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 なお,道徳教育の全体計画の作成に当たっては,生徒や学校,地域の実態を考慮して,学校の道徳教育の重点目標を設定するとともに,道徳科の指導方針,第3章特別の教科道徳の第2に示す内容との関連を踏まえた各教科,総合的な学習の時間及び特別活動における指導の内容及び時期並びに家庭や地域社会との連携の方法を示すこと。

 道徳教育の全体計画は,学校における道徳教育の基本的な方針を示すとともに,学校の教育活動全体を通して,道徳教育の目標を達成するための方策を総合的に示した教育計画である。

 学校における道徳教育の中軸となるのは,学校の設定する道徳教育の基本方針である。

 全体計画は,その基本方針を具現化し,学校としての道徳教育の目標を達成するために,どのようなことに重点的に取り組むのか,各教育活動はどのような役割を分担し関連を図るのか,家庭や地域社会との連携をどう進めていくのかなどについて総合的に示すものでなければならない。

 このような全体計画は,特に次の諸点において重要な意義をもつ。

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(ア) 人格の形成及び国家,社会の形成者として必要な資質の育成を図る場として学校の特色や実態及び課題に即した道徳教育が展開できる

 各学校においては,様々な教育の営みが人格の形成や国家,社会の形成者として必要な資質の育成につながっていることを意識し,特色があり,課題を押さえた道徳教育の充実を図ることができる。

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(イ) 学校における道徳教育の重点目標を明確にして取り組むことができる

 学校としての重点目標を明確にし,それを全教師が共有することにより,学校の教育活動全体で行う道徳教育に方向性をもたせることができる。

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(ウ) 道徳教育の要として,道徳科の位置付けや役割が明確になる

 道徳科で担うべきことを押さえるとともに,教育活動相互の関連を図ることができる。また,全体計画は,道徳科の年間指導計画を作成するよりどころにもなる。

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(エ) 全教師による一貫性のある道徳教育が組織的に展開できる

 全教師が全体計画の作成に参加し,その活用を図ることを通して,道徳教育の方針やそれぞれの役割についての理解が深まり,組織的で一貫した道徳教育の展開が可能になる。

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(オ) 家庭や地域社会との連携を深め,保護者や地域住民の積極的な参加や協力を可能にする

 全体計画を公表し,家庭や地域社会の理解を得ることにより,家庭や地域社会と連携し,その協力を得ながら道徳教育の充実を図ることができる。

 
 

 全体計画は,各学校において,校長の明確な方針の下に,道徳教育推進教師が中心となって,全教師の参加と協力により創意と英知を結集して作成されるものである。作成に当たっては,上記の意義を踏まえて次の事項を含めることが望まれる。

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(ア) 基本的把握事項

 計画作成に当たって把握すべき事項として,次の内容が挙げられる。

・ 教育関係法規の規定,時代や社会の要請や課題,教育行政の重点施策

・ 学校や地域の実態と課題,教職員や保護者の願い

・ 生徒の実態や発達の段階等

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(イ) 具体的計画事項

 基本的把握事項を踏まえ,各学校が全体計画に示すことが望まれる事項として,次の諸点を挙げることができる。

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・ 学校の教育目標,道徳教育の重点目標,各学年の重点目標

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・ 道徳科の指導の方針

 年間指導計画を作成する際の観点や重点目標に関わる内容の指導の工夫,校長や教頭等の参加,他の教師との協力的な指導等を記述する。

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・ 各教科,総合的な学習の時間及び特別活動などにおける道徳教育の指導の方針,内容及び時期

 重点内容項目との関連や各教科等の指導計画を作成する際の道徳教育の観点を記述する。

 また,各教科等の方針に基づいて進める道徳性を養うことに関わる指導の内容及び時期を整理して示す。

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・ 特色ある教育活動や豊かな体験活動における指導との関連

 学校や地域の特色を生かした取組や生徒指導との関連,職場体験活動,ボランティア活動,自然体験活動など生徒の内面に根ざした道徳性を養うことに関わる豊かな体験活動との関連を示す。

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・ 学級,学校の人間関係,環境の整備や生活全般における指導の方針

 日常的な学級経営を充実させるための具体的な計画等を記述する。

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・ 家庭,地域社会,関係機関,小学校・高等学校・特別支援学校等との連携の方針

 道徳教育講演会や道徳科の授業公開の実施,地域教材の開発や活用,広報活動や授業等に保護者や地域の人々の積極的な参加や協力を得る具体的な計画や方策,小学校・高等学校・特別支援学校等との連携方針等を記述する。

