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 この大項目は,歴史的分野の学習の導入として,歴史的分野の学習に必要とされる基本的な「知識及び技能」を身に付け,生徒が,過去を継承しつつ,現在に生きる自身の視点から歴史に問いかけ,歴史的分野の学習を通して,主体的に調べ分かろうとして課題を意欲的に追究する態度を養うことをねらいとしている。

 このねらいに基づいて内容のAは「(1)私たちと歴史」及び「(2)身近な地域の歴史」の二つの中項目から構成されている。

(1)私たちと歴史

 課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 年代の表し方や時代区分の意味や意義についての基本的な内容を理解すること。

(イ) 資料から歴史に関わる情報を読み取ったり,年表などにまとめたりするなどの技能を身に付けること。

 

イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 時期や年代,推移,現在の私たちとのつながりなどに着目して,小学校での学習を踏まえて歴史上の人物や文化財,出来事などから適切なものを取り上げ,時代区分との関わりなどについて考察し表現すること。

(内容の取扱い)

ア (1)については,中学校の歴史学習の導入として実施することを原則とすること。小学校での学習を踏まえ,扱う内容や活動を工夫すること。

 「課題を追究したり解決したりする活動」については,内容のB以下の学習と関わらせて,歴史を追究するために,課題意識をもって学ぶことを促す適切な学習活動を設けるような工夫をすること。

 (1)のアの(ア)の「年代の表し方や時代区分」の学習については,導入における学習内容を基盤にし,内容のB以下の学習と関わらせて継続的・計画的に進めること。

 また,(1)のイの(ア)の「時期や年代,推移,現在の私たちとのつながり」については,内容のB以下の学習と関わらせて,事象相互の関連などにも留意し,それぞれの時代でこれらに着目して考察することが大切であることに気付かせること。

 この中項目では,中学校歴史的分野の学習の導入として,小学校で学習した人物や文化財,歴史上の出来事などから適切なものを取り上げ,これと時代区分との関わりなどについて考察し表現する学習を,適切な学習課題に基づいて生徒自身が資料から情報を読み取ったり年表などにまとめたりするなどの活動を取り入れながら行う。

 ここでは,従前の導入学習である内容の(1)の
「ア 我が国の歴史上の人物や出来事などについて調べたり考えたりするなどの活動」
の趣旨を受け継ぐとともに,
その学習の主眼が
歴史上の人物や文化財,出来事と
時代区分との関わりなどについて
考察し表現すること
にあることを一層明確にした。

 これは,小学校から中学校への歴史学習の移行を,それぞれのねらいや特質を踏まえつつ,より円滑に行うことができるよう配慮したものである。

 アの(ア)と(イ)の事項を学習するにあたっては,イの(ア)に示された「時期や年代,推移,現在の私たちとのつながり」などに着目して,アの(ア)の内容を理解することや,アの(イ)の技能を身に付けることが大切である。

 アの(ア)の年代の表し方や時代区分の意味や意義についての基本的な内容を理解するとは,
この「私たちと歴史」の学習を行う中で,世紀,西暦,元号の互いの関係や,時代を区分することの意味や意義について理解できるようにすることを意味している。

 年代の表し方や時代区分の意味や意義についての基本的な内容については,導入における学習内容を基盤にし,内容のB以下の学習と関わらせて継続的・計画的に進め,これがどの生徒にも確実に理解され身に付くようにしていくことが大切である。

 アの(イ)の資料から歴史に関わる情報を読み取ったり,年表などにまとめたりするなどの技能を身に付けるとは,
時代の移り変わりを考察し表現する学習の中で,資料から情報を読み取ったり年表などにまとめたりする活動が行われるよう工夫し,その技能が身に付くようにすることを意味している。

 例えば,小学校で学習した人物のうち「歴史を大きく変えた人物」を各自または各班で数名ずつ挙げ,それらの人物を選んだ理由を諸資料に基づきながら互いに説明することを通して,時代が転換するということや,時代を区分することの意味や意義を理解できるようにする学習などが考えられる。

