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 この大項目は,主として

個人,企業及び国や地方公共団体の
経済活動を扱い,

消費生活を中心に経済活動の意義,
市場経済の基本的な考え方,
現代の生産や金融などの
仕組みや働き
などを理解できるようにすること,

個人や企業の
経済活動における役割と責任,
社会生活における職業の意義と役割
及び雇用と労働条件の改善
について多面的・多角的に考察し,表現できるようにすること,

社会資本の整備,
公害の防止など環境の保全,
少子高齢社会における
社会保障の充実・安定化,
消費者の保護など
市場の働きに委ねることが難しい諸問題に関して,
国や地方公共団体が果たす役割について
多面的・多角的に考察,構想し,表現できるようにすること,

財政及び租税の役割について
多面的・多角的に考察し,表現できるようにすること

などを主なねらいとしている。

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 特に,
経済に関する内容の学習については,
なぜそのような仕組みがあるのか,
どのような役割を果たしているのか
ということを理解できるようにしたり,

経済活動が
我々の社会生活にあらゆる面で
密接な関わりをもっていること
を踏まえたりしながら,
今日の経済活動に関する諸課題について
着目し,
主権者として,
よりよい社会の構築に向けて,
その課題を解決しようとする力
を養うことが大切である。

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 また,内容のAの
「(2)現代社会を捉える枠組み」
の学習の成果を生かし,
経済に関する様々な事象や課題を捉え,
考察,構想する際の概念的な枠組みとして

対立と合意,
効率と公正,
分業と交換,
希少性

などに着目したり関連付けたりして,
経済に関する様々な事象
などを理解できるようにしたり,
合意形成や社会参画を視野に入れながら,
経済に関する課題の解決に向けて
多面的・多角的に考察,構想できるようにする。

 さらに,
理解した内容や考察,
構想した過程や結果について,
その妥当性や効果,実現可能性
などを踏まえて表現できるように
指導することをねらいとしている。

 以上のねらいに基づき,この大項目における二つの中項目は,次のような観点から内容が構成されている。

 「(1)市場の働きと経済」では,経済活動の意義について消費生活を中心に理解できるようにするとともに,価格の決まり方や資源の配分についての理解を基に市場経済の基本的な考え方について理解できるようにする。

 また,現代の生産や金融などの仕組みや働きなどを理解できるようにするとともに,個人や企業の経済活動における役割と責任,社会生活における職業の意義と役割及び雇用と労働条件の改善について多面的・多角的に考察し,表現できるようにする。

 「(2)国民の生活と政府の役割」では,社会資本の整備,公害の防止など環境の保全,少子高齢社会における社会保障の充実・安定化,消費者の保護について,それらの意義の理解を基に,国や地方公共団体に任せた方が効率的であったり公正であったりする問題や,市場の働きに任せたままでは解決が難しかったりする問題に関して,国や地方公共団体が果たす役割について多面的・多角的に考察,構想し,表現できるようにする。

 また,財政及び租税の意義,国民の納税の義務についての理解を基に,財源の確保と配分という観点から財政及び租税の役割について多面的・多角的に考察し,表現できるようにする。

 以上のような大項目のねらいと内容構成の趣旨を踏まえ,現実の経済に対する関心を高め,身近で具体的な事例を取り上げて学習を展開し,経済に関する課題を解決しようとする態度を養っていくことが大切である。

 その際,「分野の内容に関係する専門家や関係諸機関などと円滑な連携・協働を図り,社会との関わりを意識した課題を追究したり解決したりする活動を充実させること」(内容の取扱い)が大切である。

 
 

(1) 市場の働きと経済

 対立と合意,効率と公正,分業と交換,希少性などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 次のような知識を身に付けること。

(ア) 身近な消費生活を中心に経済活動の意義について理解すること。

(イ) 市場経済の基本的な考え方について理解すること。その際,市場における価格の決まり方や資源の配分について理解すること。

(ウ) 現代の生産や金融などの仕組みや働きを理解すること。

(エ) 勤労の権利と義務,労働組合の意義及び労働基準法の精神について理解すること。

 

イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 個人や企業の経済活動における役割と責任について多面的・多角的に考察し,表現すること。

(イ) 社会生活における職業の意義と役割及び雇用と労働条件の改善について多面的・多角的に考察し,表現すること。

(内容の取扱い)

