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(1) 比例,反比例について,数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

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ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 関数関係の意味を理解すること。

(イ) 比例,反比例について理解すること。

(ウ) 座標の意味を理解すること。

(エ) 比例,反比例を表,式,グラフなどに表すこと。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 比例,反比例として捉えられる二つの数量について,表,式,グラフなどを用いて調べ,それらの変化や対応の特徴を見いだすこと。

(イ) 比例,反比例を用いて具体的な事象を捉え考察し表現すること。

〔用語・記号〕  関数 変数 変域

 小学校算数科では,第4学年から第6学年にかけて,変化の様子を表や式,折れ線グラフを用いて表したり,変化の特徴を読み取ったり,伴って変わる二つの数量を見いだして,それらの関係に着目し,変化や対応の特徴を考察したりしてきている。

 また,比例の関係を理解しこれを用いて問題を解決してきている。

 なお,比例の理解を促すため,反比例についても学習してきている。

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 中学校数学科において第1学年では,これらの学習の上に立って,具体的な事象の中から伴って変わる二つの数量を取り出して,その変化や対応の仕方に着目し,関数関係の意味を理解できるようにする。

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 比例,反比例の学習は,日常生活において数量間の関係を探究する基礎となるものである。

 これらの学習においては,一般的,形式的に流れることなく,具体的に事象を考察することを通して,関数関係を見いだし考察し表現する力を養う。

 また,数の拡張や関数の概念を基にして,小学校算数科で学習した比例,反比例を関数として捉え直すことも必要である。

 
 

 関数関係とは,関係する二つの数量について,一方の値を決めれば他方の値がただ一つ決まるような関係を意味している。

 ここでは,二つの数量の関係について,「…は…の関数である」などの表現を用いて捉え,変化や対応の様子に注目して関数関係についての理解を深める。

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 関数についての学習の初期段階においては,小学校算数科で学習した比例,反比例は関数の一例であることを確認したり,身近な数量の関係の中に関数関係にあるものを確認したりすることを通して,関数の意味を理解できるようにすることが大切である。

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 中学校数学科において,二つの数量の関係を表,式,グラフに表すのは,これらを手立てとしてその変化や対応の特徴を捉え,関数関係について調べることがねらいである。

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 数量の関係を表に表すときは,対応する二つの値の組を明確に捉えることが大切である。

 そのとき,一方の変数(独立変数)のとる値を,目的に応じて一定の順序に並べて表をつくるという方法を理解することが重要である。

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 数量の関係を式に表すときは,変数と定数の違いを明らかにし,変数として何をx とし,何をy とするかを明確にすることが必要である。

 式に表すことによって,一方の変数のとる値を決めれば,それに対応する他の変数の値が決まることが分かり,式を基にして表やグラフをつくることができるようになる。

 なお,式に表すことができない関数関係があることにも留意する。

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 数量の関係をグラフに表すときは,対応する二つの値の組を座標とする点を座標平面上にとればよい。

 また,グラフを用いて変数x のとる値を一つ決めれば,対応する変数y の値が求められることを理解できるようにする。

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 表,式,グラフを用いて表すとき,これらを別々のものとして扱うのではなく,これらの表し方を相互に関連付けて理解できるようにすることが重要である。

 例えば,ある具体的な事象を考察するのに数量の関係を表に表した場合,それを式やグラフに表すことによって,表には現れていない値の組を求めることができるなど数量の関係についての理解が更に深められる。

 また,数量の関係を式で表した場合,それを表やグラフに表すことによって,その式が表す数量の関係について変化や対応の様子を具体的に捉えることができ,数量の関係の特徴を理解することが容易になる。

 このような関数関係の意味について,中学校3年間の学習を通して徐々に理解が深められるようにする。

 
 

 小学校算数科では,第5学年で,簡単な比例の関係について学習し,第6学年では,これらの学習の上に立って,比例の関係について理解し,簡単な場合について表,グラフなどを用いてその特徴を調べることをしてきている。

