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ア 海外から帰国した生徒などについては,学校生活への適応を図るとともに,外国における生活経験を生かすなどの適切な指導を行うものとする。

 国際化の進展に伴い,学校では帰国生徒や外国人生徒に加え,両親のいずれかが外国籍であるなどのいわゆる外国につながる生徒の受入れが多くなっている。

 これらの生徒の多くは,異文化における生活経験等を通して,我が国の社会とは異なる言語や生活習慣,行動様式を身に付けているが,一人一人の実態は,それぞれの言語的・文化的背景,年齢,就学形態や教育内容・方法,さらには家庭の教育方針などによって様々である。

 このため,これらの生徒の受入れに当たっては,一人一人の実態を的確に把握し,当該生徒が自信や誇りをもって学校生活において自己実現を図ることができるように配慮することが大切である。

 帰国生徒や外国人生徒,外国につながる生徒は,他の生徒が経験していない異文化での貴重な生活経験をもっている。

 外国での生活や異文化に触れた経験や,これらを通じて身に付けた見方や考え方,感情や情緒,外国語の能力などの特性を,本人の各教科等の学習に生かすことができるよう配慮することが大切である。

 また,本人に対するきめ細かな指導とともに,他の生徒についても,帰国生徒や外国人生徒,外国につながる生徒と共に学ぶことを通じて,互いの長所や特性を認め,広い視野をもって異文化を理解し共に生きていこうとする姿勢を育てるよう配慮することが大切である。

 そして,このような相互啓発を通じて,互いに尊重し合う態度を育て,国際理解を深めるとともに,国際社会に生きる人間として望ましい能力や態度を育成することが期待される。

 このような機会としては,外国語科において,外国語でコミュニケーションを行ったり,外国語の背景にある生活や文化などについて理解を深める学習活動を進めたりする際に配慮を行うことなどが考えられるほか,例えば社会科や音楽科などの教科や道徳科,総合的な学習の時間での学習活動,特別活動における学校行事などが考えられ,生徒や学校の実態等に応じて適宜工夫することが必要である。

 
 
イ 日本語の習得に困難のある生徒については,個々の生徒の実態に応じた指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行うものとする。特に,通級による日本語指導については,教師間の連携に努め,指導についての計画を個別に作成することなどにより,効果的な指導に努めるものとする。
 帰国生徒や外国人生徒,外国につながる生徒の中には,日本語の能力が不十分であったり,日常的な会話はできていても学習に必要な日本語の能力が十分ではなく,学習活動への参加に支障が生じたりする場合がある。

 このため,生徒が日本語を用いて学校生活を営むとともに,学習に取り組むことができるよう,一人一人の日本語の能力を的確に把握しつつ各教科等や日本語の指導の目標を明確に示し,きめ細かな指導を行うことが大切である。

 また,このような考え方は学習状況の評価に当たって生徒一人一人の状況をきめ細かに見取っていく際にも参考となる。

 平成26年に学校教育法施行規則が改正され,日本語の習得に困難がある生徒に対し,日本語の能力に応じた特別の指導を行うための特別の教育課程を編成し,実施することが可能となった。

 この制度を活用しながら,生徒の実態に応じた指導内容や指導方法の工夫を組織的・計画的に行うことが必要である。

 例えば,指導内容については,学校生活に必要な基礎的な日本語の習得のための指導を行ったり,各教科等の指導と学習のために必要な日本語の習得のための指導を統合して行うなどの工夫が考えられる。

 指導方法については,通級による指導,通常の学級における日本語の能力に配慮した指導,放課後等を活用した指導などの工夫が考えられる。

 生徒が在籍し,大半の時間を過ごすことになる通常の学級における指導に当たっては,一人一人の生徒の日本語の能力などに応じ,

@授業において使われている日本語や学習内容を認識できるようにするための支援,

A学習したことを構造化して理解・定着できるようにするための支援,

B理解したことを適切に表現できるようにするための支援,

C自ら学習を自律的に行うことができるようにするための支援,

D学習や生活に必要な心理的安定のための情意面の支援

といった側面からの支援が求められる。

 このため,通常の学級の担当教師には,例えば,ゆっくりはっきり話す,生徒の日本語による発話を促すなどの配慮,絵や図などの視覚的支援の活用,学習目的や流れが分かるワークシートの活用などの教材の工夫,生徒の日本語習得状況や学習理解度の把握に基づいた指導計画の作成など,生徒の状況に応じた支援を行うことが考えられる。

 通級による日本語指導は,学校教育法施行規則第56条の2に基づく特別の教育課程を編成することにより,日本語の習得に困難のある生徒を在籍学級以外の教室などにおいて,学校生活や学習に必要な日本語の能力を高める指導や,日本語の能力に応じた各教科等の指導などを行うものである。

 この場合には,対象となる生徒に対する通常の学級における指導と通級による日本語指導の双方を効果的に行うため,それぞれの担当教師同士が日本語の習得状況を含めた生徒の状態や変化について密接に情報交換を行うなどの連携に努め,指導の充実を図ることが重要と言える。

 さらに,他校において指導を受ける場合には,学校間及び担当教師間の連携の在り方を工夫し,情報交換等が円滑に行われるよう配慮する必要がある。

 また,通級による指導を担当する教師が中心となり,個々の生徒の日本語の能力や学校生活への適応状況を含めた生活・学習の状況,学習への姿勢・態度等の多面的な把握に基づき,指導の目標及び指導内容を明確にした指導計画(個別の指導計画)を通常の学級の担当教師等と連携して作成し,学習評価を行うなど,教職員の共通理解の下にきめ細かな指導を行うことが求められる。

 さらに,通常の学級における指導,通級による日本語指導のいずれの場合においても,言葉の問題とともに生活習慣の違いなどによる生徒の不適応の問題が生じる場合もあるので,教師自身が当該生徒の言語的・文化的背景に関心をもち,理解しようとする姿勢を保ち,温かい対応を図るとともに,当該生徒を取り巻く人間関係を好ましいものにするよう学級経営等において配慮する必要がある。

 また,外国人生徒や外国につながる生徒については,課外において当該国の言語や文化の学習の機会を設けることなどにも配慮することが大切である。

 これらの日本語の習得に困難のある生徒の指導を効果的に行うためには,生徒の在籍する通常の学級の教師,通級による日本語指導を担当する教師や学校管理職など,全ての教職員が協力しながら,学校全体で取り組む体制を構築することが重要である。

 また,日本語教育や母語によるコミュニケーションなどの専門性を有する学校外の専門人材の参加・協力を得ることも大切である。

 なお,公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部改正(平成29年3月)により,通級による日本語指導のための基礎定数が新設され,指導体制の充実が図られている。

 
 
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