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 公民的分野の目標は,
社会科の目標構成と同様に,

柱書として示された目標と,

「知識及び技能」,
「思考力,判断力,表現力等」,
「学びに向かう力,人間性等」
の資質・能力の三つの柱

に沿った,
それぞれ(1)から(3)までの目標から
成り立っている。

 そして,
これら(1)から(3)までの目標を
有機的に関連付けることで,
柱書として示された目標が達成される
という構造になっている。

 現代社会の見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成することを目指す。

 今回の改訂においては,全ての教科,科目,分野等において,各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら,目標に示す資質・能力の育成を目指すこととした。

 その過程において,中学校社会科公民的分野で働かせる「見方・考え方」について,「現代社会の見方・考え方」として整理したところである。

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 現代社会の見方・考え方については,
今回の中央教育審議会答申を踏まえ,

「社会的事象を,
 政治,法,経済などに関わる
 多様な視点(概念や理論など)
 に着目して捉え,

 よりよい社会の構築に向けて,
 課題解決のための選択・判断に
 資する概念や理論
 などと関連付けること」

とし,
考察,構想する際の
「視点や方法(考え方)」
として整理した。

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 このことに関しては,
平成20年改訂時に
「中学校学習指導要領解説 社会編」
の中で,

公民的分野の目標に示された
「現代社会についての見方や考え方
 の基礎を養う」ことについて,

「『現代社会についての見方や考え方
 の基礎』については,

 現代の民主政治や
 国民の生活の向上と
 経済活動,社会生活
 などを
 より一層理解できるようにすること
 をねらいとして
 新たに設けられたところである。

 ここでいう『見方や考え方』とは,
 現代の社会的事象を読み解くときの
 概念的枠組み
 と考えることができる。

 人は一般にある情報を手にしたとき,
 何らかの枠組みに即しながら考察し,
 その情報がもつ意味や価値を
 捉えようとする。

 例えば,
 マス・メディアを通じて
 経済や政治などに関わる情報を得ると,
 自分のもっている枠組みに即して解釈し,
 社会生活に与える影響及び意義を
 自ら見いだそうとする。

 こうした概念的枠組みを
 『見方や考え方』としているのである。」

と示していたところである。

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 今回の改訂においては,
こうした従前の趣旨を踏まえつつも,
各教科等の特質に応じた
物事を捉える視点や考え方を
「見方・考え方」として
教科等を横断して整理したことを受け,

@ 現代社会の諸課題の解決に向けて考察,構想したりする際の視点として概念や理論などに着目して捉えること,

A 課題解決に向けた選択・判断に必要となる概念や理論などと関連付けて考えたりすることなど,

現代社会の見方・考え方を
概念に着目して構成したことから,
これまで以上に
概念的な枠組みとしての性格が
明確になったといえる。

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 したがって,

小学校社会科における
位置や空間的な広がり,
時期や時間の経過,
事象や人々の相互関係など,

中学校社会科地理的分野における
位置や空間的な広がりなど,

歴史的分野における
推移や変化など

といった多様な視点を踏まえた上で,

公民的分野においては,
対立と合意,効率と公正などの
現代社会を捉える概念的な枠組みを
「視点や方法(考え方)」として用いて,
社会的事象を捉え,
考察,構想に向かうこと

が大切である。

 現代社会の見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通してとは,

公民的分野の学習において
主体的・対話的で深い学びを
実現するためには,

分野の学習において
適切な課題を設定し,

その課題の追究のための枠組みとなる
多様な視点(概念など)に着目させ,

課題を追究したり解決したりする活動
が展開されるように
学習を設計すること

が不可欠であることを
意味している。

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 現代社会の見方・考え方を働かせ
については,
公民的分野の学習の特質を示している。

