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 上記の目標を達成するため,
地理的分野の内容は
次の大項目Aから大項目Cまでで構成している。

このうち大項目Aでは
世界と日本の地域構成の基本的な枠組みの理解を,

大項目Bでは
世界の諸地域に関する地理的認識を,

大項目Cでは
我が国の国土に関する地理的認識を,

それぞれ主な学習内容としている。

 この大項目は,地理的分野の学習の導入として小学校の学習成果を踏まえ,世界と日本の地域構成を主な学習対象とし,世界と日本の地域構成を大観し理解する学習を通して,地域の諸事象や地域的特色を理解する際の座標軸となる視座を養うことをねらいとしている。

 このねらいを達成するため,この大項目は「(1)地域構成」という一つの中項目で構成している。

A 世界と日本の地域構成

(1)地域構成

 次の@とAの地域構成を取り上げ,位置や分布などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,以下のア及びイの事項を身に付けることができるよう指導する。

@ 世界の地域構成

A 日本の地域構成

 

ア 次のような知識を身に付けること。

(ア) 緯度と経度,大陸と海洋の分布,主な国々の名称と位置などを基に,世界の地域構成を大観し理解すること。

(イ) 我が国の国土の位置,世界各地との時差,領域の範囲や変化とその特色などを基に,日本の地域構成を大観し理解すること。

 

イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 世界の地域構成の特色を,大陸と海洋の分布や主な国の位置,緯度や経度などに着目して多面的・多角的に考察し,表現すること。

(イ) 日本の地域構成の特色を,周辺の海洋の広がりや国土を構成する島々の位置などに着目して多面的・多角的に考察し,表現すること。

(内容の取扱い)

(3) 内容のAについては,次のとおり取り扱うものとする。

ア (1)については,次のとおり取り扱うものとする。

(ア)日本の地域構成を扱う際には,都道府県の名称と位置のほかに都道府県庁所在地名も取り上げること。

(イ)「領域の範囲や変化とその特色」については,我が国の海洋国家としての特色を取り上げるとともに,竹島や北方領土が我が国の固有の領土であることなど,我が国の領域をめぐる問題も取り上げるようにすること。

 その際,尖閣諸島については我が国の固有の領土であり,領土問題は存在しないことも扱うこと。

(ウ)地球儀や地図を積極的に活用し,学習全体を通して,大まかに世界地図や日本地図を描けるようにすること。

 この中項目の構成,主なねらいや着目する視点などについては次のとおりである。

 この中項目は,地球規模と国家規模の視座から地域構成を捉えるという観点から,「@ 世界の地域構成」,「A 日本の地域構成」の二つの地域構成からなる小項目で構成している。

 この中項目は,位置や分布などに関わる視点に着目して,地域構成の特色を多面的・多角的に考察し,表現する力を育成することを主なねらいとしている。

 そうした学習の全体を通して,世界と日本の地域構成を大観し理解できるようにすることが求められている。

 この地理的分野の導入部分に,世界と日本の地域構成の基本的な枠組みに関する学習を位置付けるのは,それらが世界や日本の地理的認識を深める際の座標軸のような役割を果たし,地理学習への関心を高めたり,学習成果の定着を図ったりするのに効果的だからである。

 また,中学校での学習の導入に当たって,小学校において学習した我が国や世界の国に関する知識や関心を生かすとともに,小学校と中学校の接続が円滑に行われるようにすることもねらいとしている。

 この中項目における位置や分布に関わる視点としては,例えば,緯度と経度により世界の主な国々の所在地を捉えたり,我が国の周辺の海洋や構成する島々から領域の広がりを捉えたりすることなどが考えられる。

 なお,「知識及び技能」を身に付けることをねらいとするアに示された事項と,「思考力,判断力,表現力等」を身に付けることをねらいとするイに示された事項は,それが示された各中項目,小項目の特質に応じて互いに関連させて取り扱うことが必要であり,このことは以降の中項目,小項目においても同様である。

 この中項目のうち,「@ 世界の地域構成」で身に付けたい事項については,次のとおりである。

 この小項目で身に付けたい
「知識」に関わる事項として,ア(ア)
「緯度と経度,
 大陸と海洋の分布,
 主な国々の名称と位置
 などを基に,
 世界の地域構成を大観し理解すること」
が挙げられる。

 このうち,緯度と経度については,地球上の位置を緯度・経度を用いて表せるようにすることを意味している。

 また,赤道,本初子午線,北半球・南半球などの意味を理解して,地球上の位置を表す際に用いることができるようにすることを意味している。

 大陸と海洋の分布については,各種の地球儀や世界全図,大陸別の地勢図などを活用して,地球規模の位置関係を捉える手掛かりとなる六大陸と三大洋の大まかな形状と位置関係を理解できるようにすることを意味している。

 主な国々の名称と位置については,世界の地域構成を大観する上で,地球上の位置関係を捉え,表現するための手掛かりとなる国名の知識を理解できるようにすることを意味している。

