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4 各学校においては,生徒や学校,地域の実態を適切に把握し,教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと,教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと,教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともにその改善を図っていくことなどを通して,教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図っていくこと(以下「カリキュラム・マネジメント」という。)に努めるものとする。

 本項は,各学校が教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図っていくことができるよう,カリキュラム・マネジメントとは何かを定義するとともにその充実について示している。

 教育課程はあらゆる教育活動を支える基盤となるものであり,学校運営についても,教育課程に基づく教育活動をより効果的に実施していく観点から組織運営がなされなければならない。

 カリキュラム・マネジメントは,学校教育に関わる様々な取組を,教育課程を中心に据えながら組織的かつ計画的に実施し,教育活動の質の向上につなげていくことであり,本項においては,中央教育審議会答申の整理を踏まえ次の三つの側面から整理して示している。

具体的には,

・生徒や学校,地域の実態を適切に把握し,教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと,

・教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと,

・教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともにその改善を図っていくこと

などを通して,教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図っていくことと定義している。

 また,総則の項目立てについても,各学校におけるカリキュラム・マネジメントを円滑に進めていく観点から,教育課程の編成,実施,評価及び改善の手続を踏まえて,

@中学校教育の基本と教育課程の役割(第1章総則第1),

A教育課程の編成(第1章総則第2),

B教育課程の実施と学習評価(第1章総則第3),

C生徒の発達の支援(第1章総則第4),

D学校運営上の留意事項(第1章第5),

E道徳教育に関する配慮事項(第1章総則第6)

としているところである。

 各学校においては,こうした総則の全体像も含めて,教育課程に関する国や教育委員会の基準を踏まえ,自校の教育課程の編成,実施,評価及び改善に関する課題がどこにあるのかを明確にして教職員間で共有し改善を行うことにより学校教育の質の向上を図り,カリキュラム・マネジメントの充実に努めることが求められる。

ア 生徒や学校,地域の実態を適切に把握すること

 教育課程は,第1章総則第1の1が示すとおり「生徒の心身の発達の段階や特性及び学校や地域の実態を十分考慮して」編成されることが必要である。

 各学校においては,各種調査結果やデータ等に基づき,生徒の姿や学校及び地域の現状を定期的に把握したり,保護者や地域住民の意向等を的確に把握した上で,学校の教育目標など教育課程の編成の基本となる事項を定めていくことが求められる。

イ カリキュラム・マネジメントの三つの側面を通して,教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図っていくこと

 学校の教育活動の質の向上を図る取組は,教育課程に基づき組織的かつ計画的に行われる必要がある。

 各学校においては,第1章総則第5の1アに示すとおり,「校長の方針の下に,校務分掌に基づき教職員が適切に役割を分担しつつ,相互に連携しながら,各学校の特色を生かしたカリキュラム・マネジメントを行う」ことが必要である。

 また,教育課程は学校運営全体の中核ともなるものであり,同じく第1章総則第5の1アに示すとおり,学校評価の取組についても,カリキュラム・マネジメントと関連付けながら実施するよう留意が必要である。

 組織的かつ計画的に取組を進めるためには,教育課程の編成を含めたカリキュラム・マネジメントに関わる取組を,学校の組織全体の中に明確に位置付け,具体的な組織や日程を決定していくことが重要となる。

 校内の組織及び各種会議の役割分担や相互関係を明確に決め,職務分担に応じて既存の組織を整備,補強したり,既存の組織を精選して新たな組織を設けたりすること,また,分担作業やその調整を含めて,各作業ごとの具体的な日程を決めて取り組んでいくことが必要である。

 また,カリキュラム・マネジメントを効果的に進めるためには,何を目標として教育活動の質の向上を図っていくのかを明確にすることが重要である。

 第1章総則第2の1に示すとおり,教育課程の編成の基本となる学校の経営方針や教育目標を明確にし,家庭や地域とも共有していくことが求められる。

(ア) 教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと

 教育課程の編成に当たっては,教育課程に関する法令や各学校の教育目標が定める教育の目的や目標の実現を目指して,指導のねらいを明確にし,教育の内容を選択して組織し,それに必要な授業時数を配当していくことが必要となる。

 各学校においては,教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を選択し,各教科等の内容相互の関連を図りながら指導計画を作成したり,生徒の生活時間と教育の内容との効果的な組み合わせを考えたりしながら,年間や学期,月,週ごとの授業時数を適切に定めたりしていくことが求められる。

