cosnavi.jp

 地理的分野の目標は,社会科の目標構成と同様に,柱書として示された目標と,「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」の資質・能力の三つの柱に沿った,それぞれ(1)から(3)までの目標から成り立っている。

 そしてこれら(1)から(3)までの目標を有機的に関連付けることで,柱書として示された目標が達成されるという構造になっている。

 社会的事象の地理的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成することを目指す。

 この柱書における社会的事象の地理的な見方・考え方については,今回の中央教育審議会答申を踏まえ,「社会的事象を,位置や空間的な広がりに着目して捉え,地域の環境条件や地域間の結び付きなどの地域という枠組みの中で,人間の営みと関連付けること」とし,考察,構想する際の「視点や方法(考え方)」として整理した。

 今回の改訂においては,全ての教科,科目,分野等を学ぶ本質的な意義を,各教科等の特質に応じた「見方・考え方」として整理した。

 その過程において,中学校社会科の地理的分野と高等学校地理歴史科の地理領域科目に固有の「見方・考え方」について,改めて「社会的事象の地理的な見方・考え方」として整理している。

 このことについては,平成20年改訂時に「中学校学習指導要領解説 社会編」の中で,以下のとおり「地理的な見方や考え方」について詳細に整理してきたところであり,基本的に今回改訂においてもその趣旨を引き継ぐものである。

( 参 考 )

平成20年版「中学校学習指導要領解説 社会編」における「地理的な見方や考え方」の基本

「地理的な見方」の基本

 どこに,どのようなものが,どのように広がっているのか,諸事象を位置や空間的な広がりとのかかわりでとらえ,地理的事象として見いだすこと。また,そうした地理的事象にはどのような空間的な規則性や傾向性がみられるのか,地理的事象を距離や空間的な配置に留意してとらえること。

「地理的な考え方」の基本

 そうした地理的事象がなぜそこでそのようにみられるのか,また,なぜそのように分布したり移り変わったりするのか,地理的事象やその空間的な配置,秩序などを成り立たせている背景や要因を,地域という枠組みの中で,地域の環境条件や他地域との結び付きなどと人間の営みとのかかわりに着目して追究し,とらえること。

 その上で,社会的事象の地理的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通してについては,地理的分野の学習において主体的・対話的で深い学びを実現するために,社会的事象の地理的な見方・考え方に根ざした追究の視点とそれを生かして解決すべき課題(問い)を設定する活動が不可欠であることを意味している。

 また,社会的事象の地理的な見方・考え方を働かせについては,地理的分野の学習の特質を示している。

 すなわち,事象の意味や意義,特色や相互の関連を考えたり,地域に見られる課題を把握して,その解決に向けて選択・判断したりするということであり,
また,それを用いることによって生徒が獲得する知識の概念化を促し,理解を一層深めたり,課題を主体的に解決しようとする態度などにも作用したりするということである。

 こうした「社会的事象の地理的な見方・考え方」については,平成20年改訂時の「地理的な見方や考え方」についても,分野の最終的な目標として「地理的な見方や考え方の基礎を培い」と示しつつ,学習の全般を通じて培うものとして「系統性に留意して計画的に指導すること」(内容の取扱い)と説明していたところである。

 今回の改訂においてはこれらの趣旨を踏まえつつ,改めて柱書において明示したものである。

 課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成することを目指すについては,社会科及び各分野に共通する表現である。

 地理的分野においては,地理ならではの「社会的事象の地理的な見方・考え方を働かせ」て,以下の(1)から(3)までの資質・能力を育成することにより,「グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な」我が国の国土及び世界の諸地域に関する地理的認識を養うことが求められる。

 
 

(1)我が国の国土及び世界の諸地域に関して,地域の諸事象や地域的特色を理解するとともに,調査や諸資料から地理に関する様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。

