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 生徒に「生きる力」を育むことを目指して教育活動の充実を図るに当たっては,学校教育全体及び各教科等の指導を通してどのような資質・能力の育成を目指すのかを,資質・能力の三つの柱を踏まえながら明確にすることが求められる。

 育成を目指す資質・能力の具体例については,様々な提案がなされており,学習指導要領に基づき各学校において,生徒や学校,地域の実態に応じてどのような資質・能力の育成を図っていくのかを明らかにしていく必要があるが,平成28年の中央教育審議会答申では,数多く論じられている資質・能力を以下のように大別している。

・ 例えば国語力,数学力などのように,伝統的な教科等の枠組みを踏まえながら,社会の中で活用できる力としての在り方について論じているもの。

・ 例えば言語能力や情報活用能力などのように,教科等を越えた全ての学習の基盤として育まれ活用される力について論じているもの。

・ 例えば安全で安心な社会づくりのために必要な力や,自然環境の有限性の中で持続可能な社会をつくるための力などのように,今後の社会の在り方を踏まえて,子供たちが現代的な諸課題に対応できるようになるために必要な力の在り方について論じているもの。

 1点目の教科等の枠組みを踏まえて育成を目指す資質・能力については,各教科等の章の目標や内容において,それぞれの教科等の特質を踏まえて整理されている。

 これらの資質・能力の育成を目指すことが各教科等を学ぶ意義につながるものであるが,指導に当たっては,教科等ごとの枠の中だけではなく,教育課程全体を通じて目指す学校の教育目標の実現に向けた各教科等の位置付けを踏まえ,教科等横断的な視点をもってねらいを具体化したり,他の教科等における指導との関連付けを図りながら,幅広い学習や生活の場面で活用できる力を育むことを目指したりしていくことも重要となる

 このような教科等横断的な視点からの指導のねらいの具体化や,教科等間の指導の関連付けは,前述の答申が大別した2点目及び3点目にあるような教科等の枠組みを越えた資質・能力の育成にもつながるものである。

 変化の激しい社会の中で,主体的に学んで必要な情報を判断し,よりよい人生や社会の在り方を考え,多様な人々と協働しながら問題を発見し解決していくために必要な力を,生徒一人一人に育んでいくためには,あらゆる教科等に共通した学習の基盤となる資質・能力や,教科等の学習を通じて身に付けた力を統合的に活用して現代的な諸課題に対応していくための資質・能力を,教育課程全体を見渡して育んでいくことが重要となる。

 
 
(1)各学校においては,生徒の発達の段階を考慮し,言語能力,情報活用能力(情報モラルを含む。),問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力を育成していくことができるよう,各教科等の特質を生かし,教科等横断的な視点から教育課程の編成を図るものとする。
 本項は,生徒の日々の学習や生涯にわたる学びの基盤となる資質・能力を,生徒の発達の段階を考慮し,それぞれの教科等の役割を明確にしながら,教科等横断的な視点で育んでいくことができるよう,教育課程の編成を図ることを示している。

 学習の基盤となる資質・能力として,言語能力,情報活用能力,問題発見・解決能力等を挙げている。

ア 言語能力

 言葉は,生徒の学習活動を支える重要な役割を果たすものであり,全ての教科等における資質・能力の育成や学習の基盤となるものである。

 教科書や教師の説明,様々な資料等から新たな知識を得たり,事象を観察して必要な情報を取り出したり,自分の考えをまとめたり,他者の思いを受け止めながら自分の思いを伝えたり,学級で目的を共有して協働したりすることができるのも,言葉の役割に負うところが大きい。

 したがって,言語能力の向上は,生徒の学びの質の向上や資質・能力の育成の在り方に関わる重要な課題として受け止め,重視していくことが求められる。

 言語能力を育成するためには,第1章総則第3の1(2)や各教科等の内容の取扱いに示すとおり,全ての教科等においてそれぞれの特質に応じた言語活動の充実を図ることが必要であるが,特に言葉を直接の学習対象とする国語科の果たす役割は大きい。今回の改訂に当たっては,中央教育審議会答申において人間が認識した情報を基に思考し,思考したものを表現していく過程に関する分析を踏まえ,創造的・論理的思考の側面,感性・情緒の側面,他者とのコミュニケーションの側面から言語能力とは何かが整理されたことを踏まえ,国語科の目標や内容の見直しを図ったところである。

