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(2) 円周角と中心角の関係について,数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

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ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア) 円周角と中心角の関係の意味を理解し,それが証明できることを知ること。

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イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア) 円周角と中心角の関係を見いだすこと。

(イ) 円周角と中心角の関係を具体的な場面で活用すること。

[内容の取扱い]

(4) 内容の「B図形」の(2)に関連して,円周角の定理の逆を取り扱うものとする。

 円は,直線とともに最も身近な図形の一つであり,小学校から学習している。

 例えば,小学校算数科では,円の中心,半径及び直径,円周率,円の面積を学習してきている。

 中学校数学科においては,第1学年で円の接線について学習している。

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 中学校第3学年では,これらの学習の上に立って,数学的な推論の過程に着目し,円周角と中心角の関係について考察し,これによって円の性質の理解をより深めるとともに,円周角と中心角の関係を具体的な場面で活用できるようにする。

 
 

 円周角と中心角の間には,「一つの円において同じ弧に対する円周角の大きさは,中心角の大きさの1/2 である」という関係がある。

 この関係を,観察や操作,実験などの活動を通して見いだし考察できるようにすることが大切である。

 この円周角と中心角の関係を基にすると,「一つの円において同じ弧に対する円周角の大きさは等しい」ことを見いだすことができる。

 これら二つの見いだした事柄を,円周角の定理とする。

 
 

 「一つの円において
  同じ弧に対する円周角の大きさは,
  中心角の大きさの1/2 である」

 という関係を,
 観察や操作,実験
 などの活動を通して見いだし,
 証明できることを
 知ることができるようにする。

 また,
 円周角と中心角の関係を基にして,

 「一つの円において
  同じ弧に対する円周角の大きさは
  等しい」

 ことを見いだすことができるようにする
 ことも必要である。

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 例えば,円を一つかき,その円周上に2点A,Bを決めると,円周が二つの弧に分けられる。この二つのうち弧をどちらかに決めると,2点A,Bと円の中心Oを結んで,その弧に対する中心角が一つ決まる。

 このとき,決めた弧ABを除いた円周上に点Pをとると∠APB ができ,これが弧AB に対する円周角である。

 弧AB を除いた円周上で点Pの位置を変え,∠APB の大きさを分度器等で測ることを通して,弧AB を除いた円周上であれば,一つの弧に対する円周角の大きさは,その弧に対する中心角の大きさの半分であるという関係を推測することができる。

 また,決めた弧AB を除いた円周上に点Qをとり同様に測ることを通して,一つの円において同じ弧に対する円周角の大きさは等しいことも推測できる。

 その際,コンピュータなどを利用して,同一円周上の点を動かしたときの円周角と中心角の関係を直観的に捉えてから分度器等で測り推測することも考えられる。

 
 

 生徒が証明の必要性やよさを感じ取るためには,今まで知らなかったことや,推測したことが常に成り立つかどうかに疑いがもたれるようなことについて,証明で明らかにできることを理解できるようにすることが大切である。

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 一つの円において同じ弧に対する円周角の大きさが等しいことを,観察や操作,実験などの活動を通して見いだし,それを中心角との関係において考察することで,円周角についての性質を証明することができる。

 これらの学習を通して,数学に対する生徒の興味・関心を一層高めることができる。

 例えば,実測を通して見いだした「一つの弧に対する円周角の大きさは,その弧に対する中心角の大きさの1/2 である」という関係について,既習である「二等辺三角形の底角が等しいこと」,「三角形の一つの外角が内対角の和に等しいこと」などを証明の根拠として証明することができる。

 このように,円周角と中心角の関係が証明できることを知る際には,円周角と中心角の位置関係に関する場合分けの必要性を理解することがねらいではなく,証明のよさを理解できるようにすることがねらいであることに留意する。

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 さらに,「2点P,Qが直線AB の同じ側にあり,∠APB=∠AQB ならば,4点A,B,P,Qは一つの円周上にある。」という円周角の定理の逆については,それを具体的な場面で活用できるようにすることに指導の力点を置く。

 
 

 円周角と中心角の関係の活用として,例えば,次の図のように円Oの外側にある1点Pから円Oに接線を作図する活動が考えられる。

 円の接線はその接点を通る半径に垂直であるから,点Pから円Oに接線PQ がひけたとすると,∠OQP=90゚となる。

 したがって,接点Qの位置を決めるには,線分OP を直径とする円O′をかき,円Oとの交点をQとすればよい。

 これは,円O′の弧OP の中心角∠OO′P は180゚であり,円周角の定理より弧OP の円周角∠OQP が90゚になるからである。

 このように円周角と中心角の関係を活用して,円の接線を作図することは,見通しを立てて作図し,その作図が正しい理由を説明するよい機会ともなる。

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 日常生活で円周角と中心角の関係を活用する場面として,例えば,中心の分からない丸い木材の直径を見積もる方法がある。

 大工道具の「さしがね」を使うと,円の直径を定めることができ,それを基に,その木材からとれる角材の1辺を定めることもできる。

 ここでは,丸い木材の断面を円とみなし,円周角が直角になる場合について円周角と中心角の関係が利用されている。

 
 
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