cosnavi.jp

1 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。

(1) 単元など内容や時間のまとまりを見通して,その中で育む資質・能力の育成に向けて,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。

 その際,言葉による見方・考え方を働かせ,言語活動を通して,言葉の特徴や使い方などを理解し自分の思いや考えを深める学習の充実を図ること。

 この事項は,国語科の指導計画の作成に当たり,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現を目指した授業改善を進めることとし,国語科の特質に応じて,効果的な学習が展開できるように配慮すべき内容を示したものである。

---------------------------------

 国語科の指導に当たっては,

(1)「知識及び技能」が習得されること,

(2)「思考力,判断力,表現力等」を育成すること,

(3)「学びに向かう力,人間性等」を涵(かん)養すること

が偏りなく実現されるよう,単元など内容や時間のまとまりを見通しながら,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を行うことが重要である。

---------------------------------

 生徒に国語科の指導を通して「知識及び技能」や「思考力,判断力,表現力等」の育成を目指す授業改善を行うことはこれまでも多くの実践が重ねられてきている。

 そのような着実に取り組まれてきた実践を否定し,全く異なる指導方法を導入しなければならないと捉えるのではなく,生徒や学校の実態,指導の内容に応じ,「主体的な学び」,「対話的な学び」,「深い学び」の視点から授業改善を図ることが重要である。

---------------------------------

 主体的・対話的で深い学びは,必ずしも1単位時間の授業の中で全てが実現されるものではない。

 単元など内容や時間のまとまりの中で,例えば,主体的に学習に取り組めるよう学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりして自身の学びや変容を自覚できる場面をどこに設定するか,対話によって自分の考えなどを広げたり深めたりする場面をどこに設定するか,学びの深まりをつくりだすために,生徒が考える場面と教師が教える場面をどのように組み立てるか,といった視点で授業改善を進めることが求められる。

 また,生徒や学校の実態に応じ,多様な学習活動を組み合わせて授業を組み立てていくことが重要であり,単元のまとまりを見通した学習を行うに当たり基礎となる知識及び技能の習得に課題が見られる場合には,それを身に付けるために,生徒の主体性を引き出すなどの工夫を重ね,確実な習得を図ることが必要である。

---------------------------------

 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を進めるに当たり,特に「深い学び」の視点に関して,各教科等の学びの深まりの鍵となるのが「見方・考え方」である。

 各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方である「見方・考え方」を,習得・活用・探究という学びの過程の中で働かせることを通じて,より質の高い深い学びにつなげることが重要である。

 国語科は,様々な事物,経験,思い,考え等をどのように言葉で理解し,どのように言葉で表現するか,という言葉を通じた理解や表現及びそこで用いられる言葉そのものを学習対象としている。

 言葉による見方・考え方を働かせるとは,生徒が学習の中で,対象と言葉,言葉と言葉との関係を,言葉の意味,働き,使い方等に着目して捉えたり問い直したりして,言葉への自覚を高めることであると考えられる。

 この「対象と言葉,言葉と言葉との関係を,言葉の意味,働き,使い方等に着目して捉えたり問い直したり」するとは,言葉で表される話や文章を,意味や働き,使い方などの言葉の様々な側面から総合的に思考・判断し,理解したり表現したりすること,また,その理解や表現について,改めて言葉に着目して吟味することを示したものと言える。

---------------------------------

 なお,このことは,話や文章を理解したり表現したりする際に必要となるものであるため,これまでも国語科の授業実践の中で,生徒が言葉に着目して学習に取り組むことにより「知識及び技能」や「思考力,判断力,表現力等」が身に付くよう,授業改善の創意工夫が図られてきたところである。

 国語科において授業改善を進めるに当たっては,言葉の特徴や使い方などの「知識及び技能」や,自分の思いや考えを深めるための「思考力,判断力,表現力等」といった指導事項に示す資質・能力を育成するため,これまでも国語科の授業実践の中で取り組まれてきたように,生徒が言葉に着目し,言葉に対して自覚的になるよう,学習指導の創意工夫を図ることが期待される。
 
 

(2) 第2の各学年の内容の指導については,必要に応じて当該学年の前後の学年で取り上げることもできること。

 第2の各学年の内容は,生徒の発達の段階を踏まえて3学年に分けて示している。

 この事項は,前後の学年を考慮して弾力的に指導することができるように指導計画を立てる必要があることを述べたものである。

---------------------------------

 指導計画の作成に当たっては,小学校における指導内容を考慮した上で,生徒の発達や学習の状況に応じて,学習のねらいや生徒の興味・関心を考えながら計画を立てる必要がある。

 その際,各学年の内容に基づきながらも,その前の学年において初歩的な形で取り上げたり,後の学年において程度を高めて取り上げたりして指導することも考えられる。

 また,生徒の言語能力が螺(ら)旋的に高まるよう,各学年の学習指導を孤立させず,生徒の発達の段階を見通して目標の系統性を保ちながら柔軟かつ弾力的な運用を図り,系統化した効果的な指導がなされるよう計画を立てていくことが大切である。

 
 

