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(1) 二次方程式について,数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

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ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 二次方程式の必要性と意味及びその解の意味を理解すること。

(イ) 因数分解したり平方の形に変形したりして二次方程式を解くこと。

(ウ) 解の公式を知り,それを用いて二次方程式を解くこと。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 因数分解や平方根の考えを基にして,二次方程式を解く方法を考察し表現すること。

(イ) 二次方程式を具体的な場面で活用すること。

[内容の取扱い]

(2) 内容の「A数と式」の(3)については,実数の解をもつ二次方程式を取り扱うものとする。

(3) 内容の「A数と式」の(3)のアの(イ)とイの(ア)については,

 ax2=b (a,b は有理数)の

 の二次方程式及び

 x2+px+q=0 (p,q は整数)

 の二次方程式

 を取り扱うものとする。

 因数分解して解くことの指導においては,内容の「A数と式」の(2)のアの(イ)に示した公式を用いることができるものを中心に取り扱うものとする。

 また,平方の形に変形して解くことの指導においては,x の係数が偶数であるものを中心に取り扱うものとする。

 第1学年では一元一次方程式を,第2学年では,それとの関連を図りながら,簡単な連立二元一次方程式を学習している。

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 第3学年では,二次方程式を解くことができ,それを具体的な問題解決の場面で活用できるようにし,方程式をこれまでより多くの場面で問題の解決に活用できるようにする。

 
 

 具体的な場面では,二次方程式を用いることが必要となる問題がある。

 例えば,正方形の一方の辺を1p長くし他方の辺を1p短くしたとき,できた長方形の面積が24cm3 になったとすると,もとの正方形の1辺の長さは,既習の一次方程式や連立方程式では求められない。

 このような具体的な問題の解決を通して,二次方程式の必要性を理解できるようにする。

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 連立二元一次方程式を,一元一次方程式から文字の種類と方程式を増やして生み出された方程式とみると,二次方程式は一元一次方程式から文字の次数を増やして生み出された方程式とみることができる。

 このように文字の種類や次数に着目することは,更に新たな方程式が存在することに気付くきっかけともなる。

 また,二次方程式の意味をこのように捉えてその解き方を考えると,連立二元一次方程式についての「一つの文字を消去して一元一次方程式に帰着させる」という解き方から,二次方程式については,「次数を減らして一元一次方程式に帰着させる」という解き方があるのではないかと予想できる。

 このように二次方程式の意味を理解することを通して,方程式自体の広がりを実感できるようにするとともに,統合的・発展的に考える力を養うことが大切である。

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 二次方程式の解の意味については,第1学年で学習した一元一次方程式や第2学年で学習した連立二元一次方程式と本質的に変わっていないが,一般に解が二つあることに注意する。

 
 

 一般の二次方程式

 ax2+bx+c=0

 を解くのに,次の二つの方法がある。

@ 因数分解によって
 一次式の積に変形し,
 「AB=0ならば,A=0または B=0」
 であることを用いる方法

A 等式の変形によって,X2=k の形を導き,平方根の考えを用いる方法

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 @は,
 二次方程式 x2+px+q=0
 の左辺が一次式の積に因数分解でき,
 (x−m)(x−n)=0
 の形に変形できるときに
 有効な方法である。

 この形から,
 「AB=0ならば,A=0またはB=0」
 を用いて
 既習の一元一次方程式に
 帰着させることで解を求める。

 @を用いる際,
 論理的な用語としての
 「または」についての理解
 が必要となり,
 日常的な意味での
 「または」(どちらを選んでもよい)
 と関連させながら,
 二次方程式を解く方法を
 論理的に考察し表現することが
 できるようにする。

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 Aは,
 二次方程式 x2+px+q=0
 を平方の形 (x+m)2 =k (k≧0)
 に変形したときに
 用いることができる方法である。

 この式の左辺(x+m)を
 X と置き換えることで,
 X2=k の式と表し,
 平方根を求める際の考えに基づいて
 解を求める。

 この方法を用いることで,
 因数分解による方法では
 容易に解を求めることができない
 二次方程式であっても,
 その解を求めることができるようになる。

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 このように二次方程式を解く方法について考察し表現することができるようにするとともに,この方法のよさを実感できるようにすることが大切である。

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 なお,このAの方法は,
 式変形が容易でないこともある。

 そこで,
 Aの方法については,
 例えば,
 x2+4x−7=0のように
 x の一次の項の係数が偶数であるもの
 を中心に取り上げ,
 平方の形に変形すれば,
 これを解くことができること
 を理解できるようにする。

 x の一次の項の係数が奇数である
 二次方程式については,
 次に示す解の公式を知ることと
 関連付けて取り扱うことが考えられる。

 
 

 上記Aの方法を用いれば,因数分解で解を求めることができないような二次方程式でも,解を求めることができる。

 しかし,Aの方法は式変形や操作が一般に複雑である。解の公式は,このような式変形や操作の反復を省略し,能率的に解を求めるためのものである。

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 二次方程式 ax2+bx+c=0 の解の公式を導くためには,文字を含んだ分数の形の 式や,根号の中に文字を含んだ式を操作することになるので,形式的な変形だけでは理解が困難である。

 したがって,係数が数字で表されている二次方程式をAの方法によって解を求める手順と対比させながら,解の公式が導かれる過程を知ることを重視する。

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 解の公式を用いて二次方程式を解く際には,ただ単に公式に係数の数値を代入するだけではなく,二次方程式 ax2+bx+c=0の解が三つの項の係数a,b,c で定まること,つまり,解の公式を用いると,係数の演算操作によって解が求められることを知ることも大切である。

 また,因数分解で解くことができる二次方程式については,解の公式を用いて求めた解をもとにして因数分解できることを知ることも,先にあげた二つの方法による解き方と解の公式を用いた解き方の間の関連を知ることにつながる。

 
 

 二次方程式を具体的な場面で活用できるようになることが,ここでのねらいである。

 これまで解決できなかった問題も,二次方程式を活用すると解決できる場合があることを知り,問題の解決に方程式がより広く活用できることを理解する。

 このことについては,三平方の定理を活用する場面などでも,その理解を一層深めることになる。

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 具体的な問題を二次方程式を活用して解決するためには,一元一次方程式や連立二元一次方程式の活用と同様で,次のような一連の活動を行うことになる。

@ 求めたい数量に着目し,それを文字で表す。

A 問題の中の数量やその関係から,二通りに表される数量を見いだし,文字を用いた式や数で表す。

B それらを等号で結んで方程式をつくり,その方程式を解く。

C 求めた解を問題に即して解釈し,問題の答えを求める。

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 この一連の活動を通して,方程式を活用して問題を解決するための知識を身に付けるとともに,解決過程を振り返り,得られた結果を意味付けたり活用したりしようとする態度を養うことが大切である。

 特に,二次方程式については,その解が二つあることや大きさが分かりにくい平方根を含む数になることがあり,問題の答えとして適切ではない答えを出しても気付かない場合がある。

 こうした点も踏まえ,具体的な問題解決の場面で二次方程式を活用する場合には,解決の過程を振り返り,事象における数量の関係を的確に表した二次方程式がつくられているかどうかを吟味したり,得られた解が問題の答えとして適切であるかどうかをもとの事象に戻して調べたりすることなどが一層大切になる。

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 なお,日常の事象や社会の事象における問題を解決しようとしてつくった二次方程式で,数値がやや複雑な場合には,必要な計算を電卓等を利用して行うことに配慮するものとする。

 
 
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