cosnavi.jp

(1) 文字を用いた式について,数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

--------------------------------

ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 簡単な整式の加法と減法及び単項式の乗法と除法の計算をすること。

(イ) 具体的な事象の中の数量の関係を文字を用いた式で表したり,式の意味を読み取ったりすること。

(ウ) 文字を用いた式で数量及び数量の関係を捉え説明できることを理解すること。

(エ) 目的に応じて,簡単な式を変形すること。

--------------------------------

イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 具体的な数の計算や既に学習した計算の方法と関連付けて,整式の加法と減法及び単項式の乗法と除法の計算の方法を考察し表現すること。

(イ) 文字を用いた式を具体的な場面で活用すること。

〔用語・記号〕  同類項

 第1学年では,正の数と負の数を用いて数量や数量の関係を表すとともに,文字を用いて数量や数量の関係及び法則などを式に表現したり式の意味を読み取ったりすること,文字を用いた式が数の式と同じように操作できることなどを学習している。

 また,一つの文字についての一次式の加法と減法を取り扱い,一元一次方程式が解ける程度の簡単な式の計算について学習している。

--------------------------------

 第2学年では,これらの学習の上に立って,幾つかの文字を含む整式の四則計算ができるようになることや,文字を用いた式で数量及び数量の関係を捉え説明できることを理解し,文字を用いて式に表現したり式の意味を読み取ったりする力を養うとともに,文字を用いた式を具体的な場面で活用することを通して,そのよさを実感できるようにする。

--------------------------------

 第2学年での文字を用いた式の学習に当たっては,続いて学習する連立二元一次方程式,「B図形」や「C関数」の領域の内容などとの関連にも留意する必要がある。

 
 

 単項式と多項式の意味を理解し,例えば,(3x−2y)−(2x+5y) 程度の簡単な整式の加法や減法,2(4x−5y) 程度の整式に数をかける計算,また,単項式どうしの乗法や除法の計算ができるようになることをねらいとしている。

--------------------------------

 その際,必要以上に複雑で無目的な計算練習にならないようにし,特に整式の加法や減法については,連立二元一次方程式を解くのに必要な 2(3x−2y)−3(2x+5y) 程度の簡単な式の計算ができるようにする。

--------------------------------

 また,第2学年で学習する整式の計算については,項の意味や計算の法則を振り返るなど第1学年で学習した文字を用いた式の計算と関連付けて考察し表現することができるようにする。

--------------------------------

 例えば,次のような誤りは,第1学年の式の計算の学習において,項の意味が理解できていないために起こると考えられる。

  (4x+5)−(2x+3)…@
 =4x−2x+5−3
 =2x+2
 =4x

--------------------------------

 第2学年で学習する二つの文字を含む整式の加法や減法については,「x とy は一つにまとめることができない」というように項についての理解が深まり,計算の誤りが減っていく。

  (4x+5y)−(2x+3y)…A
 =4x−2x+5y−3y
 =2x+2y

--------------------------------

 このことを生かし,Aのような式の計算についての学習を基に,@のような式の計算を再度取り上げるなど,学び直しの機会を設定することが考えられる。

 
 

 数学の学習全般にわたり,文字を用いた式を積極的に活用していくことは重要である。

 第1学年では,数量の関係や法則などを文字を用いた式で表すことを学んでいる。

 第2学年では,その学習を更に深めて,文字を用いた式で数量及び数量の関係を捉え説明できることを理解し,文字を用いて式に表現したり,式の意味を読み取ったりする力を養う。

--------------------------------

 例えば,「二つの奇数の和は,偶数である」ことを説明する場合,その過程には次のような活動が含まれている。

@ 二つの奇数を,整数を表す文字m,n を用いて,2m+1,2n+1と表す。

A それらの和(2m+1)+(2n+1) を計算し,その結果2m+2n+2を
 2(m+n+1) の形の式に変形する。

B Aで得られた式を2×(整数) とみて,偶数を表していることを読み取る。

C Bのことから,二つの奇数の和が偶数になるといえる。

--------------------------------

 このように,文字を用いた式で数量及び数量の関係を捉え説明できることを理解できるようにするためには,文字を用いた式を使って,ある命題が成り立つことを説明する場面で,文字を用いて表現したり,文字を用いた式の意味を読み取ったり,計算したりする学習が総合的に行われることが重要である。