 例えば,地理学習の基礎・基本として繰り返し定着させる必要があるという観点から,面積の広い国や狭い国,人口の多い国や少ない国,日本と関わりの深い国を取り上げることや,生活の中で生きて働く知識という観点からニュースで頻繁に扱われる国を取り上げることなどが考えられる。

 なお,日常生活で情報を得やすい国には地域的に偏りがあることに留意し,内容のBの「(1)世界各地の人々の生活と環境」や「(2)世界の諸地域」の学習,歴史的分野の学習で扱う国との関連を図りつつ,扱う国が一部の地域に偏ることがないよう取り上げることが大切である。

 この小項目では様々な観点から国々を取り上げることを想定しており,地理学習の全体を通して,生徒は世界の4分の1から3分の1程度の国々の名称と位置を身に付けることが一応の目安となると考えられ,例えば,内容のBの「(2)世界の諸地域」などにおいても主な国々の名称と位置を適宜取り上げ,その知識の定着を図ることが必要である。

 小学校高学年から中学校にかけては,生徒の空間的な視野が身近な空間から急速に拡大し,世界に向けて大きく広がる時期である。

 世界の国名などの知識を積極的に身に付け,それがより深い理解につながっていく生徒も多い一方,国名を覚えることに負担を感じる生徒も少なくない。

 そのような生徒一人一人の特性等に十分に配慮して授業が展開できるように,例えば,国名を単に覚えるだけの学習にならないよう,索引を使って国の位置を探すなど教科用図書「地図」(以下,解説文中では「地図帳」という。)を活用した学習活動を行ったり,人物名,山や川などの地形名などに由来する国名に着目したりするなど,生徒の関心を引き出すような活動が大切である。

 世界の地域構成を大観しについては,日常生活で活用しやすいなどの観点から,州やそれらを幾つかに区分した地域などを取り上げ,世界を大きく捉えることを意味している。

 州を幾つかに区分した地域とは,アジア州を東アジア,東南アジアなどに区分けして捉えるといった程度の区分である。

 また,アジア州とヨーロッパ州にまたがるロシア連邦などを例にして二つの州にまたがる国があることに気付いたり,中東地域,ラテンアメリカなど,ニュースなどで取り上げられる地域名を手掛かりにして世界が様々な地域に分けられることに気付いたりすることも大切である。

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 この小項目で身に付けたい
「思考力,判断力,表現力等」に関わる事項として,イ(ア)
「世界の地域構成の特色を,
 大陸と海洋の分布や
 主な国の位置,
 緯度や経度
 などに着目して
 多面的・多角的に考察し,表現すること」
が挙げられる。

 このうち,大陸と海洋の分布や主な国の位置,緯度や経度などに着目してについては,例えば,大陸と海洋の分布を地球儀と世界地図上で比較することで,その違いを考察したり,地球儀の日本の位置に十字に貼ったテープをあて,東西方向へ進むとどこの国に到達するかを調べて,世界の主な国が日本とどのような位置関係にあるかを考察したりするなどの活動を通して,地球儀で地球上の位置関係や陸地面積,形状を正しく捉える学習を行うことが考えられる。

 また,日本の対蹠(たいせき)点(地球上の正反対の地点)を探す活動を通して,緯度や経度の仕組みや性質について考察することなどが考えられる。

 この中項目のうち,「A 日本の地域構成」で身に付けたい事項については,次のとおりである。

 この小項目で身に付けたい
「知識」に関わる事項として,ア(イ)
「我が国の国土の位置,
 世界各地との時差,
 領域の範囲や変化とその特色
 などを基に,
 日本の地域構成を大観し理解すること」が挙げられる。

 このうち,我が国の国土の位置については,緯度と経度を使って同緯度,同経度の国々に着目するなどして国土の絶対的位置(数理的位置)を捉えることの他に,様々な相対的位置(関係的位置)を取り上げることを意味している。

 具体的には,例えば,日本の略地図に日本の東西南北端などの領土の端を描き加えてその位置を緯度と経度を用いて捉えたり,日本をユーラシア大陸の東に位置するというように隣接する大陸や海洋,近隣の国々との位置関係によって捉えたりするなど,様々な面から取り扱うことを意味している。

 世界各地との時差については,日本と世界各地との時差から地球上における我が国と世界各地との位置関係を理解できるようにすることを意味している。

 例えば,等時帯や日付変更線を示す地図と地球儀を見比べて時差の意味を理解したり,時差を調べたりできるようにすることや,時差のある海外の様子を衛星中継する映像を活用するなど生活場面と結び付けて時差の概念を理解できるようにすることなどを意味している。

 領域の範囲や変化とその特色の中の「領域」については,領土だけでなく,領海,領空から成り立っており,それらが一体的な関係にあることを捉えることを意味している。

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 この小項目で身に付けたい
「思考力,判断力,表現力等」に関わる事項として,イ(イ)
「日本の地域構成の特色を,
 周辺の海洋の広がりや
 国土を構成する島々の位置
 などに着目して
 多面的・多角的に考察し,表現すること」が挙げられる。

