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 この大項目は,
「世界と日本の地域構成」及び
「世界の様々な地域」
の学習成果を踏まえ,
日本及び日本の諸地域の地域的特色を
捉える学習を通して,
我が国の国土に関する地理的認識を深めること
をねらいとしている。

 このねらいを達成するため,
この大項目は

「(1) 地域調査の手法」,
「(2) 日本の地域的特色と地域区分」,
「(3) 日本の諸地域」,
「(4) 地域の在り方」

の四つの中項目で構成している。

(1)地域調査の手法

 場所などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア)観察や野外調査,文献調査を行う際の視点や方法,地理的なまとめ方の基礎を理解すること。

(イ)地形図や主題図の読図,目的や用途に適した地図の作成などの地理的技能を身に付けること。

 

イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 地域調査において,対象となる場所の特徴などに着目して,適切な主題や調査,まとめとなるように,調査の手法やその結果を多面的・多角的に考察し,表現すること。

(内容の取扱い)

(5)内容のCについては,次のとおり取り扱うものとする。

ア (1)については,次のとおり取り扱うものとする。

(ア) 地域調査に当たっては,対象地域は学校周辺とし,主題は学校所在地の事情を踏まえて,防災,人口の偏在,産業の変容,交通の発達などの事象から適切に設定し,観察や調査を指導計画に位置付けて実施すること。

 なお,学習の効果を高めることができる場合には,内容のCの(3)の中の学校所在地を含む地域の学習や,Cの(4)と結び付けて扱うことができること。

(イ) 様々な資料を的確に読み取ったり,地図を有効に活用して事象を説明したりするなどの作業的な学習活動を取り入れること。

 また,課題の追究に当たり,例えば,防災に関わり危険を予測したり,人口の偏在に関わり人口動態を推測したりする際には,縮尺の大きな地図や統計その他の資料を含む地理空間情報を適切に取り扱い,その活用の技能を高めるようにすること。

 この中項目の主なねらいや着目する視点などについては次のとおりである。

 この中項目は,場所などに関わる視点に着目して,地域調査の手法やその結果を多面的・多角的に考察し,表現する力を育成することを主なねらいとしている。

 そうした学習の全体を通して,地域調査を行う際の視点や方法を理解し,そのために必要な地理的技能を身に付けられるようにすることが求められている。

 この中項目は,学校周辺の地域の地理的な事象を学習対象としている。

 学校周辺の地域は,生徒が生活舞台にしている地域であり,学習対象を生徒が直接体験できるといった特質を有している。

 そのため,この中項目では
文献調査にとどまらず
実際に校外に出かけて
観察や野外調査をして,
地理的な事象を見いだし,
事象間の関連の発見過程を体験し,
地理的な追究の面白さを実感できる
作業的で具体的な体験
を伴う学習を通して,
地域調査の手法について理解し,
地域調査に関わる地理的技能を
身に付けることが大切である。

 

 この中項目における場所に関わる視点としては,例えば,地域的特色をもつ調査対象地域を,それに応じた適切な主題や地域調査の手法によって捉えることなどが考えられる。

 この中項目で身に付けたい事項については,次のとおりである。

 この中項目で身に付けたい
「知識」に関わる事項として,ア(ア)
「観察や野外調査,文献調査を行う際の
 視点や方法,
 地理的なまとめ方の基礎
 を理解すること」
が挙げられる。

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 このうち,
観察や野外調査,文献調査を行う際の
視点や方法
については,

視点としては,
学校周辺の地域という
生徒にとっての直接経験地域
であることを踏まえて,

観察対象の焦点化,
野外調査方法の吟味,
文献資料の収集
などの適切な視点を意味し,

方法としては,
観察や野外調査,
地図や統計,
景観写真,
市町村要覧,
市町村史
などの資料を活用する文献調査
などの方法を意味している。

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 地理的なまとめ方については,
「様々な資料を的確に読み取ったり,地図を有効に活用して事象を説明したりするなどの作業的な学習活動を取り入れること」
(内容の取扱い)とあるように,
地域調査の結果を
地図や図表,写真などを取り入れるなどして表現することを意味している。

 この中項目で身に付けたい「技能」に関わる事項として, ア(イ)
「地形図や主題図の読図,目的や用途に適した地図の作成などの地理的技能を身に付けること」
が挙げられる。

 このうち,
地理的技能を身に付けるについては,
地形図や主題図などの様々な資料から,
地域で見られる事象や特色など
必要な情報を的確に読み取る技能や,
地域で見られる事象を,
地図や図表,グラフなどに表現する技能
を中心に,
歴史的分野や他教科等で
身に付けた技能の活用も視野に,
地域調査の手法として身に付ける
ことを意味している。

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 この中項目で身に付けたい
「思考力,判断力,表現力等」に関わる事項として,イ(ア)
「地域調査において,
対象となる場所の特徴などに着目して,
適切な主題や調査,まとめとなるように,
調査の手法やその結果を
多面的・多角的に考察し,表現すること」
が挙げられる。

