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(1) 内容のA,B及びCについては,この順序で取り扱うものとし,既習の学習成果を生かすこと。

 地理的分野の内容の取扱いの順序は,次のように示されている。

A 世界と日本の地域構成

B 世界の様々な地域

C 日本の様々な地域

 内容のA,B及びCについては,この順序で取り扱うと示したのは,次のような理由からである。

1) 小学校社会科との接続の観点から,世界の地理に関する学習を第1学年の当初から学習することとし,地理に関わる学習の継続と発展を図る内容構成としていること。

2) 地理的分野の目標を実現するために,
最初に世界と日本の地域構成を大観する学習を位置付け,
それに続いて世界の諸地域の学習など世界の地理的認識を養う項目を設定し,
その後に世界地理の学習を踏まえて日本の地理に関する学習を位置付け,
広い視野から国土の地理的認識を深め,
全体として社会的事象の地理的な見方・考え方を働かせる
ことができるような内容構成としていること。

3) 教科の基本的な構造や三分野の学習内容の関連性に留意して,第1学年及び第2学年では歴史的分野との連携を踏まえるとともに,第3学年において学習する歴史的分野及び公民的分野との関連に配慮した内容構成としていること。

 以上の理由から,内容の取扱いの順序を示しているのであり,指導計画の作成に当たっては,その趣旨に十分配慮する必要がある。

 なお,中項目及び内容のCの(2)の小項目についても前後関係を考慮して配列しているので,各中項目の内容の取扱いにおいて例外的な取扱いの記述がない限り,この順序で取り扱うことが望ましい。

 それぞれの項目に対する配当時間は,
各項目がそれぞれ独自の位置付けによる役割を担っていること,
その役割を果たすためには時間の確保が必要であること,
一方で各項目は相互補完の関係にあるといったこと
を考慮して,適切に配分し,一つの項目に偏り過ぎないようにすることが大切である。

 
 

(2) 内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする。

ア 世界や日本の場所や地域の特色には,一般的共通性と地方的特殊性があり,また,地域に見られる諸事象は,その地域の規模の違いによって現れ方が異なることに留意すること。

イ 地図の読図や作図,景観写真の読み取り,地域に関する情報の収集や処理などの地理的技能を身に付けるに当たっては,系統性に留意して計画的に指導すること。その際,教科用図書「地図」を十分に活用すること。

ウ 学習で取り上げる地域や国については,各項目間の調整を図り,一部の地域に偏ることのないようにすること。

エ 地域の特色や変化を捉えるに当たっては,歴史的分野との連携を踏まえ,歴史的背景に留意して地域的特色を追究するよう工夫するとともに,公民的分野との関連にも配慮すること。

オ 地域的特色を追究する過程で生物や地学的な事象などを取り上げる際には,地域的特色を捉える上で必要な範囲にとどめること。

 アについては,各地域の特色を扱う際に,地方的特殊性のみを対象にしているわけではない点に十分注意する必要がある。地域的特色は「一般的共通性と地方的特殊性」から構成されている。

 「一般的共通性」とは,他地域にも共通に見られる性質のことであり,「地方的特殊性」とは,端的に言えば,各地域のもつ独特の性質のことである。

 そして,この二つの性質は相互に関係し合っていることから,各地域の学習においては,この二つの性質を関連付けて扱うことが大切である。

 したがって,「特色」と示しているからといって地方的特殊性のみを対象にしているわけではない点に十分留意する必要がある。

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 また,地域に見られる社会的事象が同じでも地域の規模により現れ方が異なるので,各地域を比較したり関連付けたりする中で,地域の規模を対応させるなど,地域の規模を踏まえて適切に取り扱うことが大切である。

 「地域の規模」については,一般に,
身近な地域のように
小さな地域を対象にする場合と,
関東地方といった
七地方区分による地方規模,
そして日本といった国家規模の地域
を対象とする場合とでは,
着目すべき地理的な事象も異なるし,
学習の仕方も異なってくる。