 すなわち,

生徒が,
様々な社会的事象の
関連や本質,意義を捉え,
考え,説明したり,
現代社会の諸課題の解決に向けて
構想したりする際,

現代社会の見方・考え方を
働かせることによって,
その解釈をより的確なものとしたり,
課題解決の在り方を
より公正に判断したりすること
が可能となる。

 また,

現代社会の見方・考え方を
働かせることによって,

政治,法,経済などに関する
基本的な概念や考え方を
新たに獲得したり,
課題を主体的に解決しようとする態度
などにも作用したりする

ということである。

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 このことについては,
平成20年改訂時に

「現代社会についての見方や考え方」
について,
公民的分野の目標として
「現代社会についての見方や考え方
 の基礎を養う」
と示した上で,

内容の(1)の
「イ 現代社会をとらえる見方や考え方」
において,
「ここで習得した『見方や考え方』は,
 これ以降の学習において
 活用するとともに,
 繰り返し吟味して,
 さらに広く深く成長させていくこと
 が大切である」
と示していたところである。

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 今回の改訂においては,
公民的分野の目標の柱書において
「現代社会の見方・考え方を働かせ」
と示されたことから,

従前の
「現代社会についての見方や考え方」
との異同に留意して,
今回の改訂における分野の目標の実現
を目指すこと
が必要である。

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 広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成することを目指すについては,
社会科及び各分野に共通する表現であり,第2章の第1節「教科の目標」で説明したとおりである。

 
 
(1) 個人の尊厳と人権の尊重の意義,特に自由・権利と責任・義務との関係を広い視野から正しく認識し,民主主義,民主政治の意義,国民の生活の向上と経済活動との関わり,現代の社会生活及び国際関係などについて,個人と社会との関わりを中心に理解を深めるとともに,諸資料から現代の社会的事象に関する情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。

 目標の(1)は,公民的分野の学習を通じて育成される資質・能力のうち,「知識及び技能」に関わるねらいを示している。

 ここでは,民主主義…について,個人と社会との関わりを中心に理解を深めるためには個人の尊厳と人権の尊重の意義についての認識が必要であることが述べられている。

 それは,民主国家の存在を基礎付ける近代憲法の多くが,個人の尊厳に基づく人権尊重を基本原理として構成されているように,民主主義の本質がここにあるからである。

 そして,個人は他の個人と結び付いて社会集団を形成し社会生活を営むのであり,民主社会においては,互いに個人の尊厳と基本的人権を尊重することが社会生活の基本となっているからである。

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 さらに,このことの認識のためには,
自由・権利と責任・義務との関係を広い視野から正しく認識することが必要であることを示している。

 すなわち,個人は常に他の個人と関わりをもちながら社会生活を営んでおり,その限り,個人の自由・権利には,社会的な責任・義務が伴うのである。

 このように自由・権利と責任・義務との関係を取り上げ,それを通して個人の尊厳と人権の尊重の意義を認識し,民主主義に対する理解を深めることができるようにすることが必要である。

 したがって,目標の(1)で述べられている民主主義に関する基本的な考え方は,この分野の学習全体を貫くものであることに留意し,指導計画を作成することが大切である。

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 また,民主政治の意義,国民の生活の向上と経済活動との関わり,現代の社会生活及び国際関係などについて,個人と社会との関わりを中心に理解を深めるについては,
公民的分野の具体的な学習が,
「民主政治の意義」,
「国民の生活の向上と経済活動との関わり」,
「現代の社会生活」,
「国際関係」など,

政治に関する学習,
経済に関する学習,
社会生活に関する学習及び
国際関係に関する学習

であることを示している。

 そして,
これらの学習が
「個人と社会との関わり」を中心に
理解を深めることができるようにすること
を示したものである。


「個人と社会との関わり」については,
社会生活を営む上での
基本的な問題として,
常にあらゆる場で
直面せざるを得ないものであり,

個人と社会との関係について
考えることは,
豊かで民主的な国家及び社会の
主体的な形成者になるために
必要なことである。

 したがって,
内容全体に関わる学習の
基本的な観点として,
目標に明確に位置付けている。

 諸資料から現代の社会的事象に関する情報を効果的に調べまとめる技能とは,

大きく見れば
次の三つの技能を用いる学習場面に
分けて考えることができる。

 第一に,手段を考えて課題の解決に向けて必要な社会的事象に関する情報を収集する技能である。

 第二に,収集した情報を現代社会の見方・考え方を働かせて読み取る技能である。

 そして第三に,読み取った情報を課題の解決に向けてまとめる技能である。

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 これらの技能は,情報化が進展する中で社会的事象について考察するときに求められる力,すなわち,関連のある資料を様々な情報手段を効果的に活用して収集し,かつ考察に必要な情報を合理的な基準で選択し分析するとともに適切にまとめる力を意味している。

