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(3) 一元一次方程式について,数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

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ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 方程式の必要性と意味及び方程式の中の文字や解の意味を理解すること。

(イ) 簡単な一元一次方程式を解くこと。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 等式の性質を基にして,一元一次方程式を解く方法を考察し表現すること。

(イ) 一元一次方程式を具体的な場面で活用すること。

〔用語・記号〕  移項

[内容の取扱い]

(4) 内容の「A数と式」の(3)のアの(イ)とイの(イ)に関連して,簡単な比例式を解くことを取り扱うものとする。

 中学校数学科において第1学年では,文字を用いた式の学習の上に立って,方程式の必要性と意味及びその解の意味を理解し,等式の性質を基にして一元一次方程式を解く方法について考察し表現する。

 そして,それらを通して代数的な操作のよさを理解するとともに,一元一次方程式を具体的な場面で活用できるようにする。

 
 

 方程式は,変数(未知数)を含んだ相等関係についての条件を表した等式であり,方程式を用いることにより,条件を満たす値を的確に求めることができる。

 また,方程式の解は,その条件を満たす値である。

 例えば,
 方程式 x+3=5は,
 「x と3の和は5に等しい」ことの
 数学的な表現であるが,
 この式は,
 変数x が満たすべき条件
 とも考えられる。

 この条件が成り立つかどうかは,方程式の中の文字x の値による。

 x の変域を整数全体の集合とし,上の方程式のx に …,−3,−2,−1,0,1,2,3,… を代入すると,x の値が2のときにこの等式が成り立つ。

 2以外の数のときは成り立たないので,この2が方程式の解ということになる。

 このようにして方程式の解を求めることは,解の意味を理解する上で重要である。

 
 

 一元一次方程式を解くには,等式の性質を基にして式を変形し,x=k の形の式をつくり解を求める。

 このとき使われる等式の性質は次の四つである。

@ a=b ならば,a+c=b+c

A a=b ならば,a−c=b−c

B a=b ならば,ac=bc

C a=b かつ c≠0ならば,a/c=b/c

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 @とAは,正の数と負の数を用いて加法と減法を統一的に表すことを基にすれば,別なものと考えずに統合的にみることができる。

 また,BとCの乗法と除法の場合も,逆数を用いることによって統合的にみることができる。

 なお,等式の性質の学習については,例えば,上皿天びんなどを用いる操作的な活動を取り入れるなどして,具体的なイメージをもって理解できるようにすることが大切である。

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 また,等式の性質を用いることによって,一元一次方程式 ax+b=cx+d を x=k の形に変形し,解を求めることができるようにする。

 ここでは,等式の性質@,Aによって移項が導かれ,移項によって Ax=B(A≠0)の形の方程式に変形し,性質B,Cによって,x の係数を1にして解を導く。

 このように等式の性質を基にして,もとの方程式と同値な方程式を段階的に導き,x=k の形に変形することで解が求められることを理解し,その変形の過程を観察することで,方程式を解く方法について一般的な手順をまとめ,能率よく解を求めることができるようにする。

 その際,方程式を解くための変形の過程は,一次式の加減のような数や文字を用いた式の計算の過程とは次のような意味で異なることに注意する必要がある。

 すなわち,数や文字を用いた式の計算が,一つの式をより簡略された式に変形していくことを意味するのに対し,方程式を解く方法は,一つの等式をより簡略で同値な関係にある他の等式に変形していくことを意味することを理解できるようにする。

  5x+3−(2x−6)
 =5x+3−2x+6
 =5x−2x+3+6
 =3x+9 

  5x+3=2x−6
  5x−2x=−6−3
     3x=−9
      x=−3

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 なお,一元一次方程式を解くことについては,具体的な問題の解決に必要な程度の方程式が解けるようにし,それを活用できるようにする。

 
 

 具体的な場面における問題を方程式を活用して解決するためには,次のような一連の活動を行うことになる。

@ 求めたい数量に着目し,それを文字で表す。

A 問題の中の数量やその関係から,二通りに表される数量を見いだし,文字を用いた式や数で表す。

B それらを等号で結んで方程式をつくり,その方程式を解く。

C 求めた解を問題に即して解釈し,問題の答えを求める。

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 Aは,数量や数量の関係を文字を用いた式で表したり,その意味を読み取ったりすることの学習と深く結び付いている。

 Bには,方程式をつくってしまえば,具体的な場面を離れて形式的に処理できるというよさがあり,能率的に方程式が解けるようにしておく必要がある。

 またCで,方程式を解いた後に,その解がもとの問題の答えとして適切なものであるかどうかを調べる。

 このことは,方程式をつくるときに表現しきれなかった条件を,具体的な場面に即して再検討することを意味している。

 このような学習を通して,具体的な場面における問題を方程式を活用して解決するための方法を理解するとともに,解決過程を振り返り,得られた結果を意味付けたり活用したりしようとする態度を養うことができる。

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 一元一次方程式を活用する場面として,簡単な比例式を解くことが考えられる。

 例えば

 「2種類の液体A,Bを
  3:5の重さの比で混ぜる。
  B 150g に対して,
  Aを何g 混ぜればよいか」

 を求めるには,
 Aをxg 混ぜるとして,
 比例式 3:5= x:150
 を考えればよい。

 この比例式は,
 比の値を用いて
 3/5=x/150
 と表すことができるので,
 一元一次方程式とみることができ,
 この方程式を解くことで,
 x=90 となる。

 つまり,
 液体Aを90g 混ぜればよい
 ことが分かる。

 このように,比を基にして数量を求めるような具体的な場面において,比例式をつくり,比の値が等しいことから既習の方程式に変形することで問題を解決することができるようにする。

 
 
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