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 この中項目では,12世紀ごろから16世紀ごろまでの歴史を扱い,我が国の中世の特色を,世界の動きとの関連を踏まえて課題を追究したり解決したりする活動を通して学習することをねらいとしている。

 この中項目は,従前の「(3)中世の日本」が政治・外交面と,社会・文化面を中心とする二つの項目で構成されていたものを,世界の動きとの関連を重視する観点から,アに示した以下の(ア)から(ウ)までの三つの事項によって構成した。

 この時期の我が国では,武士が台頭して武家政権が成立し,その支配が次第に全国に広まるとともに,東アジアの中で大きな変化が見られ,それが我が国の政治や社会,文化などに影響を与えた。

 また,農業など諸産業が発達し,都市や農村に自治的な仕組みが成立したり,民衆の成長を背景とした社会や文化が生まれたりした。

 以下は,この中項目全体の構造を説明するために,アの「知識及び技能」に関する(ア)から(ウ)までの事項(事項名のみを記載)と,イの「思考力,判断力,表現力等」に関する項目との関係を示したものである。

(2)中世の日本

 課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 次のような知識を身に付けること。

(ア) 武家政治の成立とユーラシアの交流

(イ) 武家政治の展開と東アジアの動き

(ウ) 民衆の成長と新たな文化の形成

 

イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 武士の政治への進出と展開,東アジアにおける交流,農業や商工業の発達などに着目して,事象を相互に関連付けるなどして,アの(ア)から(ウ)までについて中世の社会の変化の様子を多面的・多角的に考察し,表現すること。

(イ) 中世の日本を大観して,時代の特色を多面的・多角的に考察し,表現すること。

 アの(ア)から(ウ)までの事項を学習するに当たっては,
生徒の学習への動機付けや
見通しを促しつつ,

イの(ア)の
「武士の政治への進出と展開」,
「東アジアにおける交流」,
「農業や商工業の発達」
などに着目して,

例えば,

「武士による政治は貴族の政治とどのような違いがあるのだろうか」,
「明(みん)や朝鮮との交流は日本にどのような影響を及ぼしたのだろうか」,
「産業の発達による民衆の成長は,社会や文化にどのような変化をもたらしたのだろうか」
などの課題(問い)を設定することで,
社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせて,
その課題について,
多面的・多角的に考察,表現できるようにすることが大切である。

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イの(イ)の大観して,時代の特色を多面的・多角的に考察し,表現することとは,
「我が国の歴史の大きな流れ」を
「各時代の特色を踏まえて理解する」
という
歴史的分野の学習の基本的なねらい
を踏まえ,
各中項目のまとめとして
位置付けたものである。

 各時代の特色を大きく捉え,
政治の展開,産業の発達,
社会の様子,文化の特色など
他の時代との共通点や相違点に着目して,
学習した内容を比較したり関連付けたりするなどして,
その結果を言葉や図などで表したり,
互いに意見交換したりする活動
を示している。

 このような活動によって,
「思考力,判断力,表現力等」
を養うとともに,
各時代の特色を
生徒が自分の言葉で表現できるような
「確かな理解と定着を図る」
(内容の取扱い(1)ウ)
ことが求められる。

 
 

(ア) 武家政治の成立とユーラシアの交流

 鎌倉幕府の成立,元寇(げんこう)(モンゴル帝国の襲来)などを基に,武士が台頭して主従の結び付きや武力を背景とした武家政権が成立し,その支配が広まったこと,元寇(げんこう)がユーラシアの変化の中で起こったことを理解すること。

(内容の取扱い)

イ (2)のアの(ア)の「ユーラシアの変化」については,モンゴル帝国の拡大によるユーラシアの結び付きについて気付かせること。

 この事項のねらいは,武家政治の特徴を考察して,武士が台頭して武家政権が成立し,その支配が広まったこととともに,元寇(げんこう)(モンゴル帝国の襲来)がユーラシアの変化の中で起こったことを,次のような学習を基に理解できるようにすることである。

 学習に際しては,例えば,この中項目(2)のイの(ア)に示された「武士の政治への進出と展開」などに着目して,武家政治の特徴を考察できるようにしたり,イの(ア)に示された「東アジアにおける交流」などに着目して課題(問い)を設定し,モンゴル帝国の拡大の様子を背景に考察したりできるようにすることなどが考えられる。

 これらの考察の結果を表現する活動などを工夫して,「武士が台頭して主従の結び付きや武力を背景とした武家政権が成立し,その支配が広まったこと,元寇(げんこう)がユーラシアの変化の中で起こったことを理解できるようにする」という,この事項のねらいを実現することが大切である。

 鎌倉幕府の成立については,武士が台頭して,武家政権が成立し,その支配が広まるという,武家政治の成立の背景と推移を扱うようにする。また,天皇や貴族の政治との違いという観点から,古代から中世への転換の様子に気付くことができるようにする。

