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 地理的分野における改訂の要点は,主に次の5点である。

「世界と日本の地域構成」については,
従前の
「世界の様々な地域」,
「日本の様々な地域」
の二つの大項目からなる
内容構成を見直し,

両大項目の最初に置かれた
「世界の地域構成」,
「日本の地域構成」
を統合して新たな大項目を設け,
それを地理的分野の学習の冒頭に
位置付けることとした。

この「世界と日本の地域構成」を
学習の冒頭に位置付けたのは,
世界及び日本の地域構成
に関する学習を関連付け,
世界と日本の地理的認識の座標軸を
形成することを
意図したものである。

また,そこでの学習で
小学校の地理的な学習内容を
振り返るとともに,
地図の読図や作図などの
地理的技能の基本を
身に付けることによって,
地理学習の楽しさや有用性を
確認することができ,

その後の
「世界の様々な地域」,
「日本の様々な地域」
の学習を円滑に展開し,
地理的技能の育成の
一層の充実を達成するよう
意図したものでもある。

 
 

地域調査については,従前の

世界の様々な地域又は国を対象とする
「世界の様々な地域の調査」,

生徒の生活舞台を対象とする
「身近な地域の調査」

という,対象地域によって異なる
二つの中項目からなる内容構成を見直し,

生徒の生活舞台を
主要な対象地域とした,
観察や野外調査,文献調査
などの実施方法を学ぶ
「地域調査の手法」と,

地域の将来像を構想する
「地域の在り方」

の二つの中項目に分け,
再構成することとした。

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このことは,
対象地域のスケールの違いによって
項目を分けるのではなく,

技能の習得を中心とする学習と,
地域の地理的な課題の解決
を中心とする学習
との目的の違いによって
項目を分けることで,
学習のねらいを明確にし,
その確実な実施を意図したものである。

 
 

 今回の改訂では,
中央教育審議会答申の中で,
持続可能な社会づくりの観点から地球規模の諸課題や地域課題を解決しようとする態度など,国家及び社会の形成者として必要な資質・能力を育んでいくことが求められ」ている。

 また,学校教育法の
義務教育の目標の中に示された,
進んで外国の文化の理解を通じて,他国を尊重し,国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと
については,その重要性はますます高まってきている。

そこで,
グローバル化が引き続き進展し,
また環境問題等の地球的課題が
一層深刻化する現状においては,

世界の諸地域の多様性に関わる
基礎的・基本的な知識を身に付け,
世界全体の地理的認識を養うとともに,
世界各地で見られる地球的課題について地域性を踏まえて適切に捉えること
が大切であることから,

地球的課題の視点を
「世界の諸地域」における追究の視点
として位置付けること
を意図したものである。

 
 

 中学校社会科の地理的分野学習の中心であった日本の諸地域に関する学習は,平成20年改訂によって,日本全体について任意に地域区分した上で,各地域の特色ある事象を中核に,それを他の事象と有機的に関連付けて地域的特色を捉えることとなった。

今回もこの趣旨を継承し,
項目ごとに
羅列的な扱いに陥ることのないよう,
また,
学習する地域に関する事実的な知識を
覚えることのみに主眼が置かれる
ことのないよう,
考察の仕方に重点を置いた
「日本の諸地域」学習
を引き継ぐこととした。

その際,平成20年改訂では,
指定された七つの考察の仕方に対して,
七地方区分された日本各地域を
当てはめる
という組合せが一般的であったが,

このたびは

適切に地域区分された
日本の各地域を前提に,
その地域的な特色を捉えるのに
適切な考察の仕方を,
指定された四つの考察の仕方,
あるいは必要に応じて
中核となる事象を設定する考察の仕方を,
適宜選択して組み合わせて
結び付けるようにした。

このことによって,
地域の特色を明らかにするための
中核となる事象を,
従前よりも柔軟に設定することができ,
諸地域の単なる地誌的な知識の習得に
偏重した学習に陥ることなく,
より動態地誌的な考え方の趣旨に沿った
展開ができるよう
意図したものである。

 
 

 平成20年改訂以降,未曽有の災害である東日本大震災を経て,なお継続する地震被害,さらに全国各地で生起する台風や集中豪雨等による河川の決壊,土砂崩れなど,頻発する自然災害に対応した人々の暮らしの在り方を考えることは,我が国で生活する全ての人々にとって欠くことのできない「生きる力」である。

 そこで,大項目「日本の様々な地域」にあっては,それを構成する四つの中項目を通して,我が国の自然災害や防災の実態などを踏まえた学習が可能となるように,適宜,自然災害やそこでの防災の事例が取り上げられるような構成としている。

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 例えば,

「日本の地域的特色と地域区分」では,
その前提となる日本全体としての自然環境,自然災害,防災の取組の概観を,

「日本の諸地域」では
地域レベルでのそれらの具体的な特色を,

さらに

「地域調査の手法」,
「地域の在り方」では,

調査手法,地域構想
のいずれに視点を置くか
の違いはあるものの,

いずれの学習においても
事例対象として
生徒の生活圏における
自然災害や防災を取り上げ,

学習を深めること
が可能となるよう
意図したものである。

 
 
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