 目標の(1)は,地理的分野の学習を通じて育成される資質・能力のうち,「知識及び技能」に関わるねらいを示している。

 我が国の国土及び世界の諸地域に関してについては,平成20年改訂の趣旨を引き継いで,中学校社会科の地理的分野が我が国の国土と世界の諸地域の両方を学習対象とすることを示している。

 ここで言う「国土」とは,山地,平野,海岸などの自然物からなる土地それ自体だけを指すのではなく,そこに居住し生活する人々及び社会の実態や,人間の土地への対応の仕方を含めたものである。

 地域の諸事象や地域的特色を理解するについては,後述する「多面的・多角的に考察したり,地理的な課題の解決に向けて公正に選択・判断したりする」学習過程を前提に,地域に関わる諸事象や特色を理解することを意味している。

 「地域的特色」は,大きく見ると,地域の環境条件,他地域との結び付き及びそこに居住してより豊かな生活を実現するために努力している人々の営みとの関わりの中で生み出され,地域の環境条件,他地域との結び付き,人々の営みが相互に影響を及ぼしながら地域的特色は形成され,変容している。

 よって,視野の狭い学習により,単に地理的な知識を詰め込むのではなく,広い視野に立ち,地域に関わる諸事象や特色を理解することが大切である。

 調査や諸資料から地理に関する様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるについては,情報を収集する技能,情報を読み取る技能,情報をまとめる技能の三つの技能に分けて考えることができる(後掲の「(3)内容の取扱い」及び巻末の参考資料を参照)。

 これらについて地理的分野の学習に即して言えば,情報を収集する技能に関わっては,情報技術革新や情報化の進展により地理情報(地域に関する情報)が増大し多様化する現代において,多種多様な資料を容易に得ることができるようになっている。

 しかし,それらの中には,地理的分野の学習に結び付かないような高度な情報や詳細過ぎる情報なども少なくない。

 また,情報量には地域的な偏りがあるばかりでなく,学校周辺の社会的事象に関する情報などのように,生徒自身が現地で観察するなどして収集するのが適切な情報もある。こうした点に考慮して,課題の解決に向けて有用な情報を適切に収集する技能を高めることを求めている。

 また,情報を読み取る技能に関わって,地理的分野の学習で用いられる資料には,地図や統計,写真など様々あるが,その中でも最も重要な役割を果たしているのが地図である。

 現代のように地域間の交流の盛んな時代においては,社会的事象を位置や空間的な広がりなどを考慮して地図上で捉えることは効果的であり大切である。

 また,地域の変容が激しくなっている現代では,新旧の地図を比較し関連付ける学習は,地域の変容の軌跡を捉え,地域の課題や将来像などについて考える上でも大切である。

 さらに,情報をまとめる技能に関わっては,上記の読図力とともに,特に地理情報を地図にまとめて主題図を作成する作図力などの地理的技能を,地理学習の全般にわたってしっかり身に付けさせるよう工夫することも大切である。

 以上に述べた,情報を収集したり,読み取ったり,まとめたりする多様な技能については,既述のとおり,資料の特性とともに収集する手段やその内容に応じてそれぞれに指導上の留意点が考えられるため,一度にそれらの技能の全てを養おうとするのではなく,生徒の習熟の様子を踏まえて着実に身に付くよう,繰り返し指導する機会を設けることが大切である。

 
 

(2)地理に関わる事象の意味や意義,特色や相互の関連を,位置や分布,場所,人間と自然環境との相互依存関係,空間的相互依存作用,地域などに着目して,多面的・多角的に考察したり,地理的な課題の解決に向けて公正に選択・判断したりする力,思考・判断したことを説明したり,それらを基に議論したりする力を養う。

 目標の(2)は,地理的分野の学習を通じて育成される資質・能力のうち,「思考力,判断力,表現力等」に関わるねらいを示している。

 地理的分野において養われる思考力,判断力とは,社会的事象の地理的な見方・考え方を用いて,地理に関わる事象の意味や意義,特色や相互の関連を多面的・多角的に考察する力,地理的な課題を把握して,解決に向けて学習したことを基に複数の立場や意見を踏まえて選択・判断できる力を意味している。