 言語能力を支える語彙の段階的な獲得も含め,発達の段階に応じた言語能力の育成が図られるよう,国語科を要としつつ教育課程全体を見渡した組織的・計画的な取組が求められる。

 また,外国語科及び外国語活動は,学習対象とする言語は異なるが,言語能力の向上を目指す教科等であることから,国語科と共通する指導内容や指導方法を扱う場面がある。

 そうした指導内容や指導方法を効果的に連携させることによって,言葉の働きや仕組みなどの言語としての共通性や固有の特徴への気付きを促し,相乗効果の中で言語能力の効果的な育成につなげていくことが重要である。

(参考:言語能力を構成する資質・能力)

(知識・技能)

 言葉の働きや役割に関する理解,言葉の特徴やきまりに関する理解と使い分け,言葉の使い方に関する理解と使い分け,言語文化に関する理解,既有知識(教科に関する知識,一般常識,社会的規範等)に関する理解が挙げられる。

 特に,「言葉の働きや役割に関する理解」は,自分が用いる言葉に対するメタ認知に関わることであり,言語能力を向上する上で重要な要素である。

 

(思考力・判断力・表現力等)

 テクスト(情報)を理解したり,文章や発話により表現したりするための力として,情報を多面的・多角的に精査し構造化する力,言葉によって感じたり想像したりする力,感情や想像を言葉にする力,言葉を通じて伝え合う力,構成・表現形式を評価する力,考えを形成し深める力が挙げられる。

 

(学びに向かう力・人間性等)

 言葉を通じて,社会や文化を創造しようとする態度,自分のものの見方や考え方を広げ深めようとする態度,集団としての考えを発展・深化させようとする態度,心を豊かにしようとする態度,自己や他者を尊重しようとする態度,自分の感情をコントロールして学びに向かう態度,言語文化の担い手としての自覚が挙げられる。

【中央教育審議会答申 別紙2-1】

 
 

イ 情報活用能力

 情報活用能力は,世の中の様々な事象を情報とその結び付きとして捉え,情報及び情報技術を適切かつ効果的に活用して,問題を発見・解決したり自分の考えを形成したりしていくために必要な資質・能力である。

 将来の予測が難しい社会において,情報を主体的に捉えながら,何が重要かを主体的に考え,見いだした情報を活用しながら他者と協働し,新たな価値の創造に挑んでいくためには,情報活用能力の育成が重要となる。

 また,情報技術は人々の生活にますます身近なものとなっていくと考えられるが,そうした情報技術を手段として学習や日常生活に活用できるようにしていくことも重要となる。

 情報活用能力をより具体的に捉えれば,学習活動において必要に応じてコンピュータ等の情報手段を適切に用いて情報を得たり,情報を整理・比較したり,得られた情報を分かりやすく発信・伝達したり,必要に応じて保存・共有したりといったことができる力であり,さらに,このような学習活動を遂行する上で必要となる情報手段の基本的な操作の習得や,プログラミング的思考,情報モラル,情報セキュリティ,統計等に関する資質・能力等も含むものである。

 こうした情報活用能力は,各教科等の学びを支える基盤であり,これを確実に育んでいくためには,各教科等の特質に応じて適切な学習場面で育成を図ることが重要であるとともに,そうして育まれた情報活用能力を発揮させることにより,各教科等における「主体的・対話的で深い学び」へとつながっていくことが一層期待されるものである。

 今回の改訂に当たっては,資質・能力の三つの柱に沿って情報活用能力について整理されている。情報活用能力を育成するためには,第1章総則第3の1(3)や各教科等の内容の取扱いに示すとおり,各学校において日常的に情報技術を活用できる環境を整え,全ての教科等においてそれぞれの特質に応じ,情報技術を適切に活用した学習活動の充実を図ることが必要である。

(参考:情報活用能力を構成する資質・能力)

(知識・技能)

