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(2)世界の諸地域

 次の@からEまでの各州を取り上げ,空間的相互依存作用や地域などに着目して,主題を設けて課題を追究したり解決したりする活動を通して,以下のア及びイの事項を身に付けることができるよう指導する。

@ アジア
A ヨーロッパ
B アフリカ
C 北アメリカ
D 南アメリカ
E オセアニア

ア 次のような知識を身に付けること。

(ア) 世界各地で顕在化している地球的課題は,それが見られる地域の地域的特色の影響を受けて,現れ方が異なることを理解すること。

(イ) @からEまでの世界の各州に暮らす人々の生活を基に,各州の地域的特色を大観し理解すること。

イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) @からEまでの世界の各州において,地域で見られる地球的課題の要因や影響を,州という地域の広がりや地域内の結び付きなどに着目して,それらの地域的特色と関連付けて多面的・多角的に考察し,表現すること。

(内容の取扱い)

イ (2)については,次のとおり取り扱うものとする。

(ア) 州ごとに設ける主題については,各州に暮らす人々の生活の様子を的確に把握できる事象を取り上げるとともに,そこで特徴的に見られる地球的課題と関連付けて取り上げること。

(イ) 取り上げる地球的課題については,地域間の共通性に気付き,我が国の国土の認識を深め,持続可能な社会づくりを考える上で効果的であるという観点から設定すること。また,州ごとに異なるものとなるようにすること。

 この中項目の構成,主なねらいや着目する視点などについては次のとおりである。

 この中項目は,世界の諸地域の基礎的・基本的な知識を定着させるという観点,また汎用性が高いという観点から,

「@ アジア」,
「A ヨーロッパ」,
「B アフリカ」,
「C 北アメリカ」,
「D 南アメリカ」,
「E オセアニア」
の六つの州からなる
小項目で構成している。

 この中項目は,空間的相互依存作用や地域などに関わる視点に着目して,世界の各地域で見られる地球的課題の要因や影響をその地域的特色と関連付けて多面的・多角的に考察し,表現する力を育成することを主なねらいとしている。

 そうした学習の全体を通して,世界の各州の地域的特色やそこで見られる地球的課題と地域的特色の関係を理解できるようにすることが求められている。

 この中項目における空間的相互依存作用に関わる視点としては,例えば,ある州で見られる地球的課題の要因や影響を,その州の地域の広がりや地域内の結び付きから捉えることなどが考えられる。

 また,地域に関わる視点としては,例えば,ある州で見られる地球的課題を,州としての地域的特色や変容の過程から捉えることなどが考えられる。

 この中項目で身に付けたい事項については,次のとおりである。

 この中項目で身に付けたい
「知識」に関わる事項として,まず,ア(ア)
「世界各地で顕在化している
 地球的課題は,
 それが見られる地域の
 地域的特色の影響を受けて,
 現れ方が異なることを理解すること」
が挙げられる。

 このうち,地球的課題については,
グローバル化する国際社会において,
人類全体で取り組まなければならない課題,例えば,
持続可能な開発目標(SDGs)
などに示された課題のうちから,
生徒が地理的な事象として捉えやすい
地球環境問題や
資源・エネルギー問題,
人口・食料問題,
居住・都市問題
などに関わる課題を取り上げることを意味している。

 地域的特色の影響を受けて,現れ方が異なることについては,
世界各地に見られる地球的課題は
地球上の各地で現れる普遍的な課題ではあるが,
各地域の地域的特色を反映させて
その要因や影響,対処の仕方などが
異なっていることを意味している。

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 この中項目で身に付けたい
「知識」に関わる事項として,また,ア(イ)
「@からEまでの世界の各州に
 暮らす人々の生活を基に,
 各州の地域的特色を
 大観し理解すること」
も挙げられる。

 このうち,人々の生活を基にについては,各州の地域的特色の羅列的な知識を身に付けることではなく,生徒が世界の地理的な事象を身近に感じて,取り上げた世界の諸地域についてイメージを構成することが必要である。

 ここでいう「人々の生活」とは,生徒の生活経験と結び付けやすい衣食住や生活様式に関わる諸事象を中心としながらも,社会生活を営む人間の活動による総体的な諸事象を意味している。

