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(1) 正の数の平方根について,数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

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ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 数の平方根の必要性と意味を理解すること。

(イ) 数の平方根を含む簡単な式の計算をすること。

(ウ) 具体的な場面で数の平方根を用いて表したり処理したりすること。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 既に学習した計算の方法と関連付けて,数の平方根を含む式の計算の方法を考察し表現すること。

(イ) 数の平方根を具体的な場面で活用すること。

〔用語・記号〕

  根号 有理数 無理数 √

[内容の取扱い]

(1) 内容の「A数と式」の(1)などに関連して,誤差や近似値,a×10n の形の表現を取り扱うものとする。

 第1学年では,取り扱う数の範囲を正の数と負の数に拡張して,正の数と負の数の必要性と意味を理解し,その四則計算について学習している。

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 第2学年では,文字を用いた式や方程式,関数,確率などについての学習を通して,数についての理解を一層深めている。

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 第3学年では,二次方程式を解く場合や,三平方の定理を活用して長さを求める場合には,有理数だけでは不十分なので,数の範囲を無理数にまで拡張する。

 新しい数として平方根を導入することで,これまで扱うことができなかった量を考察の対象とすることができる。

 このような正の数の平方根の必要性と意味を理解し,正の数の平方根を含む簡単な式の計算ができるようにするとともに,具体的な場面で平方根を用いて表したり処理したりすることを通して,それを具体的な場面で活用することができるようにする。

 
 

 第1学年では,数の範囲を拡張し,正の数と負の数の必要性と意味を理解できるようにしている。

 数の範囲を拡張することは,新しい数が導入され,これまで数で表すことができなかったものが思考の対象になることを意味する。

 日常生活には,例えば,1辺の長さが1mである正方形の対角線の長さのように,これまでの有理数では表すことのできない量が存在している。

 このような量を定めるためには新しい数が必要になる。

 また,数を2乗することの逆演算を考える場面で,有理数ではない数が存在することの理解が必要となる。

 このような学習を通して,正の数の平方根の必要性を理解できるようにする。

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 一般に,x2=a (a>0)を成り立たせる x の値を a の平方根といい,x を記号√ を用いて√a 及び −√a と表す。

 √ は新しい数を表す記号であり,これを用いると,これまで十分に表し得なかった数を簡潔・明瞭に表現することができる。

 円周率 3.14…をπを用いて表したのと同じように,数を記号√ を用いて表していく。

 このように,その記号のもつよさを知り,正しく用いることができるようにすることは大切なことである。

 また,正の数a の平方根には正と負の二つの数があり,√a はその正の方を表していること,0の平方根は0であることなどを理解できるようにする。

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 正の数の平方根,例えば,√2 や√5 は,これまでに学習してきた有理数とは異なり,分数で表せない新しい数であり,無理数と呼ばれる数である。

 数の範囲を無理数に拡張することによって,二次方程式の解が得られるようになり,三平方の定理を活用して長さを求めることもできるようになる。

 また,有理数や無理数という新たな観点で数を分類することができるようになる。

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 正の数の平方根の近似値は,√ キーのついた電卓を用いれば求めることができるが,正の数の平方根の意味を理解する上で,はじめに近似値を定めて,これを基に更に精度のよい近似値を求め,逐次この操作を繰り返して,近似値の精度を高めていくことも必要である。

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 例えば,0.1 だけ異なる数に着目して,
 1.42 と1.52 を電卓などで計算し,
 それぞれの値を2と比べることによって,
 1.4<√2 <1.5 という関係を見いだす。

 さらに,同じような手続きによって,順次,√2 のより正確な近似値を探し続けることができる。

 実際にこのような経験をすることは,正の数の平方根の理解を深める上で,また未知の数を逐次近似的に求める方法を知る上で重要である。

 
 

 正の数の平方根を含む式の四則計算では,交換法則,結合法則や分配法則はそのまま成り立つ。

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 正の数の平方根の乗法は
 

 除法は
 
 を基にして計算できる。

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 となることについては,
 a とb に具体的な数を当てはめて
 考察することが考えられる。

