cosnavi.jp

 この大項目は,「世界と日本の地域構成」の学習成果を踏まえ,世界の多様な地域とそこに住む人々の生活を主な学習対象とし,世界の諸地域の多様性や地域的特色を理解する学習を通して,世界の地理的認識を養うことをねらいとしている。

 このねらいを達成するため,この大項目は「(1)世界各地の人々の生活と環境」,「(2)世界の諸地域」の二つの中項目で構成している。

(1)世界各地の人々の生活と環境

場所や人間と自然環境との相互依存関係などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 次のような知識を身に付けること。

(ア) 人々の生活は,その生活が営まれる場所の自然及び社会的条件から影響を受けたり,その場所の自然及び社会的条件に影響を与えたりすることを理解すること。

(イ) 世界各地における人々の生活やその変容を基に,世界の人々の生活や環境の多様性を理解すること。

 その際,世界の主な宗教の分布についても理解すること。

イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 世界各地における人々の生活の特色やその変容の理由を,その生活が営まれる場所の自然及び社会的条件などに着目して多面的・多角的に考察し,表現すること。

(内容の取扱い)

(4)内容のBについては,次のとおり取り扱うものとする。

ア (1)については,世界各地の人々の生活の特色やその変容の理由と,その生活が営まれる場所の自然及び社会的条件との関係を考察するに当たって,衣食住の特色や,生活と宗教との関わりなどを取り上げるようにすること。

 この中項目の主なねらいや着目する視点などについては次のとおりである。

 この中項目は,場所や人間と自然環境との相互依存関係などに関わる視点に着目して,世界各地の人々の生活が営まれる場所の自然的条件と社会的条件を関連付けて多面的・多角的に考察し,表現する力を育成することを主なねらいとしている。

 そうした学習の全体を通して,世界の人々の生活や環境の多様性,それらの相互依存関係を理解できるようにすることが求められている。

 この中項目における場所に関わる視点としては,例えば,そこで見られる気候や植生といった自然的な側面や,集落や道路といった社会的な側面などからその様子や特徴を捉えることなどが考えられる。

 また,人間と自然環境の相互依存関係に関わる視点としては,例えば,各地の気候環境が人々の衣食住に与えている影響を捉えたり,人々による地域開発が植生などに与えている影響を捉えたりすることなどが考えられる。

 この中項目で身に付けたい事項については,次のとおりである。

 この中項目で身に付けたい
「知識」に関わる事項として,まず,ア(ア)
「人々の生活は,
 その生活が営まれる場所の
 自然及び社会的条件から
 影響を受けたり,
 その場所の自然及び社会的条件に
 影響を与えたりすること
 を理解すること」
が挙げられる。

 このうち,その生活が営まれる場所の自然及び社会的条件から影響を受けたり,その場所の自然及び社会的条件に影響を与えたりするについては,

世界各地における人々の生活が自然的条件の違いのみに留意した自然環境決定論に陥るのではなく,社会的条件の違いにも留意すること,

さらに,人間社会の営みが自然環境に影響を与えることもあり,両者は相互に関係し合っているということに留意すること

を意味している。

 社会的条件としては,地域の歴史的背景や住民の民族構成などに配慮しながら,伝統的な生活様式が他の文化との接触や新しい技術の導入,経済活動の活発化によって変容することなどを取り上げることが考えられる。

---------------------------------

 この中項目で身に付けたい
「知識」に関わる事項として,

また,ア(イ)
「世界各地における
 人々の生活やその変容を基に,
 世界の人々の生活や環境の多様性
 を理解すること。
 その際,世界の主な宗教の分布
 についても理解すること」
も挙げられる。

 このうち,世界各地における人々の生活やその変容については,この中項目は世界の人々の衣食住などの生活が主な学習対象であり,また,同じ地域の過去と現在の生活を比較してその変化に着目し,人々の生活が可変的なものであることなどに気付くことを意味している。

 世界の主な宗教の分布についても理解するについては,仏教,キリスト教,イスラム教などの世界的に広がる宗教の分布について分布図を用いて大まかに理解することを意味している。

 なお,分布図を扱う際には,分布の境界は必ずしも明確に分けられないものであることなどに留意して,その特色を読み取ることが大切である。

 この中項目で身に付けたい
「思考力,判断力,表現力等」に関わる事項として,イ(ア)
「世界各地における
 人々の生活の特色や
 その変容の理由を,
 その生活が営まれる場所の
 自然及び社会的条件などに着目して
 多面的・多角的に考察し,表現すること」
が挙げられる。

 このうち,その生活が営まれる場所の自然及び社会的条件などに着目してについては,世界各地における人々の生活の特色がなぜ生み出されているのか,人々の生活における変容がなぜ生じたのか,自然及び社会的条件などと関連付けることを通して,地理的な事象の意味や事象間の関係に着目することを意味している。

 ここでの学習活動としては,例えば,暑い地域と寒い地域,山岳地域と島嶼(とうしょ)地域など,特色のある自然環境とそれに関係する衣食住を事例として取り上げ,写真や映像資料などを用いて人々の生活の工夫や,伝統的生活と現代の変化を捉えるといった学習活動や,同じような自然的条件の地域を幾つか取り上げ,共通点や地域によって異なる点を探すといったことなどが考えられる。

 また,人々の衣食住と自然環境との相互の関連について,両者を矢印で結び付けて,理由を問いながらその関係を図や文章で可視化していくといったことなどが考えられる。

 その際,気候や地形,民族などの分布を表した様々な主題図を活用するとともに,取り上げた事例を主題図上に位置付け,様々な事例を比較するといった作業的な活動が取り入れられることが大切である。

 
 

(内容の取扱い)

(4)内容のBについては,次のとおり取り扱うものとする。

ア (1)については,世界各地の人々の生活の特色やその変容の理由と,その生活が営まれる場所の自然及び社会的条件との関係を考察するに当たって,衣食住の特色や,生活と宗教との関わりなどを取り上げるようにすること。

 「内容の取扱い」などに示された留意事項については,次のとおりである。

 衣食住の特色(内容の取扱い)については,世界には様々な自然環境や文化があり,人々の生活がそれらの影響を受けているということが可視化され,捉えやすいのが衣食住の特色であることを意味している。

 そのため,学習活動としては,まずは人々の衣食住の特徴を通して,その場所における生活の特色を捉え,自然及び社会的条件との関係について考察を深めるといったことなどが考えられる。

 生活と宗教との関わり(内容の取扱い)については,世界には様々な宗教があり宗教と関わりの深い生活が営まれていること,同じ地域でも宗教その他の社会的条件による生活の違いが見られることなどに着目することを意味している。

 また,人々の生活を中心とした文化の学習については,一つの事例が生活全体あるいは地域全体の特徴として捉えられる過度な一般化を招きやすい。

 そのことに留意し,文化を固定的なものと捉えたり,特定の民族に対する固定観念をもったりする学習とならないようにすることが必要である。

 特に,地域の人々の生活はそれぞれの地域の地理的諸条件の下に成り立っているということ,他地域の人々の生活を理解するのに,自分たちの生活を絶対視して捉えてはいけないということに留意して,多様な文化を尊重する態度を身に付けることが必要である。

 
 
→ 中学校社会編 目次
→ 小学校社会編 目次
→ 中学校学習指導要領(2017)目次
→ 学習指導要領ナビ
トップページ