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・ 道徳教育の推進体制

 道徳教育推進教師の位置付けも含めた学校の全教師による推進体制等を示す。

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・ その他

 例えば,次年度の計画に生かすための評価の記入欄,研修計画や重点的指導に関する添付資料等を記述したりする。

 なお,全体計画を一覧表にして示す場合は,必要な各事項について文章化したり具体化したりしたものを加えるなどの工夫が望まれる。

 例えば,各教科等における道徳教育に関わる指導の内容及び時期を整理したもの,道徳教育に関わる体験活動や実践活動の時期等が一覧できるもの,道徳教育の推進体制や家庭や地域社会等との連携のための活動等が分かるものを別葉にして加えるなどして,年間を通して具体的に活用しやすいものとすることが考えられる。

 また,作成した全体計画は,家庭や地域の人々の積極的な理解と協力を得るとともに,様々な意見を聞き一層の改善に役立てるために,その趣旨や概要等を学校通信に掲載したり,ホームページで紹介したりするなど,積極的に公開していくことが求められる。

 
 

 全体計画の作成に当たっては,理念だけに終わることなく,具体的な指導に生きて働くものになるよう体制を整え,全教師で創意工夫をして,特に次のことに留意しながら作業を進めることが大切である。

(ア) 校長の明確な方針の下に道徳教育推進教師を中心として全教師の協力・指導体制を整える

 学校における道徳教育は,人格の基盤となる道徳性を育成するものであり,学校の教育活動全体で指導し,家庭や地域社会との連携の下に進めねばならないことから,特に校長が指導力を発揮し,道徳教育推進教師が中心となって全教師が全体計画の作成に主体的に参画するよう体制を整える必要がある。

 学校の様々な分掌組織と連携しながら,道徳教育推進のための協力・指導体制を整えて,計画的に取り組むことが大切である。

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(イ) 道徳教育や道徳科の特質を理解し,教師の意識の高揚を図る

 全教師が,道徳教育及び道徳科の重要性や特質について理解が深められるよう,関係する教育法規や教育課程の仕組み,時代や社会の要請,生徒の実態,保護者や地域の人々の意見等について十分研修を行い,教師自身の日常的な指導の中での課題が明確になるようにする。

 そのことを通して,全体計画の作成に関わる教師の意識の高揚を図ることができ,その積極的な活用につなげることができる。

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(ウ) 各学校の特色を生かして重点的な道徳教育が展開できるようにする

 全体計画の作成に当たっては,学校や地域の実態を踏まえ,各学校の課題を明らかにし,道徳教育の重点目標や各学年の指導の重点を明確にするなど,各学校の特色が生かされるよう創意工夫することが大切である。

 第1章第6の2には,今日的課題と中学校の発達上の課題を踏まえて重点的な指導を行う観点が示されている。

 各学校においては,それぞれの実態に応じて,第3章特別の教科道徳第2の内容に示す内容項目の指導を通して,全体としてこれらの観点の指導が充実するよう工夫する必要がある。

 また,道徳科の年間指導計画の作成に当たっても,全体計画に示した重点的な指導が反映されるよう配慮することが求められる。

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(エ) 学校の教育活動全体を通じた道徳教育の相互の関連性を明確にする

 各教科,総合的な学習の時間及び特別活動における道徳教育を,道徳の内容との関連で捉え,道徳科が要としての役割を果たせるよう計画を工夫することが必要である。

 また,学校教育全体において,豊かな体験活動がなされるよう計画するとともに,体験活動を生かした道徳科が効果的に展開されるよう道徳科の年間指導計画等においても創意工夫することが大切である。

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(オ) 家庭や地域社会,学校間交流,関係諸機関などとの連携に努める

 全体計画の作成に当たっては,生徒の実態や発達の段階,生徒との信頼関係を育む具体的な方策,保護者や地域の人々の意見に耳を傾け,それを全体計画に反映させ,必要に応じて指導に活用する柔軟な姿勢が大切である。

 また,全体計画を具体化するには,保護者,地域の人々の協力が不可欠である。

 また,近隣の幼稚園や保育所,小・中・高等学校,特別支援学校などとの連携や交流を図り,共通の関心の下に指導を行うとともに,福祉施設,企業等との連携や交流を深めることも大切であり,それらが円滑に行われるような体制等を工夫することが必要である。

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(カ) 計画の実施及び評価・改善のための体制を確立する

 全体計画は,学校における道徳教育の基本を示すものである。したがって,頻繁に変更することは適切ではないが,評価し,改善の必要があれば直ちにそれに着手できる体制を整えておくことが大切である。

 道徳教育推進教師を中心にした全教師の参画による指導体制や,次年度の計画に生かすための評価欄等も加え,活用しやすいものに整えることも考えられる。

 全教師による一貫性のある道徳教育を推進するためには,校内の研修体制を充実させ,全体計画の具体化や評価・改善に当たって必要となる事項についての理解を深める必要がある。

 
 
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