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 中央教育審議会答申においては,小・中学校の国語科の成果と課題について,次のように示されている。

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○ PISA2012(平成24年実施)においては,読解力の平均得点が比較可能な調査回以降,最も高くなっているなどの成果が見られたが,PISA2015(平成27年実施)においては,読解力について,国際的には引き続き平均得点が高い上位グループに位置しているものの,前回調査と比較して平均得点が有意に低下していると分析がなされている。

 これは,調査の方式がコンピュータを用いたテスト(CBT)に全面移行する中で,子供たちが,紙ではないコンピュータ上の複数の画面から情報を取り出し,考察しながら解答することに慣れておらず,戸惑いがあったものと考えられるが,そうした影響に加えて,情報化の進展に伴い,特に子供にとって言葉を取り巻く環境が変化する中で,読解力に関して改善すべき課題が明らかとなったものと考えられる。

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○ 全国学力・学習状況調査等の結果によると,小学校では,文における主語を捉えることや文の構成を理解したり表現の工夫を捉えたりすること,目的に応じて文章を要約したり複数の情報を関連付けて理解を深めたりすることなどに課題があることが明らかになっている。

 中学校では,伝えたい内容や自分の考えについて根拠を明確にして書いたり話したりすることや,複数の資料から適切な情報を得てそれらを比較したり関連付けたりすること,文章を読んで根拠の明確さや論理の展開,表現の仕方等について評価することなどに課題があることが明らかになっている。

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○ 一方,全国学力・学習状況調査において,各教科等の指導のねらいを明確にした上で言語活動を適切に位置付けた学校の割合は,小学校,中学校ともに90%程度となっており,言語活動の充実を踏まえた授業改善が図られている。

 しかし,依然として教材への依存度が高いとの指摘もあり,更なる授業改善が求められる。

 これらの成果と課題を踏まえて改訂した中学校学習指導要領の国語科の主な内容は,次のようなものである。
 
 

 国語科で育成を目指す資質・能力を「国語で正確に理解し適切に表現する資質・能力」と規定するとともに,「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」の三つの柱で整理した。

 また,このような資質・能力を育成するためには,生徒が「言葉による見方・考え方」を働かせることが必要であることを示している。

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 学年の目標についても,従前,「話すこと・聞くこと」,「書くこと」,「読むこと」の領域ごとに示していた目標を,教科の目標と同様に,「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」の三つの柱で整理した。

 三つの柱に沿った資質・能力の整理を踏まえ,従前,「話すこと・聞くこと」,「書くこと」,「読むこと」の3領域及び〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕で構成していた内容を,〔知識及び技能〕及び〔思考力,判断力,表現力等〕に構成し直した。

 〔知識及び技能〕及び〔思考力,判断力,表現力等〕の構成は,以下のとおりである。

〔知識及び技能〕
(1)言葉の特徴や使い方に関する事項
(2)情報の扱い方に関する事項
(3)我が国の言語文化に関する事項

〔思考力,判断力,表現力等〕
A 話すこと・聞くこと
B 書くこと
C 読むこと

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 「知識及び技能」と「思考力,判断力,表現力等」は,国語で正確に理解し適切に表現する上で共に必要となる資質・能力である。

 したがって,国語で正確に理解し適切に表現する際には,話すこと・聞くこと,書くこと,読むことの「思考力,判断力,表現力等」のみならず,言葉の特徴や使い方,情報の扱い方,我が国の言語文化に関する「知識及び技能」が必要となる。

 このため,今回の改訂では,資質・能力の三つの柱に沿った整理を踏まえ,従前の3領域1事項の内容のうち,国語で正確に理解し適切に表現するために必要な「知識及び技能」を〔知識及び技能〕として明示した。

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 この〔知識及び技能〕に示されている言葉の特徴や使い方などの「知識及び技能」は,個別の事実的な知識や一定の手順のことのみを指しているのではない。

 国語で理解したり表現したりする様々な場面の中で生きて働く「知識及び技能」として身に付けるために,思考・判断し表現することを通じて育成を図ることが求められるなど,「知識及び技能」と「思考力,判断力,表現力等」は,相互に関連し合いながら育成される必要がある。

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 こうした「知識及び技能」と「思考力,判断力,表現力等」の育成において大きな原動力となるのが「学びに向かう力,人間性等」である。

