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ア 障害のある生徒などについては,特別支援学校等の助言又は援助を活用しつつ,個々の生徒の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行うものとする。
 学校教育法第81条第1項では,幼稚園,小学校,中学校,高等学校等において,障害のある生徒等に対し,障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を行うことが規定されている。

 また,我が国においては,「障害者の権利に関する条約」に掲げられている教育の理念の実現に向けて,障害のある生徒の就学先決定の仕組みの改正なども踏まえ,通常の学級にも,障害のある生徒のみならず,教育上特別の支援を必要とする生徒が在籍している可能性があることを前提に,全ての教職員が特別支援教育の目的や意義について十分に理解することが不可欠である。

 そこで,今回の改訂では,特別支援教育に関する教育課程編成の基本的な考え方や個に応じた指導を充実させるための教育課程実施上の留意事項などが一体的に分かるよう,学習指導要領の示し方について充実を図ることとした。

 障害のある生徒などには,視覚障害,聴覚障害,知的障害,肢体不自由,病弱・身体虚弱,言語障害,情緒障害,自閉症,LD(学習障害),ADHD(注意欠陥多動性障害)などのほか,学習面又は行動面において困難のある生徒で発達障害の可能性のある者も含まれている。

 このような障害の種類や程度を的確に把握した上で,障害のある生徒などの「困難さ」に対する「指導上の工夫の意図」を理解し,個に応じた様々な「手立て」を検討し,指導に当たっていく必要がある。

 また,このような考え方は学習状況の評価に当たって生徒一人一人の状況をきめ細かに見取っていく際にも参考となる。

 その際に,中学校学習指導要領解説の各教科等編のほか,文部科学省が作成する「教育支援資料」などを参考にしながら,全ての教師が障害に関する知識や配慮等についての正しい理解と認識を深め,障害のある生徒などに対する組織的な対応ができるようにしていくことが重要である。

 例えば,弱視の生徒についての保健体育科におけるボール運動の指導や理科における観察・実験の指導,難聴や言語障害の生徒についての国語科における音読の指導や音楽科における歌唱の指導,肢体不自由の生徒についての保健体育科における実技の指導や家庭科における実習の指導,病弱・身体虚弱の生徒についての美術科や保健体育科におけるアレルギー等に配慮した指導など,生徒の障害の状態や特性及び心身の発達の段階等(以下,「障害の状態等」という。)に応じて個別的に特別な配慮が必要である。

 また,読み書きや計算などに困難があるLD(学習障害)の生徒についての国語科における書くことに関する指導や,数学科における計算の指導など,教師の適切な配慮により対応することが必要である。

 さらに,ADHD(注意欠陥多動性障害)や自閉症の生徒に対して,話して伝えるだけでなく,メモや絵などを付加する指導などの配慮も必要である。

 このように障害の種類や程度を十分に理解して指導方法の工夫を行うことが大切である。

 一方,障害の種類や程度によって一律に指導内容や指導方法が決まるわけではない。

 特別支援教育において大切な視点は,生徒一人一人の障害の状態等により,学習上又は生活上の困難が異なることに十分留意し,個々の生徒の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を検討し,適切な指導を行うことであると言える。

 そこで,校長は,特別支援教育実施の責任者として,校内委員会を設置して,特別支援教育コーディネーターを指名し,校務分掌に明確に位置付けるなど,学校全体の特別支援教育の体制を充実させ,効果的な学校運営に努める必要がある。

 その際,各学校において,生徒の障害の状態等に応じた指導を充実させるためには,特別支援学校等に対し専門的な助言又は援助を要請するなどして,計画的,組織的に取り組むことが重要である。

 こうした点を踏まえ,各教科等の指導計画に基づく内容や方法を見通した上で,個に応じた指導内容や指導方法を計画的に検討し実施することが大切である。

 さらに,障害のある生徒などの指導に当たっては,担任を含む全ての教師間において,個々の生徒に対する配慮等の必要性を共通理解するとともに,教師間の連携に努める必要がある。