 位置や分布,場所,人間と自然環境との相互依存関係,空間的相互依存作用,地域などについては,社会的事象を「地理に関わる事象」として捉える際の,社会に見られる課題を「地理的な課題」として考察する際の視点である。

 よって,それらの視点に着目することで,社会的事象を地理に関わる事象,すなわち地理的な事象として見いだしたり,社会に見られる課題を「地理的な課題」として考察したりすることを可能にするものである。

 「位置や分布,場所,人間と自然環境との相互依存関係,空間的相互依存作用,地域など」については,これまでの地理学習においても重視されてきた視点である。

 これらは従前の「地理的な見方や考え方」においても,主要な視点として組み込まれていたが,今回,教科を超えて深い学びを実現するための各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を整理する中で,それを構成する地理ならではの視点として明示することとした。

 その際,上記の五つの用語を視点として例示したのは,国際地理学連合地理教育委員会によって地理教育振興のためのガイドラインとして制定された地理教育国際憲章(1992)において,それらが地理学研究の中心的概念として示されたことによる。

 なお,以下に,同憲章の関連部分を,その訳文をもって示すが,これらの視点はあくまでも中心的な視点であり,例えば,「位置」には「絶対的位置」と「相対的位置」があるように,中心的な視点の下位にもさらに様々な視点が考えられ,また,複数の中心的な視点にまたがる視点も考えられる。

 実際の授業では,多様な視点が存在することに留意しつつ,それらの視点を授業のねらいに即して用いることが大切である。

( 参 考 )

地理教育国際憲章(1992)

1) 位置や分布

 人間と場所は,この地表面においてそれぞれ異なる絶対的位置と相対的位置とを有している。

 これらの位置は,財と人間と情報の流れで結び合わされており,地表面上での分布とパターンを説明してくれる。

 また,人間と場所の位置に関する知識は,地元,地域,国家,地球上でのそれぞれの相互依存関係を理解するための前提条件となる。

 

2) 場所

 場所は,自然的にも人文的にも多様な特徴を示す。

 自然的特徴に含まれるものには,地形,土壌,気候,水,植生,動物,人間生活,などがある。

 また,人間は,それぞれの信念や哲学にしたがい,文化,集落,社会・経済システム,あるいは生活様式などを発展させる。

 場所の自然的特徴に関する知識,あるいは人々の環境への関心や行為は,人間と場所の相互依存関係を理解するための基礎となる。

 

3) 人間と自然環境との相互依存関係

 人間は,自然環境を多様に利用する。

 また,様々な働きかけにより,多様な文化景観を造り出す。

 人間は,一方で自然諸要素の影響を受けるとともに,他方で,身の周りの環境を調和の取れた景観に変えたり,ときには不調和な景観へと変化させる。

 つまり,空間における複雑な相互依存関係への理解が,環境計画や環境管理,あるいは環境保護にとって大変重要なものとなる。

 

4) 空間的相互依存作用

 資源は,一般にこの地球上に不均等に分布する。

 資源の自給自足ができる国など存在しえない。

 また,場所は,資源や情報を交換するために,運輸・通信システムにより結ばれている。

 さらに,空間的相互依存作用に立ち入ってみると,財や情報の交換,あるいは人口移動による人々の協力を理解することにつながる。

 また,空間的相互依存作用を探求することは,現代の問題を浮き彫りにしたり,地域的,国家的あるいは国際的な相互依存作用や協力関係の改善へのアイデアを提起したり,あるいは,貧困と富裕並びに人類の福祉への深い理解をもたらしてくれる。

 