 また,例えば,小学校の教科用図書の年表などに見られる対外関係上の出来事を,友好,対立などの関係性に着目して区分しながら一覧年表に整理し,現代における国際協調や平和の意味や意義を考察できるようにする学習などが考えられる。

 あるいは,例えば,絵画や建造物などの図を幾つか示して互いの異同や特徴に着目して,それぞれが小学校で学習したどの時期の文化財と共通するかといった事柄の検討を通して,大きな時代の移り変わりに気付くことができるようにする学習などが考えられる。

 指導計画の作成に当たっては,小学校での学習を踏まえ,「中学校の歴史学習の導入として実施することを原則とする」(内容の取扱い)ようにする。

 そして,適切な学習課題に基づいてその解決を図る学習の実施を通して,内容のB以下の学習に向けて,課題意識をもって歴史を追究し学ぶことの大切さに気付くことができるようにする。

 
 

(2)身近な地域の歴史

 課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 自らが生活する地域や受け継がれてきた伝統や文化への関心をもって,具体的な事柄との関わりの中で,地域の歴史について調べたり,収集した情報を年表などにまとめたりするなどの技能を身に付けること。

 

イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 比較や関連,時代的な背景や地域的な環境,歴史と私たちとのつながりなどに着目して,地域に残る文化財や諸資料を活用して,身近な地域の歴史的な特徴を多面的・多角的に考察し,表現すること。

(内容の取扱い)

イ (2)については,内容のB以下の学習と関わらせて計画的に実施し,地域の特性に応じた時代を取り上げるようにするとともに,人々の生活や生活に根ざした伝統や文化に着目した取扱いを工夫すること。

 その際,博物館,郷土資料館などの地域の施設の活用や地域の人々の協力も考慮すること。

 この中項目では,Aの(1)と同様に,アの(ア)の事項を学習するに当たって,
イの(ア)に示された
「比較や関連,時代的な背景や地域的な環境,歴史と私たちとのつながり」
などに着目して,
「地域に残る文化財や諸資料を活用して,身近な地域の歴史的な特徴を多面的・多角的に考察し,表現する」
学習を,内容のB以下と関わらせて行う。

 身近な地域とは,
生徒の居住地域や学校の所在地域
を中心に,
生徒自身による調べる活動が可能な,
生徒にとって
身近に感じることができる範囲であるが,
それぞれの地域の歴史的な特性に応じて,
より広い範囲を含む場合もある。

 ここでは,従前の内容の(1)の
「イ 身近な地域の歴史を調べる活動」
の趣旨を受け継ぎ,
それが一層着実に実施されること
を重視している。

 身近な地域は,歴史上の出来事を具体的な事物や情報を通して理解することができるとともに,それを自らが生活する日常の空間的な広がりの中で実感的に捉えることができる学習の場である。

 そこで,「比較や関連,時代的な背景や地域的な環境,歴史と私たちとのつながり」などの視点に着目して,歴史を追究する方法そのものを学ぶことができる有効な機会となる。

 アの(ア)の
自らが生活する地域や
受け継がれてきた伝統や文化
への関心をもって,
具体的な事柄との関わりの中で,
地域の歴史について調べたり,
収集した情報を年表などにまとめたりする
などの技能を身に付ける
は,

それぞれの地域に受け継がれてきた
伝統や文化への関心を高めながら,
地域の歴史を調べるための技能を
身に付けること

を意味している。

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 例えば,

地域に残る文化財や,
地域の発展に尽くした人物の業績と
それに関わる出来事を取り上げ,
地図を用いて空間的な認識を養いながら,

「博物館,郷土資料館などの
 地域の施設の活用や
 地域の人々の協力も考慮」
(内容の取扱い)して,

身近な地域における具体的な歴史
に関わる事象から
その時代の様子を考察できるようにする
学習などが考えられる。

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 指導計画の作成に当たっては,
「地理的分野との連携」や
「公民的分野との関連」(内容の取扱い(1)キ)にも配慮し,
「内容のB以下の学習と関わらせて計画的に実施」(内容の取扱い)する必要がある。

 
 
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