 その際,今回の改訂では,「生きる力」の育成という教育の目標が教育課程の編成により具体化され,よりよい社会と幸福な人生を切り拓(ひら)くために必要な資質・能力が生徒一人一人に育まれるようにすることを目指しており,「何を学ぶか」という教育の内容を選択して組織していくことと同時に,その内容を学ぶことで生徒が「何ができるようになるか」という,育成を目指す資質・能力を指導のねらいとして明確に設定していくことが求められていることに留意が必要である。

 教育課程の編成に当たっては,第1章総則第2の2に示す教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成を教育課程の中で適切に位置付けていくことや,各学校において具体的な目標及び内容を定めることとなる総合的な学習の時間において教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習が行われるようにすることなど,教科等間のつながりを意識して教育課程を編成することが重要である。

(教科等横断的な視点で教育の内容を編成する例について付録6参照)

(イ) 教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと

 各学校においては,各種調査結果やデータ等を活用して,生徒や学校,地域の実態を定期的に把握し,そうした結果等から教育の目的や目標の実現状況や教育課程の実施状況を確認し分析して課題となる事項を見いだし,改善方針を立案して実施していくことが求められる。

 こうした改善については,校内の取組を通して比較的直ちに修正できるものもあれば,教育委員会の指導助言を得ながら長期的に改善を図っていくことが必要となるものもあるため,必要な体制や日程を具体化し組織的かつ計画的に取り組んでいくことが重要である。

 こうした教育課程の評価や改善は,第1章総則第5の1のアに示すとおり,学校評価と関連付けながら実施することが必要である。

(ウ) 教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともにその改善を図っていくこと 教育課程の実施に当たっては,人材や予算,時間,情報といった人的又は物的な資源を,教育の内容と効果的に組み合わせていくことが重要となる。

 学校規模,教職員の状況,施設設備の状況などの人的又は物的な体制の実態は,学校によって異なっており,教育活動の質の向上を組織的かつ計画的に図っていくためには,これらの人的又は物的な体制の実態を十分考慮することが必要である。

 そのためには,特に,教師の指導力,教材・教具の整備状況,地域の教育資源や学習環境(近隣の学校,社会教育施設,生徒の学習に協力することのできる人材等)などについて客観的かつ具体的に把握して,教育課程の編成に生かすことが必要である。

 本項では,こうした人的又は物的な体制を確保することのみならず,その改善を図っていくことの重要性が示されている。

 各学校には,校長,副校長や教頭のほかに教務主任をはじめとして各主任等が置かれ,それらの担当者を中心として全教職員がそれぞれ校務を分担して処理している。

 各学校の教育課程は,これらの学校の運営組織を生かし,各教職員がそれぞれの分担に応じて教育課程に関する研究を重ね,創意工夫を加えて編成や改善を図っていくことが重要である。

 また,学校は地域社会における重要な役割を担い地域とともに発展していく存在であり,学校運営協議会制度や地域学校協働活動等の推進により,学校と地域の連携及び協働の取組を更に広げ,教育課程を介して学校と地域がつながることにより,地域でどのような子供を育てるのかといった目標を共有し,地域とともにある学校づくりが一層効果的に進められていくことが期待される。

 以下,それぞれの項目の趣旨を踏まえて学校において実際に教育課程の編成や改善に取り組む際の手順の一例を参考として示す。

 もっとも,編成した教育過程に基づき実施される日々の教育活動はもとより,教育課程の編成や改善の手順は必ずしも一律であるべきではなく,それぞれの学校が学習指導要領等の関連の規定を踏まえつつ,その実態に即して,創意工夫を重ねながら具体的な手順を考えるべきものである。

 この点に十分留意することが求められる。

 
 

(1) 教育課程の編成に対する学校の基本方針を明確にする。

 基本方針を明確にするということは,教育課程の編成に対する学校の姿勢や作業計画の大綱を明らかにするとともに,それらについて全教職員が共通理解をもつことである。

ア 学校として教育課程の意義,教育課程の編成の原則などの編成に対する基本的な考え方を明確にし,全教職員が共通理解をもつ。

イ 編成のための作業内容や作業手順の大綱を決め,作業計画の全体について全教職員が共通理解をもつ。

(2) 教育課程の編成・実施のための組織と日程を決める。

 教育課程の編成・実施は,校長のリーダーシップの下,組織的かつ計画的に取り組む必要がある。

 教育課程の編成・実施を担当する組織を確立するとともに,それを学校の組織全体の中に明確に位置付ける。

 また,編成・実施の作業日程を明確にするとともに,学校が行う他の諸活動との調和を図る。その際,既存の組織や各種会議の在り方を見直し必要に応じ精選を図るなど業務改善の視点をもつことも重要である。

