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ア 各学校においては,校長の方針の下に,校務分掌に基づき教職員が適切に役割を分担しつつ,相互に連携しながら,各学校の特色を生かしたカリキュラム・マネジメントを行うよう努めるものとする。

 また,各学校が行う学校評価については,教育課程の編成,実施,改善が教育活動や学校運営の中核となることを踏まえ,カリキュラム・マネジメントと関連付けながら実施するよう留意するものとする。

 本項は,カリキュラム・マネジメントを,校長の方針の下に,全教職員の適切な役割分担と連携に基づき行うとともに,学校評価と関連付けて行うことを示している。

 カリキュラム・マネジメントは,本解説第3章第1節の4において示すように,学校教育に関わる様々な取組を,教育課程を中心に据えて組織的かつ計画的に実施し,教育活動の質の向上につなげていくものである。

 カリキュラム・マネジメントの実施に当たって,「校長の方針の下に」としているのは,学校の教育目標など教育課程の編成の基本となる事項とともに,校長が定める校務分掌に基づくことを示しており,全教職員が適切に役割を分担し,相互に連携することが必要である。

 その上で,生徒の実態や地域の実情,指導内容を踏まえて効果的な年間指導計画等の在り方や,授業時間や週時程の在り方等について,校内研修等を通じて研究を重ねていくことも重要であり,こうした取組が学校の特色を創り上げていくこととなる。

 また,各学校におけるカリキュラム・マネジメントの取組は,学校が担う様々な業務の進め方の改善を伴ってより充実することができる。

 この点からも,「校長の方針の下」に学校の業務改善を図り,指導の体制を整えていくことが重要となる。

 また,各学校が行う学校評価は,学校教育法第42条において「教育活動その他の学校運営の状況について評価を行い,その結果に基づき学校運営の改善を図るため必要な措置を講ずる」と規定されており,教育課程の編成,実施,改善は教育活動や学校運営の中核となることを踏まえ,教育課程を中心として教育活動の質の向上を図るカリキュラム・マネジメントは学校評価と関連付けて実施することが重要である。

 学校評価の実施方法は,学校教育法施行規則第66条から第68条までに,自己評価・学校関係者評価の実施・公表,評価結果の設置者への報告について定めるとともに,文部科学省では法令上の規定等を踏まえて「学校評価ガイドライン〔平成28年改訂〕」(平成28年3月文部科学省)を作成している。

 同ガイドラインでは,具体的にどのような評価項目・指標等を設定するかは各学校が判断するべきことではあるが,その設定について検討する際の視点となる例が12分野にわたり示されている。

 カリキュラム・マネジメントと関連付けて実施する観点からは,教育課程・学習指導に係る項目はもとより,当該教育課程を効果的に実施するための人的又は物的な体制の確保の状況なども重要である。

 各学校は,例示された項目を網羅的に取り入れるのではなく,その重点目標を達成するために必要な項目・指標等を精選して設定することが期待され,こうした例示も参照しながら各教科等の授業の状況や教育課程等の状況を評価し改善につなげていくことが求められる。

 
 

学校教育法

第42条

 小学校は,文部科学大臣の定めるところにより当該小学校の教育活動その他の学校運営の状況について評価を行い,その結果に基づき学校運営の改善を図るため必要な措置を講ずることにより,その教育水準の向上に努めなければならない。

第43条

 小学校は,当該小学校に関する保護者及び地域住民その他の関係者の理解を深めるとともに,これらの者との連携及び協力の推進に資するため,当該小学校の教育活動その他の学校運営の状況に関する情報を積極的に提供するものとする。

第49条

 第30条第2項,第31条,第34条,第35条及び第37条から第44条までの規定は,中学校に準用する。

学校教育法施行規則

第66条

 小学校は,当該小学校の教育活動その他の学校運営の状況について,自ら評価を行い,その結果を公表するものとする。

2 前項の評価を行うに当たつては,小学校は,その実情に応じ,適切な項目を設定して行うものとする。

第67条

 小学校は,前条第1項の規定による評価の結果を踏まえた当該小学校の生徒の保護者その他の当該小学校の関係者(当該小学校の職員を除く。)による評価を行い,その結果を公表するよう努めるものとする。

第68条

 小学校は,第66条第1項の規定による評価の結果及び前条の規定により評価を行つた場合はその結果を,当該小学校の設置者に報告するものとする。

第79条

 第41条から第49条まで,第50条第2項,第54条から第68条までの規定は,中学校に準用する。(略)

 
 

(参考:学校評価ガイドラインにおける教育課程の評価)

 文部科学省が作成する「学校評価ガイドライン」では,各学校や設置者において評価項目・指標等の設定について検討する際の視点となる例として考えられるものを便宜的に分類した学校運営における以下の12分野ごとに例示している。