(3) 第2の各学年の内容の〔知識及び技能〕に示す事項については,〔思考力,判断力,表現力等〕に示す事項の指導を通して指導することを基本とし,必要に応じて,特定の事項だけを取り上げて指導したり,それらをまとめて指導したりするなど,指導の効果を高めるよう工夫すること。

 〔知識及び技能〕に示す事項は〔思考力,判断力,表現力等〕に示す事項の指導を通して行うことを基本とすることを示すとともに,指導の効果を高めるための弾力的な時間割編成に関する取扱いを示したものである。

 具体的には,〔知識及び技能〕に示す事項の定着を図るため,必要に応じて,特定の事項を取り上げて繰り返し指導したり,まとめて単元化して扱ったりすることもできることを示している。

---------------------------------

 これは,言葉の特徴やきまりなどについて,生徒の興味・関心や学習の必要に応じ,ある程度まとまった「知識及び技能」を習得させるような指導もできることを示している。

 
 

(4) 第2の各学年の内容の〔思考力,判断力,表現力等〕の「A 話すこと・聞くこと」に関する指導については,第1学年及び第2学年では年間15〜25単位時間程度,第3学年では年間10〜20単位時間程度を配当すること。

 その際,音声言語のための教材を積極的に活用するなどして,指導の効果を高めるよう工夫すること。

 〔思考力,判断力,表現力等〕の「A 話すこと・聞くこと」に関する指導について,指導計画に適切に位置付け,確実に実施するよう,学年ごとに配当する年間の授業時数を示している。

---------------------------------

 指導計画の作成に当たっては,例えば,ある程度まとまった時間を学期ごとに配分して計画する場合,年間を通して週時間を割り当てて計画する場合,更にその両方を組み合わせて計画する場合などが考えられる。

---------------------------------

 また,教材については,録音や録画のための機器などを積極的に活用することで,指導の効果を高めるように留意する。

 
 

(5) 第2の各学年の内容の〔思考力,判断力,表現力等〕の「B 書くこと」に関する指導については,第1学年及び第2学年では年間30〜40単位時間程度,第3学年では年間20〜30単位時間程度を配当すること。

 その際,実際に文章を書く活動を重視すること。

 〔思考力,判断力,表現力等〕の「B 書くこと」に関する指導について,指導計画に適切に位置付け,確実に実施するよう,学年ごとに配当する年間の授業時数を示している。

---------------------------------

 指導計画の作成に当たっては,例えば,ある程度まとまった時間を学期ごとに配分して計画する場合,年間を通して週時間を割り当てて計画する場合,更にその両方を組み合わせて計画する場合などが考えられる。

---------------------------------

 書くことに関する資質・能力が確実に育成できるように,実際に文章を書く活動を多くすることが必要である。

 
 

(6) 第2の第1学年及び第3学年の内容の〔知識及び技能〕の(3)のオ,

第2学年の内容の〔知識及び技能〕の(3)のエ,

各学年の内容の〔思考力,判断力,表現力等〕の「C 読むこと」

に関する指導については,様々な文章を読んで,自分の表現に役立てられるようにするとともに,他教科等における読書の指導や学校図書館における指導との関連を考えて行うこと。

 読書は,国語科で育成を目指す資質・能力をより高める重要な活動の一つである。

 このため,今回の改訂では,読書に関する指導事項を〔知識及び技能〕の(3)に位置付けている。

 〔知識及び技能〕の読書に関する指導事項及び〔思考力,判断力,表現力等〕の「C 読むこと」の指導を通して,生徒の読書意欲を高め,生徒が様々な文章を読んで,自分の表現に役立てられるようになるよう配慮することが重要である。

---------------------------------

 また,国語科における読書の指導は,国語科以外の,学校の教育活動全体における読書の指導との密接な連携を図っていく必要がある。

 他教科等における読書の指導や学校図書館における指導,全校一斉の読書活動などとの関連を考慮した指導計画を作成することなどが求められる。

 
 

(7) 言語能力の向上を図る観点から,外国語科など他教科等との関連を積極的に図り,指導の効果を高めるようにすること。

 言語能力は,全ての教科等における学習の基盤となる資質・能力である。

 このため,第1章総則の第3の1(2)において,「言語能力の育成を図るため,各学校において必要な言語環境を整えるとともに,国語科を要としつつ各教科等の特質に応じて,生徒の言語活動を充実すること。」とされているとおり,言語能力の育成に向けて,国語科が中心的な役割を担いながら,教科等横断的な視点から教育課程の編成を図ることが重要である。

---------------------------------

 指導計画の作成に当たっては,他教科等の内容の系統性や関連性を考慮することが求められる。

 その際,国語科と同様,言語を直接の学習対象とする外国語科との連携は特に重要なものとなる。

---------------------------------

 例えば,国語科の学習内容が外国語科等の学習に結び付くよう指導の時期を工夫すること,関連のある学習内容や言語活動を取り上げた単元の設定を工夫することなどが考えられる。

 
 

(8) 障害のある生徒などについては,学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的,組織的に行うこと。

 

