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(1) 正の数と負の数について,数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

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ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 正の数と負の数の必要性と意味を理解すること。

(イ) 正の数と負の数の四則計算をすること。

(ウ) 具体的な場面で正の数と負の数を用いて表したり処理したりすること。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 算数で学習した数の四則計算と関連付けて,正の数と負の数の四則計算の方法を考察し表現すること。

(イ) 正の数と負の数を具体的な場面で活用すること。

〔用語・記号〕

  自然数 素数 符号 絶対値

[内容の取扱い]

(1) 内容の「A数と式」の(1)に関連して,自然数を素数の積として表すことを取り扱うものとする。

(2) 内容の「A数と式」の(1)のアとイの(ア)に関連して,数の集合と四則計算の可能性を取り扱うものとする。

 小学校算数科では,第4学年までに整数についての四則計算の意味や四則計算に関して成り立つ性質などを取り扱い,その習得と活用を図っている。

 そして,第5,6学年で交換法則,結合法則,分配法則について,小数や分数の計算でも成り立つことを調べることを通して,その意味と四則計算を学習し,数についての感覚や見方を広げ,その習得と活用を図っている。

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 また,小数については第5学年までに,分数については第6学年までに,目的に応じて多様な表現方法を用いながら数の表し方や,それらの意味と計算の仕方などを考察することを学習している。

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 中学校数学科において第1学年では,これらの学習の上に立って,数の範囲を正の数と負の数にまで拡張し,正の数と負の数の必要性と意味を理解すること,正の数と負の数の四則計算の意味を理解し,その計算ができるようにすること及び正の数と負の数を用いて表したり処理したりすることを通して,具体的な場面でそれらを活用できるようにする。

 
 

 正の数と負の数の必要性については,これまでの経験や日常生活と関連付け,例えば最高気温の前日との差など,正の数と負の数が使われている具体的な場面に結び付けて理解できるようにする。

 その際,正の数と負の数を用いることによって,

・ 反対の方向や性質を数で表すことができること

・ ある値を基準とした数の大小の比較ができること

・ 数を数直線上に表すことができること

・ 減法がいつでも可能になること

・ 加法と減法を統一的に表すことができること

 など,正の数と負の数のよさを知り,その意味を理解できるようにする。

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 数の範囲を拡張することについては,小学校第1学年から漸次指導して理解を深めてきている。

 中学校第1学年では,数の範囲を正の数と負の数に拡張することで,数の集合の捉え直しが必要になる。

 例えば,小学校算数科における整数とは0と正の整数を合わせたものであった。

 中学校数学科ではこれに負の整数を加え,数学の概念としての整数を定義する。

 こうして捉え直した数の集合とその集合における四則計算の可能性について取り上げ,数の概念の理解を深めることができるようにする。

 
 

 正の数と負の数の四則計算は,小学校算数科で学習した数の四則計算の意味を拡張して考えることにより可能になり,加法,乗法に関して交換法則,結合法則や分配法則といった計算の法則も成り立つ。

 ここでは,正の数と負の数の四則計算ができるようにするとともに,その意味が理解できるようにする。

 例えば,同じ符号の2数の加法の学習を基にして,符号の異なる2数の加法の計算の仕方を見いだし,符号や絶対値などに着目し,正の数,負の数の加法の計算の方法についてまとめることができるようにする。

 このことを基に,その後の減法や乗法,除法についても同様の視点から計算の方法を考察し表現することができるようにする。

 このように,数の範囲を拡張し,四則計算とその意味を考えることは,第3学年における平方根の学習においても重要である。

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 また,小学校算数科では,分数の乗除を考えることによって,逆数を用いて除法を乗法の計算とみることができた。

 中学校数学科においても,正の数と負の数の加減を考えることによって減法を加法の計算とみることが可能になる。

 例えば
 3−2という計算は
 「−」を演算記号と考えると
 減法とみることができるが,
 (+3)+(−2)と表し,
 「−」を符号と考えると
 加法とみることができる。

 加法と減法を統一的にみることで,加法と減法の混じった式を正の項や負の項の和として捉え,その計算ができるようになる。

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 このような式の見方や四則計算は,文字を用いた式の計算や方程式を解く方法についての学習においても必要であり,習熟を図る必要がある。

 さらに,正の数と負の数の学習の中だけでなく,それに続く文字を用いた式や方程式などの学習の中でも習熟が図られるようにする必要がある。

 
 

 様々な事象における問題解決の場面において,正の数と負の数を用いて変化や状況を分かりやすく表したり,能率的に処理したり,その意味を読み取ったりすることができるようにする。

 例えば,図書館の本の1日の貸出冊数など,設定した目標値を基準として,その目標値からの増減を正の数と負の数を用いて表すことにより,目標の達成状況などを明確に示したり把握したりすることや,仮平均を定めて処理することにより,効率よく平均を求めるなどの活動を設定することが考えられる。

 このように様々な事象を正の数と負の数を用いて考察し表現することで,それらを活用することができるようにする。

 
 

 内容の取扱い(1)に示されているように,自然数を素数の積として表すことを内容の「A数と式」の(1)などに関連して取り扱う。

 これは,自然数を素数の積として表すことによって,小学校算数科で学んできた整数の性質についての理解を深め,中学校での学習につなげることができるからである。

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 小学校算数科では,整数の性質について,偶数,奇数,約数,倍数,最大公約数,最小公倍数という観点から学習しているが,素数については学習していない。

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 ここでは,1より大きい自然数が,1とその数自身以外には約数をもたない数とそうではない数とに分けられること,すなわち,素数と素数ではない数との2種類に分けられることを理解できるようにする。

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 素数ではない数は,その約数を用いて幾つかの自然数の積で表すことができる。

 また,それらの自然数の中に素数でないものがあれば,さらに,その約数を用いて積に表すという操作を続けていくと,最終的には素数だけの積で表すことができる。

 これが素因数分解であり,その表し方はただ一通りに決まる。分解の順序をいろいろに変えても,整理すると結果は同じ素数の積になることを活動を通して具体的に知ることができるようにする。

 このように自然数を素数の積で表すことにより,算数で学習した約数,倍数などの整数の性質について捉え直すことができるようにする。

 
 
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