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(1) 図形の相似について,数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

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ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 平面図形の相似の意味及び三角形の相似条件について理解すること。

(イ) 基本的な立体の相似の意味及び相似な図形の相似比と面積比や体積比との関係について理解すること。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 三角形の相似条件などを基にして図形の基本的な性質を論理的に確かめること。

(イ) 平行線と線分の比についての性質を見いだし,それらを確かめること。

(ウ) 相似な図形の性質を具体的な場面で活用すること。

〔用語・記号〕  ∽

 数学的な推論の過程に着目して図形の性質や関係を論理的に考察し表現することの意義は,一つには既習の図形の性質や関係を論理的に整理し,体系付け,組み立てていくことにある。

 その際,合同と相似は重要な概念である。

 第2学年では,数学的な推論の過程に着目して,図形の合同に基づいて三角形や平行四辺形の基本的な性質を見いだし,論理的に確かめ説明することを学習している。

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 第3学年では,三角形の相似条件などを用いて図形の性質を論理的に確かめ,数学的な推論の必要性や意味及び方法の理解を深め,論理的に考察し表現する力を養う。

 また,基本的な立体の相似の意味を理解し,相似な図形の性質を用いて図形の計量ができるようにする。

 
 

 小学校算数科では,第6学年で,図形についての観察や構成などの活動を通して縮図や拡大図について学習し,二つの図形の形が同じであることを,縮図や拡大図を通して理解してきている。

 これを踏まえ,中学校数学科では,三角形や多角形などについて形が同じであることの意味を,さらに明確にすることになる。

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 相似の意味を理解する場合,いろいろな割合で拡大したり縮小したりして図をかくことによって,相似な図形のイメージを豊かにすることが大切である。

 ここで,拡大,縮小は,「図形Aを拡大して図形Bをかく」,「図形Aを縮小して図形Bをかく」のように,一つの図形を操作して新たな図形を作ることを意味する。

 これに対して「図形Aと図形Bは相似である」のように,相似は二つの図形を対象とし,その関係を表す概念である。

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 なお,
 二つの図形は,
 次のそれぞれの場合に相似である。

@ 一方の図形を
  拡大または縮小したときに
  他方の図形と合同になる。

A 対応する線分の比がすべて等しく,
  対応する角がそれぞれ等しい。

B 適当に移動して
  相似の位置に置くことができる。

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 @は,
 第2学年で学習した合同を
 図形の移動という操作に基づいて,

 「一方を移動して
  他方に重ねることのできる
  二つの図形は
  合同である。」

 と定義しているものに対応する
 相似の定義となる。

 この定義は,
 相似な図形を作図する学習
 の導入として分かりやすい。

 また,
 曲線図形にも適用でき,
 元の図形との対応が
 比較的はっきりしている。

 

 この定義を基にすると,
 Aは相似の性質とみることができる。

 Aの定義は,
 証明の根拠として重要であり,
 これによって,
 演繹(えんえき)的に推論し,
 図形の性質を
 見いだしたり確かめたりすることが
 可能になる。

 

 Bは,
 合同な図形が
 「ぴったりと
  重ね合わすことができる図形」
 を意味するのに対し,

 相似な図形は
 「1点から見通すことによって
  重ね合わすことができる図形」
 であるということを意味している。

 つまり,
 二つの図形の
 対応する点どうしを通る直線が
 全て1点を通り,
 その点から対応する点までの距離の比
 が全て等しいとき,
 二つの図形は,
 その点を相似の中心として,
 相似の位置にあるといえる。

 

 この定義は
 曲線図形にも適用ができる。

 ただ,
 裏返さないと
 相似の位置に置けない場合がある
 ことに注意する必要がある。

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 三角形の相似条件としては,
 次の三つを取り上げる。

 二つの三角形は,
 次のそれぞれの場合に相似となる。

・ 対応する3組の辺の比がすべて等しい

・ 対応する2組の辺の比と
 その間の角がそれぞれ等しい

・ 対応する2組の角がそれぞれ等しい

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 これらについては,第2学年で学習した三角形の合同条件と対比させながら,初期の段階では作図を通して直観的に,そして学習が進むにつれて論理的に理解できるように指導する。

 
 

 三角形の相似条件を証明の根拠として位置付け,その相似条件などを基にして図形の基本的な性質を論理的に確かめることを学習する。

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 例えば,直角三角形ABC の直角の頂点Aから対辺BC に垂線AD をひいたときにできる△DBA と△DAC が,△ABC と相似であることを,三角形の相似条件などを用いて証明することが考えられる。