 往々にして地理学習では,例えば,
100万分の1程度の縮尺の地図で捉える
のがふさわしい
七地方区分による地方規模の地域を
学習対象としているのに,

実際の学習は
その地方に属する5万分の1から20万分の1の地図で捉えるのがふさわしいような
小さな規模の地域に細分し,
網羅的に取り上げるような学習
となってしまうこともあった。

 このため,本来捉えるべき地方規模の地域の特色がほとんど明らかにならないといった傾向が見られた。

 地理学習においては,どのような規模の地域を対象にしているかといった点に留意して,取り上げる地域の規模に応じた地理的な事象の取扱いを工夫することが大切である。

 イについては,地理的技能を指導する際の留意点を示したものであり,従前の記述を引き継いだものである。

地理的技能については,
地理情報
(地域に関する情報のことであり,
 地理的な事象が読み取れたり,
 地域的特色に結び付く事象を
 見いだしたりすることができる資料
 のことをいう)を

「収集する技能」,
「読み取る技能」,
「まとめる技能」

の三つの技能に分けることが考えられる。

 具体的にそれらの内容を示すとすれば,おおむね次のようになる。

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@ 情報を収集する技能

(手段を考えて課題解決に必要な社会的事象等に関する情報を収集する技能)

a 調査活動を通して
(例えば,現地の様子などを直接観察するなどして情報を収集したり,現地の行政機関などから聞き取りをするなどして情報を収集したりする技能)

b 諸資料を通して
(例えば,図書館などにある,地図や統計,写真などの文献資料,実物資料を通して情報を収集したり,情報通信ネットワークなどにあるデジタル化された資料を通して情報を収集したりする技能)

c 情報手段の特性や情報の正しさに留意して
(例えば,統計の出典,作成者などの事実関係に留意して情報を収集したり,主題図の作成意図,作成過程などの作成背景に留意して情報を収集したりする技能)

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A 情報を読み取る技能

(収集した情報を社会的事象の地理的な見方・考え方に沿って読み取る技能)

a 情報全体の傾向性を踏まえて
(例えば,位置や分布などの広がりから全体の傾向性を踏まえて情報を読み取ったり,移動や変化などの動向から全体の傾向性を踏まえて情報を読み取ったりする技能)

b 必要な情報を選んで
(例えば,地図から目的に応じた情報を選んで読み取ったり,諸統計から信頼できる情報を選んで読み取ったりする技能)

c 複数の情報を見比べたり結び付けたりして
(例えば,同一地域の異なる情報を比較,関連付けて読み取ったり,異なる地域の共通する情報を比較,関連付けて読み取ったりする技能)

d 資料の特性に留意して
(例えば,地図の図法など資料の用途に留意して情報を読み取ったり,統計の単位,絶対値(相対値)など資料のきまりに留意して情報を読み取ったりする技能)

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B 情報をまとめる技能

(読み取った情報を課題解決に向けてまとめる技能)

a 基礎資料として
(例えば,聞き取りの結果などを正確に記録にまとめたり,収集した統計を汎用性のある表に加工してまとめたりする技能)

b 分類・整理して
(例えば,データをその性格によって分類してまとめたり,データをその利用の可否によって取捨選択してまとめたりする技能)

c 情報を受け手に向けた分かりやすさに留意して
(例えば,文書などの情報を地図化,グラフ化して概観できるようまとめたり,地図やグラフなどの情報を文章にして解釈,説明してまとめたりする技能)

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 これらの技能は,巻末の参考資料にも示されているように,小・中・高等学校の学習において広く共通するものであり,既述のとおり,一度にそれらの技能の全てを養おうとするのではなく,生徒の習熟の様子を踏まえて着実に身に付くよう,繰り返し指導する機会を設けることが大切である。

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 イにおける地域に関する情報の収集や処理などの地理的技能については,高度情報通信ネットワーク社会が急速に進展していく中で各学校にもインターネットなどの整備が充実してきている。