 また,集団指導において,障害のある生徒など一人一人の特性等に応じた必要な配慮等を行う際は,教師の理解の在り方や指導の姿勢が,学級内の生徒に大きく影響することに十分留意し,学級内において温かい人間関係づくりに努めながら,全ての生徒に「特別な支援の必要性」の理解を進め,互いの特徴を認め合い,支え合う関係を築いていくことが大切である。

 なお,今回の改訂では,総則のほか,各教科等においても,「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」に当該教科等の指導における障害のある生徒などに対する学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的,組織的に行うことが規定されたことに留意する必要がある。

 
 

イ 特別支援学級において実施する特別の教育課程については,次のとおり編成するものとする。

(ア)障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るため,特別支援学校小学部・中学部学習指導要領第7章に示す自立活動を取り入れること。

(イ)生徒の障害の程度や学級の実態等を考慮の上,各教科の目標や内容を下学年の教科の目標や内容に替えたり,各教科を,知的障害者である生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科に替えたりするなどして,実態に応じた教育課程を編成すること。

 特別支援学級は,学校教育法第81条第2項の規定による,知的障害者,肢体不自由者,身体虚弱者,弱視者,難聴者,その他障害のある者で,特別支援学級において教育を行うことが適当なものである生徒を対象とする学級であるとともに,中学校の学級の一つであり,学校教育法に定める中学校の目的及び目標を達成するものでなければならない。

 ただし,対象となる生徒の障害の種類や程度等によっては,障害のない生徒に対する教育課程をそのまま適用することが必ずしも適当でない場合があることから,学校教育法施行規則第138条では,「小学校,中学校若しくは義務教育学校又は中等教育学校の前期課程における特別支援学級に係る教育課程については,特に必要がある場合は,第50条第1項,第51条,第52条,第52条の3,第72条,第73条,第74条,第74条の3,第76条,第79条の5及び第107条の規定にかかわらず,特別の教育課程によることができる。」と規定している。

 今回の改訂では,特別支援学級において実施する特別の教育課程の編成に係る基本的な考え方について新たに示した。

(ア)では,生徒が自立を目指し,障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識及び技能,態度及び習慣を養い,もって心身の調和的発達の基盤を培うことをねらいとした,特別支援学校小学部・中学部学習指導要領第7章に示す自立活動を取り入れることを規定している。

 特別支援学校小学部・中学部学習指導要領では,自立活動の内容として,「健康の保持」,「心理的な安定」,「人間関係の形成」,「環境の把握」,「身体の動き」及び「コミュニケーション」の六つの区分の下に27項目を設けている。

 自立活動の内容は,各教科等のようにその全てを取り扱うものではなく,個々の生徒の障害の状態等の的確な把握に基づき,障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な項目を選定して取り扱うものである。

 よって,生徒一人一人に個別の指導計画を作成し,それに基づいて指導を展開する必要がある。

 個別の指導計画の作成の手順や様式は,それぞれの学校が生徒の障害の状態,発達や経験の程度,興味・関心,生活や学習環境などの実態を的確に把握し,自立活動の指導の効果が最もあがるように考えるべきものである。

 したがって,ここでは,手順の一例を示すこととする。

(手順の一例)

a 個々の生徒の実態を的確に把握する。

b 実態把握に基づいて得られた指導すべき課題や課題相互の関連を整理する。

c 個々の実態に即した指導目標を設定する。

d 特別支援学校小学部・中学部学習指導要領第7章第2の内容から,個々の生徒の指導目標を達成させるために必要な項目を選定する。

e 選定した項目を相互に関連付けて具体的な指導内容を設定する。

 今回の改訂を踏まえ,自立活動における個別の指導計画の作成について更に理解を促すため,
「特別支援学校学習指導要領解説 自立活動編」においては,
上記の各過程において,どのような観点で整理していくか,発達障害を含む多様な障害に対する生徒等の例を充実し解説しているので参照することも大切である。

(イ)では,学級の実態や生徒の障害の状態や特性及び心身の発達の段階等を考慮の上,特別支援学校小学部・中学部学習指導要領第1章の第8節「重複障害者等に関する教育課程の取扱い」を参考にし,各教科の目標や内容を下学年の教科の目標に替えたり,学校教育法施行規則第126条の2を参考にし,各教科を,知的障害者である生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科に替えたりするなどして,実態に応じた教育課程を編成することを規定した。

