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(1) 社会的な見方・考え方を働かせることをより一層重視する観点に立って,社会的事象の意味や意義,事象の特色や事象間の関連,社会に見られる課題などについて,考察したことや選択・判断したことを論理的に説明したり,立場や根拠を明確にして議論したりするなどの言語活動に関わる学習を一層重視すること。

 既述のとおり,「社会的な見方・考え方」については,課題を追究したり解決したりする活動において,社会的事象等の意味や意義,特色や相互の関連を考察したり,社会に見られる課題を把握して,その解決に向けて構想したりする際の「視点や方法(考え方)」として整理している。

 よって,「社会的な見方・考え方を働かせることをより一層重視する観点に立」つということは,そこに示された,「社会的事象の意味や意義,事象の特色や事象間の関連」を考察したり,「社会に見られる課題」を把握して,その解決に向けて構想したりすることにつながるものであると考えられる。

 社会科においては,
これまでも

様々な資料を
適切に収集し,活用して
事象を多面的・多角的に考察し
公正に判断するとともに,
適切に表現する
能力と態度

を育てることを
各分野共通の目標としてきた。

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 それが
平成20年改訂の学習指導要領において,

教科等,学校種を超えて
学習の基盤と位置付けられた言語能力と

その育成のための言語活動の充実
が求められてきた趣旨

を引き継ぎつつ,

資料等を有効に活用して
論理的に説明したり,
立場や根拠を明確にして
議論したりする
などの

社会科ならではの
言語活動に関わる学習

を一層重視する必要がある。

 
 

(2) 情報の収集,処理や発表などに当たっては,学校図書館や地域の公共施設などを活用するとともに,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を積極的に活用し,指導に生かすことで,生徒が主体的に調べ分かろうとして学習に取り組めるようにすること。

 その際,課題の追究や解決の見通しをもって生徒が主体的に情報手段を活用できるようにするとともに,情報モラルの指導にも留意すること。

 学校教育の情報化の進展に対応する観点から,「情報の収集,処理や発表などに当たっては,学校図書館や地域の公共施設などを活用するとともに,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を積極的に活用」することが大切である。

 コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段の活用は,様々な情報を多様な方法で生徒に提示することにより,生徒自身,課題の追究や解決の見通しをもって,主体的に調べ分かろうとして学習に取り組むことが可能となる。

 また,生徒による主体的なコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段の活用については,個別の事柄や概念などに関する知識の習得や,情報の収集,処理,共有や交流,及び発表などを通して社会科の学習をより豊かなものにする可能性をもっている。

 そこで,指導に際しては,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段の積極的な活用が期待される。

 また,生徒にコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用させる際には,情報モラルの指導にも留意することが大切である。

 
 

(3) 調査や諸資料から,社会的事象に関する様々な情報を効果的に収集し,読み取り,まとめる技能を身に付ける学習活動を重視するとともに,作業的で具体的な体験を伴う学習の充実を図るようにすること。

 その際,地図や年表を読んだり作成したり,現代社会の諸課題を捉え,多面的・多角的に考察,構想するに当たっては,関連する新聞,読み物,統計その他の資料に平素から親しみ適切に活用したり,観察や調査などの過程と結果を整理し報告書にまとめ,発表したりするなどの活動を取り入れるようにすること。

 「技能」を身に付けることに関しては,
各分野の目標において,
具体的に次のように記述している。

地理的分野では
「調査や諸資料から
 地理に関する様々な情報を
 効果的に調べまとめる技能
 を身に付けるようにする」,

歴史的分野では
「諸資料から
 歴史に関する様々な情報を
 効果的に調べまとめる技能
 を身に付けるようにする」,

公民的分野では
「諸資料から
 現代の社会的事象に関する情報を
 効果的に調べまとめる技能
 を身に付けるようにする」

との記述である。

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 社会的事象に関する様々な情報の活用について「第3指導計画の作成と内容の取扱い」の2の(3)の配慮事項として示したのは,こうした三分野の目標を受けて,指導の全般にわたって適切な情報活用を促す学習活動を展開することを重視しているからである。