 また,反比例については,比例についての理解を一層深めることをねらいとして,反比例について知ることとしている。

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 比例の意味については,小学校算数科では,次の三通りの意味の学習が行われている。

・ 二つの数量があり,一方の量が2倍,3倍,…と変化するのに伴って,他方の量も2倍,3倍,…と変化し,一方の量が1/2倍,1/3倍,…と変化するのに伴って,他方の量も1/2倍,1/3倍,…と変化する。

・ 二つの数量の一方が m倍になれば,他方も m倍になる。

・ 二つの数量の対応している値の比(商)に着目すると,それがどこも一定になっている。

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 また,反比例については,比例と対比させて,次の三通りの意味を知ることとしている。

・ 二つの数量があり,一方の量が2倍,3倍,…と変化するのに伴って,他方の量は1/2倍,1/3倍,…と変化し,一方の量が1/2倍,1/3倍,…と変化するのに伴って,他方の量は2倍,3倍,…と変化する。

・ 二つの数量の一方が m倍になれば,他方は1/m倍になる。

・ 二つの数量の対応している値の積に着目すると,それがどこも一定になっている。

 ただし,変域は負でない数の場合だけである。

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 中学校数学科では,これらの学習の上に立って,比例,反比例を,変域を負の数にまで拡張し,文字を用いた式で表現する。

 比例については,一般的に,a を比例定数として,y=ax または,y/x=a という式で表される関係であること,

 反比例については,一般的に,a を比例定数として,y=a/x または,xy=a という式で表される関係であることを学習する。

 
 

 小学校算数科では,第4学年で,座標の意味につながる平面上や空間にあるものの位置の表し方について学習している。

 また,変化の様子を折れ線グラフに表すことを第4学年から学んでいるが,二つの数の組を用いて平面上の位置を表すという座標の概念に基づいたものではない。

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 中学校数学科では,これらの学習の上に立って,座標を理解し,数量の関係を座標を用いてグラフに表す。

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 平面上にある点の位置は,一般に,交わる2本の数直線を軸として,その点に二つの数の組を対応させることによって表現できる。

 これが平面における座標の概念である。中学校数学科では,座標の意味として,原点Oで直交した2本の数直線によって平面上の点が一意的に表されることを理解する。

 座標を用いることによって,グラフを点の集合として表すことができるようにする。

 
 

 小学校算数科では,第5,6学年で,比例について学習している。

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 中学校数学科では,変数を明確に意識し,表から変数x,y の間の関係を見いだし,その関係を y=ax または,y/x=a という式に表せること,これらの式における比例定数a の意味を理解する。

 グラフについては,変域が負の数まで拡張された上で,原点を通る直線であることを理解し,比例定数a の値によってどのようにグラフが変わるかということも学習する。

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 反比例については,小学校算数科では,第6学年で,比例についての理解を一層深めることをねらいとして,反比例を知ることとしている。

 中学校数学科では,変数を明確に意識し,表から変数x,y の間の関係を見いだし,y=a/x または,xy=a という式に表せることを理解する。

 そして,式における比例定数a の意味を理解する。

 グラフについては,原点を通らない二本の曲線となることを理解し,比例定数a の値によってどのようにグラフの概形が変わるかということも学習する。

 なお,グラフの学習においては,式を基に曲線をかくことは初めてなので,座標平面上に必要に応じて点をとることにより,グラフが滑らかな曲線になることや,グラフが座標軸とは交わらないことを理解することが大切である。

 その際,電卓等を利用することにより,対応するx,y の値を求める計算の能率化を図ることも考えられる。

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 ここでの学習においては,小学校算数科で学習した表,式,グラフと,中学校数学科で変域を負の数まで拡(ひろ)げ,座標を理解するなどして学習する表,式,グラフとの違いを明確にすることが必要である。

 
 

