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(2) 空間図形について,数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

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ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 空間における直線や平面の位置関係を知ること。

(イ) 扇形の弧の長さと面積,基本的な柱体や錐(すい)体,球の表面積と体積を求めること。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 空間図形を直線や平面図形の運動によって構成されるものと捉えたり,空間図形を平面上に表現して平面上の表現から空間図形の性質を見いだしたりすること。

(イ) 立体図形の表面積や体積の求め方を考察し表現すること。

〔用語・記号〕

  回転体 ねじれの位置 π

[内容の取扱い]

(6) 内容の「B図形」の(2)のイの(ア)については,見取図や展開図,投影図を取り扱うものとする。

 小学校算数科では,第1学年から身近な立体について観察したり,分類したりして,ものの形を次第に抽象化して,図形として捉えられるようにしてきている。

 また,第2学年から図形の構成要素に着目して立体図形を扱ってきている。

 第3学年では球を取り扱い,第5学年までに,立方体,直方体,角柱,円柱を取り扱い,それらの見取図や展開図をかくことなどを通して立体図形についての理解を深めてきている。

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 中学校数学科において第1学年では,これらの学習の上に立って,空間図形についての理解を一層深める。

 小学校算数科で立体図形として扱っていたものを,中学校数学科では空間図形,すなわち,空間における線や面の一部を組み合わせたものとして扱うという点に留意する。

 また,図形の性質や関係を直観的に捉え論理的に考察する力を養うために,例えば,立体の模型を作りながら考えたり,目的に応じてその一部を平面上に表す工夫をしたり,平面上の表現からその立体の性質を読み取ったりするなど,観察や操作,実験などの活動を通して図形を考察することを基本にして学習を進めていく。

 図形の計量についても,計算方法を導くだけでなく,図形について理解する一つの側面として位置付ける。

 なお,錐(すい)体は中学校で初めて取り扱う立体であることに留意する。

 
 

 小学校算数科でも,直方体などに関連して,直線や平面の平行や垂直の関係について学習しているが,これは具体的な立体の構成要素の位置関係を扱ったものである。

 中学校数学科では,小学校算数科における立体図形の学習を振り返り,具体的な空間図形を扱いながらも,抽象化された直線や平面の位置関係を考察することになる。

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 空間における直線を無限に延びているものと捉えることは,平面図形の場合と同様に,空間における平面についてもそれが無限に広がっているものと捉える。

 そして,空間における直線が2点によって決定されること,平面が同一直線上にない3点,一つの直線とその上にない1点,交わる2直線によって決定されることなどを理解できるようにする。

 また,平面で考察したことを類推によって空間に拡張し,空間についての豊かな感覚を育むことも大切である。

 例えば,平面が一つの直線で二つの部分に分けられるように,空間は一つの平面で二つの部分に分けられることなどである。

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 空間における直線や平面の位置関係については,直線や平面がどのような位置にあるか,また,どのような交わり方をするかを考察する。

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 空間における直線と直線の位置関係には,二つの直線が交わる場合と交わらない場合とがある。

 交わらない場合には,平行な場合と平行でない場合とがあり,平行でない場合,二つの直線はねじれの位置にあるという。

 そして,二つの直線が交わる場合と平行である場合には,それらによって一つの平面が決定される。

 すなわち,その二つの直線は同一平面上にある。

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 空間における直線と平面の位置関係には,直線が平面に含まれる場合,直線と平面が交わる場合,直線と平面が平行である場合がある。

 直線と平面が交わる場合の中で,特に直線が平面に垂直な場合については,直線が平面に対してどの方向にも傾いていないこと,すなわち,直線が平面との交点を通るその平面上の全ての直線と垂直であることを確かめる必要がある。

 しかし「平面が交わる2直線によって決定される」ことを基にすれば,直線が2直線の交点において,その2直線に垂直であれば,その2直線によって決まる平面に垂直であることが分かる。

 つまり,直線が平面と垂直であるかどうかを調べるには,平面上の交わる2直線に垂直であることを調べればよい。

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 空間における平面と平面の位置関係には,二つの平面が交わる場合と交わらない場合とがある。交わるときの特別な場合として垂直があり,交わらない場合が平行である。

 また,二つの平面の交わりは直線である。

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 直線や平面の位置関係についての内容は,空間図形を考察する際に基本となるものであり,空間図形について分析的に捉えるためには不可欠である。

 指導に当たっては,観察や操作,実験などの活動を通して,直線や平面の位置関係の捉え方が生かされるような具体的な場面を取り入れることが大切である。

 実際に立体を作って観察したり,それを用いて説明したりする活動を通して,直線や平面の位置関係を理解できるような機会を設けることに配慮する。

 このような活動の中で,一つの直線に平行な二つの直線は平行であることや,一つの直線に垂直な二つの直線は空間では平行とは限らないことなどにも気付かせる。

 
 

 空間図形は,平面図形の運動によって構成されたものとみることができる。

 例えば,面の構成について,角柱の側面を一つの線分が平行に移動してできたものとみること,円柱や円錐(すい)の側面を一つの線分が定直線(軸)のまわりに回転してできたものとみることなどがあげられる。