 例えば
 √2×√3 の結果が
 
 になると予想し,
 電卓等を活用して,

 √2×√3=1.414…×1.732…
       =2.449…

 と計算し,
 その結果が√6 =2.449…
 と近い値になることから

 

 となりそうなことを
 予想できるようにすること
 が考えられる。

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 このような活動の上で,
 平方根の乗法の計算の方法
 については,
 √2×√3 を2乗して,
 その結果の平方根を調べることで,
 
 を確かめる。

 除法についても
 同様の視点から
 計算の方法を考察し
 表現することができるようにする。

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 正の数の平方根の加法についても,
 乗法と同様に
 
 
 となると予想し,
 考察することが考えられる。

 しかし,この予想は成り立たない。
 
 が成り立たないことを示すには,
 例えば,反例を一つあげればよい。

 このように,
 反例をあげることで,
 ある事柄が常に成り立つとは限らない
 ことを説明できることは
 第2学年の「B図形」の領域で
 学習しているが,
 繰り返し確認することが大切である。

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 √2+1や√2+√3 などは,これ以上簡単には表せない数であり,それぞれ一つの無理数を表している。

 このことは,文字を用いた式においてa やb が数を表すとき,a+1やa+b もそれぞれ一つの数を表すものとみることと同様である。

 正の数の平方根を含む加法や減法の式の計算の方法について,文字を用いた式の計算の方法を振り返りつつ考察することが必要である。

 なお,ここで取り上げるのは,二次方程式や三平方の定理を活用する場面で必要な程度の計算であり,必要以上に複雑で無目的な計算練習にならないようにする。

 
 

 様々な事象における問題解決の場面において数の平方根を用いて表したり処理したりすることができるようにする。

 その際,正の数の平方根を用いることによって,数を用いて表したり処理したりする範囲が広がることを理解できるようにする。

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 例えば,日常生活においてもよく利用されるA判の紙は,2辺の長さの比が 1:√2 になるようにつくられている。

 このことは,図のように紙を折っていくと,はじめの折り目(点線)と,長い辺が一致することから確かめることができる。

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 また,例えば,半径2pの円と半径4pの円があるとき,面積がこの二つの円の和になるような円の半径を求めるために,平方根を用いて考察し表現する活動を設定することが考えられる。

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 このように様々な事象を正の数の平方根を用いて考察し表現することで,それらを活用することができるようにする。

 
 

 小学校算数科では,第4学年で,概数について理解し,概数で見積もったり,計算の結果を概数で表したりすることができるようにしている。

 また,十進位取り記数法についても学習している。

 ここでは,誤差や近似値,数を
 a×10n の形で表すことを取り扱う。

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 測定には誤差が伴う。

 誤差とは,測定値と真の値の差である。

 例えば,
 最小目盛りがoで表されている
 身長測定器を用いて
 データを収集する際,
 ある生徒の身長の測定値が157.4p
 ということは,
 真の値が,
 157.35p 以上 157.45p 未満
 の間にあることを意味する。

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 すなわち,
 この生徒の身長をx p とすると,
 真の値がある範囲は,

 157.35≦x<157.45

 と表される。

 さらに,
 これを数直線上に表すなどして,
 測定値には誤差が伴い,
 近似値として157.4pを用いることなど,
 近似値と誤差の意味について
 実感を伴って理解できるようにする。

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 また,数の表し方については,
 例えば,
 測定値として2300mが得られたとき,
 この値が
 十の位の数字まで信頼できるならば,
 一の位の0は
 位を示しているに過ぎないので,
 これを2300mではなく
 2.30×103
 のように表す。

 このことによって,
 どの数字までが有効数字であるかを
 明らかにすることができ,
 近似値について
 誤差の見積もりもできる。

 ここでの学習は,
 このような数の表し方について
 知ることがねらいである。

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 なお,誤差や近似値,数を
  a×10n
 の形で表すことについては,

 第3学年の「A 数と式」の(1)での
 学習の他,
 直接測定することが困難な
 高さや距離を
 相似な図形の性質や三平方の定理
 を用いて求める学習の場面など
 「B図形」の(1)や(3)などの学習
 と関連付けて指導する
 ことが考えられる。

 
 
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