 各州の地域的特色を大観し理解することについては,州全体を一つの地域として捉える他に,州を幾つかの地域に分けることもできるが,その際にも個別の国や小地域の特色を細部にわたって学習することのないようにする必要がある。

 なお,大観については,ここでは各州の自然,産業,生活・文化,歴史的背景などについて概観し,その結果として基礎的・基本的な知識を身に付けることを意味している。

 また,ここで習得した知識が後の学習に活用されるとともに,世界の各州について大観する学習がなされた際には,概略的な世界像が形成できるように学習内容を構成する必要がある。

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 この中項目で身に付けたい
「思考力,判断力,表現力等」に関わる事項として,

イ(ア)「@からEまでの世界の各州において,地域で見られる地球的課題の要因や影響を,州という地域の広がりや地域内の結び付きなどに着目して,それらの地域的特色と関連付けて多面的・多角的に考察し,表現すること」が挙げられる。

 このうち,州という地域の広がりや地域内の結び付きなどに着目してについては,@からEまでの各州において,地球的課題を地域という枠組みの中で考察できるようにすることを意味している。

 それらの地域的特色と関連付けてについては,地球的課題の影響や要因を,各州における地域の広がりや地域内の結び付きなどから特徴付けられる地域的特色と関連付けることを意味している。

 
 

(内容の取扱い)

イ (2)については,次のとおり取り扱うものとする。

(ア) 州ごとに設ける主題については,各州に暮らす人々の生活の様子を的確に把握できる事象を取り上げるとともに,そこで特徴的に見られる地球的課題と関連付けて取り上げること。

(イ) 取り上げる地球的課題については,地域間の共通性に気付き,我が国の国土の認識を深め,持続可能な社会づくりを考える上で効果的であるという観点から設定すること。また,州ごとに異なるものとなるようにすること。

 「内容の取扱い」などに示された留意事項については,次のとおりである。

 (ア)における州ごとに設ける主題(内容の取扱い)については,そこで特徴的に見られる地球的課題(内容の取扱い)とともに,必ずしも州内全体に共通するものである必要はないが,「各州に暮らす人々の生活の様子を的確に把握できる」地理的な事象から,既習内容,主題の難易度,生徒の生活経験,想定される学習活動,配当授業時数との関係などを勘案して,教師が主題を設定し,主題を追究する時間を確保するという観点から,各州一つ又は二つの主題に絞って展開することが大切である。

 (イ)における我が国の国土の認識を深め(内容の取扱い)については,今後学習する大項目「C 日本の様々な地域」を視野に,我が国との比較や関連を図る視点をもって主題を設定することが必要である。

 (イ)における持続可能な社会づくりを考える上で効果的である(内容の取扱い)については,生徒の発達段階を踏まえ,生徒自身が地球的課題の要因や影響について捉えやすいという観点から主題を設定することが大切である。

 なお,世界の諸地域の地域的特色を学習するに当たっては,@からEまでの地域区分を基本とし,具体的な地域区分の捉え方については,内容のCの「(2)日本の地域的特色と地域区分」で取り扱うものとする。

 ただし,既述のとおり,各州の地域的特色を明らかにする必要からそれぞれの州を幾つかに区分したり,取り上げる地理的な事象の特色を的確に把握する観点から州を越えた地域を設定したりして,それぞれの地域の特色を理解する学習を展開することも考えられる。

 また,アジア州とヨーロッパ州にまたがるロシア連邦を扱う場合は,設定する主題との関連から,アジア州又はヨーロッパ州のいずれかに位置付けて扱うこととなる。

 しかし,「各州の地域的特色を大観し理解する」と示されているように,州規模で地域的特色を明らかにすることが大切であり,州を更に区分したり州を越えたりした地域を設定することによって,地域の特色を網羅的に細かく学習するのではないことに留意する必要がある。

 また,各州を取り上げる順序は,設定された主題に対する生徒の理解しやすさなどを踏まえて検討することが必要である。

 例えば,内容のBの「(1)世界各地の人々の生活と環境」の学習の成果と結び付けやすい州を最初に学習するなど,取り上げる州の順序についても,既習内容,主題の難易度,生徒の生活経験,想定される学習活動,配当授業時数との関係などを勘案して展開することが大切である。