@教育課程・学習指導,
Aキャリア教育(進路指導),
B生徒指導,
C保健管理,
D安全管理,
E特別支援教育,
F組織運営,
G研修(資質向上の取組),
H教育目標・学校評価,
I情報提供,
J保護者,地域住民等との連携,
K環境整備

 これらの例示を参考にしつつ,具体的にどのような評価項目・指標等を設定するかは各学校が判断するべきであるが,各学校は設定した学校の教育目標の実現に向けた教育課程や人的又は物的な体制に関わる評価項目・指標について,例示された項目を網羅的に取り入れるのではなく,真に必要な項目・指標等を精選して設定することが期待される。

(例えば「教育課程・学習指導」については,以下の項目が例示されている)

■ 教育課程・学習指導

○ 各教科等の授業の状況

・ 説明,板書,発問など,各教師の授業の実施方法

・ 視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の活用

・ 体験的な学習や問題解決的な学習,生徒の興味・関心を生かした自主的・自発的な学習の状況

・ 個別指導やグループ別指導,習熟度に応じた指導,生徒の興味・関心等に応じた課題学習,補充的な学習や発展的な学習などの個に応じた指導の方法等の状況

・ ティーム・ティーチング指導などにおける教師間の協力的な指導の状況

・ 学級内における生徒の様子や,学習に適した環境に整備されているかなど,学級経営の状況

・ コンピュータや情報通信ネットワークを効果的に活用した授業の状況

・ 学習指導要領や各教育委員会が定める基準にのっとり,生徒の発達の段階に即した指導に関する状況

・ 授業や教材の開発に地域の人材など外部人材を活用し,よりよいものとする工夫の状況

 

○ 教育課程等の状況

・ 学校の教育課程の編成・実施の考え方についての教職員間の共通理解の状況

・ 生徒の学力・体力の状況を把握し,それを踏まえた取組の状況

・ 生徒の学習について観点別学習状況の評価や評定などの状況

・ 学校図書館の計画的利用や,読書活動の推進の取組状況

・ 体験活動,学校行事などの管理・実施体制の状況

部活動など教育課程外の活動の管理・実施体制の状況

・ 必要な教科等の指導体制の整備,授業時数の配当の状況

・ 学習指導要領や各教育委員会が定める基準にのっとり,生徒の発達の段階に即した指導の状況

・ 教育課程の編成・実施の管理の状況
(例:教育課程の実施に必要な,教科等ごと等の年間の指導計画や週案などが適切に作成されているかどうか)

・ 生徒の実態を踏まえた,個別指導やグループ別指導,習熟度に応じた指導,補充的な学習や発展的な学習など,個に応じた指導の計画状況

・ 幼小連携,小中連携など学校間の円滑な接続に関する工夫の状況

・(データ等)学力調査等の結果

・(データ等)運動・体力調査の結果

・(データ等)生徒の学習についての観点別学習状況の評価・評定の結果

 
 
イ 教育課程の編成及び実施に当たっては,学校保健計画,学校安全計画,食に関する指導の全体計画,いじめの防止等のための対策に関する基本的な方針など,各分野における学校の全体計画等と関連付けながら,効果的な指導が行われるように留意するものとする。
 本項は,教育課程の編成及び実施に当たり,法令等の定めにより学校が策定すべき各分野の全体計画等と関連付けて,当該全体計画等に示す教育活動が効果的に実施されるようにすることを示している。

 各学校は,法令等の定めにより,学校保健計画,学校安全計画,食に関する指導の全体計画,いじめの防止等のための対策に関する基本的な方針など,各分野における学校の全体計画等を策定することとされている。

 これらの全体計画等には,生徒への指導に関する事項や学校運営に関する事項を位置付けることとなる。

 そのため,教育課程の編成及び実施に当たっては,これらの全体計画等との関連付けを十分に行うことで,効果的な指導を実現することにつながる。

〔学校保健計画〕

学校保健安全法
(学校保健計画の策定等)
第5条

 学校においては,児童生徒等及び職員の心身の健康の保持増進を図るため,児童生徒等及び職員の健康診断,環境衛生検査,児童生徒等に対する指導その他保健に関する事項について計画を策定し,これを実施しなければならない。

〔学校安全計画〕

学校保健安全法
(学校安全計画の策定等)
第27条

 学校においては,児童生徒等の安全の確保を図るため,当該学校の施設及び設備の安全点検,児童生徒等に対する通学を含めた学校生活その他の日常生活における安全に関する指導,職員の研修その他学校における安全に関する事項について計画を策定し,これを実施しなければならない。