 元寇(げんこう)(モンゴル帝国の襲来)については,元寇(げんこう)が国内に及ぼした影響などに気付かせるとともに,元寇(げんこう)の背景について,「モンゴル帝国の拡大によるユーラシアの結び付き」(内容の取扱い)などの地理的な確認を基に,元(中国を中心としたモンゴル帝国東部)の君主が帝国全体の君主でもあったことなどを踏まえ,モンゴル帝国がアジアからヨーロッパにまたがる広大な領域を支配し,東西の貿易や文化の交流が陸路や海路を通して行われたことなどに気付くことができるようにする。

 
 

(イ) 武家政治の展開と東アジアの動き

 南北朝の争乱と室町幕府,日明(にちみん)貿易,琉球(りゅうきゅう)の国際的な役割などを基に,武家政治の展開とともに,東アジア世界との密接な関わりが見られたことを理解すること。

(内容の取扱い)

 (2)のアの(イ)の「琉球(りゅうきゅう)の国際的な役割」については,琉球(りゅうきゅう)の文化についても触れること。

 この事項のねらいは,武家政治の展開とともに,この時代に東アジア世界との密接な関わりが見られたことを,次のような学習を基に理解できるようにすることである。

 学習に際しては,例えば,この中項目(2)のイの(ア)に示された「武士の政治への進出と展開」などに着目して課題(問い)を設定し,この時代の武家政治の動きとその特徴を考察できるようにしたり,「東アジアにおける交流」などに着目して,東アジアの動きが国内の政治や社会に与えた影響を考察できるようにしたりすることなどが考えられる。

 これらの考察の結果を表現する活動などを工夫して,「武家政治の展開とともに,東アジア世界との密接な関わりが見られたことを理解できるようにする」という,この事項のねらいを実現することが大切である。

 南北朝の争乱と室町幕府については,南北朝の争乱の中で室町幕府が成立し,武家社会が次第に大きな力をもっていくことに気付くことができるようにする。

 また,武家政治の特徴を捉える学習の際には,室町幕府と鎌倉幕府の比較などの個別の時期の特徴について学習するよりも,「中世」という枠組みで,大きく時代を捉えて特徴を理解できるようにすることが大切である。

 日明(にちみん)貿易については,その形式や内容の特徴に触れるとともに,銅銭が大量にもたらされ,貨幣経済の発達を促したことなど,国内の経済や社会に及ぼした影響に気付くことができるようにする。

 琉球(りゅうきゅう)の国際的な役割については,琉球(りゅうきゅう)が日本,明(みん)や朝鮮,更には東南アジア諸国との中継貿易に従事したことに気付くことができるようにする。

 また,「琉球(りゅうきゅう)の文化」(内容の取扱い)については,アジアとの交流の中で育まれた琉球(りゅうきゅう)の独自の文化について触れるようにする。

 
 

(ウ)民衆の成長と新たな文化の形成農業など諸産業の発達,畿内を中心とした都市や農村における自治的な仕組みの成立,武士や民衆などの多様な文化の形成,応仁(おうにん)の乱後の社会的な変動などを基に,民衆の成長を背景とした社会や文化が生まれたことを理解すること。

(内容の取扱い)

 (2)のアの(ウ)の「武士や民衆などの多様な文化の形成」については,代表的な事例を取り上げてその特色を捉えさせるようにすること。

 その際,この時代の文化の中に現在に結び付くものが見られることに気付かせるようにすること。

 また,禅宗の文化的な影響についても触れること。「応仁(おうにん)の乱後の社会的な変動」については,戦国の動乱も取り扱うようにすること。

 この事項のねらいは,民衆の成長を背景とした社会や文化が生まれたことを,次のような学習を基に理解できるようにすることである。

 学習に際しては,例えば,この中項目(2)のイの(ア)に示された「農業や商工業の発達」に着目して課題(問い)を設定し,民衆の成長が社会に与えた影響を考察できるようにすることなどが考えられる。

 これらの考察の結果を表現する活動などを工夫して,「民衆の成長を背景とした社会や文化が生まれたことを理解できるようにする」という,この事項のねらいを実現することが大切である。

 農業など諸産業の発達,畿内を中心とした都市や農村における自治的な仕組みの成立については,これらが当時の社会の大きな変化であることに気付くことができるようにする。

 また,技術面の進歩によって農業や手工業が著しく発達したことや,それに伴って商品流通が活発化したことに気付くことができるようにする。

 武士や民衆などの多様な文化の形成については,「代表的な事例を取り上げて」(内容の取扱い)扱うようにし,「その際,この時代の文化の中に現在に結び付くものが見られることに気付かせるようにする」(内容の取扱い)。

 また,例えば,絵画や建築などを通して「禅宗の文化的な影響についても触れる」(内容の取扱い)ようにする。

 応仁(おうにん)の乱後の社会的な変動については,各地に戦乱が広まる中で地方の武士の力が強くなり,新しい支配者である戦国大名が登場したことや,下剋上の風潮など,社会全体が大きく変化していったことに気付くことができるようにする。

 また,「戦国の動乱」(内容の取扱い)については,戦国大名が自らの領国を支配して分国法を定めたり,城下町を形成して産業の振興に努めたりしたことなどに気付くことができるようにする。

 
 
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