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 指導に当たっては,証明の方針を立てるに当たり,相似であることを示すには,何がいえればよいかを考えたり,証明を振り返り,相似条件がどのようにして用いられていたかを確かめたりすることなどを通して,論理的に考察し表現する力を養う。

 
 

 平行線と線分の比についての性質を観察や操作を通して見いだし,それが平行線の性質や三角形の相似条件を用いて,演繹(えき)的に推論することによって導かれることを学習する。

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 平行線と線分の比についての指導では,見いだした性質を別々のものとしたままにせず,統合的・発展的に考えることが大切である。

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 例えば,点P,Qが,線分AB,AC上にあるとき,PQ//BC ならば,AP:AB=AQ:AC=PQ:BC が成り立つことを推測し,三角形の相似条件や相似な図形の性質に基づいて論理的に確かめた後,点P,Qが線分AB,AC の延長上にあるときに,同じことが成り立つかと発展的に考察し,その結果から平行線と線分の比についての性質を統合的に捉えることが考えられる。

 同様に,ここで中点連結定理を,平行線と線分の比の特別な場合として,統合的に捉え直すことが考えられる。

 そして,この定理を基にして,例えば,四角形の各辺の中点を結んでできる四角形は平行四辺形であるなど,新たな図形の性質を発見することができるようにすることが大切である。

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 指導に当たっては,平行線と線分の比に関する内容を,点の位置を変化させることで発展的に取り扱い,また,その結果を統合的に捉えることで,平行線と線分の比についての性質の理解を一層深めることが大切である。

 このようにして,図形に対する見方をより豊かにするとともに,図形の性質が成り立つ理由を数学的な表現を用いて説明したり,統合的・発展的に捉えたりすることを通して,論理的に考察し表現する力を養う。

 
 

 平面図形についての相似の意味から類推して,立方体,直方体,柱体,錐(すい)体,球などの基本的な立体についての相似の意味が理解できるようにする。

 一般に,相似な立体では,対応する線分の長さの比はすべて等しい。

 また,対応する角の大きさもすべて等しい。

 対応する線分の長さの比が,相似な立体の相似比である。相似な立体では,対応する面は相似で,対応する面の相似比はもとの立体の相似比に等しい。

 相似な平面図形では,対応する線分の長さの比は相似比に等しいが,それらの面積比は線分の長さの比に等しくならず,相似比の2乗に等しくなっていること及び相似な立体の体積比は相似比の3乗に等しくなっていることを理解できるようにする。

 また,相似な図形の相似比と面積比及び体積比との関係をこのように捉えることによって,ある図形の面積や体積が分かっているとき,その図形と相似な図形の面積や体積を,元の図形との相似比を基にして求めることができるようにする。

 
 

 相似な図形の性質を活用する場面においては,与えられた図形の中の相似な三角形に着目するなどして,線分の比を見いだしたり位置関係を捉えたりすることが必要となる。

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 例えば

 「△ABC において,∠Aの二等分線と辺BC の交点をDとするとき,AB:AC=BD:CD である」

 ことの証明において,辺の比を示すために相似な三角形に着目すればよいことは分かるが,そのままでは相似な三角形を見いだすことができない。

 そこで,AB,AC,BD,CD の位置関係に注意して,相似条件に着目しながら見通しをもって試行錯誤し,図のように△ABD と相似な三角形を作図できるようにすることが考えられる。

 なお,ここで証明しようとしている性質を推測する際には,第2学年で学習した「二等辺三角形の頂角の二等分線は底辺を垂直に二等分する」という性質を振り返り,二等辺三角形を一般の三角形に置き換えたらどうなるかと実測等を通じて調べていくことが考えられる。

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 日常生活で相似な図形の性質を利用する場面として地図がある。地図は縮図であり,現地まで出かけなくとも,地図上で実際の距離を求めることができる。

 また,電気製品などの小さな部品の設計図は拡大図である。

 実際には大変細かな部品でも,拡大することで正確に設計できる。

 このように日常生活で相似を利用している場面を生徒が見いだし,利用の仕方を調べることも大切である。

 また,直接測定することが困難な木の高さや,間に池などの障害物がある2本の木の間の距離を求めることなども考えられる。

 測定が可能な距離や角を作業によって求め,それをもとにして縮図を作成し,必要な高さや距離を求めるというような学習も取り扱うことができる。

 なお,小学校算数科における縮図や拡大図の学習においても上記のような課題を取り扱ってきている。

 したがって,相似について学習したことによって,活用の深まりを生徒が実感できるような配慮が必要である。

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 さらに,相似な立体の体積比に関連して,例えば,ある商品が相似な立体とみなせる二つの箱詰めで売られているとき,相似比から体積比を求め,体積比と価格の比からどちらが割安かを調べていく学習が考えられる。

 
 
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