〔食に関する指導の全体計画〕

学校給食法
第10条

 栄養教諭は,生徒又は生徒が健全な食生活を自ら営むことができる知識及び態度を養うため,学校給食において摂取する食品と健康の保持増進との関連性についての指導,食に関して特別の配慮を必要とする生徒又は生徒に対する個別的な指導その他の学校給食を活用した食に関する実践的な指導を行うものとする。

 この場合において,校長は,当該指導が効果的に行われるよう,学校給食と関連付けつつ当該義務教育諸学校における食に関する指導の全体的な計画を作成することその他の必要な措置を講ずるものとする。

〔いじめの防止等のための対策に関する基本的な方針〕

いじめ防止対策推進法
(学校いじめ防止基本方針)
第13条

 学校は,いじめ防止基本方針又は地方いじめ防止基本方針を参酌し,その学校の実情に応じ,当該学校におけるいじめの防止等のための対策に関する基本的な方針を定めるものとする。

 
 

ウ 教育課程外の学校教育活動と教育課程の関連が図られるように留意するものとする。特に,生徒の自主的,自発的な参加により行われる部活動については,スポーツや文化,科学等に親しませ,学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等,学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり,学校教育の一環として,教育課程との関連が図られるよう留意すること。

 その際,学校や地域の実態に応じ,地域の人々の協力,社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行い,持続可能な運営体制が整えられるようにするものとする。

 中学生の時期は,生徒自身の興味・関心に応じて,教育課程外の学校教育活動や地域の教育活動など,生徒による自主的・自発的な活動が多様化していく段階にある。

 少子化や核家族化が進む中にあって,中学生が学校外の様々な活動に参加することは,ともすれば学校生活にとどまりがちな生徒の生活の場を地域社会に広げ,幅広い視野に立って自らのキャリア形成を考える機会となることも期待される。

 このような教育課程外の様々な教育活動を教育課程と関連付けることは,生徒が多様な学びや経験をする場や自らの興味・関心を深く追究する機会などの充実につながる。

 特に,学校教育の一環として行われる部活動は,異年齢との交流の中で,生徒同士や教員と生徒等の人間関係の構築を図ったり,生徒自身が活動を通して自己肯定感を高めたりするなど,その教育的意義が高いことも指摘されている。

 そうした教育的意義が部活動の充実の中のみで図られるのではなく,例えば,運動部の活動において保健体育科の指導との関連を図り,競技を「すること」のみならず,「みる,支える,知る」といった視点からスポーツに関する科学的知見やスポーツとの多様な関わり方及びスポーツがもつ様々な良さを実感しながら,自己の適性等に応じて,生涯にわたるスポーツとの豊かな関わり方を学ぶなど,教育課程外で行われる部活動と教育課程内の活動との関連を図る中で,その教育効果が発揮されることが重要である。

 このため,本項では生徒の自主的,自発的な参加により行われる部活動について,

@ スポーツや文化及び科学等に親しませ,学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵(かん)養,互いに協力し合って友情を深めるといった好ましい人間関係の形成等に資するものであるとの意義があること,

A 部活動は,教育課程において学習したことなども踏まえ,自らの適性や興味・関心等をより深く追求していく機会であることから,第2章以下に示す各教科等の目標及び内容との関係にも配慮しつつ,生徒自身が教育課程において学習する内容について改めてその大切さを認識するよう促すなど,学校教育の一環として,教育課程との関連が図られるよう留意すること,

B 一定規模の地域単位で運営を支える体制を構築していくことが長期的には不可欠であることから,設置者等と連携しながら,学校や地域の実態に応じ,教員の勤務負担軽減の観点も考慮しつつ,部活動指導員等のスポーツや文化及び科学等にわたる指導者や地域の人々の協力,体育館や公民館などの社会教育施設や地域のスポーツクラブといった社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行うこと,

をそれぞれ規定している。

 各学校が部活動を実施するに当たっては,本項を踏まえ,生徒が参加しやすいように実施形態などを工夫するとともに,生徒の生活全体を見渡して休養日や活動時間を適切に設定するなど生徒のバランスのとれた生活や成長に配慮することが必要である

 また,文部科学省が実施した教員の勤務実態調査の結果では,中学校教諭の部活動に係る土日の活動時間が長時間勤務の要因の一つとなっており,その適切な実施の在り方を検討していく必要がある

 なお,先述の教員勤務実態調査の結果を踏まえ,平成29年6月22日に文部科学大臣が中央審議会に教員の働き方改革に向けた総合的な方策の検討について諮問した。

 さらに,スポーツ庁では運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン作成の検討を行っているところであり,こうした議論についても注視する必要がある。

 
 
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