 このうち,適切な主題や調査,まとめとなるように,調査の手法やその結果を多面的・多角的に考察し,表現するについては,
主題を設定し,
調査の対象となる地理的な事象
を見いだし,
調査に基づき資料を作る
といった活動を通して,
調査の適切な手順や方法を
考察できるようにすることと,
そうした調査の結果を
適切な方法で表現できるようにすること
を意味している。

 なお,適切な主題については,
位置や空間的な広がりなどとの関わり
で捉える地理的な事象
に関する地域の特徴を扱い,
地方財政などの公民的分野の学習内容
に関する地域の課題とは
区別して扱うことが必要である。

 
 

(内容の取扱い)

(5)内容のCについては,次のとおり取り扱うものとする。

ア (1)については,次のとおり取り扱うものとする。

(ア) 地域調査に当たっては,対象地域は学校周辺とし,主題は学校所在地の事情を踏まえて,防災,人口の偏在,産業の変容,交通の発達などの事象から適切に設定し,観察や調査を指導計画に位置付けて実施すること。

 なお,学習の効果を高めることができる場合には,内容のCの(3)の中の学校所在地を含む地域の学習や,Cの(4)と結び付けて扱うことができること。

(イ) 様々な資料を的確に読み取ったり,地図を有効に活用して事象を説明したりするなどの作業的な学習活動を取り入れること。

 また,課題の追究に当たり,例えば,防災に関わり危険を予測したり,人口の偏在に関わり人口動態を推測したりする際には,縮尺の大きな地図や統計その他の資料を含む地理空間情報を適切に取り扱い,その活用の技能を高めるようにすること。

 「内容の取扱い」などに示された留意事項については,次のとおりである。

 (ア)における主題は学校所在地の事情を踏まえて(内容の取扱い)については,例えば,
都市部と農村部の学校,
臨海部と山間部の学校とでは,
学校のある学区域の特色や
そこで取り上げる事象,
訪問先などに違いがあることから,
それぞれの地域の事情を踏まえた
地域調査を工夫する必要があること
を意味している。

 (ア)における観察や調査を指導計画に位置付け(内容の取扱い)については,
学校周辺地域の観察や調査を,
活動に適した時期に行うようにするなど,
年間計画の中で
弾力的に実施できるようにすること
を意味している。

 特に,聞き取りを行うなどの調査を実施するに当たっては,地域の人々の協力を得るなど事前の準備が必要になってくることなどから,年間計画に明確に位置付けることが大切である。

 また,観察や調査については,総合的な学習の時間,防災活動や遠足等の学校行事と組み合わせるなど,各学校で教育課程を工夫するなどして実施することが考えられる。

 例えば,総合的な学習の時間における職場体験活動と関連付けて,職場体験活動を行う店舗,公共機関,事業所などの分布を地図に表したり,特別活動における地域と連携した防災訓練と関連付けて,生徒が実際に避難する経路や,経路上の地形や危険な箇所,避難に適した場所を地図に表したりすることなどが考えられる。

 他にも,例えば,歴史的分野の内容のAの「(2)身近な地域の歴史」と関連付けて,歴史的な遺跡などの位置や分布を調査したり,遠足等で野外に出かける際にグループで地図を持ち,課題に合わせて調査対象地域周辺の景観を観察したりすることなども考えられる。

 (ア)における学習の効果を高めることができる場合には,内容のCの(3)の中の学校所在地を含む地域の学習や,Cの(4)と結び付けて扱うことができる(内容の取扱い)については,
観察や野外調査を含む地域調査を,
地域の特色や地域の在り方を考察する
学習と関連付けることなどにより
学習の効果を高めることが可能な場合には,
内容のCの「(3)日本の諸地域」における学校所在地を含む地域の学習や
内容のCの「(4)地域の在り方」の学習に,
この内容のCの「(1)地域調査の手法」の学習を位置付けて指導する
ことができることを意味している。

 (イ)における縮尺の大きな地図や統計その他の資料を含む地理空間情報(内容の取扱い)については,
地形図や統計,写真などに加え,
1万分の1よりも縮尺が大きな地図や
後述の「(3)内容の取扱い」に述べ
る縮尺が伸縮可能なデジタル地図
などを活用することを意味している。

 (イ)における活用の技能を高める(内容の取扱い)については,例えば,
それらの地図を持って現地に行き,
地図と現地との対応関係を比べたり,
地図から関心のある地理的な事象を発見したり,
調べる地理的な事象や地域が地図上のどこにあるかを確認したりするだけでなく,
土地利用などを表した主題図などから,
地域の地形と土地利用の関係を考察したり,
気候図を併用して降水量の分布と土地利用の関係を明らかにするなどして,
事象間の関係を読み取る
といった活動が考えられる。