 小学校第6学年においても,表,式,グラフを用いて,比例,反比例として捉えられる二つの数量の関係について,変化や対応の特徴を見いだすことを学習してきている。

 こうした小学校算数科での学習を踏まえつつ,中学校第1学年の学習では,次の二点が大切である。

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 第一は,数の範囲を正の数と負の数にまで拡張し,比例,反比例における変化や対応の特徴を見いだすことである。

 数の範囲を正の数と負の数にまで拡張することには,次の二つの場合が含まれる。

 一つは,変域を正の数と負の数にまで拡張する場合である。

 もう一つは,比例定数が正の数や負の数になる場合である。

 これら二つの意味での数の範囲の拡張に伴い,中学校第1学年では,関数という視点から,文字を用いた式である y=ax,y=a/x によって比例,反比例を定義し,それらの変化や対応の特徴を一般的に考察することになる。

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 第二は,比例,反比例の変化や対応の特徴を考察するに当たって,表,式,グラフを用いることである。

 小学校算数科における比例,反比例の学習は,正の数の範囲に限定されている。

 そのため,比例については,x の値が増加すれば,y の値もいつも増加するというイメージをもっている生徒が少なからずいる。

 反比例についても,x の値が増加すれば,y の値はいつも減少するというイメージをもっている生徒がいる。

 指導に当たっては,比例定数が正の数の場合と負の数の場合の式とそれぞれのグラフの増減とを比較・検討するなどして,比例,反比例の意味や特徴を理解できるようにすることが大切である。

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 また,こうした表,式,グラフを用いた比例,反比例の学習では,それぞれの表現の特徴を理解できるようにすることも大切である。

 実際,表は,実験や観察の結果を記録したり整理したりするための手段としても有用である。

 その意味において,表は,比例,反比例の関係の特徴を見いだし考察するための基本となる数学的な表現といえる。

 一方,表に表される数量の値は離散的である。

 そのため,比例,反比例の関係を連続的かつ全体的に把握するためには,グラフによる視覚的な表現が適している。

 さらに,比例,反比例の関係を簡潔に表現し厳密に考察するためには,式による表現が有用になる。

 このような表,式,グラフの特徴について,漸次理解を深められるように指導し,目的に応じて数学的表現を適切に選択できるようにすることが大切である。

 
 

 比例,反比例に関わる日常の事象は数多くあり,また,他教科,特に理科の内容に関連した事象がある。

 さらに,比例,反比例は,長さと面積の関係など数学の既習内容によって学習することもできる。

 二つの数量の関係を表,式,グラフで表し,その関係が比例,反比例であると理解できれば,二つの数量の変化や対応について様々な特徴を捉えることができる。

 また,捉えた特徴を表,式,グラフを用いて,分かりやすく説明することもできる。

 例えば,比例に関して,半径がr で周の長さがの円について,「半径を2倍,3倍,…にすると,周の長さはどのように変化するか」を調べるためには,具体的な数で計算して調べることをしなくても,
 =2πr という式の意味を読み取り比例の関係を見いだして説明することができる。

 また,この円の面積をSとするとき,「半径を2倍,3倍,…にすると,面積も2倍,3倍,…になるかどうか」については,
 S=という式からその関係が比例でないことが分かる。

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 また,日常の事象の中には,厳密には比例,反比例ではないが,ある問題を解決するために比例や反比例とみなして結論を得ることがある。

 二つの数量の関係を表やグラフで表し,その関係を理想化したり単純化したりすることによって比例や反比例とみなし,それによって変化や対応の様子に着目して未知の状況を予測できるようになることを知ることは重要である。

 この際,事象を理想化したり単純化したりすることで,求めた結果の適用できる範囲に一定の制約が生じることについて理解することも重要である。

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 なお,具体的な事象を扱う際には,変数の変域に注意する必要がある。

 例えば,長さと面積の関係を比例,反比例を用いて捉えるとき,長さや面積を負の数の範囲で捉えることは現実的ではない。

 具体的な事象においては,変域を意識しながら事象を捉え考察し表現できるようにする。

 
 
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