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(2) 文字を用いた式について,数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

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ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 文字を用いることの必要性と意味を理解すること。

(イ) 文字を用いた式における乗法と除法の表し方を知ること。

(ウ) 簡単な一次式の加法と減法の計算をすること。

(エ) 数量の関係や法則などを文字を用いた式に表すことができることを理解し,式を用いて表したり読み取ったりすること。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 具体的な場面と関連付けて,一次式の加法と減法の計算の方法を考察し表現すること。

〔用語・記号〕   項 係数 ≦ ≧

[内容の取扱い]

(3) 内容の「A数と式」の(2)のアの(エ)に関連して,大小関係を不等式を用いて表すことを取り扱うものとする。

 小学校算数科では,第4学年までに,数量の関係や法則などを数の式や言葉の式,□,△などを用いた式で簡潔に表したり,式の意味を読み取ったりすることや,公式を用いることを学習している。

 また,第5学年では簡単な式で表されている関係についてその関係の見方や調べ方を学び,第6学年では数量を表す言葉や□,△などの代わりに,a やx などの文字を用いて式に表したり,文字に数を当てはめて調べたりすることを学習している。

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 中学校数学科において第1学年では,数量の関係や法則などを,文字を用いて式に表したり,式の意味を読み取ったり,文字を用いた式の計算をしたりして,文字を用いることのよさについて学習する。

 指導に当たっては,小学校算数科における学習の状況に十分配慮し,例えば,数量の関係や法則などを数や言葉の式,□,△などを用いた式に表してその意味を読み取ったり,数を当てはめて調べたりする活動を行うなどして,文字のもつ一般性について丁寧に取り扱い,文字に対する抵抗感を和らげながら漸次理解することができるようにする。

 
 

 文字を用いた式は,数量の関係や法則などを簡潔,明瞭にしかも一般的に表現するために必要である。

 例えば,加法の交換法則を言葉で表すと「被加数と加数を交換しても,結果は等しい」となる。

 このことを具体的な数を用いると,「2+3=3+2」のように簡潔に式に表すことはできるが,加法の交換法則が一般的に成り立つことを表現することはできていない。

 このような場合,文字a,b を用いることで,加法の交換法則を「a+b=b+a」と簡潔,明瞭,しかも一般的に表現することができる。

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 また,文字を用いた式で表すことにより,数量の関係を具体的なものの意味に束縛されることなく,抽象的な数の関係として考察することもできる。

 例えば,式 s=ab は,

 (長方形の面積)=(たて)×(よこ),

 (値段)=(単価)×(個数),

 (道のり)=(速さ)×(時間)

 などを表していると考えることができ,
 どの関係においても,
 式 s=ab を a=s/b と変形して,
 数量の関係を考察することができる。

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 さらに,文字を用いた式には,自分の思考の過程を表現し,他者に的確に伝達できるというよさもある。

 例えば,
 図1のようにマッチ棒を並べていくとき,
 正方形をn個つくるのに必要な
 マッチ棒の本数は,
 図2や図3のようにして,
 4n−(n−1) や 2n+(n+1)
 などと表すことができる。

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 これらは式としての表現の違いだけでなく,マッチ棒の本数の求め方の違いを表現しているとみることもできる。

 このような文字を用いることのよさを実感し,その必要性や意味を理解できるようにすることが大切である。

 
 

 文字を用いて
 数量の関係や法則などを
 式に表現するとき,

 乗法の記号×は,
 文字と文字の間や,
 数と文字の間では
 普通は省略し,

 除法の記号÷は,
 特に必要な場合を除き,
 それを用いないで
 分数の形で表すこと

 を学習する。

 

 例えば,

  a×b=ab,
  a÷b=a/b,
  a×a=a2

 などは,その基本的なものである。

 これによって
 いろいろな式の表現が
 一層簡潔になり,
 式の取扱いを
 能率的に行うことができる。

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 なお,
 ab や a/b,さらに,a+b,a−b
 という表現は,
 操作の方法を表しているとともに,
 操作の結果も表している
 という式の見方は大切である。

 特に学習の初期においては,
 例えば,
 3a+2 や 5x−5 のように
 演算記号が残ったままにしておくことに
 違和感をもつことがあるので,
 このことに十分に留意する。

 
 

 文字を用いた式の計算については,一次式の加法と減法を取り上げる。

 その計算については,主として一元一次方程式を解くのに必要な程度の簡単な式の計算ができるようにすることをねらいとする。

 したがって,例えば,
 (2x−3)+(x+1),
 2(3x+4)−3(x−5)
 などのように,
 一種類の文字についての一次式
 の加法と減法
 が学習の中心となる。

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 文字を用いた式の計算の方法については,例えば,右のように,項の意味に基づいて計算することや,計算の法則が保たれることなど,数の計算と関連付けて説明できるようにすることが大切である。

 (3a+1)+(2a+5)
=3a+1+2a+5
=3a+2a+1+5
=(3+2)a+(1+5)
=5a+6

 また,例えば,a−(b+c)=a−b−c であることを確かめるのに,b円とc円の品物を買って a円を出したときのおつりを考えてみるなど,具体的な場面と関連付けて説明できるようにすることが大切である。

 
 

 文字を用いた式は優れた表現方法であり,式を用いて数量の関係や法則などを表したり,その意味を読み取ったりするとともに,そのよさを感じ取り,式を積極的に活用できるようにすることが大切である。

 式を用いて表したり,式の意味を読み取ったりするためには,文字が表す数量とその関係を理解できるようにする必要がある。

 例えば,
 ある美術館の入館料が
 大人1人 a円,子供1人 b円のとき,
 「大人1人と子供2人の入館料の合計」
 を表す場合や,

 同じ例で
 a−b の意味を読み取る場合に,

 大人1人500円,子供1人300円
 などとして,
 具体的な数に置き換えて考える
 ことにより
 数量の関係を把握できるようにする
 ことが大切である。

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 数量の関係を表す式では,
 相等関係または大小関係を
 等式または不等式に表すことを
 取り扱い,
 文字を用いた式に対する理解を
 深められるようにする。

 

 例えば前述の例で,
 「大人1人と子供2人の入館料
  の合計は1000円であった」は,
 a+2b=1000 と表される。

 また,ここでの相等関係は,
 2b=1000−a,
 a=1000−2b
 などと表すこともできる。

 ここでは,
 等号を計算の過程を表す記号として
 ではなく
 相等関係を表す記号として用いる。

 

 すなわち,
 a+2b=1000 は

 「a+2b を計算して 1000 になった」
 ことを意味するだけではなく,

 「a+2b と1000 は等しい
 (いずれも入館料の合計を表しており,
  つりあっている)」
 ことも意味する。

 

 こうしたことを読み取れることは,
 一次方程式の学習と
 深く結び付いている。

 また,
 「大人1人と子供2人の入館料を払うと
  1000円でおつりがもらえた」は,
 「支払った入館料は1000円より安い」
 と解釈し,
 a+2b<1000 と表すことができる。

 

 このように,
 不等号を用いて
 数量の大小関係を式に表したり,
 不等号を用いた式の意味を
 読み取ったりする
 ことができることを
 理解できるようにする。

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 文字がいろいろな値をとることができることの理解を深めるためには,文字を用いた式の文字に数を代入して式の値を求める学習が役立つ。

 この学習は,方程式の解の意味を理解するためにも重要である。

 式の値を求める際には,負の数を代入する場合についても正しく処理できるようにする。

 ここでは,式の値を求めることを単なる計算練習とはせず,具体的な場面と結び付けることが大切である。

 
 
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