 特にインターネットは各地の地理情報の収集に有効であり,また,
 コンピュータは地理情報システム(GIS)などから得られる地理情報を地図化したり,グラフ化したりするなどの処理に不可欠のものである。

 インターネットにおける地図サイトや統計サイトとしては,現在,

内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局及び経済産業省の
「地域経済分析システム(RESAS)」,

総務省統計局の「政府統計の総合窓口(e-Stat)」,

国土交通省国土地理院の「地理院地図」

などの公的機関が提供しているものに加え,様々な機関や団体が提供する地図ソフトなどから地理情報を入手,活用することが可能であり,
今後とも入手先の拡大により情報の充実が期待される。

 したがって,地理学習においても地理的認識を深めたり地理的技能を高めたりするとともに,情報や情報手段を適切に活用できる技能を培う観点から,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段の活用を積極的に工夫することが望まれる。

 GISでの作業では,生徒の発達段階や学校の施設環境等を踏まえると,国土地理院刊行の地形図などの紙地図を用いた手作業でその基礎を学ぶことも効果的である。

 また,地図には,種類や縮尺により多様な利用の仕方がある。

 このうち地図帳には,地形や植生,都市の規模や交通機関,地名や行政界,土地利用などの地域の状況を様々な記号を用いて表現している「一般図」と,工場分布や土地利用,鉄道・道路交通などの個別の主題を取り上げ,様々な調査資料や統計などを活用してグラフ化したり,その状況を表現したりした「主題図」などが掲載されている。

 縮尺については,大きな縮尺の地形図や小さな縮尺の大陸別の地勢図などの地図とともに前掲の地理院地図などのように任意の縮尺での利用が可能なデジタル地図がある。

 また,その他にも面積や形状,方位や距離などの特定の事項を正確に表現するために工夫された様々な地図がある。

 なお,「その際,教科用図書『地図』を十分に活用すること」と付言したのは,
教科用図書「地図」,すなわち地図帳には一般図や主題図,その他統計や写真などたくさんの地理情報があるが,
それらが必ずしも十分に活用されていない状況が見られ,
こうした状況を改善し,地理学習がより一層充実することを期したためである。

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 イにおける系統性に留意して計画的に指導するについては,
地理的技能は,既述のとおり,
一度の学習や経験で身に付く
というものではなく,
それに関わる学習を繰り返す中で,
次第に習熟の程度を高めることで
身に付けるものである。

 このため,
指導計画を作成する際に,
地理的技能の難易度や段階性などに
留意して
系統的に学習できるよう
工夫する必要がある。

 ウについては,具体的に地域や国を取り上げて学習する際の留意点を示したものである。

 したがって,内容のBの(1),(2)の学習において,この趣旨を踏まえ,世界の諸地域に関する地理的認識をバランスよく身に付ける観点から,一部の地域に偏ることのないよう,項目間で取り上げる地域や国の調整を行うことが必要である。

 エについては,分野間の関連を推進する観点から示したものである。

 各分野の内容は教科の基本的な構造に配慮して構成されており,
地理的分野と歴史的分野は第1学年,第2学年において並行して継続的に学習できるようにし,さらに,
これらの両分野の学習の成果が第3学年において学習する歴史的分野及び公民的分野において生かされるよう構成されている。

 したがって,地理的分野の学習において「地域の特色や変化を捉えるに当たっては,歴史的分野との連携を踏まえ,歴史的背景に留意して地域的特色を追究するよう工夫するとともに,公民的分野との関連にも配慮」して取り扱うことが大切である。

 その際,歴史的背景の「背景」とは,地理的分野の学習は現在の地域的特色を捉えることに主眼があることを意味しており,「歴史的背景」は現代の地域の特色を捉える上で必要な範囲において取り上げるようにする。

 オについては,他教科等の関連する学習内容を取り扱う際の留意点について示したものである。

 地理学習は現代の諸地域の特色を捉えることに主眼があることから,「地域的特色を追究する過程で生物や地学的な事象などを取り上げる際には,地域的特色を捉える上で必要な範囲にとどめる」よう配慮する必要がある。

 
 
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