 また,立体の構成について,角柱や円柱をその底面である多角形や円が一定の方向に平行に移動してできたもの,円柱を長方形がその1辺を軸として回転してできたもの,円錐(すい)を直角三角形が直角をはさむ2辺のうちどちらか1辺を軸として回転してできたもの,球を半円がその直径を軸として回転してできたものとみることなどがあげられる。

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 空間図形を平面図形の運動によって構成されたものとみることで,空間図形の性質を見いだし,日常生活の場面と空間図形を結びつける活動を大切にする。

 例えば,ろくろを用いて作られた陶器を回転体として捉えて観察したり,カードやブロックを鉛直に積み重ねる場面で,どのような立体ができるかを調べたりする場面を設定することが考えられる。

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 指導に当たっては,実際に直角三角形などの平面図形の1辺を軸として回転して調べたり,線分や面の運動によってできる立体を分類したりするなど,観察や操作,実験などの活動を通して空間図形の理解を深めることが大切である。

 
 

 具体的な空間図形の性質を理解するために,その図形の必要な部分を見取図や展開図,投影図として平面上に表現して捉えたり,平面上の表現からその図形の性質を見いだしたりすることを扱う。

 例えば,空間図形の模型を手元に置かなくても,その見取図をかいたり,見取図から性質を読み取ったりすることによって,その空間図形のもつ性質を考察することができる。

 また,立方体や正四面体の模型を作ろうとして展開図を用いることは,面と面や辺と辺の位置関係などに着目して,立体の各面の様子を分析的に観察することを必要とする。

 あるいは,円柱や円錐(すい)の側面積を求めようとするときには,曲面の面積をどのように捉えるかが問題になるが,これを展開図に表せば,長方形や扇形の面積として捉え直すことができる。

 さらに,中学校数学科で初めて学習する投影図については,空間図形を上から見た図(平面図)や前から見た図(立面図)などに表現して,その空間図形のもつ性質を考察する。

 このようにして,一つの方向からだけではなく,自分で視点を決めて観察し,分析的に考察することができる。

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 なお,空間図形を平面上に表したとき,もとの空間図形の性質が保存されていないこともある。

 例えば,右図のような立方体の見取図から,立方体の性質を読み取ろうとするとき,見た目で,二つの対角線の長さ(AC,CF)が等しくないと判断してしまうことがある。

 このことは,展開図や投影図に表すことで「二つの線分は合同な正方形の対角線であるから長さが等しい」と論理的に考察することによって正しく判断することができる。

 指導に当たっては,平面上に表現された空間図形を読み取る際,見取図,展開図,投影図を目的に応じて相互に関連付けて扱うようにすることが大切である。

 このようにして,具体的な空間図形について,その見取図,展開図,投影図を用い,図形の各要素の位置関係を調べることを通して,論理的に考察する力を養うようにする。

 
 

 中学校数学科では,円の周の長さや面積の求め方について小学校算数科での学習を振り返るとともに,円の周の長さや面積を円周率πを用いて表すことを扱う。

 また,円の一部としての扇形について,同一の円の弧の長さと面積がその中心角の大きさに比例することを理解し,扇形の弧の長さや面積を求めることができるようにする。

 
 

 小学校算数科では,直方体の体積に帰着して,角柱や円柱の体積が底面積と高さの積として求められることを学習している。

 中学校数学科では,角柱や円柱を,その底面の多角形や円が高さの分だけ平行に移動することによって構成される立体とみることと関連させて,小学校算数科で学習した角柱や円柱の体積の求め方について理解を深めることができる。

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 中学校数学科で初めて学習する錐(すい)体の体積は,それと底面積と高さがともに等しい柱体の体積の1/3 である。

 球の体積は,それがぴったりと入る円柱の体積の2/3 である。

 錐(すい)体や球の体積については,柱体の体積との関係を予想させ,その予想が正しいかどうかを,模型を用いたり実験による測定を行ったりして確かめるなど,実感を伴って理解できるようにする。

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 柱体や錐(すい)体の表面積については,実際にその立体を平面上に展開して求めるなどの活動を通して指導し,展開図の有用性も感得しつつ理解できるようにする。

 球の表面積についても,模型を用いたり実験による測定を行ったりして,実感を伴って理解できるようにすることが大切である。

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 このような立体図形の求積では,ある立体の表面積や体積を求めるためには,どのような図をかいて,どの要素が分かればよいか,そのためにどのような性質や関係を用いればよいかを調べていくなど,目的を明らかにして,そこから逆向きに考えて解決していくことが考えられる。

 例えば,円錐(すい)の表面積を求める場面で,円錐(すい)の展開図をかき,側面の展開図が扇形になり,側面積を求めるには扇形の中心角の大きさが分かればよいことを確認し,その上で,底面の円周と扇形の弧の長さが等しくなることに着目して,中心角の大きさを求めることが考えられる。

 このように,立体図形の表面積や体積の求め方について,見取図や展開図を用いて筋道立てて説明することを通して,空間図形についての理解を一層深め,論理的に考察し表現する力を養う。

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 なお,ここでは,三角形や円などその面積を求めることができる図形を底面にもつ柱体や錐(すい)体を扱う。

 
 
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