5) 地域

 ある地域は,固有の要素により特徴づけられた一定の空間的ひろがりをもつ区域である。

 例えば,政治的要素からみれば,国家や都市が,自然的要素では,気候や植生地帯が,さらに社会・経済的要素からは,開発の進んだ国々と低開発諸国などが区分される。

 地域は,空間的にも時間的にも躍動的なものである。地域は,研究のための,あるいは変貌をとげる環境としての基礎単位として取り扱うことができる。

 地理学者は,地域をいろいろと異なった規模,つまり地域社会,国家,大陸,地球規模で研究の対象とする。

 地域のもつ統合的システムは,一つの地球的生態系の概念へと導かれる。

 地球システムの中の異なる地域の構造と発展過程の理解は,人々の地域的,国家的アイデンティティ及び国際的立場を明らかにするための基礎となる。

 また,これらの視点は,上述のように社会的事象の地理的な見方・考え方を働かせた具体的な授業の中で,主要な問いとしても用いられるものである。

 このような地理的分野の学習における社会的事象の地理的な見方・考え方や「視点」と「問い」との関わりについては,これまでも触れてきたところであるが,改めて地理的分野の学習におけるそれらの関係を示せば,以下のことが考えられる。

(ア) 「位置」や「分布」について

 多面的な性質をもつ社会的事象の中から,位置や分布に関わる事象は地理的分野の主要な学習対象となる。

 「それはどこに位置するのか,それはどのように分布するのか」という問いは,事象の所在を問う,地理学習において欠かすことができない問いである。

 例えば,「どのような位置関係にあるのか」という問いは,位置の規則性を見いだすことにもなり,「なぜそこに位置するのか」,「なぜそのような分布の規則性,傾向性を示すのか」という問いに発展するなど深い学びに結び付くものと考えられる。

※原文では(ア)は、○の中にアである。

(イ) 「場所」について

 「それはどのような場所なのか」を問うことで,その場所の地域的特色が明らかになる。

 そうした追究を通してそれぞれの場所の特質が浮かび上がり,さらに他の場所との比較の中で,そうした事象は,そこでしか見られないのかという地方的特殊性と,他の地域にも見られるのかという一般的共通性を探ることとも結び付く。

 なお,地域の規模により,こうした一般的共通性や地方的特殊性は異なってくる。

 例えば,日本では,水田はほぼ全国に分布する一般的共通性を有する土地利用といえるが,世界では水田は東,東南アジアなどに集中して分布する地方的特殊性を有する土地利用であり,一般的共通性をもつ土地利用とは言えないことなどが事例として挙げられる。

※原文では(イ)は、○の中にイである。

(ウ) 「人間と自然環境との相互依存関係」について

 「そこでの生活は,周囲の自然環境からどのような影響を受けているか」,「そこでの生活は,周囲の自然環境にどのような影響を与えているか」,そうした問いから明らかになるのは,人々の生活と自然環境との密接な関わりである。

 人々の生活は自然からの制約を受けることで,それに対応して伝統的な生活様式を確立してきたし,それに対応して生活に関わる技術を発展させてきた。

 一方で,人々は自然環境に働きかけ,自然環境を改変するなどして自然環境に影響を与えてもきた。

 それらの関わりについて

「なぜそのような影響を受けているのか」,
「なぜそのような影響を与えているのか」
を考えることは
「どのような自然の恩恵を求めるのか」,
「どのように自然に働きかけるのか」など,
人間と自然環境との関係について
考える出発点となる。

 人間と自然環境との相互依存関係について考えることは,地域的特色を理解したり,地域の環境開発や環境保全を考えたりする際の重要な基礎となる。

※原文では(ウ)は、○の中にウである。

(エ) 「空間的相互依存作用」について

 人や資源,財,情報などあらゆるものは,地球上に不均等に分布している。

 このため,全ての場所は交通や通信等によって他の場所や地域と結び付いている。「そこは,それ以外の場所とどのような関係をもっているのか」という問いは,その結び付きにおいて見られる地域間の相互依存や協力,競合などの様々な関係を浮き彫りにする。

