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 「数と式」の内容は,日常生活や社会においていろいろな場面で使われている。

 また,中学校数学科の全領域の内容と深い関わりをもつとともに,それらの基礎をなすものとして重要な位置を占めている。

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 数と式とは,密接に関連しているので一つの領域として示されているが,ここでは,その系統を考える上で便宜上二つに分けてみていく。

 
 

 小学校算数科では,数について,身の回りの物を数えることに始まり,負でない整数,小数,分数について,それらの概念や四則計算の意味について学習している。

 また,それらの数を用いたり計算したりする学習をしている。

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 中学校数学科においては,数と式についての概念を理解するとともに,それらの四則計算の技能を身に付けることについて,資質・能力として,主に次のア,イの育成を目指して指導が行われる。

 負の数,無理数を導入して,数の範囲を拡張する。ここでは,拡張するときの考え方を理解するとともに,数の集合と四則計算の可能性を理解する。

 このようにして数の概念の理解を一層深めることができるようにする。

 負の数,無理数を含む数についての四則計算の意味を理解するとともに,それらの数を用いて,より広範な事象を一般的にかつ明確に表し,計算が能率的にできるようにする。

 これらのことは,数学学習全般に関わる基礎的な知識及び技能として重要である。

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 次に,数と式の四則計算の方法を考察することや具体的な場面で活用することについて,小学校算数科では,数の概念を次第に広げながら,計算についての理解を深め,身の回りの事象にそれらを適用して問題解決する学習をしている。

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 中学校数学科においては,数の範囲を拡張したとき,これまで学習した数の計算の方法と関連付けて,新しく導入された数の四則計算の方法を考察し表現できるようにする。

 また,様々な事象における問題解決の場面において,新しく導入された数を活用できるようにする。

 
 

 小学校算数科では,式について,例えば,5+□=8,3×△=24 のように,加法と減法,乗法と除法の関係を捉えるのに□や△を使ったり,例えば,(速さ)× (時間)=(道のり)というように,言葉の式を使って数量やその関係を表したり式の意味を読み取ったりする学習をしている。

 また,中学校における文字を用いた式の学習の素地(そじ)として,数量を表す言葉や□,△などの代わりに,a,x などの文字を用いることを学習している。

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 文字や文字式を用いることによって,数量やその関係を簡潔・明瞭に,しかも一般的に表現することができる。

 そして,文字を用いた式に表現できれば,その後は目的に合うように形式的に処理することができる。

 このように事象の中にある数量やその関係を文字を用いた式を使って一般的に表現する技能を身に付けたり,形式的な処理を施して得られた結果やその過程から新たな関係を見いだそうとする態度を育てたりするなど,その学習の意義は大きい。

 そして,その内容は,数と同様に,数学の学習全般に関わる基礎的な知識及び技能として重要である。

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 このことについて,中学校数学科では,資質・能力として,主に次のアからウの育成を目指して指導が行われる。

 文字を用いた式で使われている文字が単なる記号ではなく,いろいろな値をとり得ること,また,文字がとり得る値の集合について理解し,文字のもつ変数としての意味を理解できるようにする。

 文字にいろいろな数を代入することで式の値が変化することや,逆に,例えば,個々の奇数を右のような形で表現し,それらをまとめると奇数が一つの文字を用いた式2n+1に表現できることなどを確認することによって,変数の意味の理解を深めるようにする。

 数量やその関係を文字を用いた式に表したり,文字を用いた式の意味を読み取ったりすることができるようにする。

 そのために,文字を用いた式の表現やその読み取りによって,日常生活や社会との関わりを捉えられるようにすることが必要である。

 文字を用いた式の計算,式の展開や因数分解など,式の計算をできるようにする。

 これは,表された式をより解釈しやすい形に変形することができるようにすることである。

 このことによって,文字を用いた式に表現できれば,その形式的な処理によって容易に結果が得られることを理解できるようにする。

 次に,具体的な場面と関連付けて,文字を用いた式の計算の方法を考察し表現することについて,資質・能力として,主に次のエ,オの育成を目指して指導が行われる。

 文字を用いた式の計算では,具体的な数の計算や既に学習した計算の方法と関連付けて,その計算の方法を考察し表現できるようにする。

 このような学習を通して,文字は数を表すことを理解し,文字を用いた式については,数についての計算法則がそのまま適用され,数と同じように計算できることを理解できるようにする。

 様々な事象における問題を,その事象の中の数量や数量の関係に着目して文字を用いた式をつくり,それを活用して解決できるようにする。

 実際に具体的な場面において,数量の関係を捉えて方程式をつくり,それを解いて解釈することによって問題が解決できるのは,この典型的な例である。

 上でも述べたとおり,文字を用いた式を計算したり変形したりすることは,数学の学習における基礎的な技能として重要であるが,必要以上に複雑で無目的な計算練習にならないように留意する必要がある。

 第2学年の内容の「A数と式」の(1)のアの(エ)に,「目的に応じて,簡単な式を変形すること」と示してあるように,文字を用いた式の操作は,何らかの目的があってそのために行われるものであり,単なる計算だけで終わるものであってはならない。

 数や図形についての性質が成り立つことを説明することや,方程式を解くことなどにおいて活用するものであることを意識して,学習を進めていくようにする必要がある。

 
 
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