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(1) 平面図形について,数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

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ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 角の二等分線,線分の垂直二等分線,垂線などの基本的な作図の方法を理解すること。

(イ) 平行移動,対称移動及び回転移動について理解すること。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 図形の性質に着目し,基本的な作図の方法を考察し表現すること。

(イ) 図形の移動に着目し,二つの図形の関係について考察し表現すること。

(ウ) 基本的な作図や図形の移動を具体的な場面で活用すること。

〔用語・記号〕 弧 弦 // ⊥ ∠ △

[内容の取扱い]

(5) 内容の「B図形」の(1)のイの(ウ)に関連して,円の接線はその接点を通る半径に垂直であることを取り扱うものとする。

 小学校算数科では,ものの形についての観察や構成などの活動を通して,図形を構成する要素に少しずつ着目できるようにしている。

 第4学年までに,三角形や四角形,二等辺三角形や正三角形,平行四辺形や台形,ひし形などについて理解し,第5学年では図形の合同,第6学年では縮図や拡大図及び図形の対称性について理解してきている。

 このように,図形の構成要素,それらの相等や位置関係を考察することにより,図形に対する見方が次第に豊かになってきている。

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 中学校数学科において第1学年では,平面図形の対称性に着目することで見通しをもって作図し,作図方法を具体的な場面で活用する。

 こうした学習を通して,平面図形の性質や関係を直観的に捉え論理的に考察する力を養う。

 また,図形の移動について理解し,二つの図形の関係について調べることを通して,図形に対する見方を一層豊かにする。

 
 

 図をかくという操作は,図形に対する興味や関心を引き起こし,図形の性質や関係を直観的に捉え,その論理的な考察を促すという意義をもつ。

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 数学において作図とは,定規とコンパスだけを用いて,一定の条件を満たす図形をつくることを意味し,定規は2点を通る直線をひく道具として使い,コンパスは円をかいたり長さを写し取ったりする道具として使う。

 基本的な作図では,小学校算数科で学習した平面図形の対称性に着目して,角の二等分線,線分の垂直二等分線,垂線などについて学習する。

 このとき,作図の方法を一方的に与えるのではなく,図形の対称性や図形を決定する要素に着目して作図の方法を見いだし,その方法を図形の性質や関係に基づいて説明する活動を大切にする。

 例えば,∠XOY の二等分線を作図するには,角の二等分線が通るべき2点を決めて,その2点を通る直線(半直線)をひけばよい。

 角の二等分線がその角の対称軸になることについては,紙を折って角をつくる2辺OX,OYを重ねるなどの操作を通して気付くことができる。

 ∠XOY の対称軸は頂点Oを通るので,この対称軸が通るべきもう一つの点Pを定めることが必要となる。

 このように角の二等分線の作図を捉えれば,∠XOY の対称軸上にある点Pを探せばよいという見通しをもつことができる。

 指導に当たっては,こうした見通しや作図の方法について,数学的な表現を用いて筋道立てて説明することを通して,論理的に考察し表現する力を養うことが大切である。

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 また,角の二等分線,線分の垂直二等分線,垂線の作図は,いずれも対称性に着目すれば同じものとして統合的に捉えることができる。

 具体的には,角の二等分線の作図で,OP=OQ,AP=AQ から,点Oと点Aを中心とする二つの円の交点がP,Qであるとみることができる。

 線分の垂直二等分線の作図でも,A,Bを中心とする同じ半径の二つの円の交点がP,Qである。

 垂線の作図では,A,Bを中心とする二つの円の交点がP,Qである。

 つまり,いずれも二つの円がそれぞれの中心どうしを結ぶ直線に対して線対称であることを用いている。

 このように作図の方法を見直し,図形の対称性が作図の方法を統合的に捉える上で重要な役割を果たしていることを見いだす場面を設定することが考えられる。

 
 

 小学校算数科では,第6学年において一つの図形についての対称性が取り扱われている。

 中学校数学科では,図形の移動に着目し,図形間の関係として対称性を考察する。

 具体的には,二つの図形のうち一方を移動して他方に重ねる方法を見いだしたり,一つの図形を移動する前と後で比較したりして図形の性質や関係を捉える。

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 図形の移動に関連して,小学校の低学年から,「ずらす」,「まわす」,「裏返す」などの操作を通して図形の性質を考察しており,それによって図形の形や大きさが変わらないことを自然に捉えている。