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ア 編成・実施のための組織を決める。

(ア) 編成・実施に当たる組織及び各種会議の役割や相互関係について基本的な考え方を明確にする。

(イ) 編成・実施に当たる組織及び各種会議を学校の組織全体の中に位置付け,組織内の役割や分担を具体的に決める。

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イ 編成・実施のための作業日程を決める。

 分担作業やその調整を含めて,各作業ごとの具体的な日程を決める。

(3) 教育課程の編成のための事前の研究や調査をする。

 事前の研究や調査によって,教育課程についての国や教育委員会の基準の趣旨を理解するとともに,教育課程の編成に関わる学校の実態や諸条件を把握する。

ア 教育課程についての国の基準や教育委員会の規則などを研究し理解する。

イ 生徒の心身の発達の段階や特性,学校及び地域の実態を把握する。
 その際,保護者や地域住民の意向,生徒の状況等を把握することに留意する。

(4) 学校の教育目標など教育課程の編成の基本となる事項を定める。

 学校の教育目標など教育課程の編成の基本となる事項は,学校教育の目的や目標及び教育課程の基準に基づきながら,しかも各学校が当面する教育課題の解決を目指し,両者を統一的に把握して設定する。

ア 事前の研究や調査の結果を検討し,学校教育の目的や目標に照らして,それぞれの学校や生徒が直面している教育課題を明確にする。

イ 学校教育の目的や目標を調和的に達成するため,各学校の教育課題に応じて,学校の教育目標など教育課程の編成の基本となる事項を設定する。

ウ 編成に当たって,特に留意すべき点を明確にする。

(5) 教育課程を編成する。

 教育課程は学校の教育目標の実現を目指して,指導内容を選択し,組織し,それに必要な授業時数を定めて編成する。

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ア 指導内容を選択する。

(ア) 指導内容について,その基礎的・基本的な知識及び技能を明確にする。

(イ) 学校の教育目標の有効な達成を図るため,重点を置くべき指導内容を明確にする。

(ウ) 各教科等の指導において,基礎的・基本的な知識及び技能の確実な習得と思考力,判断力,表現力等の育成を図るとともに,主体的に学習に取り組む態度を養う指導の充実や個に応じた指導を推進するよう配慮する。

(エ) 学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育及び体育・健康に関する指導について,適切な指導がなされるよう配慮する。

(オ) 学習の基盤となる資質・能力や現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力など,学校として,教科等横断的な視点で育成を目指す資質・能力を明確にし,その育成に向けた適切な指導がなされるよう配慮する。

(カ) 生徒や学校,地域の実態に応じて学校が創意を生かして行う総合的な学習の時間を適切に展開できるよう配慮する。

(キ) 各教科等の指導内容に取り上げた事項について,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を通して資質・能力を育む効果的な指導ができるよう,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら,そのまとめ方や重点の置き方を検討する。

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イ 指導内容を組織する。

(ア) 各教科,道徳科,総合的な学習の時間及び特別活動について,各教科等間の指導内容相互の関連を図る。

(イ) 各教科等の指導内容相互の関連を明確にする。

(ウ) 発展的,系統的な指導ができるように指導内容を配列し組織する。

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ウ 授業時数を配当する。

(ア) 指導内容との関連において,各教科,道徳科,総合的な学習の時間及び特別活動の年間授業時数を定める。

(イ) 各教科等や学習活動の特質に応じて,創意工夫を生かし,1年間の中で,学期,月,週ごとの各教科等の授業時数を定める。

(ウ) 各教科等の授業の1単位時間を,生徒の発達の段階及び各教科等や学習活動の特質を考慮して適切に定める。

(6) 教育課程を評価し改善する。

 実施中の教育課程を検討し評価して,その改善点を明確にして改善を図る。

ア 評価の資料を収集し,検討する。

イ 整理した問題点を検討し,原因と背景を明らかにする。

ウ 改善案をつくり,実施する。

 
 
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