(3) 内容のBについては,次のとおり取り扱うものとする。

ア (1)については,次のとおり取り扱うものとすること。

(ア) アの(イ)の「市場における価格の決まり方や資源の配分」については,個人や企業の経済活動が様々な条件の中での選択を通して行われていることや,市場における取引が貨幣を通して行われていることなどを取り上げること。

(イ) イの(ア)の「個人や企業の経済活動における役割と責任」については,起業について触れるとともに,経済活動や起業などを支える金融などの働きについて取り扱うこと。

 イの(イ)の「社会生活における職業の意義と役割及び雇用と労働条件の改善」については,仕事と生活の調和という観点から労働保護立法についても触れること。

 この中項目は,
経済活動の意義について
消費生活を中心に学びながら,

なぜ市場経済という仕組みがあるのか,
どのような機能があるのか,
なぜ金融は必要なのか,
どうしてそのような仕組みがあるのか,
個人や企業には経済活動において
どのような役割と責任があるのか,

といった
市場経済の基本となる考え方
などに関する理解を基に
考察し,表現することができる
適切な問いを設け,

それらの課題を追究したり
解決したりする活動を通して,
市場の働きと経済について関心を高め,
課題を意欲的に追究する態度
を育成すること
を主なねらいとしている。

 アは,この中項目で身に付ける「知識」に関わる事項である。

 アの(ア)の身近な消費生活を中心に経済活動の意義について理解することについては,

経済活動が,
一般的に人々が求める財やサービス
を生産し,
これらを消費することで
生活を成り立たせている人間
の活動であり,

経済活動の意義とは,
人間の生活の維持・向上にあり,
経済は生活のための手段
に他ならないこと

を,
生徒の身近な経済生活である消費
を中心に
理解できるようにすることを
意味している。

 アの(イ)の市場経済の基本的な考え方について理解すること。その際,市場における価格の決まり方や資源の配分について理解することについては,

「個人や企業の経済活動が
 様々な条件の中での選択
 を通して行われていることや,

 市場における取引が
 貨幣を通して行われていること
 などを取り上げること」(内容の取扱い)

を通して理解できるようにすることを
意味している。

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 個人や企業の経済活動が様々な条件の中での選択を通して行われていること…を取り上げること(内容の取扱い)とは,以下のように捉えることができる。

 一般に,人間の欲求は多様で無限に近いものであるのに対し,財やサービスを生み出すための資源は有限であり,生み出される財やサービスもまた有限である。

 つまり,地球上に存在するほぼ全てのものは「希少性」があるといえるのである。

 そこで,所得,時間,土地,情報など限られた条件の下において,価格を考慮しつつ選択を行うという経済活動がなされるのである。

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 したがってここでは,

市場経済において
個々人や企業は
価格を考慮しつつ,
何をどれだけ生産・消費するか
選択すること,

また,価格には,
何をどれだけ生産・消費するか
に関わって,
人的・物的資源を
効率よく配分する働きがあることなど,

市場経済の基本的な考え方を,
具体的事例を取り上げて
理解できるようにすること
を意味している。

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 なお,
市場経済において
これらの選択を行うに当たっては,

あるものを
より多く生産・消費するときには,
他のものを
少なく生産・消費しなければならない
ことがあること

を理解できるようにすることが
必要である。

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 また,市場における取引が貨幣を通して行われていることなどを取り上げること(内容の取扱い)については,財やサービスの取引は貨幣を通して行われていることを理解できるようにするだけでなく,近年ではICTの発達などにより,フィンテックと呼ばれるIoT,ビッグデータ,人工知能といった技術を使った革新的な金融サービスを提供する動きが多く見られ,様々な支払い方法が用いられるようになってきていることを理解できるようにすることも必要である。

 アの(ウ)の現代の生産や金融などの仕組みや働きを理解することについては,

家計と企業との関連に着目しながら,

人々が求める財やサービスを
作り出す生産が,
家計によって提供される労働や
その他の資源を投入して
企業を中心に行われていること

について理解できるようにすることを
意味している。

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つまり,

家計と企業,企業間などにおいて
「分業と交換」が行われている
といえるのである。

その際,
各企業は企業間で「分業」を行い,
中間財を含めた財やサービスを
「交換」することを通して
人々が求める財やサービスを
作り出すことによって,
私たちの生活が成り立っていること