 現代では,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用し,大量の情報を手に入れることが可能となっており,必要な情報とそうでない情報を選別する合理的な基準を見いだす能力を学習の中で養う工夫が重要である。

 
 
(2) 社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連を現代の社会生活と関連付けて多面的・多角的に考察したり,現代社会に見られる課題について公正に判断したりする力,思考・判断したことを説明したり,それらを基に議論したりする力を養う。

 目標の(2)は,公民的分野の学習を通じて育成される資質・能力のうち,「思考力,判断力,表現力等」に関わるねらいを示している。

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 公民的分野において養われる
思考力,判断力とは,

民的分野の学習を始めるまでに
身に付けた
社会的事象の地理的な見方・考え方及び
社会的事象の歴史的な見方・考え方を
生かしつつ

現代社会の見方・考え方を用いて,
事実を基に
社会的事象の
意味や意義,特色や相互の関連を
現代の社会生活と関連付けて
多面的・多角的に考察する力

現代社会に見られる課題を把握して,
よりよい社会の構築に向けて,
複数の立場や意見を踏まえて
根拠に基づき
公正に判断する力

であると捉えられることを示している。

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 多面的・多角的に考察については,

公民的分野の学習対象である
現代の社会的事象が
多様な側面をもつとともに,
それぞれが
様々な条件や要因によって成り立ち,
更に事象相互が関連し合って
絶えず変化していることから,
「多面的」に考察することを求めている。

 そして,このような
社会的事象を捉えるに当たっては,
多様な角度やいろいろな立場に立って
考えることが必要となることから
「多角的」としている。

 柱書の項で説明したとおり,「現代社会の見方・考え方」は,政治,法,経済などに関わる現代の社会的事象について考察,構想したり,その過程や結果を適切に表現したりする際に働かせる多様な視点(概念など)によって構成されているものである。

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 今回の改訂では,
現代社会の見方・考え方の基礎となる
概念的な枠組みとして

公民的分野の学習全体を通して
働かせることが求められる
「対立と合意,効率と公正など」
に加え,

大項目の
「B 私たちと経済」,
「C 私たちと政治」,
「D 私たちと国際社会の諸課題」
において
それぞれの内容を構成する
経済,政治,国際社会に関わる概念
などとして

「分業と交換,希少性など」,
「個人の尊重と法の支配,民主主義など」,
「協調,持続可能性など」
を示したところであり,

課題の特質に応じた視点(概念など)
に着目して考察したり,

よりよい社会の構築に向けて,
その課題の解決のための選択・判断
に資する概念
などを関連付けて構想したりする際の

「視点や方法(考え方)」として
働かせること

を明確にしている。

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 授業場面においては,設定した適切な課題に応じてこれらの概念的な枠組みを用いて,課題を追究したり解決したりする活動が展開されることとなる。

 また,現代社会に見られる課題について公正に判断…する力を養うとは,

現代社会に見られる課題について
判断するときには,

収集した資料の中から
客観性のあるものを取捨選択しながら
事実を捉え,

いろいろな立場に立った
様々な考え方があること
を理解した上で判断する,
結論に至る手続きの公正さに加え,

その判断によって
不当に不利益を被る人がいないか,
みんなが同じになるようにしているか,
といった
機会の公正さや結果の公正さなど

「公正」には様々な意味合いがあること
を理解した上で,

現代社会に見られる課題について
判断できるようになること

を求めてこのような表現としている。

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 さらに,目標の最後の
思考・判断したことを説明したり,それらを基に議論したりする力を養う
は,
公民的分野における表現力に関わるものである。

 公民的分野の学習において
養われる表現力とは,
学習の結果を
効果的に発表したり
文章にまとめたりする力
だけを意味しているのではない。

 ここでいう表現力とは,例えば,
学習の過程で考察,構想したこと
について表現すること
も含んでいるのである。

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 すなわち,

どのような資料から
現代の社会的事象に関する情報
を収集し,

その中から何を基準として
必要な情報を選択し,

それを用いて
どのようなことを考え,
どのような根拠で
結論を導き出したのかを,

具体的,論理的に説明するなどして,
第三者に
学習で得た結論と
その結論を導き出した過程を
より分かりやすく効果的に示す力
を意味しているのである。

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 そして,このような表現力は,

学習上の課題について考察したことや,

「合意形成や社会参画を
 視野に入れながら,
 取り上げた課題について
 構想したことを,
 妥当性や効果,実現可能性
 などを踏まえて表現できるよう
 指導すること」
 (内容の取扱い)

