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 この中項目では,第二次世界大戦後から20世紀末ごろまでの歴史を扱い,我が国の現代の特色を,世界の動きとの関連を踏まえて課題を追究したり解決したりする活動を通して学習することをねらいとしている。

 この時期の我が国は,第二次世界大戦後の混乱の中から民主的な文化国家を目指して再建と独立の道を歩み,冷戦など世界の動きとの関わりの中で,経済や科学技術の急速な発展を成し遂げた。

 さらに冷戦終結後,グローバル化が一層加速する中で,日本の役割の在り方が問われることとなった。

 この中項目は,アに示した次の(ア)と(イ)の事項によって構成した。

 以下は,この中項目全体の構造を説明するために,アの「知識及び技能」に関する(ア)と(イ)の事項(事項名のみを記載)と,イの「思考力,判断力,表現力等」に関する項目との関係を示したものである。

 (2)現代の日本と世界課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 次のような知識を身に付けること。

(ア) 日本の民主化と冷戦下の国際社会

(イ) 日本の経済の発展とグローバル化する世界

 

イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 諸改革の展開と国際社会の変化,政治の展開と国民生活の変化などに着目して,事象を相互に関連付けるなどして,アの(ア)及び(イ)について現代の社会の変化の様子を多面的・多角的に考察し,表現すること。

(イ) 現代の日本と世界を大観して,時代の特色を多面的・多角的に考察し,表現すること。

(ウ) これまでの学習を踏まえ,歴史と私たちとのつながり,現在と未来の日本や世界の在り方について,課題意識をもって多面的・多角的に考察,構想し,表現すること。

 アの(ア)と(イ)の項目を学習するにあたっては,生徒の学習への動機付けや見通しを促しつつ,イの(ア)の「諸改革の展開と国際社会の変化」,「政治の展開と国民生活の変化」などに着目して,例えば,「第二次世界大戦後の日本は『新しい日本』と表現されることがあるが,その理由を説明しよう」,「国際社会で日本の役割が大きくなったと考えられるのは,どのような点であろうか」などの課題(問い)を設定することで,社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせて,その課題について,多面的・多角的に考察,表現できるようにすることが大切である。

 イの(イ)の大観して,時代の特色を多面的・多角的に考察し,表現することとは,「我が国の歴史の大きな流れ」を「各時代の特色を踏まえて理解する」という歴史的分野の学習の基本的なねらいを踏まえ,各中項目のまとめとして位置付けたものである。

 各時代の特色を大きく捉え,政治の展開,産業の発達,社会の様子,文化の特色など他の時代との共通点や相違点に着目して,学習した内容を比較したり関連付けたりするなどして,その結果を言葉や図などで表したり,互いに意見交換したりする活動を示している。

 このような活動によって,「思考力,判断力,表現力等」を養うとともに,各時代の特色を生徒が自分の言葉で表現できるような「確かな理解と定着を図る」(内容の取扱い(1)ウ)ことが求められる。

 イの(ウ)のこれまでの歴史学習を踏まえ,現在と未来の日本や世界の在り方について,課題意識をもって考察,構想し,表現することとは,適切な課題を設定し,歴史的分野の学習を踏まえて考察,構想し,表現できるようにすることを通して,公民的分野の学習に向けた課題意識をもつことができるようにすることが大切である。

 学習課題の設定については,生徒の関心や学校,地域の実態等に配慮し,これまでの学習経験を活用できるよう適切な課題を設定するなどの工夫が大切である。

 
 
(ア) 日本の民主化と冷戦下の国際社会冷戦,我が国の民主化と再建の過程,国際社会への復帰などを基に,第二次世界大戦後の諸改革の特色や世界の動きの中で新しい日本の建設が進められたことを理解すること。

(内容の取り扱い)

イ (2)のアの(ア)の「我が国の民主化と再建の過程」については,国民が苦難を乗り越えて新しい日本の建設に努力したことに気付かせるようにすること。その際,男女普通選挙の確立,日本国憲法の制定などを取り扱うこと。

 この事項のねらいは,第二次世界大戦後の諸改革の特色や世界の動きの中で新しい日本の建設が進められたことを次のような学習を基に理解できるようにすることである。

 学習に際しては,例えば,この中項目(2)のイの(ア)に示された「諸改革の展開と国際社会の変化」などに着目して課題(問い)を設定し,諸改革が日本の社会に及ぼした変化や冷戦体制下の日本と世界との関わりについて考察できるようにする活動などが考えられる。