を理解できるようにする必要がある。

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 また,金融の仕組みや働きについては,家計の貯蓄などが企業の生産活動や社会に必要な様々な形態の起業のための資金,人々の生活の資金などとして円滑に循環するために,金融機関が仲介する間接金融と,株式や債券などを発行して直接資金を集める直接金融を扱い,金融の仕組みや働きを理解できるようにすることを意味している。

 アの(エ)の勤労の権利と義務,労働組合の意義及び労働基準法の精神について理解することについては,勤労が国民の権利であり義務であることや職業選択の自由が保障されていることと関連付けて理解できるようにするとともに,正しい勤労観や職業観の基礎を培うことが必要である。

 また,労働条件の維持・改善及び経済的地位の向上を図ることを主たる目的として労働者が自主的に組織する労働組合の意義や労働基準法が労働者が人たるに値する生活を営むための最低の基準を定め,労働者を保護しようとしていることと関連付けて理解できるようにすることが必要である。

 イは,この中項目で身に付ける「思考力,判断力,表現力等」に関わる事項である。

 イの(ア)の個人や企業の経済活動における役割と責任について多面的・多角的に考察し,表現することについては,「起業について触れるとともに,経済活動や起業などを支える金融などの働きについて取り扱うこと」(内容の取扱い)を通して多面的・多角的に考察し,表現できるようにすることを意味している。

 個人…の経済活動における役割と責任は,勤労の権利と義務についての理解を基に,個人は働くことを通して企業に労働力を提供して所得(収入)を得ること,また,様々な財やサービスの購入・消費を通して豊かな生活を送ることや企業に利潤(利益)をもたらすことについて多面的・多角的に考察し,表現できるようにすることを意味している。

 企業の経済活動における役割と責任は,企業は利潤(利益)を追求するとともに人々が必要とする安全で安心な財やサービスを生産することや,公正な経済活動を行うこと,また,その際企業は雇用の安定や福利厚生など雇用に伴う責任を果たすとともに,環境への配慮や社会貢献に関する活動を行っていることなどについて多面的・多角的に考察し,表現できるようにすることを意味している。

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 起業について触れるとともに,経済活動や起業などを支える金融などの働きについて取り扱うこと(内容の取扱い)については,少子高齢化,情報化,グローバル化など社会の変化に伴って,今後新たな発想や構想に基づいて財やサービスを創造することの必要性が一層生じることが予想される中で,社会に必要な様々な形態の起業を行うことの必要性に触れること,経済活動や起業などを支える金融などの働きが重要であることについて取り扱うことを意味している。

 その際,効率と公正などに着目したり関連付けたりして,これまで我が国の経済活動を支えてきた個人や企業の取組を受け継ぎつつ,今後様々な形態の起業が市場の拡大や多様化を促し,新たな雇用を創出することが予測されていることについて多面的・多角的に考察し,表現できるようにすることが大切である。

 また,資金の流れや企業の経営の状況などを表す企業会計の意味を考察することを通して,企業を経営したり支えたりすることへの関心を高めるとともに,利害関係者への適正な会計情報の提供及び提供された会計情報の活用が求められていること,これらの会計情報の提供や活用により,公正な環境の下での法令等に則った財やサービスの創造が確保される仕組みとなっていることを理解できるようにすることも大切である。

 イの(イ)の社会生活における職業の意義と役割及び雇用と労働条件の改善について多面的・多角的に考察し,表現することについては,「仕事と生活の調和という観点から労働保護立法についても触れること」(内容の取扱い)を通して多面的・多角的に考察し,表現できるようにすることを意味している。

 職業の意義と役割及び雇用などについては,勤労の権利と義務についての理解を基に,労働によって家計を維持・向上させるだけでなく,個人の個性を生かすとともに,個人と社会とを結び付け,社会的分業の一部を担うことによって社会に貢献し,社会生活を支えるという意義があることについて多面的・多角的に考察し,表現できるようにすることを意味している。

 また,家計を維持・向上させる上で,雇用と労働条件の改善が重要であることについての理解を基に,産業構造の変化や就業形態の変化,内容のAの「(1)私たちが生きる現代社会と文化の特色」のアの(ア)の「現代日本の特色」についての学習などと関連付けながら多面的・多角的に考察し,表現できるようにすることが大切である。