 このうち,周辺の海洋の広がりや国土を構成する島々の位置などに着目してについては,例えば,我が国の国土は多数の島々からなり,広大な広がりを有する海洋国家としての特色をもっていることなどを考察できるように,日本の略地図に国土の東西南北端などの島々を描き加えたり,他の国々と領海や排他的経済水域を含めた面積で比較したりすることなどが考えられる。

 「内容の取扱い」などに示された留意事項については,次のとおりである。

 (ア)における都道府県の名称と位置のほかに都道府県庁所在地名も取り上げること(内容の取扱い)については,日本地図を使って都道府県の名称と位置を確認したり,自分の描いた略地図に位置と名称を書き込んだりするなどの学習活動を取り入れるとともに,都道府県庁所在地名も日本地図で確認したり,自然及び社会的条件という視点から各都道府県庁所在地の共通性を探りながら調べたりするなどの学習活動が考えられる。

 このような学習活動を行う場合には,生徒が小学校で学習した内容を整理し確認しながら学習を進め,都道府県の名称と位置及び都道府県庁所在地名を単に覚えるだけの学習活動にならないよう配慮することが必要である。

 また,このことは地理学習の全体を通して行うこととし,内容のCの「(3)日本の諸地域」においても適宜取り上げ,その知識の定着を図るようにすることが必要である。

 (イ)における「領域の範囲や変化とその特色」については,我が国の海洋国家としての特色を取り上げる(内容の取扱い)については,例えば,我が国の領土は離島を含む大小多数の島々からなり,それらは弧状に連なっていることや,他の国々と国土面積で比較したり,領海や排他的経済水域を含めた面積で比較したりするなど,我が国の海洋国家としての特色を様々な面から取り扱うことを意味している。

 また,我が国は四面環海の国土であるため直接他国と陸地を接していないことに着目し,国境がもつ意味について歴史的経緯を踏まえて考えたり,我が国が国際法に則(のっと)り正当に主張している立場に基づいて,当面する領土問題や海洋,海底資源の管理を含む経済水域の問題などに着目したりすることも大切である。

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 (イ)における竹島や北方領土が我が国の固有の領土であることなど,我が国の領域をめぐる問題も取り上げるようにすること(内容の取扱い)については,

竹島や北方領土(歯舞(はぼまい)群島,色丹(しこたん)島,国後(くなしり)島,択捉(えとろふ)島)について,

それぞれの位置と範囲を確認するとともに,

我が国の固有の領土であるが,
それぞれ現在韓国とロシア連邦によって不法に占拠されているため,

竹島については韓国に対して累次にわたり抗議を行っていること,

北方領土についてはロシア連邦にその返還を求めていること,

これらの領土問題における我が国の立場が歴史的にも国際法上も正当であること

などについて的確に扱い,我が国の領土・領域について理解を深めることも必要である。

 また,

「尖閣諸島については我が国の固有の領土であり,領土問題は存在しないことも扱うこと」(内容の取扱い)

とあることから,

現に我が国がこれを有効に支配しており,解決すべき領有権の問題は存在していないこと,

我が国の立場が歴史的にも国際法上も正当であることを,

その位置や範囲とともに理解することが必要である。

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 (ウ)における地球儀や地図を積極的に活用し(内容の取扱い)については,生徒は日本を中心に描かれた経線や緯線が直交する世界地図などに影響された世界観をもっていることが多い。

 そこで,世界地図については,面積の正しい地図や中心からの距離と方位の正しい地図など目的に応じた様々な地図があることを取り上げ,それらの特色に留意して読み取る学習活動を通して,適切な活用方法を身に付けることが大切である。

 そこで教室に地勢や国を表す地球儀を置いたり,世界地図を教室に掲示したりして,折にふれて様々な地図を活用するなどの配慮をすることが大切である。

 (ウ)における学習全体を通して(内容の取扱い)については,この中項目の学習において世界や日本の略地図を描き,世界や日本を大きく捉えるとともに,この後の学習において学習した成果を整理する際にも地図を活用できるよう,ここでの学習を位置付けることが必要である。

 また,世界地図(内容の取扱い)については,赤道や本初子午線など目安となる緯線,経線を基準として,大陸の形状や大陸と海洋の位置関係が大まかに示されている程度の世界の略地図を描けるようにすることを意味している。

 この場合,複雑な海岸線や国境線を描く必要はなく,世界の地域構成をおよそ捉えた程度のものが考えられる。

 さらに,日本地図(内容の取扱い)については,日本の領域の広がりや東経135度の経線などに留意しつつ,日本を構成する主な島々の大まかな形状や位置関係が分かる程度の日本の略地図を描けるようにすることを意味している。

 
 
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