 ここでは,形や大きさを変えない移動として,平行移動,対称移動及び回転移動について学習する。

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 図形の移動とは,あるきまりに従って図形を他の位置に移すものであり,その図形を構成している各点がそのきまりに従って移動することになる。

 平行移動は,図形を一定の方向に一定の距離だけ移動することであり,この移動は方向と距離によって決まる。

 対称移動は,図形をある直線を軸として対称の位置に移動することである。

 この移動は,対称軸の位置によって決まる。回転移動は,図形をある点を回転の中心として一定の角だけ回転する移動である。

 この移動は,回転の中心の位置及び回転角の大きさと回転の向きによって決まる。

 特に,回転角の大きさが180゚である回転移動を,点対称移動という。

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 指導に当たっては,このような図形の移動を通して,移動前と移動後の二つの図形の関係に着目できるようにすることで,図形の性質や関係を見いだし,図形の移動について考察し表現する活動を大切にする。

 例えば,合同な図形の敷き詰め模様を観察することによって,その中の二つの図形がどのような移動によって重なるかを直線の位置関係,対応する辺や角の相等関係,図形の合同などに基づいて考察し,数学的な表現を用いて筋道立てて説明する。

 また,一つの図形を基にしてそれを移動することによって敷き詰めを行い,模様をつくることも考えられる。

 さらに,作図の意味の理解を深めるために,基本的な作図の方法や結果を,図形の移動に着目して確かめることも大切である。

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 このように,移動に関する内容を,図形の位置関係や相等関係,作図に関する内容と相互に関連付けながら取り扱うことで,平面図形についての理解を一層深めるとともに,図形に対する見方をより豊かにすることができる。

 この際,数学的な表現を用いて筋道立てて説明することを通して,論理的に考察し表現する力を養い,第2学年における図形の合同の学習につなげていくことが大切である。

 
 

 日常の事象を図形の形や大きさ,構成要素や位置関係に着目して観察し,その特徴を捉えることで,図形の性質や関係を用いて日常の事象の特徴をより的確に捉えたり,問題を解決したりすることができるようになる。

 そのために,紙や模型などを実際に操作するなどの活動を取り入れ,日常の事象の特徴を捉えられるようにする。

 例えば,日本の伝統文様には,「麻の葉」と呼ばれるものがあり,この文様は,頂角120゚の合同な二等辺三角形を敷き詰めてできたものとみることができる。

 このそれぞれの二等辺三角形は,一つの二等辺三角形を対称移動したり,回転移動したり,平行移動したりした図形などとみることができる。

 この他にも,図形の様々な性質を用いた伝統文様には,「矢絣(やがすり)」,「亀甲(きっこう)」などがある。

 こうした美しい伝統文様にどのような特徴があるのかについて興味や関心をもって考察し表現することも大切である。

 ここでは,平行移動として,二つの図形の対応する点を結んだ線分がそれぞれ平行で長さが等しくなっていることや,回転移動として,どの点を回転の中心としてどちらの向きに何度回転されているかを見いだしたり,対称移動として,二つの図形について対称の軸をかき入れ,対応する点を結んだ線分が対称の軸と垂直に交わり,その交点で2等分されることを確認したりすることが大切である。

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 円の接線を作図する方法については,円の対称性に着目して見いだすことができる。

 円の対称軸に垂直な直線を平行に移動させていくことで接線をかくことができることを基に,円周上の点における接線の作図の方法を理解する。

 このことに関連して,円の接線はその接点を通る半径に垂直であることを確認することができる。

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 作図を具体的な場面で活用することについては,物差し(目盛りのついた定規)や分度器を用いて長さや角の大きさを測って図をかいてきたこれまでの方法と比較し,測定に頼らずに図形を論理的に考察し,図として表すことができることを学習する。

 例えば,物差しや分度器を用いずに定規とコンパスだけを用いて,30゚や45゚の角を作図したり,三角形の辺や角を写し取って合同な三角形をかいたりする。

 このように三角形の構成要素を写し取ってかく方法の背景には,3辺の長さ,2辺の長さとその間の角の大きさ,1辺の長さとその両端の角の大きさによって三角形がかけることなどがある。

 このことの理解は論理的な考察をするための基礎となり,小学校算数科においても三角形の構成要素を写し取ってかく活動などを行っている。

 
 
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