教師間の連携に努めるとともに,地域の産物を学校給食に使用するなどの創意工夫を行いつつ,学校給食の教育的効果を引き出すよう取り組むことが重要である。

 また,安全に関する指導においては,様々な自然災害の発生や,情報化やグローバル化等の社会の変化に伴い生徒を取り巻く安全に関する環境も変化していることから,身の回りの生活の安全,交通安全,防災に関する指導や,情報技術の進展に伴う新たな事件・事故防止,国民保護等の非常時の対応等の新たな安全上の課題に関する指導を一層重視し,安全に関する情報を正しく判断し,安全のための行動に結び付けるようにすることが重要である。

 さらに,心身の健康の保持増進に関する指導においては,情報化社会の進展により,様々な健康情報や性・薬物等に関する情報の入手が容易になっていることなどから,生徒が健康情報や性に関する情報等を正しく選択して適切に行動できるようにするとともに,薬物乱用防止等の指導が一層重視されなければならない。

 なお,生徒が心身の成長発達に関して適切に理解し,行動することができるようにする指導に当たっては,第1章総則第4の1(1)に示す主に集団の場面で必要な指導や援助を行うガイダンスと一人一人が抱える課題に個別に対応した指導を行うカウンセリングの双方の観点から,学校の教育活動全体で共通理解を図り,家庭の理解を得ることに配慮するとともに,関連する教科等において,発達の段階を考慮して,指導することが重要である。

 体育・健康に関する指導は,こうした指導を相互に関連させて行うことにより,生涯にわたり楽しく明るい生活を営むための基礎づくりを目指すものである。

 したがって,その指導においては,体つくり運動や各種のスポーツ活動はもとより,保健や安全に関する指導,給食を含む食に関する指導などが重視されなければならない。

 このような体育・健康に関する指導は,保健体育科の時間だけではなく技術・家庭科や特別活動のほか,関連の教科や道徳科,総合的な学習の時間なども含めた学校の教育活動全体を通じて行うことによって,その一層の充実を図ることができる。

 各学校において,体育・健康に関する指導を効果的に進めるためには,全国体力・運動能力,運動習慣等調査などを用いて生徒の体力や健康状態等を的確に把握し,学校や地域の実態を踏まえて,それにふさわしい学校の全体計画を作成し,地域の関係機関・団体の協力を得つつ,計画的,継続的に指導することが重要である。

 また,体育・健康に関する指導を通して,学校生活はもちろんのこと,家庭や地域社会における日常生活においても,自ら進んで運動を適切に実践する習慣を形成し,生涯を通じて運動に親しむための基礎を培うとともに,生徒が積極的に心身の健康の保持増進を図っていく資質・能力を身に付け,生涯を通じて健康・安全で活力ある生活を送るための基礎が培われるよう配慮することが大切である。

 なお,中学校にあっては,教科担任制を原則としているために,体育・健康に関する指導が保健体育科担当の教師に任されてしまうおそれがある。

 しかし,体育・健康に関する指導は,学校の教育活動全体を通じて適切に行われるべきものであり,その効果を上げるためには,保健体育科担当の教師だけでなく,全教職員の理解と協力が得られるよう,学校の実態に応じて指導体制の工夫改善に努めるなど,組織的に進めていくことが大切である。

 
 
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