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 小学校算数科における数と計算の学習では,身の回りの事象と結び付いた作業的・体験的な活動をできるだけ取り入れ,数の性質や計算の方法について考察したり,それらを日常生活に生かしたりできるようにしている。その主な内容は次のとおりである。

ア 第4学年までに,整数についての四則計算の意味や四則計算に関して成り立つ性質などを学習し,その習得と活用を図るとともに,交換法則,結合法則や分配法則について理解を深めている。

 また,小数,分数の意味や表し方,小数や同分母の分数の加法,減法及び小数を整数で乗除することの意味を理解するとともに,数とその表現や数量の関係に着目し,目的に合った表現方法を用いて計算の仕方などを考察する力を養っている。

イ 第5学年では,記数法の考えを通して整数及び小数についての理解を深めることや,偶数,奇数,約数,最大公約数,倍数,最小公倍数について学習している。

 また,小数の乗法及び除法の意味についての理解を深め,それらを用いることや,異分母の分数の加法及び減法の意味について理解するとともに,数とその表現や計算の意味に着目し,目的に合った表現方法を用いて数の性質や計算の仕方などを考察する力を養っている。

ウ 第6学年では,分数の乗法及び除法の意味についての理解を深め,それらを日常生活に生かしたりすることや,小数及び分数の計算とその仕方について習得を図り,数とその表現や計算の意味に着目し,発展的に考察して問題を見いだすとともに,目的に応じて多様な表現方法を用いながら数の表し方や計算の仕方などを考察する力を養っている。

 
 
 中学校数学科では,小学校算数科での指導を受けて,数について次の内容を取り扱う。

 第1学年では,数の範囲を拡張し,数の性質や計算について考察する力を養っていく。

 まず,数の範囲を正の数と負の数にまで拡張し,数を統一的に見られるようにして数についての理解を深め,その四則計算ができるようにする。

 また,具体的な場面で正の数と負の数を用いて表したり処理したりして活用できるようにする。

 また,これに関連して,自然数を素数の積として表すことを取り扱う。

 第2学年では,数そのものについて新しく取り上げる内容はない。

 具体的な場面への適用や方程式,関数などについての学習を通して,正の数と負の数についての理解を深め,その計算に習熟するとともに,その必要性やよさを実感していくことになる。

 第3学年では,数の範囲に着目し,数の性質や計算について考察する力を養っていく。

 この学年では,数の範囲を無理数にまで拡張し,新しい数として導入された正の数の平方根について理解し,それを用いて表現し考察することができるようにする。

 また,これに関連して,誤差や近似値, a×10n の形の表現を取り扱う。

 正の数の平方根についての理解は,二次方程式や三平方の定理などを学習する際に不可欠のものであり,こうした場面で活用することによって,更に深まることを考慮して指導する必要がある。

 
 

 小学校での式の学習では,数の式や言葉の式,公式などを対象にして,式に表現したり式の意味を読んだりすることが扱われている。

 その主な内容は次のとおりである。

ア 第4学年までに,数量の関係や法則などを数の式や言葉の式,□,△などを用いて式で簡潔に表したり,式の意味を読んだりすることを学習している。

 また,公式についての考え方を理解し,公式を用いることができるようにしている。

イ 第5学年では,□,△などを用いて数量の関係を式で表すことについての理解を深め,簡単な式で表される関係について,二つの数量の対応や変わり方に着目し,簡単な式で表されている関係について考察することができるようにしている。

ウ 第6学年では,数量を表す言葉や□,△などの代わりに,a,x などの文字を用いて式に表したり,文字に数を当てはめて調べたりすることを学習している。

 さらに,問題場面の数量の関係に着目し,数量の関係を簡潔かつ一般的に表現したり,式の意味を読み取ったりすることができるようにしている。

 
 

 中学校数学科での式の指導は,文字を用いた式についての指導が中心である。

 その内容は次のとおりである。

 第1学年では,文字を用いて数量の関係や法則などを考察する力を養っていく。

 まず,文字を用いて数量の関係や法則などを式に表現したり式の意味を読み取ったりするとともに,文字を用いた式の計算ができるようにし,具体的な場面でそれを活用できるようにする。

 また,方程式について理解し,具体的な場面で一元一次方程式を用いて考察し活用することができるようにする。

 第1学年での文字や文字を用いた式の学習,また,それに続く方程式の学習においては,小学校算数科との関連を踏まえた丁寧な学習指導が必要である。

 第2学年では,文字を用いて数量の関係や法則などを考察する力を養っていく。

 この学年では,具体的な事象の中に数量の関係を見いだし,それを文字を用いて式に表現したり式の意味を読み取ったりするとともに,文字を用いた式の四則計算ができるようにし,具体的な場面でそれを活用することができるようにする。

 また,連立二元一次方程式について理解し,具体的な場面でそれを用いて考察し活用することができるようにする。

 第3学年においても第2学年に引き続き,文字を用いて数量の関係や法則などを考察する力を養っていく。

 この学年では,文字を用いた簡単な多項式について,式の展開や因数分解ができるようにするとともに,目的に応じて式を変形したりその意味を読み取ったりできるようにする。

 また,二次方程式について理解し,具体的な場面でそれを用いて考察し活用することができるようにする。

 以上のように,中学校数学科における式の指導では,文字を用いた式の入門的な部分から始まり,二次方程式に至るまでの内容を取り扱い,数量の関係や法則などを文字を用いた式に簡潔に表して処理し,問題を能率よく解決していく学習を進めていく。

 これによって,代数的な処理に関する能力が次第に高められ,それが他の領域の学習にも活用される。

 今回の改訂では,既に学習した計算の方法と関連付けて,新しく導入された数や文字を用いた式の計算の方法を考察し表現すること,具体的な場面で新しく導入された数や文字を活用することが明示された。

 これは,従来も行われてきたことであるが,今回の改訂で中学校数学科において育成を目指す資質・能力の三つの柱に基づいて,「知識及び技能」と「思考力,判断力,表現力等」に分けて記述されることに伴い,計算の方法を考察し表現することや具体的な場面で活用することの重要性が改めて強調されたことによるものである。

 ここで,「A数と式」領域の指導事項について,前回の学習指導要領との相違点をまとめておく。

 第1学年においては,自然数を素数の積として表すことを扱うこととした。

 第3学年においては,
 誤差や近似値,a×10nの形の表現
 を取り扱うこととした。

 
 
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