 その際,国民一人一人が生きがいや充実感をもって働き,仕事上の責任を果たすとともに,家庭や地域社会などでの生活において,人生の各段階に応じて多様な生き方の選択・実現を可能とするために,仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)という観点から,違法な時間外労働や賃金の不払いなどが疑われる企業等との間でトラブルに見舞われないための予防とするための,またトラブルに直面した場合に適切な行動がとれるようにするための労働保護立法などに触れ,社会生活における職業の意義と役割及び雇用と労働条件の改善について多面的・多角的に考察し,表現できるようにすることが大切である。

 
 

(2) 国民の生活と政府の役割

 対立と合意,効率と公正,分業と交換,希少性などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 次のような知識を身に付けること。

(ア) 社会資本の整備,公害の防止など環境の保全,少子高齢社会における社会保障の充実・安定化,消費者の保護について,それらの意義を理解すること。

(イ) 財政及び租税の意義,国民の納税の義務について理解すること。

 

イ 国民の生活と福祉の向上を図ることに向けて,次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 市場の働きに委ねることが難しい諸問題に関して,国や地方公共団体が果たす役割について多面的・多角的に考察,構想し,表現すること。

(イ) 財政及び租税の役割について多面的・多角的に考察し,表現すること。

(内容の取扱い)

イ (2)については,次のとおり取り扱うものとすること。

(ア) アの(ア)の「消費者の保護」については,消費者の自立の支援なども含めた消費者行政を取り扱うこと。

(イ) イの(イ)の「財政及び租税の役割」については,財源の確保と配分という観点から,財政の現状や少子高齢社会など現代社会の特色を踏まえて財政の持続可能性と関連付けて考察し,表現させること。

 この中項目は,

国民の生活と福祉の向上を図ること
に向けて,

なぜ全ての経済活動を
市場の働きだけに
任せておくことができないのか,

国や地方公共団体は
どのような役割を果たしているのか,

財政及び租税の役割は
どのようなことなのか,

といった

市場の働きに委ねることが難しい諸問題
などに関する理解
を基に考察し,表現することができる
適切な問いを設け,

それらの課題を追究したり
解決したりする活動を通して,
国民の生活と政府の役割について
関心を高め,
課題を意欲的に追究する態度
を育成すること

を主なねらいとしている。

 アは,この中項目で身に付ける「知識」に関わる事項である。

 アの(ア)の社会資本の整備…の意義を理解することについては,社会資本が多くの経済活動を円滑に進めるために必要な基礎的施設として,間接的に経済の発展に役立つことについて理解できるようにするとともに,我が国の社会資本の現状及び社会の変化を踏まえ,福祉の向上を図る上で生活に関連した社会資本の充実が必要であることを理解できるようにすることを意味している。

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 公害の防止など環境の保全…の意義を理解することについては,

地理的分野及び歴史的分野の学習
との関連を考慮しながら,
個人の生活や産業の発展
などに伴う公害など
環境汚染や自然破壊の問題について
理解できるようにすること

を意味している。

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 そして,
現在及び将来の国民の
健康で文化的な生活の確保
に寄与するとともに
人類の福祉に貢献する
という視点に立って,

環境を保全し,
積極的に人間環境の改善を図る
ようにすることの重要性
について理解できるようにすること,

さらに,

これらの問題の解決を図るためには,
環境保全対策が
国や地方公共団体の重要な課題であり,
これまで様々な取組がなされてきたこと,

我々の生活の在り方を見直し
個人や企業が
責任ある行動をとるようにする
必要があること
を理解できるようにすること

を意味している。

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 少子高齢社会における社会保障の充実・安定化…の意義を理解することについては,
日本国憲法第25条の精神に基づく
社会保障制度の基本的な内容の理解
を基に,
その充実・安定化を図っていく
必要があること
を理解できるようにするとともに,

財政の現状や少子高齢社会など
現代社会の特色などを踏まえながら,
受益と負担の均衡のとれた
持続可能な社会保障制度の構築など,
これからの福祉社会の目指す方向
について理解できるようにすること

