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(1)小学校学習指導要領を踏まえ,小学校教育までの学習の成果が中学校教育に円滑に接続され,義務教育段階の終わりまでに育成することを目指す資質・能力を,生徒が確実に身に付けることができるよう工夫すること。

 特に,義務教育学校,小学校連携型中学校及び小学校併設型中学校においては,義務教育9年間を見通した計画的かつ継続的な教育課程を編成すること。

 本項は,小学校学習指導要領を踏まえた,小学校教育の成果の中学校教育への円滑な接続の重要性と義務教育段階終了までに育成を目指す資質・能力を身に付けさせることの重要性について示している。

 小学校及び中学校の義務教育段階においては,教育基本法第5条第2項が規定する「各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎」及び「国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質」を卒業段階までに育むことができるよう,学校教育法並びに小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領に示すところに従い,小学校及び中学校9年間を通じて育成を目指す資質・能力を明確化し,その育成を高等学校教育等のその後の学びに円滑に接続させていくことが求められる。

 したがって

@小学校教育には,学級担任が生徒の生活全般に関わりながら,各教科等の指導を含めた児童の育ちを全般的に支えることを通して,幼児期の教育の成果を受け継ぎ,児童に義務教育としての基礎的な資質・能力の育成を目指した教育を行うことが,

A中学校教育には,学級担任による日常的な指導と教科担任による専門性を踏まえた指導とを行う中で,小学校教育の成果を受け継ぎ,生徒に義務教育9年間を見通して必要な資質・能力の育成を目指す教育を行うことが

それぞれ求められる。

 このような観点から,小学校と中学校の接続に際しては,義務教育の9年間を見通して児童生徒に必要な資質・能力を育むことを目指した取組が求められる。

 具体的には,例えば同一中学校区内の小学校と中学校の間の連携を深めるため,次のような工夫が考えられる。

・ 学校運営協議会や地域学校協働本部等の各種会議の合同開催を通じて,各学校で育成を目指す資質・能力や教育目標,それらに基づく教育課程編成の基本方針などを,学校,保護者,地域間で共有して改善を図ること。

・ 校長・副校長・教頭の管理職の間で,各学校で育成を目指す資質・能力や教育目標,それらに基づく教育課程編成の基本方針などを共有し,改善を図ること。

・ 教職員の合同研修会を開催し,地域で育成を目指す資質・能力を検討しながら,各教科等や各学年の指導の在り方を考えるなど,指導の改善を図ること。

・ 同一中学校区内での保護者間の連携・交流を深め,取組の成果を共有していくこと。

 特に,義務教育学校,中学校連携型小学校及び中学校併設型小学校においては,こうした工夫にとどまらず,9年間を見通した計画的かつ継続的な教育課程を編成し,小学校と中学校とで一体的な教育内容と指導体制を確立して特色ある教育活動を展開していくことが重要となる。

 小中一貫教育の核として何を位置付けるかは地域や児童生徒の実態を踏まえて各設置者・学校において判断すべき事柄であるが,教科等の系統性・連続性の十分な理解の上に,教育課程の特例を活用して,他の学校にはない新たな教科等を設けたり,教科等の内容項目を見直したりすることも考えられる。

 義務教育学校や小中一貫型小・中学校においては,

ア 学習指導要領に示された内容項目を網羅すること

イ 児童生徒の発達の段階や各教科等の系統性・体系性に配慮すること

ウ 保護者の経済的負担への配慮その他の義務教育における機会均等の観点からの適切な配慮がなされていること

等を前提とした上で,小中一貫教育の長所をより生かす観点から,設置者の判断で,以下のような教育課程特例の活用が可能である。

【小中一貫教科等の設定】

・ 小中一貫教育の軸となる独自教科等(小中一貫教科等)の実施

・ 小中一貫教科等による他の各教科等の代替

・ 小中一貫教科等の授業時数による他の各教科等の授業時数の代替

【指導内容の入替え・移行】

(※連携型小・中学校の場合は,設置者の判断ではできない)

・ 小学校段階及び中学校段階における各教科等の内容のうち相互に関連するものの入替え

・ 小学校段階の指導内容の中学校への後送り移行

・ 中学校段階の指導内容の小学校への前倒し移行

・ 小学校段階における学年間の指導内容の後送り又は前倒し移行

・ 中学校段階における学年間の指導内容の後送り又は前倒し移行

 なお,小中一貫教育に係る教育課程については,「小中一貫した教育課程の編成・実施に関する手引」(平成28年12月26日文部科学省)を示しており,これらを参考にすることができる。

 
 