 この中項目で実施が想定される学習展開例は次のとおりである。

 なお,これらは,あくまでも例示であり,各学校において例示と異なる学習活動を展開することができるのは,当然である。

 
 

@ アジア州:<主題例>

 人口の増加,居住環境の変化に関わる課題などアジア州を大観する学習を踏まえて,例えば,中華人民共和国(以下,中国という。)を対象に「中国では人口問題に対してどのような対策が取られてきたのか」,「経済発展した中国で,なぜ居住環境の問題が起きているのか」などといった問いを立て,前者の場合,中国における人口動態,国内の経済格差,地域間の人口移動などを地域の人々の生活と関連付けて多面的・多角的に考察して,人口問題に関わる一般的課題と中国における地域特有の課題とを捉える。

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A ヨーロッパ州:<主題例>

 国家統合,文化の多様性に関わる課題などヨーロッパ州を大観する学習を踏まえて,例えば,ヨーロッパ連合(以下,EUという。)を対象に「EUはどのような経緯でその構成国を変化させてきたのか」,「EUの構成国内で,なぜ分離や独立などの動きが見られるのか」などといった問いを立て,前者の場合,EUの空間的広がり,EU統合の歴史的背景,EU統合がもたらす成果と課題などを地域の人々の生活と関連付けて多面的・多角的に考察して,国家間の結び付きに関わる一般的課題とEUにおける地域特有の課題とを捉える。

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B アフリカ州:<主題例>

 耕作地の砂漠化,経済支援に関わる課題などアフリカ州を大観する学習を踏まえて,例えば,サヘル地域を対象に「サヘル地域では砂漠化によって,どのような問題が生じているのか」,「サヘル地域の砂漠化に対して,なぜ諸外国の支援が必要なのか」などといった問いを立て,前者の場合,サヘル地域の自然環境,地域経済の変化,地域内の食料需給などを地域の人々の生活と関連付けて多面的・多角的に考察して,食料問題に関わる一般的課題とサヘル地域における地域特有の課題とを捉える。

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C 北アメリカ州:<主題例>

 農業地域の分布,産業構造の変化に関わる課題など北アメリカ州を大観する学習を踏まえて,例えば,アメリカ合衆国(以下,アメリカという。)を対象に「アメリカでは農業地域の分布にどのような特色があるのか」,「なぜアメリカは,世界有数の経済大国となっているのか」などといった問いを立て,前者の場合,アメリカの自然環境,都市の分布,交通網の整備などを地域の人々の生活と関連付けて多面的・多角的に考察して,産業の立地に関わる一般的課題とアメリカにおける地域特有の課題とを捉える。

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D 南アメリカ州:<主題例>

 森林の伐採と開発,商品作物の栽培に関わる課題など南アメリカ州を大観する学習を踏まえて,例えば,ブラジルを対象に「ブラジルでは森林の耕地化が進んだ結果,どのような問題が生じているのか」,「なぜブラジルでは,コーヒーから大豆などへと栽培作物が変化しているのか」などといった問いを立て,前者の場合,森林と耕地面積の変化,農産物の生産,生物多様性などを地域の人々の生活と関連付けて多面的・多角的に考察して,持続可能な開発に関わる一般的課題とブラジルにおける地域特有の課題とを捉える。

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E オセアニア州:<主題例>

 多文化社会,貿易に関わる課題などオセアニア州を大観する学習を踏まえて,例えば,オーストラリアを対象に「オーストラリアでは,民族構成がどのように変化してきたのか」,「なぜオーストラリアでは,アジア諸国との貿易割合が増えているのか」といった問いを立て,前者の場合,先住民との関係,建国の歴史,貿易相手国や移民出身国の変化などを地域の人々の生活と関連付けて多面的・多角的に考察して,多文化社会に関わる一般的課題とオーストラリアにおける地域特有の課題とを捉える。

 
 

 世界の諸地域の学習においては,地球儀,世界地図,地図帳,衛星画像などを活用し,地誌的な知識や概念の定着を図るとともに,これらを有効に活用し,学習成果を世界地図上や略地図上に表現するなどして,地理的技能を育成することも重要である。

 また,取り上げる主題や州に関わる写真,物語,小説なども活用して学習内容及び学習過程を設計し,生徒の生活経験と結び付いた情報を豊かに獲得させていく指導上の工夫も望まれる。

 
 
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