 また,「なぜ,そのような結び付きをしているのか」という問いは,空間的な関係性の要因を考察することにより,人や資源,財,情報などの不均等な分布を地域的に理解し,地域的特色の形成を明らかにするだけでなく,今後の地域の開発や地域間の関係改善への課題を見いだし,地域の将来像を構想することにもつながる問いである。

※原文では(エ)は、○の中にエである。

(オ) 「地域」について

 意味のある空間的範囲という地域の捉え方をすることで,その地域の特色は明確になり,そこに関わる人々の生活との関わりが捉えやすくなる。

 「その地域は,どのような特徴があるのか」,「この地域と他の地域ではどこが異なっているのか」という問いを通して,地域の特色を明らかにすることができる。

 「なぜ,ここ(この地域)はそのようになったのか」という問いでは,この地域が,分布パターンからどのような一般的共通性の下,場所の特徴からどのような地方的特殊性をもち,人々の生活と自然環境がどのように関わり,他地域とどのように結び付き,それらの関係がどのように変容しながら,現在の地域が形成されたのかを考察することができる。

 地域を捉える際には,現在の地域だけでなく,変容してきた,変容していく地域も視野に入れ,過去,現在,将来を見通す観点も必要である。

 地域は空間的にも時間的にも可変的な存在である。

 どのような事象を対象として空間的に捉えようとするのか,その目的により,対象となる地域の規模は異なってくる。

 また,地域に関しては,「どのような地域にすべきか」という問いもよく投げかけられるところである。

 そのために私たちは将来どのような意思決定をし,どのような行動をすべきなのかといったことを見据え,地理的な課題を,そうした問いを通して捉え,多面的・多角的に考察し,構想(選択・判断)する力を養うことが大切である。

※原文では(オ)は、○の中にオである。

 
 

(3)日本や世界の地域に関わる諸事象について,よりよい社会の実現を視野にそこで見られる課題を主体的に追究,解決しようとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵(かん)養される我が国の国土に対する愛情,世界の諸地域の多様な生活文化を尊重しようとすることの大切さについての自覚などを深める。

 目標の(3)は,地理的分野の学習を通じて育成される資質・能力のうち,「学びに向かう力,人間性等」に関わるねらいを示している。

 日本や世界の地域に関わる諸事象について,よりよい社会の実現を視野にそこで見られる課題を主体的に追究,解決しようとする態度を養うについては,教科目標の「社会的事象について,よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に解決しようとする態度を養う」を受けて,日本や世界の様々な地理的な事象に生徒自らが関心をもって学習に取り組むことができるようにするとともに,学習を通して更に関心が喚起されるよう指導を工夫する必要性を示している。

 例えば,地域調査などの具体的な活動を通して,まだ見ぬ地域を知ったり,知るための学び方や調べ方を学んだりすることは,成長期の生徒にとって,本来,楽しいことであり,学びがいのあることである。

 しかし,実際には,知識を詰め込む学習に陥ったり,人間の営みとの関連付けが不十分だったりすることが少なくなく,その実施の割合も高くない。

 それだけに,例えば,景観の観察といった比較的実施に負担が少なく,視覚的に捉える活動を取り入れるなど,現代の日本や世界の地理的な事象を取り扱う地理学習の特質を生かして,作業や体験を伴う学習や課題を設定し追究する学習などを工夫し,生徒の社会参画意識の涵(かん)養を視野に主体的な学習を促すことが必要である。

 我が国の国土に対する愛情,世界の諸地域の多様な生活文化を尊重しようとすることの大切さについての自覚については,グローバル化が進み,国際理解の必要性が増している現代において重要な資質・能力であり,地理的分野において育成することが期待される「学びに向かう力,人間性等」である。

 こうした愛情や自覚などを「深める」には,「多面的・多角的な考察や深い理解」を通した日々の学習の積み重ねによって醸成されるものであることに留意する必要がある。

 
 
→ 中学校社会編 目次
→ 小学校社会編 目次
→ 中学校学習指導要領(2017)目次
→ 学習指導要領ナビ
トップページ