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2 各学校においては,生徒の発達の段階や特性等を踏まえ,指導内容の重点化を図ること。その際,小学校における道徳教育の指導内容を更に発展させ,自立心や自律性を高め,規律ある生活をすること,生命を尊重する心や自らの弱さを克服して気高く生きようとする心を育てること,法やきまりの意義に関する理解を深めること,自らの将来の生き方を考え主体的に社会の形成に参画する意欲と態度を養うこと,伝統と文化を尊重し,それらを育んできた我が国と郷土を愛するとともに,他国を尊重すること,国際社会に生きる日本人としての自覚を身に付けることに留意すること。

 道徳教育を進めるに当たっては,中学生という発達の段階や特性等を踏まえるとともに,学校,地域社会等の実態や課題に応じて,学校としての指導の重点に基づき指導内容についての重点化を図ることが大切である。

 どのような内容を重点的に指導するかについては,最終的には,各学校において生徒や学校の実態などを踏まえ工夫するものであるが,その際には社会的な要請や今日的課題についても考慮し,次の(1)から(5)について留意することが求められる。

 これらとあわせて,人間としての生き方について理解を深めることは,全学年を通じ,学校教育のあらゆる機会を捉えて,全ての内容項目と関わるように配慮しながら指導することが求められる。

 
 

 中学生の時期は,自我に目覚め,自ら考え主体的に判断し行動することができるようになり,人間としての生き方についての関心が高まってくる。

 その一方で,必ずしも心と体の発達が均衡しているわけではないため,人生の悩みや葛藤などで心の揺れを感じやすい時期でもある。

 また,教師や保護者など大人への依存から脱却して,自分なりの考えをもって精神的に自立していく時期でもある。

 しかし,周囲の思わくを気にして,他人の言動から影響を受けることも少なくない。

 そうした中で,現実の世界から逃避したり,今の自分さえよければよいと考えたりするのではなく,これまでの自分の言動を振り返るとともに,自分の将来を考え,他者や集団・社会との関わりの中で自制し生きていくことができる自己を確立し,道徳的に成長を遂げることが望まれる。

 そうした観点から,道徳科の授業で生徒が自己を振り返り,自己を深く見つめ,人間としての生き方について考えを深め,生徒の自立心や自律性を高め,規律ある生活が送れるようにする取組が求められる。

 
 
 近年,生徒を取り巻く社会環境や生活様式も変化し,自然や人間との関わりの希薄さから,いじめや暴力行為,自殺・自傷行為など生命を軽視する行動につながり,社会問題になることもある。

 人間としての生き方についての関心も高まるこの時期の生徒に,乳幼児や人生の先輩たちと触れ合ったり,医師や看護師などから生命に関する話を聞く機会をもったり,生命倫理に関わる問題を取り上げ話し合ったりすることなど,生命の尊さを深く考えさせ,かけがえのない生命を尊重する心を育成する取組が求められる。生命を十分に尊重できていない自らの弱さに気付くとともに,それを克服して気高く生きようとする心を育てることにもつながる。

 人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を培っていくことは,豊かな心を育むことの根本に置かれる課題の一つである。

 
 
 人間は集団や社会をつくり,他の人と互いに協力し合って生活している。

 この社会生活に秩序を与え,摩擦を少なくして個人の自由を保障するために,法やきまりは作られている。

 生徒がこうした法やきまりの意義について理解を深め,社会生活の秩序と規律を維持するためには,自らに課せられた義務や責任を確実に果たすことが大事であることを自覚することが求められる。

 特に中学校の段階では,社会生活を送る上でもつべき最低限の規範意識を確実に身に付けさせるとともに,民主主義社会における法やきまりの意義やそれらを遵守することの意味を理解し,主体的に判断し,社会の秩序と規律を自ら高めていこうとする意欲や態度を育てる指導が重要である。

 
 
 地域社会は家庭や学校とともに大切な生活の場であり,生徒にとって,家庭,学校だけでなく,地域社会の一員としての自覚を深めることが大切である。

 地域の人々との人間関係を問い直したり,職場体験活動を通して自らの将来の生き方を思い描いたり,地域についての学習を通して将来の社会の在り方を協働して探究したり,ボランティア活動などの体験活動を生かしたりするなどして,社会の形成に主体的に参画しようとする意欲や態度を身に付けていくことが大切である。

 
 
 知識基盤社会化やグローバル化がますます進展する中で,国際的規模の相互依存関係がより深まっている。

 将来の我が国を担う中学生は,郷土や国で育まれてきた優れた伝統と文化などのよさについて理解を深め,それらを育んできた我が国や郷土を愛するとともに,国際的視野に立って,他国の生活習慣や文化を尊重する態度を養うことが大切である。

 また,国際社会の中で独自性をもちながら国際社会の平和と発展,地球環境の保全に貢献できる国家の発展に努める日本人として,主体的に生きようとする態度を身に付けていくことが求められる。

 
 
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