 これらの考察の結果を表現する活動などを工夫して,「第二次世界大戦後の諸改革の特色や世界の動きの中で新しい日本の建設が進められたことを理解できるようにする」という,この事項のねらいを実現することが大切である。

 冷戦については,国際連合の発足,米ソ両陣営の対立,アジア諸国の独立,朝鮮戦争,その後の平和共存の動きなどを,我が国の動きと関連させながら扱うようにする。

 我が国の民主化と再建の過程については,戦後の混乱の中で,国民の貧しさからの解放の願いや平和と民主主義への期待などを背景に,大きな改革が次々に進められ,現代の日本の骨組みが形成されたことに気付くことができるようにする。

 その際,戦後の混乱や生活の様子,国民の努力などについて,身近な地域などの具体的な事例を基に捉えることができるようにし,「国民が苦難を乗り越えて新しい日本の建設に努力したこと」(内容の取扱い)に気付くことができるようにする。

 第二次世界大戦後まもなく女性にも選挙権が与えられたことによる「男女普通選挙の確立」(内容の取扱い)や,「日本国憲法の制定」(内容の取扱い)について,小学校の学習を踏まえ,日本国憲法の基本的原則などを取り上げ,その歴史的意義に気付くことができるようにする。

 国際社会への復帰については,我が国が独立を回復して国際連合に加盟し,国際社会に復帰したことを扱うようにする。

 
 

(イ) 日本の経済の発展とグローバル化する世界

 高度経済成長,国際社会との関わり,冷戦の終結などを基に,我が国の経済や科学技術の発展によって国民の生活が向上し,国際社会において我が国の役割が大きくなってきたことを理解すること。

(内容の取扱い)

(2)のアの(イ)については,沖縄返還,日中国交正常化,石油危機などの節目となる歴史に関わる事象を取り扱うようにすること。

 また,民族や宗教をめぐる対立や地球環境問題への対応などを取り扱い,これまでの学習と関わらせて考察,構想させるようにすること。

 この事項のねらいは,我が国の経済や科学技術が急速に発展して国民の生活が向上し,国際社会において我が国の役割が大きくなってきたことを,次のような学習を基に理解できるようにすることである。

 学習に際しては,例えば,この中項目(2)のイの(ア)に示された「政治の展開と国民生活の変化」などに着目して課題(問い)を設定し,国民生活への影響と国際平和の実現への努力などについて考察する活動などが考えられる。

 これらの考察の結果を表現する活動などを工夫して,「我が国の経済や科学技術の発展によって国民の生活が向上し,国際社会において我が国の役割が大きくなってきたことを理解できるようにする」という,この事項のねらいを実現することが大切である。

 高度経済成長については,我が国における産業・経済や科学技術の著しい発展とそれに伴う生活の向上や,それらを背景とする世界有数の経済大国への急速な成長,及び「石油危機」(内容の取扱い)が政治や経済に及ぼした影響などに気付くことができるようにする。

 国際社会との関わりについては,「沖縄返還,日中国交正常化」(内容の取扱い)などを扱うようにする。

 冷戦の終結については,世界規模での米ソ両陣営の対立が終わったことや,その影響などについて気付くことができるようにする。

 また,冷戦終結後も国際社会には,民族や宗教をめぐる対立,国家を越えた地域統合,地球環境問題とその取組,資源やエネルギーをめぐる課題や,我が国と近隣諸国との間の領土をめぐる問題や,日本人拉致問題など,主権や人権,平和など様々な課題が存在していることとともに,それらを解決するための様々な人々の努力が重ねられていることに気付くことができるようにする。

 この事項の学習に際しては,その内容と現在の私たちの生活との深いつながりや,現代の日本と世界の動きに関心をもつことができるように工夫し,国際協調の平和外交の推進,開発途上国への援助なども踏まえ,国際社会において我が国の役割が大きくなってきたことを理解できるようにして,公民的分野の学習に向けた課題意識をもつことができるようにすることが大切である。

 「これまでの学習と関わらせて考察,構想させるようにすること」(内容の取扱い)とは,この中項目(2)のイの(ウ)の観点から,歴史的分野の学習を踏まえて,現代の課題について取り上げ,考察,構想することを意味している。

 なお,「これまでの学習と関わらせて考察,構想させるようにする」(内容の取扱い)学習のねらいは,現代社会の諸課題についての個別の知識を獲得することにあるのではなく,生徒が,社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせて,自らの考えや意見を提案したり,議論したりする学習の過程を通して,歴史の大きな流れの中で現代の課題を考え続ける姿勢をもつことの大切さに気付くことができるようにして,公民的分野の学習へ向けた課題意識をもつことができるようにすることである。

 
 
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