 これらの特別の教育課程に関する規定を参考にする際には,特別支援学級は,中学校の学級の一つであり,通常の学級と同様,第1章総則第1の1の目標を達成するために,第2章以下に示す各教科,道徳科及び特別活動の内容に関する事項は,特に示す場合を除き,いずれの学校においても取り扱うことが前提となっていることを踏まえる必要がある。

 その上で,なぜ,その規定を参考にするということを選択したのか,保護者等に対する説明責任を果たしたり,指導の継続性を担保したりする観点から,理由を明らかにしながら教育課程の編成を工夫することが大切であり,教育課程を評価し改善する上でも重要である。

 ここでは,知的障害者である生徒の実態に応じた各教科の目標を設定するための手続きの例を示すこととする。

(各教科の目標設定に至る手続きの例)

a 中学校学習指導要領の第2章各教科に示されている目標及び内容について,次の手順で生徒の習得状況や既習事項を確認する。

・ 当該学年の各教科の目標及び内容について

・ 当該学年より前の各学年の各教科の目標及び内容について

b aの学習が困難又は不可能な場合,特別支援学校小学部・中学部学習指導要領の第2章第2節第2款第1に示されている知的障害者である生徒を教育する特別支援学校中学部の各教科の目標及び内容についての取扱いを検討する。

c 生徒の習得状況や既習事項を踏まえ,中学校卒業までに育成を目指す資質・能力を検討し,在学期間に提供すべき教育内容を十分見極める。

d 各教科の目標及び内容の系統性を踏まえ,教育課程を編成する。

 なお,特別支援学級について,特別の教育課程を編成する場合であって,文部科学大臣の検定を経た教科用図書を使用することが適当でない場合には,当該特別支援学級を置く学校の設置者の定めるところにより,他の適切な教科用図書を使用することができるようになっている(学校教育法施行規則第139条)。
 
 

ウ 障害のある生徒に対して,通級による指導を行い,特別の教育課程を編成する場合には,特別支援学校小学部・中学部学習指導要領第7章に示す自立活動の内容を参考とし,具体的な目標や内容を定め,指導を行うものとする。

 その際,効果的な指導が行われるよう,各教科等と通級による指導との関連を図るなど,教師間の連携に努めるものとする。

 通級による指導は,中学校の通常の学級に在籍している障害のある生徒に対して,各教科等の大部分の授業を通常の学級で行いながら,一部の授業について当該生徒の障害に応じた特別の指導を特別の指導の場(通級指導教室)で行う教育形態である。

 通級による指導の対象となる者は,学校教育法施行規則第140条各号の一に該当する生徒(特別支援学級の生徒を除く。)で,具体的には,言語障害者,自閉症者,情緒障害者,弱視者,難聴者,学習障害者,注意欠陥多動性障害者,肢体不自由者,病弱者及び身体虚弱者である。

 通級による指導を行う場合には,学校教育法施行規則第50条第1項(第79条の6第1項において準用する場合を含む。),第51条,第52条(第79条の6第1項において準用する場合を含む。),第52条の3,第72条(第79条の6第2項及び第108条第1項において準用する場合を含む。),第73条,第74条(第79条の6第2項及び第108条第1項において準用する場合を含む。),第74条の3,第76条,第79条の5(第79条の12において準用する場合を含む。),第83条及び第84条(第108条第2項において準用する場合を含む。)並びに第107条(第117条において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず,特別の教育課程によることができ,障害による特別の指導を,中学校の教育課程に加え,又は,その一部に替えることができる
(学校教育法施行規則第140条,平成5年文部省告示第7号,平成18年文部科学省告示第54号,平成19年文部科学省告示第146号,平成28年文部科学省告示第176号)。

 今回の改訂では,通級による指導を行い,特別の教育課程を編成する場合について,「特別支援学校小学部・中学部学習指導要領第7章に示す自立活動の内容を参考とし,具体的な目標や内容を定め,指導を行うものとする。」という規定が新たに加わった。