 また,地図から地域的特色を捉え,地域の課題を見いだし,考察したりするなどの活動を通して読図に関する技能を高めることや,地域調査を通して明らかになったことを地図上に描くなどの活動を通して作図に関する技能を高めたりすることが考えられる。

 いずれの場合も課題を追究する具体的な作業を通して地理的技能を身に付けることが大切である。

 なお,これらの地理的技能は地理学習の全体を通して育成することが求められているが,特にこの中項目においては実際に地域を調査する中でこれらの技能を積極的に活用し,その有効性を体験的に理解できるようにすることが大切である。

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 直接経験地域であることを踏まえた身近な地域の調査には,次のような特質がある。

 第1は,景観を対象にして観察や野外調査をし,それを基に地域の課題を見いだし,考察することができること,

 第2は,自分たちの観察や野外調査の活動を通して資料を作り,それを基に地域の課題を見いだし,考察することができること,

 第3は,季節の変化などを考慮して1年間を通じて地域の課題を見いだし,考察することができること,

 第4は,生徒の生活と関わる地域なので,課題を見いだし,考察しやすく,また,それらの課題を意見交換しやすいことである。

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 地域に広がる景観等を対象にして地域調査を行うことは地理学習において中核となる学習である。

 すなわち,観察や野外調査,文献調査は,社会的事象の地理的な見方・考え方を働かせる上で欠かすことのできない活動であり,作業的で具体的な体験を伴う学習を通して効果的に習得・活用することができる,生きて働く技能でもある。

 したがって,カリキュラム・マネジメントを働かせ,各学校の実態に応じて確実に,観察や野外調査を含む地域調査が実施されるよう工夫することが大切である。

 この中項目で実施が想定される学習展開例は次のとおりである。

 なお,これらは,あくまでも例示であり,各学校において例示と異なる学習活動を展開することができるのは,当然である。

 
 

 例えば,調査例として地域の防災を取り上げた場合,次のような学習展開が考えられる。

<T 取り上げる事象を決める。>

 地域の防災について,
「学校周辺の地域で,人々が自然災害から身を守るにはどうしたらよいか」
といった課題意識に基づいて主題設定する場合,例えば,
地震に伴う津波や火災,豪雨に伴う河川の氾濫など,地域で想定される具体的な地理的な課題から取り上げる事象を決める。

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<U 事象を捉える調査項目を決め,観察や調査を行う。>

 例えば,地震に伴う津波や火災などの災害を想定する場合,地元自治体によるハザードマップや国土地理院による旧版地形図,土地利用図などを含む文献調査とともに,実際に学校周辺の地域を観察や野外調査することが大切である。

 詳細な地図と実際の様子を照らし合わせる中で,
生徒は地形や住宅地の分布等に留意し,
浸水や土砂崩れ等の危険がある場所,
避難場所の位置やその標高,
道路網やその幅員,
避難経路の安全性
(ブロック塀等の倒壊の危険箇所や側溝の蓋の有無,くぐり抜け式通路の冠水等),
自動体外式除細動器(AED)の設置場所
などを調査項目として
観察や調査することが考えられる。

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<V 捉えた地理的な事象について地図等に表す。>

 生徒が観察や野外調査で調べたことをベースマップに記入し,学校周辺の地域の災害時における危険性や安全に避難するために必要な情報を地図等に表し作成することが考えられる。

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<W 傾向性や規則性を見いだし,地形図や関係する主題図と見比べる。>

 例えば,学校周辺の地域で予測される自然災害の種類や,被害を受ける危険性が高い場所の傾向性を,作成した地図等と地形図や関係する主題図と見比べて読み取ることが考えられる。

 また,文献調査などで明らかになった過去に起こった災害の様子を表した地図等を,実際にどの場所でどのような自然災害が起こりやすいか,なぜそこで被害が生じたのかなどを考えながら,災害の傾向や要因などと関連付けて見比べることも大切である。

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<X 事象を成り立たせている要因を調べ,関連を調査する。>

 地域の防災における課題を調べることで,どのような場所でどのような自然災害が起こりやすいのかなど,自然環境の特色と自然災害との関係や人間の生活との関わりを整理する必要がある。

 また,それを確認するために,引き続き文献調査を行ったり,必要に応じて更に観察や野外調査を行ったりすることも考えられる。

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<Y 地図等に分かりやすくまとめ,調査結果を発表する。>

 調べて分かったことを根拠として示しながら意見交換することで,より合理的な解釈になるようにまとめていくことが必要である。

 その際,調べた結果を文章で表現したり,グラフや表にして分かりやすく示したり,地図を活用して表現したりすることが大切であり,調査結果の発表の際には,地図やグラフなどから読み取れることと,読み取った事実から自分が解釈したこととを分けて説明できるようにすることも大切である。

 なお,実際に自然災害によって被災した地域や被災が想定される地域を取り上げる際には,そこに居住していた人々や今も居住している人々がいることを念頭に,学習の全体を通じて,個人の置かれている状況やプライバシーなどに十分配慮する必要がある。

 
 
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