(2)高等学校学習指導要領を踏まえ,高等学校教育及びその後の教育との円滑な接続が図られるよう工夫すること。

 特に,中等教育学校,連携型中学校及び併設型中学校においては,中等教育6年間を見通した計画的かつ継続的な教育課程を編成すること。

 中学校においては,義務教育を行う最後の教育機関として,教育基本法第5条第2項が規定する「各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎」及び「国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質」を卒業までに育むことができるよう,小学校教育の基礎の上に,中学校教育を通して身に付けるべき資質・能力を明確化し,その育成を高等学校教育等のその後の学びに円滑に接続させていくことが求められている。

 このため,今回の改訂では,平成20年改訂の学習指導要領の各教科等の授業時数や指導内容を前提としつつ,中央教育審議会答申で示された高等学校における新たな教科・科目構成との接続を含め,小・中・高等学校を見通した改善・充実の中で,中学校教育の充実を図っていくことが重要となる。

 また,高等学校においては,生徒の多様な進路の希望に応えるため,幅広い教科・科目の中から生徒が履修する科目の選択を行うなど,選択履修の趣旨を生かした教育課程編成を行うこととしている。

 このことは,生徒に自身の在り方や生き方を考えさせて適切に選択・判断する力を求めるものである。中学校までの教育課程においては,生徒が履修する教育課程を選択するということはないため,高等学校への接続に関連して,生徒が適切な教科・科目を選択できるよう指導の充実を図ることが重要である。

 なお,中学校と高等学校との円滑な接続の観点からは,中等教育の多様化を一層推進し,生徒の個性をより重視した教育を実現するため,中高一貫教育制度が設けられているところである,生徒の現状や地域の実情に応じ,こうした制度を活用して特色ある取組を展開していくことも考えられる。

@ 中等教育学校及び併設型中高一貫教育校における教育課程の基準については,前期課程及び併設型中学校は中学校の,後期課程及び併設型高等学校は高等学校の教育課程の基準を準用しつつ,中高一貫教育の利点を生かして6年間を通じた特色あるカリキュラムを編成することができるよう,以下のような特例措置を設けている。

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ア 中等教育学校前期課程及び併設型中学校については,各学年において各教科の授業時数を70単位時間の範囲内で減じ,当該教科の内容を代替できる内容の選択教科の授業時数に充てることができること。

 ただし,各学年において,各教科の授業時数から減ずる授業時数は,一教科当たり35単位時間までが限度となっていること。

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イ 中等教育学校後期課程及び併設型高等学校については,普通科における学校設定教科・科目について,卒業に必要な修得単位数に含めることができる単位数の上限を20単位から36単位に拡大することができること。

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ウ 中等教育学校前期課程及び併設型中学校と中等教育学校後期課程及び併設型高等学校における指導の内容については,各教科や各教科に属する科目の内容のうち相互に関連するものの一部を入替えて指導することができること。

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エ 中等教育学校前期課程及び併設型中学校における指導の内容の一部については,中等教育学校後期課程及び併設型高等学校における指導の内容に移行して指導することができること。

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オ 中等教育学校後期課程及び併設型高等学校における指導内容の一部については,中等教育学校前期課程及び併設型中学校における指導の内容に移行して指導することができること。

 この場合においては,中等教育学校後期課程及び併設型高等学校において,当該移行した指導の内容について再度指導しないことができること。

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カ 中等教育学校前期課程及び併設型中学校における各教科の内容のうち特定の学年において指導することとされているものの一部を他の学年における指導の内容に移行することができること。

 この場合においては,当該特定の学年において移行した指導の内容について再度指導しないことができること。

 なお,これらの特例を活用した教育課程を編成・実施する際には,以下の点に配慮する必要がある。

(ア) 学習内容の系統性に留意し,学年ごとの各教科等の目標が概ね達成されるとともに,学習指導要領の内容のうち,6年間で指導しない内容が生じることのないよう留意し,各学校段階の教育目標が6年間の教育課程全体の中で確実に達成されるようにすること。

(イ) 生徒の転校や進路変更等に際しては,転校先や進学先の学校における教育課程の実施に支障が生じることのないよう,必要に応じ,当該生徒に対する個別の補充指導を行うなど十分な配慮を行うこと。

(ウ) 本特例は,中高一貫教育校としての特長を最大限生かし,6年間の見通しを立てた教育課程を編成・実施することを目的とするものであり,この趣旨を踏まえ,各学校における教育課程の編成・実施に当たっては,生徒に過重な負担をかけるものとならないよう十分に配慮するなど,適切に教育課程を編成・実施すること。

A 連携型中高一貫教育校においても,中高一貫教育の特質を生かした特色ある教育課程の編成・実施が可能となるよう,次の事項について教育課程の基準の特例が設けられている。

ア 連携型中学校において,必修教科の授業時数を減じ,当該必修教科の内容を代替できる内容の選択教科の授業時数の増加に充てることができること。

イ 連携型高等学校普通科における学校設定教科・科目について,卒業に必要な修得単位数に含めることができる単位数の上限を20単位から36単位に拡大すること。

 
 
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