 したがって,指導に当たっては,特別支援学校小学部・中学部学習指導要領第7章に示す自立活動の6区分27項目の内容を参考とし,本解説第3章第4節の2(1)Aで述べたとおり,生徒一人一人に,障害の状態等の的確な把握に基づいた自立活動における個別の指導計画を作成し,具体的な指導目標や指導内容を定め,それに基づいて指導を展開する必要がある。

 なお,「学校教育法施行規則第140条の規定による特別の教育課程について定める件の一部を改正する告示」(平成28年文部科学省告示第176号)において,それまで「特に必要があるときは,障害の状態に応じて各教科の内容を補充するための特別の指導を含むものとする。」と規定されていた趣旨が,障害による学習上又は生活上の困難の克服とは直接関係のない単なる各教科の補充指導が行えるとの誤解を招いているという指摘がなされていたことから,当該規定を削除した。

 そして,「特に必要があるときは,障害の状態に応じて各教科の内容を取り扱いながら行うことができる」と改正された。

 つまり,通級による指導の内容について,各教科の内容を取り扱う場合であっても,障害による学習上又は生活上の困難の改善又は克服を目的とする指導であるとの位置付けが明確化されたところである。

 通級による指導に係る授業時数は,年間35単位時間から280単位時間までを標準としているほか,学習障害者及び注意欠陥多動性障害者については,年間10単位時間から280単位時間までを標準としている。

 また,「その際,効果的な指導が行われるよう,各教科等と通級による指導との関連を図るなど,教師間の連携に努めるものとする。」とは,生徒が在籍する通常の学級の担任と通級による指導の担当教師とが随時,学習の進捗状況等について情報交換を行うとともに,通級による指導の効果が,通常の学級においても波及することを目指していくことが重要である。

 生徒が在籍校以外の中学校又は特別支援学校の中学部において特別の指導を受ける場合には,当該生徒が在籍する中学校の校長は,これら他校で受けた指導を,特別の教育課程に係る授業とみなすことができる(学校教育法施行規則第141条)。

 このように生徒が他校において指導を受ける場合には,当該生徒が在籍する中学校の校長は,当該特別の指導を行う学校の校長と十分協議の上で,教育課程を編成するとともに,定期的に情報交換を行うなど,学校間及び担当教師間の連携を密に教育課程の編成,実施,評価,改善を行っていく必要がある。

 なお,公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部改正(平成29年3月)により,通級による指導のための基礎定数が新設され,指導体制の充実が図られている。

 
 

エ 障害のある生徒などについては,家庭,地域及び医療や福祉,保健,労働等の業務を行う関係機関との連携を図り,長期的な視点で生徒への教育的支援を行うために,個別の教育支援計画を作成し活用することに努めるとともに,各教科等の指導に当たって,個々の生徒の実態を的確に把握し,個別の指導計画を作成し活用することに努めるものとする。

 特に,特別支援学級に在籍する生徒や通級による指導を受ける生徒については,個々の生徒の実態を的確に把握し,個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成し,効果的に活用するものとする。

 個別の教育支援計画及び個別の指導計画は,障害のある生徒など一人一人に対するきめ細やかな指導や支援を組織的・継続的かつ計画的に行うために重要な役割を担っている。

 今回の改訂では,特別支援学級に在籍する生徒や通級による指導を受ける生徒に対する二つの計画の作成と活用について,これまでの実績を踏まえ,全員作成することとした。

 また,通常の学級においては障害のある生徒などが在籍している。

 このため,通級による指導を受けていない障害のある生徒などの指導に当たっては,個別の教育支援計画及び個別の指導計画を作成し,活用に努めることとした。

 そこで,個別の教育支援計画及び個別の指導計画について,それぞれの意義,位置付け及び作成や活用上の留意点などについて示す。

 平成15年度から実施された障害者基本計画においては,教育,医療,福祉,労働等の関係機関が連携・協力を図り,障害のある生徒の生涯にわたる継続的な支援体制を整え,それぞれの年代における生徒の望ましい成長を促すため,個別の支援計画を作成することが示された。

