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 今回の中学校社会科の改訂は,中央教育審議会答申を踏まえて行われたものである。

 この中央教育審議会答申では,小・中・高等学校を含めた「社会科,地理歴史科,公民科の内容の見直し」について示されており,そこからは今回の中学校社会科の改訂の趣旨及び要点についても読み取ることができる。

 なお,以下,枠内に中央教育審議会答申の記述を示すとともに,それを踏まえた今回の中学校社会科の改訂の方向性を示している。

 ただし,中央教育審議会答申のいずれの引用においても,そこに示された別添資料についてはここでは掲載を割愛しているので,必要に応じて中央教育審議会答申の別添資料を確認されたい。

(1) @ 現行学習指導要領の成果と課題

○ 社会科,地理歴史科,公民科においては,社会的事象に関心を持って多面的・多角的に考察し,公正に判断する能力と態度を養い,社会的な見方や考え方を成長させること等に重点を置いて,改善が目指されてきた。

 一方で,主体的に社会の形成に参画しようとする態度や,資料から読み取った情報を基にして社会的事象の特色や意味などについて比較したり関連付けたり多面的・多角的に考察したりして表現する力の育成が不十分であることが指摘されている。

 また,社会的な見方や考え方については,その全体像が不明確であり,それを養うための具体策が定着するには至っていないことや,近現代に関する学習の定着状況が低い傾向にあること,課題を追究したり解決したりする活動を取り入れた授業が十分に行われていないこと等も指摘されている。

○ これらの課題を踏まえるとともに,これからの時代に求められる資質・能力を視野に入れれば,社会科,地理歴史科,公民科では,社会との関わりを意識して課題を追究したり解決したりする活動を充実し,知識や思考力等を基盤として社会の在り方や人間としての生き方について選択・判断する力,自国の動向とグローバルな動向を横断的・相互的に捉えて現代的な諸課題を歴史的に考察する力,持続可能な社会づくりの観点から地球規模の諸課題や地域課題を解決しようとする態度など,国家及び社会の形成者として必要な資質・能力を育んでいくことが求められる。

 ここに示されたのは,平成20年改訂の学習指導要領における小・中・高等学校を通した社会科,地理歴史科,公民科の成果と課題である。

 課題として示された,「主体的に社会の形成に参画しようとする態度や,資料から読み取った情報を基にして社会的事象の特色や意味などについて比較したり関連付けたり多面的・多角的に考察したりして表現する力の育成が不十分であること」については,同じく課題として示された,「課題を追究したり解決したりする活動を取り入れた授業が十分に行われていない」状況と併せて改善していくことが必要である。

 また,ここに示された成果と課題を踏まえた改善の方向性は,後掲する中学校社会科の改訂の基本的な考え方と軌を一にするものであり,今回改訂された学習指導要領及び本解説において反映されている。

 なお,同じく課題として示されている「社会的な見方や考え方については,その全体像が不明確であり,それを養うための具体策が定着するには至っていないこと」に関しては,今回の改訂において社会科のみならず全ての教科等において各教科等を学ぶ本質的な意義の中核をなすものが「見方・考え方」であり,教科等の学習と社会をつなぐものである,として整理がなされていることに留意が必要である。

 「社会的な見方や考え方」については,今回改めて「社会的な見方・考え方」として整理され,答申において以下のようにまとめられた。

 
 

(1) B 社会科,地理歴史科,公民科における「見方・考え方」

○ 「社会的な見方・考え方」は,課題を追究したり解決したりする活動において,社会的事象等の意味や意義,特色や相互の関連を考察したり,社会に見られる課題を把握して,その解決に向けて構想したりする際の視点や方法であると考えられる。

 そこで,小学校社会科においては,「社会的事象を,位置や空間的な広がり,時期や時間の経過,事象や人々の相互関係などに着目して捉え,比較・分類したり総合したり,地域の人々や国民の生活と関連付けたりすること」を「社会的事象の見方・考え方」として整理し,中学校社会科,高等学校地理歴史科,公民科においても,校種の段階や分野・科目の特質を踏まえた「見方・考え方」をそれぞれ整理することができる。

 その上で,「社会的な見方・考え方」をそれらの総称とした。(別添3‐4,別添3‐5を参照)

○ こうした「社会的な見方・考え方」は,社会科,地理歴史科,公民科としての本質的な学びを促し,深い学びを実現するための思考力,判断力の育成はもとより,生きて働く知識の習得に不可欠であること,主体的に学習に取り組む態度や学習を通して涵(かん)養される自覚や愛情等にも作用することなどを踏まえると,資質・能力全体に関わるものであると考えられる。

 これを踏まえ,中学校社会科における「社会的な見方・考え方」は,各分野の特質に応じて整理した。

 地理的分野では
「社会的事象の地理的な見方・考え方」として,
「社会的事象を位置や空間的な広がりに着目して捉え,地域の環境条件や地域間の結び付きなどの地域という枠組みの中で,人間の営みと関連付けて」,

 歴史的分野では
「社会的事象の歴史的な見方・考え方」として,
「社会的事象を時期,推移などに着目して捉え,類似や差異などを明確にしたり事象同士を因果関係などで関連付けたりして」,

 その上で公民的分野では
「現代社会の見方・考え方」として,
「社会的事象を政治,法,経済などに関わる多様な視点(概念や理論など)に着目して捉え,よりよい社会の構築に向けて,課題解決のための選択・判断に資する概念や理論などと関連付けて」

働かせるものとされ,

小・中・高等学校の学校種を超えて社会科,地理歴史科,公民科を貫く「社会的な見方・考え方」の構成要素として整理した。

 なお,「見方・考え方」を働かせる際に着目する視点は,地理的分野における位置や分布など,歴史的分野における時期や年代など,公民的分野における対立と合意,効率と公正など,多様にあることに留意することが必要である。

 したがって,各分野の学習における追究の過程においても,これらの視点を必要に応じて組み合わせて用いるようにすることも大切である。

 
 
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