 なお,
今回の改訂においては,
「作業的で具体的な体験を伴う学習」
について,これを重視している。

 これは,
作業的で具体的な体験を伴う
自らの直接的な活動を通して
社会的事象を捉え,
認識を深めていくことを
期待しているからである。

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 また,

言語活動の充実を一層図る観点から,

「地図や年表を読んだり作成したり,
 現代社会の諸課題を捉え,
 多面的・多角的に考察,構想する
 に当たっては,

 関連する新聞,読み物,統計
 その他の資料に
 平素から親しみ適切に活用したり,

 観察や調査などの過程と結果を
 整理し報告書にまとめ,
 発表したりする」

と示し,
表現力の育成を一層重視している。

 それは,

過程を含めて結果を整理し
報告書にまとめたり
発表したりする活動は,

情報の収集,選択,処理に関する技能
を高めるばかりでなく,
豊かな表現力を育成する上でも
重要だからである。

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 それだけに,今回の改訂の趣旨を踏まえて,技能習得のためのより一層の授業改善に努めることが大切である。

 
 

(4) 社会的事象については,生徒の考えが深まるよう様々な見解を提示するよう配慮し,多様な見解のある事柄,未確定な事柄を取り上げる場合には,有益適切な教材に基づいて指導するとともに,特定の事柄を強調し過ぎたり,一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなどの偏った取扱いにより,生徒が多面的・多角的に考察したり,事実を客観的に捉え,公正に判断したりすることを妨げることのないよう留意すること。

 これは,各分野の指導において,社会的事象について多面的・多角的に考察したり,事実を客観的に捉え,公正に判断したりすることのできる生徒の育成を目指す際の留意点を示したものである。

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 社会科の目標に規定されている

「グローバル化する国際社会に
 主体的に生きる
 平和で民主的な国家及び社会
 の形成者
 に必要な
 公民としての資質・能力の基礎」

を育成することに向けて,

「多様な見解のある事柄,
 未確定な事柄」
なども含む
現実の課題に関する社会的事象
を取り扱うことは,

生徒が
現実の社会の在り方について
具体的に考察,構想したり,
国民主権を担う公民としての自覚
などを深めたりするために

効果的である。

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 一方,
これらの社会的事象について,
一面的な見解を
十分な配慮なく取り上げた場合,
ともすると
恣意的な考察や判断に陥る
恐れがあるため,
このような規定を設けている。

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「多様な見解のある事柄,
 未確定な事柄」
については,

一つの見解が絶対的に正しく,
他の見解は誤りである
と断定することは
困難であるとともに,

一般に,
とりわけ政治においては
自分の意見をもちながら
議論を交わし
合意形成を図っていくこと
が重要であるから,

公民的分野のみならず,
地理的分野及び歴史的分野
の学習においても,

一つの結論を出すよりも
結論に至るまでの
冷静で理性的な議論の過程が
大切であること

を理解できるように指導し,
全体として
社会科の目標が実現されるように
配慮することが必要である。

 また,「有益適切な教材」である諸資料に基づいて「多面的・多角的に考察したり,事実を客観的に捉え,公正に判断したりすることを妨げることのないよう留意すること」について,その拠り所となる資料に関しては,その資料の出典や用途,作成の経緯等を含めて吟味した上で使用することが必要である。

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 このことに関しては,平成27年3月4日付け初等中等教育局長通知「学校における補助教材の適正な取扱いについて」(26文科初第1257号)に記されているように,諸資料を補助教材として使用することを検討する際には,その内容及び取扱いに関して,

@ 教育基本法,学校教育法,学習指導要領等の趣旨に従っていること,

A その使用される学年の児童生徒の心身の発達の段階に即していること,

B 多様な見方や考え方のできる事柄,未確定な事柄を取り上げる場合には,特定の事柄を強調し過ぎたり,一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなど,特定の見方や考え方に偏った取扱いとならないこと,

に十分留意することが必要である。

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 この通知の趣旨を踏まえ,各分野の指導においては,生徒の発達の段階を考慮して,社会的事象について多面的・多角的に考察したり,事実を客観的に捉え,公正に判断したりすることができるよう配慮することが大切である。

 これらのことに配慮して,

「よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に解決しようとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵(かん)養される我が国の国土や歴史に対する愛情,国民主権を担う公民として,自国を愛し,その平和と繁栄を図ることや,他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚などを深める」こと

をねらう中学校社会科の目標が
実現できるようにすること
が大切である。

 
 
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