 「学びに向かう力,人間性等」については,教科及び学年の目標においてまとめて示し,指導事項のまとまりごとに示すことはしていない。教科及び学年の目標において挙げられている態度等を養うことにより,「知識及び技能」と「思考力,判断力,表現力等」の育成が一層充実することが期待される。

 
 
 〔知識及び技能〕と〔思考力,判断力,表現力等〕の各指導事項について,育成を目指す資質・能力が明確になるよう内容を改善した。

 中央教育審議会答申において,「小学校低学年の学力差の大きな背景に語彙の量と質の違いがある」と指摘されているように,語彙は,全ての教科等における資質・能力の育成や学習の基盤となる言語能力を支える重要な要素である。

 このため,語彙を豊かにする指導の改善・充実を図っている。

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 語彙を豊かにするとは,自分の語彙を量と質の両面から充実させることである。

 具体的には,意味を理解している語句の数を増やすだけでなく,話や文章の中で使いこなせる語句を増やすとともに,語句の意味や使い方に対する認識を深め,語感を磨き,語彙の質を高めることである。

 このことを踏まえ,各学年において,指導の重点となる語句のまとまりを示すとともに,語句への理解を深める指導事項を系統化して示した。

 急速に情報化が進展する社会において,様々な媒体の中から必要な情報を取り出したり,情報同士の関係を分かりやすく整理したり,発信したい情報を様々な手段で表現したりすることが求められている。

 一方,中央教育審議会答申において,「教科書の文章を読み解けていないとの調査結果もあるところであり,文章で表された情報を的確に理解し,自分の考えの形成に生かしていけるようにすることは喫緊の課題である。」と指摘されているところである。

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 話や文章に含まれている情報を取り出して整理したり,その関係を捉えたりすることが,話や文章を正確に理解することにつながり,また,自分のもつ情報を整理して,その関係を分かりやすく明確にすることが,話や文章で適切に表現することにつながるため,このような情報の扱い方に関する「知識及び技能」は国語科において育成すべき重要な資質・能力の一つである。

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 こうした資質・能力の育成に向け,「情報の扱い方に関する事項」を新設し,「情報と情報との関係」と「情報の整理」の二つの系統に整理して示した。

 中央教育審議会答申においては,ただ活動するだけの学習にならないよう,活動を通じてどのような資質・能力を育成するのかを示すため,平成20年告示の学習指導要領に示されている学習過程を改めて整理している。

 この整理を踏まえ,〔思考力,判断力,表現力等〕の各領域において,学習過程を一層明確にし,各指導事項を位置付けた。

 また,全ての領域において,自分の考えを形成する学習過程を重視し,「考えの形成」に関する指導事項を位置付けた。

 中央教育審議会答申においては,
引き続き,我が国の言語文化に親しみ,愛情を持って享受し,その担い手として言語文化を継承・発展させる態度を小・中・高等学校を通じて育成するため,伝統文化に関する学習を重視することが必要である。
とされている。

 これを踏まえ,
伝統的な言語文化」,「言葉の由来や変化」,「書写」,「読書」に関する指導事項を「我が国の言語文化に関する事項」として整理し,その内容の改善を図った。

 
 

 国語科の指導内容は,系統的・段階的に上の学年につながっていくとともに,螺(ら)旋的・反復的に繰り返しながら学習し,資質・能力の定着を図ることを基本としている。

 このため,小・中学校を通じて,〔知識及び技能〕の指導事項及び〔思考力,判断力,表現力等〕の指導事項と言語活動例のそれぞれにおいて,重点を置くべき指導内容を明確にし,その系統化を図った。

(付録4「教科の目標,各学年の目標及び内容の系統表(小・中学校国語科)」参照)

 〔思考力,判断力,表現力等〕の各領域において,どのような資質・能力を育成するかを(1)の指導事項に示し,どのような言語活動を通して資質・能力を育成するかを(2)の言語活動例に示すという関係を明確にするとともに,各学校の創意工夫により授業改善が行われるようにする観点から,従前に示していた言語活動例を言語活動の種類ごとにまとめた形で示した。

 中央教育審議会答申において,「読書は,国語科で育成を目指す資質・能力をより高める重要な活動の一つである。」とされたことを踏まえ,各学年において,国語科の学習が読書活動に結び付くよう〔知識及び技能〕に「読書」に関する指導事項を位置付けるとともに,「読むこと」の領域では,学校図書館などを利用して様々な本などから情報を得て活用する言語活動例を示した。

 
 
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