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 中学校社会科の改訂に当たっては,既述のとおり,上記の平成20年改訂の学習指導要領における成果と課題を基に,今回の改訂において育成を目指す資質・能力が三つの柱として明確に整理されたことを踏まえ,その基本的な考え方を,次の3点に集約することができる。

 「社会に開かれた教育課程」を掲げる今回の改訂において,社会とのつながりを意識した「生きる力」の育成については,引き続きその充実が求められている。

 今回,資質・能力の育成に関わる議論が重ねられる中で,従前の学習指導要領では,それぞれ教えるべき内容に関する記述を中心に,教科等の内容の枠組みごとに身に付けることが目指される知識などが十分に整理されることなく示されているとの指摘があった。

 これは裏を返せば,今後の学習活動においては「何を理解しているか・何ができるか」にとどまることなく,「理解していること・できることをどう使うか」を意識した指導が求められていることを意味している。

 この点に関して,教育基本法第5条第2項において「社会において自立的に生きる基礎を培う」と規定した義務教育の目標に鑑み,基礎的・基本的な「知識及び技能」を,子供たちの未来において,生きて働くものとして確実な習得を図ることが必要である。

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 すでに平成20年の中央教育審議会答申等を受けて作成された「中学校学習指導要領解説 社会編」においては,基礎的・基本的な「知識及び技能」に関しては,「系統性に留意しながら,主として,

@ 社会の変化や科学技術の進展等に伴い,社会的な自立等の観点から子どもたちに指導することが必要な知識・技能,

A 確実な習得を図る上で,学校や学年間等であえて反復(スパイラル)することが効果的な知識・技能,

等に限って,内容事項として加えることが適当である旨の提言がなされている」と示されており,引き続きこのことに留意することが大切である。

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 基礎的・基本的な「知識及び技能」については,
単に理解しているか,できるかだけでなく,
それらを生きて働かせてどう使うか,
どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るかといった,

三つの柱で示された資質・能力の育成全体を見通した上で,その確実な習得が求められる。

 
 

 2の(1)の@において示したとおり,「社会的な見方・考え方」は資質・能力の育成全体に関わるものであると考えられる。

 また,課題を追究したり解決したりする活動において,社会的事象等の意味や意義,特色や相互の関連を考察したり,社会に見られる課題を把握して,その解決に向けて構想したりする際の「視点や方法(考え方)」であると考えられることを踏まえれば,「思考力,判断力,表現力等」の育成に当たって重要な役割を果たすものであると捉えられる。

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 社会科の学習においては,

社会的事象について考察する中で
「知識及び技能」の習得につながったり,

社会に見られる課題を把握して,
その解決に向けて構想する中で,
よりよい社会の実現を視野に
課題を主体的に解決しようとする態度が育まれ,
「学びに向かう力,人間性等」が
涵(かん)養されたりする

ことを考えれば,

「社会的な見方・考え方」を働かせた
「思考力,判断力,表現力等」の育成
は,
「知識及び技能」の習得,
「学びに向かう力,人間性等」の涵(かん)養とともに
資質・能力の三つの柱を育成に資することが期待されるため,
このように改訂の基本的な考え方に挙げている。

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 特に,今回の中央教育審議会における審議では,「社会的な見方・考え方」を学校種や分野等の特質を踏まえて整理する中で,中学校社会科における三分野において,それぞれの特質に応じた視点の例や,視点を生かした考察や構想(選択・判断)に向かう「問い」の例なども整理されてきた。

 単元など内容や時間のまとまりを見通した「問い」を設定し,「社会的な見方・考え方」を働かせることで,社会的事象等の意味や意義,特色や相互の関連等を考察したり,社会に見られる課題を把握してその解決に向けて構想したりする学習を一層充実させることが求められる。

 
 

 中央教育審議会答申では,各教科等の具体的な教育内容の改善については,教育基本法第2条(教育の目標)や学校教育法第21条(義務教育の目標)などの規定を踏まえて提言が行われている。

 特に教育基本法及び学校教育法に規定されている「公共の精神に基づき,主体的に社会の形成に参画し,その発展に寄与する態度を養うこと」は,中学校社会科学習の究極の目標である,公民としての資質・能力の基礎の育成と密接に関わるものである。

 また,同様に「伝統と文化を尊重」することについても教育基本法及び学校教育法に規定されている。さらに,教育基本法の第15条(宗教教育)には,宗教に関する一般的な教養は,教育上尊重されなければならない旨が示されている。

 今回の改訂においては,教育基本法等を十分に踏まえ,社会参画や様々な伝統や文化,宗教に関する学習を重視する観点から,各分野の特質に配慮して引き続き社会参画,伝統や文化,宗教に関する学習の充実を図っている。

 今回の中央教育審議会答申において,主体的に社会に参画しようとする態度についての課題が指摘される中,公職選挙法の改正に伴い選挙権年齢が満20歳以上から満18歳以上に引き下げられたことなども踏まえ,選挙権をはじめとする政治に参加する権利を行使する良識ある主権者として,主体的に政治に参加することについての自覚を深めることなど,これからの社会を創り出していく子供たちが,社会や世界に向き合い関わり合い,自らの人生を切り拓(ひら)いていくことが強く求められている。

 社会科においては,従前の学習指導要領から一貫して重視されてきた,課題の発見,解決のための「思考力,判断力,表現力等」とも相まって,身近な地域社会から地球規模に至るまでの課題の解決の手掛かりを得ることが期待されている。

 そのような理念に立つ持続可能な開発のための教育(ESD)や主権者教育などについては,引き続き社会科の学習において重要な位置を占めており,現実の社会的事象を扱うことのできる社会科ならではの「主権者として,持続可能な社会づくりに向かう社会参画意識の涵(かん)養やよりよい社会の実現を視野に課題を主体的に解決しようとする態度の育成」が必要であり,子供たちに平和で民主的な国家及び社会の形成者としての自覚を涵(かん)養することが求められる。

 
 
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