などを通して養われるものであること

に留意することが必要である。

 
 

(3) 現代の社会的事象について,現代社会に見られる課題の解決を視野に主体的に社会に関わろうとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵(かん)養される,国民主権を担う公民として,自国を愛し,その平和と繁栄を図ることや,各国が相互に主権を尊重し,各国民が協力し合うことの大切さについての自覚などを深める。

 目標の(3)は,公民的分野の学習を通じて育成される資質・能力のうち,「学びに向かう力,人間性等」に関わるねらいを示している。

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 現代の社会的事象について,現代社会に見られる課題の解決を視野に主体的に社会に関わろうとする態度を養うについては,

社会科が
「地理的分野及び歴史的分野の基礎
 の上に
 公民的分野の学習を展開する
 この教科の基本的な構造」
(指導計画の作成と内容の取扱い)
をとる中で,

地理的分野及び歴史的分野においては
共通して
「課題を主体的に追究,解決しようとする
 態度を養う」ことを目指していること

を踏まえ,
その基礎の上に示されているものである。

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 多面的・多角的な考察や深い理解とは,
社会科の学習における
考察や理解の特質を示している。

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 そうした学習を通して涵(かん)養される
国民主権を担う公民として,
自国を愛し,
その平和と繁栄を図ることや,

各国が相互に主権を尊重し,
各国民が協力し合うこと
の大切さについての自覚
は,

教育基本法及び学校教育法に
規定されている
「公共の精神に基づき,
 主体的に社会の形成に参画し,
 その発展に寄与する態度を養うこと」
の中核的な指導場面の一つである
公民的分野において
育成することが期待される
「学びに向かう力,人間性等」
であることを意味している。

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 具体的な指導場面としては,例えば,経済に関わる項目で納税者として,政治に関わる項目で主権者として,国際社会に関わる項目で日本国民としてそれぞれ求められる役割と責任などについて多面的・多角的に考察したり,深い理解につなげたりして,社会の発展に寄与する態度を養うことなどが考えられる。

 このように,中学校社会科においては従前より「公共の精神」に基づき学習を展開する場面を様々な内容に応じて設定してきたところであるが,
今回の改訂においてもその趣旨を踏襲し,国民主権を担う公民として,国家及び社会の形成者として我が国が直面する課題の解決に向けて主体的に社会に関わろうとする態度を育む旨を規定しているのである。

 国民主権を担う公民として,自国を愛し,その平和と繁栄を図ることについては,
国際社会において大きな役割を担うようになった日本の在り方を,国民主権を担う公民として多面的・多角的に考察,構想し,表現できるようにすることを通して,家族,郷土,自国を愛するとともに,国際社会の中で信頼と尊敬を得る日本人を育成していくことが極めて大切なことであることを示している。

 その意味で,ここでは,グローバル化が一層進展する中で国民的自覚や自国を愛することを国際的な視野に立って深めていくことを示しているのである。

 続いて,各国が相互に主権を尊重し,各国民が協力し合うことの大切さについての自覚については,
内容のDの(1)の項目名に端的に示されているように,国際社会の変容とともに国際的な相互依存関係がより一層深まってきた現状を踏まえ,これからのよりよい社会を築いていくために解決すべき課題として「世界平和と人類の福祉の増大」を掲げていることと,特に関わりが深い。

 そして,このようないわば地球的課題について,その解決のためには「各国が相互に主権を尊重し,各国民が協力し合うこと」が重要であることを示している。

 また,「人類の福祉の増大」と表現しているように,これからの社会においては,人類の立場から,また,持続可能な社会の形成という観点から,諸課題について多面的・多角的に考察,構想し,表現できるようにすることを通して,このことの大切さについての自覚を深めていくことを示しているのである。

 
 
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