障害者の権利に関する条約に掲げられたインクルーシブ教育システムの構築を目指し,生徒の自立と社会参加を一層推進していくためには,通常の学級,通級による指導,特別支援学級,特別支援学校において,生徒の十分な学びを確保し,一人一人の生徒の障害の状態や発達の段階に応じた指導や支援を一層充実させていく必要がある。

---------------------------------

 通常の学級においても,発達障害を含む障害のある生徒が在籍している可能性があることを前提に,全ての教科等において,一人一人の教育的ニーズに応じたきめ細かな指導や支援ができるよう,障害種別の指導の工夫のみならず,各教科等の学びの過程において考えられる困難さに対する指導の工夫の意図,手立てを明確にすることが重要である。

---------------------------------

 これを踏まえ,今回の改訂では,障害のある生徒などの指導に当たっては,個々の生徒によって,見えにくさ,聞こえにくさ,道具の操作の困難さ,移動上の制約,健康面や安全面での制約,発音のしにくさ,心理的な不安定,人間関係形成の困難さ,読み書きや計算等の困難さ,注意の集中を持続することが苦手であることなど,学習活動を行う場合に生じる困難さが異なることに留意し,個々の生徒の困難さに応じた指導内容や指導方法を工夫することを,各教科等において示している。

---------------------------------

 その際,国語科の目標や内容の趣旨,学習活動のねらいを踏まえ,学習内容の変更や学習活動の代替を安易に行うことがないよう留意するとともに,生徒の学習負担や心理面にも配慮する必要がある。

 例えば,国語科における配慮として,次のようなものが考えられる。

---------------------------------

・ 自分の立場以外の視点で考えたり他者の感情を理解したりするのが困難な場合には,生徒が身近に感じられる文章(例えば,同年代の主人公の物語など)を取り上げ,文章に表れている心情やその変化等が分かるよう,行動の描写や会話文に含まれている気持ちがよく伝わってくる語句等に気付かせたり,心情の移り変わりが分かる文章の中のキーワードを示したり,心情の変化を図や矢印などで視覚的に分かるように示してから言葉で表現させたりするなどの配慮をする。

---------------------------------

・ 比較的長い文章を書くなど,一定量の文字を書くことが困難な場合には,文字を書く負担を軽減するため,手書きだけではなくICT機器を使って文章を書くことができるようにするなどの配慮をする。

---------------------------------

・ 声を出して発表することに困難がある場合や人前で話すことへの不安を抱いている場合には,紙やホワイトボードに書いたものを提示したりICT機器を活用したりして発表するなど,多様な表現方法が選択できるように工夫し,自分の考えを表すことに対する自信がもてるような配慮をする。

---------------------------------

 なお,学校においては,こうした点を踏まえ,個別の指導計画を作成し,必要な配慮を記載し,他教科等の担任と共有したり,翌年度の担任等に引き継いだりすることが必要である。

 
 

(9) 第1章総則の第1の2の(2)に示す道徳教育の目標に基づき,道徳科などとの関連を考慮しながら,第3章特別の教科道徳の第2に示す内容について,国語科の特質に応じて適切な指導をすること。

 国語科の指導においては,その特質に応じて,道徳について適切に指導する必要があることを示している。

---------------------------------

 第1章総則の第1の2(2)においては,「学校における道徳教育は,特別の教科である道徳(以下「道徳科」という。)を要として学校の教育活動全体を通じて行うものであり,道徳科はもとより,各教科,総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの特質に応じて,生徒の発達の段階を考慮して,適切な指導を行うこと」と規定されている。

 国語科における道徳教育の指導においては,学習活動や学習態度への配慮,教師の態度や行動による感化とともに,以下に示すような国語科と道徳教育との関連を明確に意識しながら,適切な指導を行う必要がある。

---------------------------------

・ 国語で正確に理解したり適切に表現したりする資質・能力を育成する上で,社会生活における人との関わりの中で伝え合う力を高めることは,学校の教育活動全体で道徳教育を進めていくための基盤となるものである。

 また,思考力や想像力を養うこと及び言語感覚を豊かにすることは,道徳的心情や道徳的判断力を養う基本になる。

 さらに,我が国の言語文化に関わり,国語を尊重してその能力の向上を図る態度を養うことは,伝統と文化を尊重し,それらを育んできた我が国と郷土を愛することなどにつながるものである。

---------------------------------

・ 第3の3(2)には,教材選定の観点として,道徳性の育成に資する項目を国語科の特質に応じて示している。

 次に,道徳教育の要としての特別の教科である道徳(以下「道徳科」という。)の指導との関連を考慮する必要がある。

 国語科で扱った内容や教材の中で適切なものを,道徳科に活用することが効果的な場合もある。

 また,道徳科で取り上げたことに関係のある内容や教材を国語科で扱う場合には,道徳科における指導の成果を生かすように工夫することも考えられる。

 そのためにも,国語科の年間指導計画の作成などに際して,道徳教育の全体計画との関連,指導の内容及び時期等に配慮し,両者が相互に効果を高め合うようにすることが大切である。

 
 
→ 中学校国語編 目次
→ 小学校国語編 目次
→ 中学校学習指導要領(2017)目次
→ 学習指導要領ナビ
トップページ