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ア 夜間その他の特別の時間に授業を行う課程において学齢を経過した者を対象として特別の教育課程を編成する場合には,学齢を経過した者の年齢,経験又は勤労状況その他の実情を踏まえ,中学校教育の目的及び目標並びに第2章以下に示す各教科等の目標に照らして,中学校教育を通じて育成を目指す資質・能力を身に付けることができるようにするものとする。
 中学校夜間学級(以下「夜間中学」という。)は,戦後の混乱期の中で,生活困窮などの理由から昼間に就労又は家事手伝い等を余儀なくされた学齢生徒が多くいたことから,それらの生徒に義務教育の機会を提供することを目的として,昭和20年代初頭に中学校に付設された学級である。平成28年度現在,全国に31校が設置されている。

 平成28年12月には,「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が成立し,学齢期を経過した者(以下「学齢経過者」という。)であって小中学校等における就学の機会が提供されなかった者のうちに,就学機会の提供を希望する者が多く存在することを踏まえ,全ての地方公共団体に,夜間中学における就学機会の提供等の措置を講ずることが義務付けられたところである。

 夜間中学には,義務教育未修了者に加えて,本国において義務教育を修了していない外国籍の者や不登校など様々な事情から実質的に十分な教育を受けられないまま学校の配慮などにより卒業した者で,中学校で学び直すことを希望する者,そして不登校となっている学齢生徒の受入れが可能である。

 このように,夜間中学には,義務教育を受ける機会を実質的に保障するための様々な役割が期待されている。

 学齢経過者は,既に社会生活や実務経験等により,一定の資質・能力が養われていることがあり,この部分については,義務教育の目的・目標を達成する上で学校教育において改めて実施しなくてもよい場合が考えられる。

 他方,既に学齢期を過ぎて社会生活を送っている者等にとっては,学齢期の児童生徒と同様の時間を確保して学習に専念することは困難な実態があり,限られた時間で必要な教育を行うことが,就学機会の確保の観点からも必要である。

 このため,平成29年3月に学校教育法施行規則を改正し,夜間中学において学齢経過者に対して指導を行う際に,その実情に応じた特別の教育課程を編成することができることとした。

 具体的には,同規則第56条の4等において,学齢経過者のうち,その者の年齢,経験,または勤労の状況その他の実情に応じた特別の指導を行う必要があるものを夜間その他特別の時間において教育する場合には,文部科学大臣が別に定めるところにより特別の教育課程によることができるものとした。

 これを受けた文部科学大臣の告示において,特別の教育課程は,学習指導要領を踏まえつつ,各教科等の内容のうち,当該生徒の各学年の課程の修了または卒業を認めるに当たって必要と認められる内容によって編成するものとし,また,指導する上で必要な場合は,小学校段階の内容を取り扱うことができることとした。

 さらに,特別な教育課程を編成するに当たっては,当該特別の教育課程を実施するために必要となる授業時数を適切に確保するものとした。

 なお,この際,当該特別の指導を行う必要がある者か否かの判断及びその教育課程の内容は,当該学齢経過者をはじめとする在籍する児童生徒の教育課程の編成権限を有する校長が判断することとなる
(「学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の施行について」28文科初第1874号平成29年3月31日付け文部科学省初等中等教育局長通知)。

 上述のように,夜間中学については,昼間の中学校で不登校となっている学齢生徒が希望する場合には,夜間中学で受け入れることが可能であるが,不登校の学齢生徒に対して特別の教育課程を編成する際には,学校教育法規則第56条等に基づき,特別の教育課程を編成することとなる。

 
 
イ 学齢を経過した者を教育する場合には,個別学習やグループ別学習など指導方法や指導体制の工夫改善に努めるものとする。
 学齢経過者に対しては,その年齢や境遇が多様であることも踏まえ,指導方法や指導体制について,各学校がその実態に応じて工夫改善していくことが必要である。

 このため,第4節1「(4)指導方法や指導体制の工夫改善など個に応じた指導の充実」の欄も参照しつつ,個別学習やグループ別学習に加え,学習内容の習熟の程度に応じた指導方法等を柔軟かつ多様に導入したり,ティーム・ティーチングや合同授業などの指導体制を工夫したりすることが望まれる。

 特に,日本国籍を有しない生徒の中には,日本語の能力が不十分な場合があり,そうした生徒に対する配慮が必要となる。

 このため,第4節2「(2)海外から帰国した生徒などの学校生活への適応や,日本語の習得に困難のある生徒に対する日本語指導」の欄も参照しつつ,当該生徒の実態に応じて指導内容や教材の工夫をすること等が重要である。

 
 
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