 情報と情報技術を活用した問題の発見・解決等の方法や,情報化の進展が社会の中で果たす役割や影響,情報に関する法・制度やマナー,個人が果たす役割や責任等について,情報の科学的な理解に裏打ちされた形で理解し,情報と情報技術を適切に活用するために必要な技能を身に付けていること。

 

(思考力・判断力・表現力等)

 様々な事象を情報とその結びつきの視点から捉え,複数の情報を結びつけて新たな意味を見出す力や,問題の発見・解決等に向けて情報技術を適切かつ効果的に活用する力を身に付けていること。

 

(学びに向かう力・人間性等)

 情報や情報技術を適切かつ効果的に活用して情報社会に主体的に参画し,その発展に寄与しようとする態度等を身に付けていること。

【中央教育審議会答申 別紙3-1】

 
 

ウ 問題発見・解決能力

 各教科等において,物事の中から問題を見いだし,その問題を定義し解決の方向性を決定し,解決方法を探して計画を立て,結果を予測しながら実行し,振り返って次の問題発見・解決につなげていく過程を重視した深い学びの実現を教科等の特質に応じて図ることを通じて,各教科等のそれぞれの分野における問題の発見・解決に必要な力を身に付けられるようにするとともに,総合的な学習の時間における横断的・総合的な探究課題や,特別活動における集団や自己の生活上の課題に取り組むことなどを通じて,各教科等で身に付けた力が統合的に活用できるようにすることが重要である。

 ここに挙げられた資質・能力の育成以外にも,各学校においては生徒の実態を踏まえ,学習の基盤作りに向けて課題となる資質・能力は何かを明確にし,カリキュラム・マネジメントの中でその育成が図られるように努めていくことが求められる。

 
 
(2)各学校においては,生徒や学校,地域の実態及び生徒の発達の段階を考慮し,豊かな人生の実現や災害等を乗り越えて次代の社会を形成することに向けた現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力を,教科等横断的な視点で育成していくことができるよう,各学校の特色を生かした教育課程の編成を図るものとする。
 本項は,「生きる力」の育成という教育の目標を,各学校の特色を生かした教育課程の編成により具体化していくに当たり,豊かな人生の実現や災害等を乗り越えて次代の社会を形成することに向けた現代的な諸課題に照らして必要となる資質・能力を,それぞれの教科等の役割を明確にしながら,教科等横断的な視点で育んでいくことができるようにすることを示している。

 特に,未曽有の大災害となった東日本大震災や平成28年の熊本地震をはじめとする災害等による困難を乗り越え次代の社会を形成するという大きな役割を担う生徒に,現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力を教科横断的に育成することが一層重要となっている。

 そのため,今回の改訂では,例えば,

放射線の科学的な理解や科学的に探究する態度(中学校理科),

電力等の供給における県内外の協力について考察すること(小学校社会科),

健康の成り立ちについての理解(中学校保健体育科),

食品の選択についての理解(中学校技術・家庭科(家庭分野)),

情報と情報の関係(小学校,中学校国語科)や

情報の信頼性の確かめ方(中学校国語科)

などの内容の充実を図っており,放射線に関する科学的な理解や科学的に思考し,情報を正しく理解する力を育成することとしている。

 

 このような現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力として,中央教育審議会答申では

・ 健康・安全・食に関する力

・ 主権者として求められる力

・ 新たな価値を生み出す豊かな創造性

・ グローバル化の中で多様性を尊重するとともに,現在まで受け継がれてきた我が国固有の領土や歴史について理解し,伝統や文化を尊重しつつ,多様な他者と協働しながら目標に向かって挑戦する力

・ 地域や社会における産業の役割を理解し地域創生等に生かす力

・ 自然環境や資源の有限性等の中で持続可能な社会をつくる力

・ 豊かなスポーツライフを実現する力

などが考えられるとされたところである。

 各学校においては,生徒や学校,地域の実態及び生徒の発達の段階を考慮して学校の特色を生かした目標や指導の重点を計画し,教育課程を編成・実施していくことが求められる。

(答申で例示された現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力に関して,具体的に教科横断的に教育内容を構成する例として付録6参照)

 
 
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