 この個別の支援計画のうち,幼児児童生徒に対して,教育機関が中心となって作成するものを,個別の教育支援計画という。

 障害のある生徒などは,学校生活だけでなく家庭生活や地域での生活を含め,長期的な視点で幼児期から学校卒業後までの一貫した支援を行うことが重要である。

 このため,教育関係者のみならず,家庭や医療,福祉などの関係機関と連携するため,それぞれの側面からの取組を示した個別の教育支援計画を作成し活用していくことが考えられる。

 具体的には,障害のある生徒などが生活の中で遭遇する制約や困難を改善・克服するために,本人及び保護者の願いや将来の希望などを踏まえ,在籍校のみならず,例えば,家庭,医療機関における療育事業及び福祉機関における生徒発達支援事業において,実際にどのような支援が必要で可能であるか,支援の目標を立て,それぞれが提供する支援の内容を具体的に記述し,支援の内容を整理したり,関連付けたりするなど関係機関の役割を明確にすることとなる。

 このように,個別の教育支援計画の作成を通して,生徒に対する支援の目標を長期的な視点から設定することは,学校が教育課程の編成の基本的な方針を明らかにする際,全教職員が共通理解をすべき大切な情報となる。

 また,在籍校において提供される教育的支援の内容については,教科等横断的な視点から個々の生徒の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を検討する際の情報として個別の指導計画に生かしていくことが重要である。

 個別の教育支援計画の活用に当たっては,例えば,就学前に作成される個別の支援計画を引き継ぎ,適切な支援の目的や教育的支援の内容を設定したり,進路先に在学中の支援の目的や教育的支援の内容を伝えたりするなど,就学前から就学時,そして進学先まで,切れ目ない支援に生かすことが大切である。

 その際,個別の教育支援計画には,多くの関係者が関与することから,保護者の同意を事前に得るなど個人情報の適切な取扱いと保護に十分留意することが必要である。

 個別の指導計画は,個々の生徒の実態に応じて適切な指導を行うために学校で作成されるものである。

 個別の指導計画は,教育課程を具体化し,障害のある生徒など一人一人の指導目標,指導内容及び指導方法を明確にして,きめ細やかに指導するために作成するものである。

 今回の改訂では,総則のほか,各教科等の指導において,「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」として,当該教科等の指導における障害のある生徒などに対する学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的,組織的に行うことが規定された。

 このことを踏まえ,通常の学級に在籍する障害のある生徒などの各教科等の指導に当たっては,適切かつ具体的な個別の指導計画の作成に努める必要がある。

 特別支援学級における各教科等の指導に当たっては,適切かつ具体的な個別の指導計画を作成するものとする。

 また,各教科の一部又は全部を,知的障害者である生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科に替えた場合,知的障害者である生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科の各段階の目標及び内容を基にして,個別の指導計画に基づき,一人一人の実態等に応じた具体的な指導目標及び指導内容を設定することが必要である。

 なお,通級による指導において,特に,他校において通級による指導を受ける場合には,学校間及び担当教師間の連携の在り方を工夫し,個別の指導計画に基づく評価や情報交換等が円滑に行われるよう配慮する必要がある。

 各学校においては,個別の教育支援計画と個別の指導計画を作成する目的や活用の仕方に違いがあることに留意し,二つの計画の位置付けや作成の手続きなどを整理し,共通理解を図ることが必要である。

 また,個別の教育支援計画及び個別の指導計画については,実施状況を適宜評価し改善を図っていくことも不可欠である。

 こうした個別の教育支援計画と個別の指導計画の作成・活用システムを校内で構築していくためには,障害のある生徒などを担任する教師や特別支援教育コーディネーターだけに任せるのではなく,全ての教師の理解と協力が必要である。

 学校運営上の特別支援教育の位置付けを明確にし,学校組織の中で担任する教師が孤立することのないよう留意する必要がある。

 このためには,校長のリーダーシップのもと,学校全体の協力体制づくりを進めたり,全ての教師が二つの計画についての正しい理解と認識を深めたりして,教師間の連携に努めていく必要がある。

 
 
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