--------------------------------

 指導に当たっては,具体的な数で計算することから,成り立つ性質を生徒が見いだしたり,見いだした性質について文字を用いて表現する方法を検討したりするなどの機会を設けることが大切である。

--------------------------------

 このような学習を通して,事象の中に数量の関係を見いだし,文字を用いた式で表したり,その意味を読み取ったりする力を養うことはもちろん,数量の関係を帰納や類推によって推測し,それを文字を用いた式を使って一般的に表現し説明することの必要性と意味を理解し,文字を用いた式を具体的な場面で活用する力が養われていく。

 なお,これらのことはその方法の理解も含めて徐々に時間をかけて身に付くものと考えられるので,第3学年での文字を用いた式を活用することの学習も見通して,漸次理解を深められるように指導する。

 
 

 式の変形は,大きく二つに分けて考えることができる。

--------------------------------

 一つは,前述したように,数や図形の性質が成り立つことを説明するときに,数量を表す式を目的に応じてきまりに従って変形することである。

--------------------------------

 もう一つは,関係を表す式を,等式の性質などを用いて目的に合うように同値変形することである。例えば,三角形の面積を求める公式


から,底辺a を求める式を得るために,a について解くことなどがあげられる。

 等式の変形は,いろいろな場面で活用されるので,上に述べた三角形の面積の公式から底辺の長さを求める式に書き換えるような簡単な場合について,自由に行えるようにしておくことが重要であり,取り上げる式が必要以上に複雑で無目的なものになることのないように留意する必要がある。

--------------------------------

 いずれの場合においても,無目的に式の変形を行うのではなく,具体的な場面に即して目的に応じて式を変形することのよさを実感することに指導の力点を置くようにする。

 
 

 文字を用いた式は,様々な事象における問題解決の場面において,数量や数量の関係を簡潔,明瞭に表したり,能率的に処理したり,その意味を読み取ったりする際に有効である。

 例えば,運動場に陸上競技用のトラックを作ろうとする場面において,このトラックを二つの半円と一つの長方形を組み合わせた形とし,ゴールラインを同じにして1周するとき,各レーンが同じ距離になるように,隣り合うレーンとのスタートラインの位置を調整する問題を設定することが考えられる。

 例えば,
 各レーンの幅を1m,
 最も内側にある半円部分の半径を r m,
 直線部分の長さを a m とすると,

 第1レーンの内側の周の長さは,
 a×2+2π×r=2a+2πr(m),

 第2レーンの内側の周の長さは,
 a×2+2π(r+1)
 =2a+2πr+2π(m)となり,

 その差は,
 (2a+2πr+2π)−(2a+2πr)
 =2π(m)となる。

 

 よって,第2レーンのスタートラインは第1レーンのスタートラインより2π(m)だけ前にずらす必要があることが分かる。

 2πに文字a やr が含まれていないことから第2レーンの内側の周の長さから第1レーンの内側の周の長さを引いた差は,半円部分の半径や直線部分の長さに関係なく決まることを読み取ることができ,半円部分の半径や直線部分の長さを変えても常に差は2π(m)になることを理解できるようにすることも大切である。

 このように文字を用いた式を活用して,数量や数量の関係を簡潔,明瞭で一般的に表現し,処理することができるようにする。

 また,処理することによって得た結果を問題に即して解釈することができるようにする。

★↑画像をクリックすると拡大します!

 
 
→ 中学校数学編 目次
→ 小学校算数編 目次
→ 中学校学習指導要領(2017)目次
→ 学習指導要領ナビ
トップページ