を意味している。

 その際,

貯蓄や民間の保険などにも触れ,

社会保障の充実・安定化のためには,
自助,共助及び公助が
最も適切に組み合わされるよう
留意することが求められていること

についても理解できるようにすること
が大切である。

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 消費者の保護…の意義を理解することについては,「消費者の自立の支援なども含めた消費者行政を取り扱うこと」(内容の取扱い)としている。

 ここでは,消費者の利益の擁護及び増進について,消費者の権利の尊重及びその自立の支援などのため,国は消費者政策を推進する役割を,地方公共団体は地域の社会的,経済的な状況に応じた消費者政策を推進する役割を担っていることを具体的な事例を通して理解できるようにするとともに,企業は消費者の安全や,消費者との取引における公正さを確保するなどの責務や,国や地方公共団体の政策に協力する責任があることについて理解できるようにすることを意味している。

 また,消費者も自らの利益の擁護及び増進のために自立した消費者になることとともに,個々の消費者の特性及び消費生活の多様性を相互に尊重しつつ,自らの消費生活に関する行動が現在及び将来の世代にわたって内外の社会経済情勢及び地球環境に影響を及ぼし得るものであることを自覚して,公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画することが期待されていることや,どのような消費者行政が行われているのかということについて理解できるようにすることを意味している。

 アの(イ)の財政及び租税の意義,国民の納税の義務について理解することについては,
財政の歳入・歳出における内容や現状を具体的に取り上げ,財政が社会資本の整備や外交,防衛などの公共財の提供などによって,現在世代のみならず将来世代をも含め,持続可能な社会の形成に資することも念頭に,人々の生活を保障する国民福祉の観点に立って行われるべきものであることを理解できるようにするとともに,
統計資料などを有効に活用しながら租税の大まかな仕組みやその特徴にも触れ,国民生活に大きな影響力をもつ財政を支える租税の意義や税制度の基礎を理解できるようにすることを意味している。

 また,国民が納税の義務を果たすことの大切さを理解できるようにするとともに,
平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な公民としての資質・能力を備えた国民の育成という観点から,
税の負担者として租税の使いみちや配分の在り方を選択・判断する責任があること
などについて理解と関心を深めるなど
納税者としての自覚を養うことが大切である。

 イは,この中項目で身に付ける「思考力,判断力,表現力等」に関わる事項である。

 イの(ア)の市場の働きに委ねることが難しい諸問題に関して,国や地方公共団体が果たす役割について多面的・多角的に考察,構想し,表現することとは,

社会資本の整備,公害の防止など環境の保全,少子高齢社会における社会保障の充実・安定化,消費者の保護など国や地方公共団体に任せた方が効率的であったり,公正であったり,市場の働きだけに任せたままでは解決が難しかったりする問題について多面的・多角的に考察,構想し,表現できるようにすることを意味している。

 イの(イ)の財政及び租税の役割について多面的・多角的に考察し,表現することについては,
「財源の確保と配分という観点から,財政の現状や少子高齢社会など現代社会の特色を踏まえて財政の持続可能性と関連付けて考察し,表現させること」(内容の取扱い)
としている。

 財政支出に対する要望は広範多岐にわたり,そのための財源の確保が必要であるが,国や地方公共団体の財源は無限にあるわけではなく,税収に加え特例公債の発行などによって賄われている現状の理解を基に,効率と公正,希少性などに着目して,財源の確保と配分について,国民や住民が受ける様々な公共サービスによる便益と,それにかかる費用に対する負担など財政の持続可能性に関わる概念などと関連付けて多面的・多角的に考察し,表現できるようにすることを意味している。

 その際,中項目(1)のアの(イ)の「市場経済の基本的な考え方」で学習した「個人や企業の経済活動が様々な条件の中での選択を通して行われていること」(内容の取扱い)や,中項目(2)のアの(イ)の「財政及び租税の意義,国民の納税の義務」で学習したことの理解を基とすることが必要である。

 さらに,例えば,少子高齢社会における社会保障の充実・安定化とその財源の確保の問題をどのように解決していったらよいか,社会保障・税番号制度(マイナンバー)に触れながら,税の負担者として自分の将来と関わらせて,税制度について考察したことをまとめたり,説明したりする活動を取り入れるなどの工夫をすることも考えられる。

 
 
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